- Cisco Industrial Ethernet 4000、4010、および 5000 スイッチ ソフトウェア コンフィギュレーション ガイド
- Contents
- はじめに
- 設定の概要
- コマンドライン インターフェイスの使用
- インターフェイスの設定
- スイッチ アラームの設定
- スイッチ セットアップの設定
- Cisco IOS Configuration Engine の設定
- スイッチ クラスタの設定
- スイッチ管理の実行
- PTP の設定
- PROFINET の設定
- CIP の設定
- SDM テンプレートの設定
- スイッチ ベース認証の設定
- IEEE 802.1x ポートベース認証の設定
- MACsec
- Web ベース認証の設定
- SmartPort マクロの設定
- SGACL モニタモードおよび SGACL ロギングの設定
- SGT 交換プロトコル over TCP(SXP)およびレイヤ 3 トランスポートの設定
- VLAN の設定
- VTP の設定
- 音声 VLAN の設定
- STP の設定
- MSTP の設定
- オプションのスパニングツリー機能の設定
- Resilient Ethernet Protocol の設定
- FlexLink および MAC アドレス テーブル移動更新の設定
- DHCP の設定
- ダイナミック ARP インスペクション(DAI)の設定
- IP ソース ガードの設定
- IGMP スヌーピングおよび MVR の設定
- ポート単位のトラフィック制御の設定
- SPAN および RSPAN の設定
- LLDP、LLDP-MED、およびワイヤード ロケーション サービスの設定
- レイヤ 2 NAT の設定
- CDP の設定
- UDLD の設定
- RMON の設定
- システム メッセージ ロギングの設定
- SNMP の設定
- ACL によるネットワーク セキュリティの設定
- QoS の設定
- スタティック IP ユニキャスト ルーティングの設定
- IPv6 ホスト機能の設定
- リンク ステート トラッキングの設定
- IP マルチキャスト ルーティングの設定
- MSDP の設定
- IPv6 MLD スヌーピングの設定
- HSRP および VRRP の設定
- IPv6 ACL の設定
- Embedded Event Manager の設定
- IP ユニキャスト ルーティングの設定
- IPv6 ユニキャスト ルーティングの設定
- ユニキャストの概要
- Cisco IOS IP SLA 動作の設定
- Dying Gasp
- 拡張オブジェクト トラッキングの設定
- MODBUS TCP の設定
- イーサネット CFM
- Cisco IOS ファイル システム、コンフィギュレーション ファイル、およびソフトウェア イメージの操作
- EtherChannel の設定
- トラブルシューティング
- SD カードの使用
HSRP および VRRP の設定
この章では、Hot Standby Router Protocol(HSRP)を使用する方法について説明します。これによって、IP トラフィックルーティングに冗長性を提供し、個々のルータの可用性に依存しないルーティングを実現します。IPv4 用 HSRP は、IP サービス イメージが稼働しているスイッチでサポートされます。
レイヤ 2 モードの HSRP のバージョンを使用すると、クラスタ コマンド スイッチが故障した場合、クラスタ管理を引き継ぐ冗長コマンド スイッチを設定することもできます。
この章で使用するコマンドの構文および使用方法の詳細については、次のマニュアルを参照してください。
- 『 Cisco IOS IP Command Reference, Volume 1 of 3: Addressing and Services, Release 12.2 』(次の URL から入手可能) http://www.cisco.com/en/US/docs/ios/12_2/ipaddr/command/reference/fipras_r.html
- 『 Hot Standby Router Protocol Version 2 』機能モジュール(次の URL から入手可能) http://www.cisco.com/en/US/docs/ios/12_3t/12_3t4/feature/guide/gthsrpv2.html
HSRP の概要
HSRP は、デフォルトゲートウェイ IP アドレスが設定された IEEE 802 LAN 上の IP ホストにファーストホップ冗長性を確保することでネットワークの可用性を高めるシスコの標準方式です。HSRP を使用すると、特定のルータのアベイラビリティに依存せず IP トラフィックをルーティングできます。また、一連のルータ インターフェイスを組み合わせることで、1 台の仮想ルータ、または LAN 上のホストへのデフォルト ゲートウェイのように機能させることができます。ネットワークまたはセグメント上に HSRP を設定すると、仮想 Media Access Control(MAC)アドレス、および設定されたルータ グループ間で共有される IP アドレスを使用できるようになります。HSRP が設定された複数のルータは、仮想ルータの MAC アドレスおよび IP ネットワーク アドレスを使用できるようになります。仮想ルータは、実際には存在しません。相互にバックアップ機能を提供するように設定されている複数のルータに、共通のターゲットを表すルータです。1 台のルータがアクティブなルータとして、もう 1 台のルータがスタンバイ ルータとして選択されます。スタンバイ ルータは、指定されたアクティブ ルータが故障した場合に、グループの MAC アドレスおよび IP アドレスを制御するルータです。
