Air Time Fairness

Air Time Fairness について

ネットワーク管理者は Cisco Air Time Fairness(ATF)を使用して、定義済みのカテゴリでデバイスをグループ化し、一部のグループに他のグループよりも頻繁に WLAN からトラフィックを受信させることができます。これにより、一部のグループは他のグループよりも長い通信時間を利用できることになります。

Cisco ATF には次の機能があります。

  • ユーザー グループまたはデバイス カテゴリに対して Wi-Fi の通信時間を割り当てる。

  • Air Time Fairness はネットワークではなくネットワーク管理者が定義する。

  • 簡単な仕組みで通信時間を割り当てる。

  • WLAN の状態の変化に動的に対応する。

  • サービス レベル契約を効率的に実行できる。

  • 各種の標準規格に準拠した Wi-Fi QoS のメカニズムを強化できる。

クライアント グループごとの通信時間の長さに関する公平性をネットワーク管理者が自身の環境で定義できれば、トラフィック量も制御できます。

通信時間をパーセンテージ単位で制御するために、クライアントまたは SSID のアップリンク送信とダウンリンク送信の両方を含む通信時間が継続的に測定されます。

AP が正確に制御できるのは、ダウンリンク方向(AP からクライアント方向)の通信時間のみです。クライアントから AP へのアップリンク方向の通信時間は、測定可能ですが制御できません。AP は、クライアントに発信するパケットの通信時間を制限できますが、AP が測定できるのはその AP がクライアントから受信したパケットの通信時間のみです。これは、AP は受信時の通信時間を正確には制限できないためです。

Cisco ATF では、通信時間の限度(全通信時間に対する割合)を設定して SSID 単位で適用します。この場合、SSID はクライアント グループを定義するパラメータとして使用されます。他のパラメータも、クライアント グループの定義に利用できます。さらに、1 つの通信時間の限度を個々のクライアントに適用できます。

SSID(またはクライアント)の通信時間の限度を超えると、ダウンリンク方向のパケットはドロップされます。ダウンリンク パケット(AP からクライアント方向)をドロップすると通信時間が解放されます。これに対して、アップリンク パケット(クライアントから AP 方向)をドロップしても、通信時間の解放にはつながりません。これは、そのパケットがクライアントによって無線で送信済みであるためです。

クライアント フェア シェアリング

Cisco Air Time Fairness は、SSID または WLAN に関連付けられたクライアントで実施できます。これにより、SSID または WLAN 内のすべてのクライアントは、それぞれの無線帯域幅の使用率に基づいて均等に扱われます。この機能は、1 つまたは少数のクライアントが SSID または WLAN に割り当てられたすべての通信時間を消費することで、同じ SSID または WLAN に関連付けられた他のクライアントが Wi-Fi を利用できなくなる場合に便利です。

  • 各クライアントに割り当てる通信時間の割合は、クライアントの接続または切断のたびに計算し直されます。

  • クライアント フェア シェアリングを適用できるのは、ダウンストリーム トラフィックのみです。

  • クライアントは、ポリシーレベルで使用率グループに分類できます。

  • クライアントベースの ATF メトリックは、送信完了ルーチンで累積します。これにより、使用率が中から低のグループのクライアントが未使用の通信時間をシェア プール バケットに累積して、使用率が高いクライアントに通信時間を融通することができます。

サポート対象のアクセス ポイント プラットフォーム

Cisco ATF は、次の AP でサポートしています。

  • Cisco Aironet 2700 シリーズ アクセスポイント

  • Cisco Aironet 3700 シリーズ アクセスポイント

  • Cisco Aironet 2800 シリーズ アクセスポイント

  • Cisco Aironet 3800 シリーズ アクセスポイント

  • Cisco Aironet 4800 シリーズ アクセスポイント

  • Cisco Aironet 1540 シリーズ アクセスポイント

  • Cisco Aironet 1560 シリーズ アクセスポイント


(注)  


AP が ATF をサポートしている場合、Cisco ATF はメッシュでサポートされます。ATF は FlexConnect とローカルモードでサポートされています。



(注)  


Cisco Catalyst AP は、Wi-Fi 6 および 6E プロトコルの拡張機能を活用することで、ATF と同等の機能を提供します。OFDMA、双方向 MU- MIMO、BSS カラーリングなどの 802.11ax 機能と、Cisco Catalyst 9800 シリーズ ワイヤレス コントローラの高度な QoS 機能を組み合わせることで、スケジューリングと輻輳の問題を解決し、同時に複数のユーザーに対応し、より効率的に帯域幅を割り当てることができます。


Cisco ATF モード

Cisco ATF は以下のモードで動作します。

  • 次の操作をユーザーが実行できる監視モード:

    • 通信時間の表示

    • すべての AP 送信の通信時間の報告

    • レポートの表示

      • SSID または WLAN 単位

      • サイトグループまたはタグごと

    • 通信時間の使用量の定期報告

    • モニター モードの一部としての適用なし

  • 次の操作をユーザが実行できるポリシー適用モード:

    • 設定したポリシーに基づいて通信時間を適用

    • 次の項目に通信時間を適用

      • 単独の WLAN

      • Cisco Catalyst 9800 シリーズ ワイヤレス コントローラ ネットワークに接続されているすべての AP

      • サイトグループまたはタグごと

Cisco Air Time Fairness の制限

  • Cisco ATF を実装できるのはダウンストリーム方向のデータ フレームのみです。

  • SSID 単位モードで ATF を設定する場合は、すべての WLAN を無効にしてから ATF 設定コマンドを入力します。すべての ATF コマンドを入力した後に WLAN を有効にします。

Cisco Air Time Fairness (ATF)の使用例

パブリック ホットスポット(スタジアム/空港/コンベンション センターなど)

この例では、パブリック ネットワークが複数のサービス プロバイダーおよび施設との間で WLAN を共有しています。各サービス プロバイダーのサブスクライバをグループ化して、一定割合の通信時間を割り当てることができます。

教育

たとえば大学では、学生、教員、およびゲスト間で WLAN を共有しています。ゲストネットワークは、ゲストへの帯域幅権限の配布のために、サービスプロバイダーによってさらに分割される場合があります。各グループに一定割合の通信時間を割り当てることができます。

エンタープライズ/サービス/小売

この場合、施設は、従業員とゲスト間で WLAN を共有しています。ゲスト ネットワークは、サービス プロバイダーによってさらに分割できます。ゲストをサービス レベルによってサブグループ化し、サブグループごとに一定割合の通信時間を割り当てることができます(有料グループには、無料グループよりも多く割り当てるなど)。

時間を共有する管理型ホットスポット

この場合、サービス プロバイダーや企業などのホットスポットを管理するビジネス エンティティは、通信時間を割り当てて他のビジネス エンティティにリースすることができます。

Cisco Air Time Fairness(ATF)の設定

Cisco Air Time Fairness の設定

次に、Cisco ATF の設定手順の概要を示します。

  1. モニター モードを有効にして、ネットワーク使用量を特定します(任意)。

  2. Cisco ATF ポリシーを作成します。

  3. ネットワークごと、またはサイトグループやサイトタグごとに WLAN ATF ポリシーを追加します。

  4. 最適化を有効にする必要があるかどうかを特定します。

  5. Cisco ATF の統計情報を定期的に確認します。

Cisco ATF プロファイルの作成(GUI)

手順


ステップ 1

[Configuration] > [Wireless] > [Air Time Fairness] を選択します。

ステップ 2

[Profiles] タブをクリックし、[Add] ボタンをクリックして、新しい ATF ポリシーを作成します。

[Add ATF Policy] ウィンドウが表示されます。

ステップ 3

ATF ポリシーの名前、ID、およびウェイトを指定します。合計が 100 を超えることができるよう、パーセンテージではなくウェイト比率が使用されます。設定可能なウェイトの最小値は 5 です。たとえば、ウェイトを 50 に設定すると、ポリシープロファイルに適用された場合、この ATF プロファイルの通信時間は 50% になります。

ステップ 4

スライダを使用して、[Client Sharing] 機能を有効または無効にします。Web UI でこのオプションを有効にすると、デフォルトの ATF 設定は [Monitor] ではなく [Enforce] に設定されます。

ステップ 5

[Apply to Device] をクリックします。


Cisco ATF プロファイルの作成(CLI)

手順

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

configure terminal

例:

Device# configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 2

wireless profile airtime-fairness atf-policy-name atf-profile-id

例:

Device(config)# wireless profile airtime-fairness atf-policy-name 1

新しい Cisco ATF ポリシーを作成します。

  • atf-policy-name :ATF プロファイル名を入力します。

  • atf-profile-id :ATF プロファイル ID を入力します。範囲は 0 ~ 511 です。

ステップ 3

weight policy-weight

例:

Device(config-config-atf)# weight 5

Cisco ATF ポリシーにウェイトを追加します。

  • policy-weight :ポリシー ウェイトを入力します。範囲は 5 ~ 100 です。

ステップ 4

client-sharing

例:

Device(config-config-atf)# client-sharing

Cisco ATF ポリシーのクライアント共有を有効または無効にします。

ステップ 5

end

例:

Device(config-config-atf)# end

特権 EXEC モードに戻ります。また、Ctrl+Z キーを押しても、グローバル コンフィギュレーション モードを終了できます。

ポリシープロファイルへの Cisco ATF プロファイルのアタッチ(GUI)

手順


ステップ 1

[Configuration] > [Tags & Profiles] > [Policy] を選択します。Policy

ステップ 2

[Add] をクリックします。

[Add Policy Profile] ウィンドウが表示されます。

ステップ 3

[Advanced] タブをクリックします。

ステップ 4

[Air Time Fairness Policies] セクションで、2.4 GHz および 5 GHz ポリシーに必要なポリシーを選択します。

ステップ 5

[Apply to Device] をクリックします。


ポリシープロファイルへの Cisco ATF プロファイルのアタッチ(CLI)

手順

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

configure terminal

例:

Device# configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 2

wireless profile policy profile-name

例:

Device(config)# wireless profile policy profile-name

WLAN のポリシー プロファイルを作成します。

  • profile-name :ポリシー プロファイルのプロファイル名です。

ステップ 3

dot11 {24ghz | 5ghz} airtime-fairness atf-policy-name

例:

Device(config-wireless-policy)# dot11 24ghz airtime-fairness atf-policy-name

2.4 または 5 GHz 無線の Air Time Fairness ポリシーを設定します。

  • atf-policy-name :Air Time Fairness ポリシーの名前です。Cisco ATF ポリシーの作成の詳細については、「Cisco ATF ポリシーの作成」を参照してください。

(注)  

 

2.4 GHz と 5 GHz の両方の無線に同じ ATF ポリシーを割り当てることも、2 つの異なる ATF ポリシーを割り当てることもできます。

ステップ 4

end

例:

Device(config-wireless-policy)# end

特権 EXEC モードに戻ります。また、Ctrl+Z キーを押しても、グローバル コンフィギュレーション モードを終了できます。

RF プロファイルでの ATF の有効化(GUI)

手順


ステップ 1

[Configuration] > [Tags & Profiles] > [RF]を選択します。

ステップ 2

[Add] をクリックします。

[Add RF Profile] ウィンドウが表示されます。

ステップ 3

[Advanced] タブをクリックします。

ステップ 4

[ATF Configuration] セクションで、次の手順を実行します。

  1. スライダを使用して、[Status] を有効または無効にします。[Mode] フィールドが表示されます。

  2. [Monitor] モードまたは [Enforced] モードの無線オプションをクリックします。[Enforced] モードを有効にする場合は、スライダを使用して [Optimization] を有効または無効にします。

  3. スライダを使用して、[Bridge Client Access] を有効または無効にします。これはメッシュモードの AP に適用されます。[Bridge Client Access] では、メッシュ AP に接続されているクライアントに割り当てられる ATF ポリシーウェイトの割合を決定します。

ステップ 5

5 ~ 90 の間で [Airtime Allocation] の値を指定します。

ステップ 6

[Apply to Device] をクリックします。


RF プロファイルでの ATF の有効化(CLI)

Cisco ATF は、2.4 GHz または 5 GHz 無線で個別に有効化する必要があります。

手順

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

configure terminal

例:

Device# configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 2

ap dot11 {24ghz | 5ghz} rf-profile rf-profile

例:

Device(config)# ap dot11 24ghz rf-profile rfprof24_1

2.4 または 5 GHz 無線の RF プロファイルを設定します。

ステップ 3

airtime-fairness mode {enforce-policy | monitor}

例:

Device(config-rf-profile)# airtime-fairness mode enforce-policy

次のいずれかのモードで Air Time Fairness を設定します。

  • ポリシー適用:このモードは ATF が動作していることを示します。

  • モニター:このモードは、通信時間に関する情報を収集して通信時間の使用状況を報告します。

ステップ 4

airtime-fairness optimization

例:

Device(config-rf-profile)# airtime-fairness optimization

Air Time Fairness の最適化を有効にします。

最適化は、現在の WLAN が通信時間の限度に達し、他の使用可能な WLAN が通信時間を十分に使用できない場合に有効です。

ステップ 5

end

例:

Device(config-rf-profile)# end

特権 EXEC モードに戻ります。また、Ctrl+Z キーを押しても、グローバル コンフィギュレーション モードを終了できます。

Cisco ATF 設定の確認

Cisco ATF 設定を確認するには、次のコマンドを使用します。

表 1. Cisco ATF 設定を確認するためのコマンド
コマンド 説明
show wireless profile airtime-fairness summary Air Time Fairness プロファイルの要約を表示します。
show wireless profile airtime-fairness mapping

ワイヤレス プロファイルとの ATF ポリシー マッピングを表示します。

show ap airtime-fairness summary

すべての無線の ATF 設定のサマリーを表示します。

show ap dot11 24ghz airtime-fairness

2.4 GHz 無線の ATF 設定を表示します。

show ap dot11 5ghz airtime-fairness

5 GHz 無線の ATF 設定を表示します。

show ap name ap-name airtime-fairness

AP の ATF 設定または統計情報を表示します。

show ap name ap-name dot11 {24ghz | 5ghz} airtime-fairness statistics summary

2.4 または 5 GHz 無線の ATF 統計情報を表示します。

Cisco ATF の統計情報の確認

表 2. WLAN ごとの ATF 統計情報
コマンド 説明
show ap name ap-name dot11 {24ghz | 5ghz} airtime-fairness wlan wlan_name statistics

WLAN に関連する ATF 統計情報を表示します。

表 3. ATF ポリシーごとの ATF 統計情報
コマンド 説明
show ap name ap-name dot11 {24ghz | 5ghz} airtime-fairness policy policy-name statistics

ATF ポリシーに関連する ATF 統計情報を表示します。

表 4. クライアントごとの ATF 統計情報
コマンド 説明
show ap airtime-fairness statistics client mac_address

クライアントに関連する ATF 統計情報を表示します。