(注
) HSRP グループ内のルータには、ルーテッドポート、スイッチ仮想インターフェイス(SVI)など、HSRP をサポートする任意のルータインターフェイスを指定できます。
HSRP は、ネットワーク上のホストからの IP トラフィックに冗長性を提供することで、ネットワークのアベイラビリティを高めます。アクティブ ルータは、ルータ インターフェイスのグループ内でパケットのルーティングを実行するために選択されたルータです。スタンバイ ルータは、アクティブ ルータが故障した場合、または事前に設定した条件が満たされた場合に、ルーティング作業を引き継ぐルータです。
HSRP は、ホストがルータ ディスカバリ プロトコルをサポートしておらず、選択されたルータのリロードや電源故障時に新しいルータに切り替えることができない場合に有効です。HSRP をネットワーク セグメントに設定すると、HSRP は仮想 MAC アドレスと IP アドレスを 1 つずつ提供します。このアドレスは、HSRP が動作するルータ インターフェイス グループ内のルータ インターフェイス間で共有できます。プロトコルによってアクティブルータとして選択されたルータは、グループの MAC アドレス宛てのパケットを受信し、ルーティングします。n 台のルータで HSRP が稼働している場合、n +1 個の IP アドレスおよび MAC アドレスが割り当てられます。
指定されたアクティブルータの故障を HSRP が検出すると、選択されているスタンバイルータがホットスタンバイグループの MAC アドレスおよび IP アドレスの制御を引き継ぎます。この時点で新しいスタンバイ ルータも選択されます。HSRP が稼働しているデバイスは、マルチキャスト UDP ベースの hello パケットを送受信することにより、ルータ障害の検出、アクティブ ルータおよびスタンバイ ルータの指定を行います。インターフェイスに HSRP が設定されている場合、そのインターフェイスではインターネット制御メッセージ プロトコル(ICMP)のリダイレクト メッセージがデフォルトでディセーブルとなっています。
レイヤ 3 で動作するスイッチ間で複数のホットスタンバイグループを設定すると、冗長ルータをさらに活用できます。そのためには、インターフェイスに設定するホットスタンバイ コマンド グループごとにグループ番号を指定します。たとえば、スイッチ 1 のインターフェイスをアクティブ ルータ、スイッチ 2 のインターフェイスをスタンバイ ルータとして設定できます。また、スイッチ 2 の別のインターフェイスをアクティブ ルータ、スイッチ 1 の別のインターフェイスをスタンバイ ルータとして設定することもできます。
図 49-96 に、HSRP 用に設定されたネットワークのセグメントを示します。各ルータには、仮想ルータの MAC アドレスおよび IP ネットワーク アドレスが設定されています。ルータ A の IP アドレスをネットワーク上のホストに設定する代わりに、デフォルト ルータとして仮想ルータの IP アドレスを設定します。ホスト C からホスト B にパケットが送信される場合、ホスト C は仮想ルータの MAC アドレスにパケットを送信します。何らかの理由により、ルータ A がパケットの転送を停止すると、ルータ B が仮想 IP アドレスおよび仮想 MAC アドレスに応答してアクティブ ルータとなり、アクティブ ルータの作業を行います。ホスト C は引き続き仮想ルータの IP アドレスを使用し、ホスト B 宛てのパケットをアドレッシングします。ルータ B はそのパケットを受信し、ホスト B に送信します。ルータ B は HSRP の機能を使用し、ルータ A が動作を再開するまで、ホスト B のセグメント上のユーザと通信する必要があるホスト C のセグメント上のユーザに連続的にサービスを提供します。また、ホスト A セグメントとホスト B の間で、引き続き通常のパケット処理機能を実行します。
HSRP のバージョン
スイッチは、次のホットスタンバイ ルータ プロトコル(HSRP)をサポートします。
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HSRP グループ番号は 0 ~ 255 まで使用できます。
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HSRPv1 は 224.0.0.2 のマルチキャスト アドレスを使用して hello パケットを送信しますが、これは Cisco Group Management Protocol(CGMP)の脱退処理と競合します。HSRPv1 と CGMP は相互に排他的なため、同時には使用できません。
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HSRP グループ番号とサブインターフェイスの VLAN ID を照合させるために、HSRPv2 では 0 ~ 4095 のグループ番号と 0000.0C9F.F000 ~ 0000.0C9F.FFFF の MAC アドレスを使用できます。
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HSRPv2 は 224.0.0.102 のマルチキャスト アドレスを使用して hello パケットを送信します。HSRPv2 と CGMP 脱退処理は相互に排他的ではありません。同時に使用できます。
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HSRPv2 のパケット形式は、HSRPv1 とは異なります。
HSRPv1 を実行しているスイッチは、ルータの送信元 MAC アドレスが仮想 MAC アドレスのため、hello パケットを送信した物理的なルータを特定できません。
HSRPv2 のパケット形式は、HSRPv1 とは異なります。HSRPv2 パケットは、パケットを送信した物理ルータの MAC アドレスを格納できる 6 バイトの識別子フィールドを持った、Type Length Value(TLV)形式を使用します。
HSRPv1 を実行しているインターフェイスが HSRPv2 パケットを取得した場合、このタイプ フィールドは無視されます。
MHSRP
スイッチは、Multiple HSRP(MHSRP)をサポートします。MHSRP は HSRP の拡張版で、複数の HSRP グループ間でのロード シェアリングが可能です。ホスト ネットワークからサーバ ネットワークまで、ロード バランシングを実現して複数のスタンバイ グループ(およびパス)を使用するために、MHSRP を設定できます。図 49-97 では、半分のクライアントがルータ A に設定されていて、もう半分はルータ B に設定されています。ルータ A およびルータ B の設定により、合計 2 つの HSRP グループが確立されています。グループ 1 では、ルータ A に最高のプライオリティが割り当てられているので、ルータ A がデフォルトのアクティブ ルータになり、ルータ B がスタンバイ ルータとなります。グループ 2 では、ルータ B に最高のプライオリティが割り当てられているので、ルータ B がデフォルトのアクティブ ルータになり、ルータ A がスタンバイ ルータとなります。通常の運用では、2 つのルータが IP トラフィック負荷を分散します。いずれかのルータが使用できなくなると、もう一方のルータがアクティブになり、使用できないルータのパケット転送機能を引き継ぎます。
(注
) MHSRP では、ルータに障害が発生して正常に戻った場合にプリエンプションによりロードシェアリングを復元するために、standby preempt インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを HSRP インターフェイスで入力する必要があります。
HSRP の設定
- HSRP のデフォルト設定
- HSRP 設定時の注意事項
- HSRP のイネーブル化
- HSRP のプライオリティの設定
- MHSRP の設定
- HSRP 認証およびタイマーの設定
- ICMP リダイレクト メッセージの HSRP サポートのイネーブル化
- HSRP グループおよびクラスタリングの設定
- HSRP のトラブルシューティング
HSRP のデフォルト設定
表 49-62 に、HSRP のデフォルト設定を示します。
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HSRP 設定時の注意事項
- IPv4 の HSRP および IPv6 の HSRP は相互に排他的です。両方を同時にイネーブルにはできません。
- HSRPv2 および HSRPv1 は相互に排他的です。HSRPv2 は、同じインターフェイス上で HSRPv1 と一緒には動作しません(その逆も同様)。
- HSRP グループ インスタンスは 32 まで設定できます。
複数のインターフェイス上に同じ HSRP グループ番号を設定した場合、スイッチはそれぞれのインターフェイスを 1 つのインスタンスとして数えます。
たとえば、VLAN 1 とポート 1 上に HSRP グループ 0 を設定すると、スイッチはこれを 2 つのインスタンスとして数えます。
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ルーテッドポート: no switchport インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを入力して、レイヤ 3 ポートとして設定された物理ポートです。
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SVI: interface vlan vlan_id グローバル コンフィギュレーション コマンドによって作成された VLAN インターフェイス。デフォルトではレイヤ 3 インターフェイスです。
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レイヤ 3 モードの EtherChannel ポートチャネル: interface port-channel port-channel-number グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用し、イーサネット インターフェイスをチャネルグループにバインドして作成されたポートチャネル論理インターフェイスです。詳細については、「Configuring Layer 3 EtherChannels」の項を参照してください。
- すべてのレイヤ 3 インターフェイスには IP アドレスが割り当てられている必要があります。
- 1 つの FHRP インスタンスだけ設定してください。スイッチは HSRPv1、HSRPv2、HSRP の IPv6 をサポートします。
- HSRP グループのバージョンは、グループ番号が 256 より少ない場合にだけ HSRPv2 から HSRPv1 へ変更できます。
- IPv6 で HSRPv2 および HSRP のグループ番号を設定する場合、256 の倍数の範囲のグループ番号を使用する必要があります。有効な範囲は 0 ~ 255、256 ~ 511、512 ~ 767、3840 ~ 4095 などです。
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2、150、225 の番号でグループを設定する場合、3850 の番号を持つ他のグループは設定できません。これは、0 ~ 255 の範囲内ではありません。
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520、600、700 の番号でグループを設定する場合、900 の番号を持つ他のグループは設定できません。これは、512 ~ 767 の範囲内ではありません。
HSRP のイネーブル化
standby ip インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを実行すると、設定されたインターフェイスで HSRP がアクティブになります。IP アドレスを指定した場合は、IP アドレスがホットスタンバイ グループの指定アドレスとして使用されます。IP アドレスを指定しなかった場合は、スタンバイ機能によってアドレスが学習されます。指定アドレスを使用し、LAN 上に少なくとも 1 つのレイヤ 3 ポートを設定する必要があります。IP アドレスを設定すると、常に、現在使用されている別の指定アドレスが、設定した IP アドレスに変更されます。
standby ip コマンドがインターフェイス上でイネーブルに設定され、プロキシ ARP がイネーブルの場合、インターフェイスのホットスタンバイステートがアクティブになると、プロキシ ARP 要求に対する応答は、ホットスタンバイグループの MAC アドレスを使用して実行されます。インターフェイスが別のステートの場合、プロキシ ARP の応答は抑制されます。
レイヤ 3 インターフェイス上で HSRP を作成する場合、またはイネーブルにする場合は、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
HSRP をディセーブルにするには、 no standby [ group-number ] ip [ ip-address ] インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。
次に、インターフェイスのグループ 1 で HSRP をアクティブにする例を示します。ホットスタンバイ グループで使用される IP アドレスは、HSRP を使用して学習されます。
(注
) これは、HSRP をイネーブルにするために必要な最小限の手順です。その他の設定は任意です。
HSRP のプライオリティの設定
standby priority, standby preempt 、および standby track インターフェイス コンフィギュレーション コマンドはいずれも、アクティブ ルータとスタンバイ ルータを検索するための特性、および新しいアクティブ ルータが処理を引き継いだ場合の動作を設定するために使用できます。
HSRP プライオリティを設定する場合の注意事項は、次のとおりです。
- プライオリティを割り当てておくと、アクティブ ルータおよびスタンバイ ルータを選択できます。プリエンプションがイネーブルの場合は、プライオリティが最高のルータがアクティブ ルータになります。プライオリティが等しい場合は、現在アクティブなルータに変更はありません。
- 最大の値(1 ~ 255)が、最高のプライオリティ(アクティブ ルータになる確率が最も高い)を表します。
- プライオリティ、プリエンプト、またはその両方を設定するときは、少なくとも 1 つのキーワード( priority 、 preempt 、または両方)を指定する必要があります。
- インターフェイスが standby track コマンドによって設定されている場合、ルータ上の別のインターフェイスがダウンすると、デバイスのプライオリティが動的に変更されることもあります。
- standby track インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを実行すると、ルータのホット スタンバイ プライオリティとインターフェイスの可用性が関連付けられます。この機能は、HSRP 用に設定されていないインターフェイスを追跡する場合に有効です。追跡対象のインターフェイスが故障すると、トラッキングが設定されているデバイスのホットスタンバイ プライオリティが 10 減少します。追跡対象でないインターフェイスの場合は、そのステートが変わっても、設定済みデバイスのホットスタンバイ プライオリティは変わりません。ホットスタンバイ用に設定されたインターフェイスごとに、追跡するインターフェイスのリストを個別に設定できます。
- standby track interface-priority インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを実行すると、追跡対象のインターフェイスがダウンした場合のホット スタンバイ プライオリティの減少幅を指定できます。インターフェイスが稼働状態に戻ると、プライオリティは同じ分だけ増加します。
- interface-priority 値が設定されている場合に、複数の追跡対象インターフェイスがダウンすると、設定済みプライオリティの減少幅が累積されます。プライオリティ値が設定されていない追跡対象インターフェイスが故障した場合、デフォルトの減少幅は 10 です。この値は累積されません。
- インターフェイスに対してルーティングを最初にイネーブルにした時点で、完全なルーティング テーブルは存在しません。このインターフェイスがプリエンプトに設定されている場合はアクティブ ルータになりますが、十分なルーティング処理はできません。この問題を解決するには、ルータがルーティング テーブルを更新できるように遅延時間を設定します。
インターフェイスに HSRP プライオリティ特性を設定するには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
デフォルトのプライオリティ、プリエンプト、遅延値に戻すには、 no standby [ group-number ] priority priority [ preempt [ delay delay ]] および no standby [ group-number ] [ priority priority ] preempt [ delay delay ] インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。
追跡を解除するには、 no standby [ group-number ] track type number [ interface-priority ] インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。
次に、ポートをアクティブにして、IP アドレスおよびプライオリティ 120(デフォルト値よりも高いプライオリティ)を設定して、アクティブ ルータになるまで 300 秒(5 分間)待機する例を示します。
MHSRP の設定
MHSRP およびロード バランシングをイネーブルにするには、グループのアクティブ ルータとして 2 つのルータを設定し、仮想ルータをスタンバイ ルータとして設定します。次に、図 49-97 に示した MHSRP 設定をイネーブルにする例を示します。ルータに障害が発生して正常に戻った場合、プリエンプションを発生させてロードバランシングを復元するために、 standby preempt インターフェイス コンフィギュレーション コマンドをそれぞれの HSRP インターフェイスで入力する必要があります。
ルータ A はグループ 1 のアクティブ ルータとして、ルータ B はグループ 2 のアクティブ ルータとして設定されています。ルータ A の HSRP インターフェイスの IP アドレスは 10.0.0.1、グループ 1 のスタンバイ プライオリティは 110(デフォルトは 100)です。ルータ B の HSRP インターフェイスの IP アドレスは 10.0.0.2、グループ 2 のスタンバイ プライオリティは 110 です。
グループ 1 は仮想 IP アドレス 10.0.0.3 を使用し、グループ 2 は仮想 IP アドレス 10.0.0.4 を使用します。
HSRP 認証およびタイマーの設定
HSRP 認証ストリングを設定したり、hello タイム インターバルやホールドタイムを変更することもできます。
- 認証ストリングはすべての HSRP メッセージで暗号化されずに送信されます。相互運用できるように、接続されたすべてのルータおよびアクセス サーバに同じ認証ストリングを設定する必要があります。認証ストリングが一致しないと、HSRP によって設定された他のルータから、指定されたホットスタンバイ IP アドレスおよびタイマー値を学習できません。
- スタンバイ タイマー値が設定されていないルータまたはアクセス サーバは、アクティブ ルータまたはスタンバイ ルータからタイマー値を学習できます。アクティブ ルータに設定されたタイマーは、常に他のタイマー設定よりも優先されます。
- ホットスタンバイ グループのすべてのルータで、同じタイマー値を使用する必要があります。通常、 holdtime は hellotime の 3 倍以上です。
インターフェイスに HSRP の認証とタイマーを設定するには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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(任意) authentication string :すべての HSRP メッセージで伝達される文字列を入力します。認証文字列には 8 文字までを指定できます。デフォルトの文字列は cisco です。 |
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認証文字列を削除するには、 no standby [ group-number ] authentication string インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。タイマーをデフォルト値に戻すには、 no sta ndby [ group-number ] timers hellotime holdtime インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。
次に、グループ 1 のホットスタンバイルータを相互運用させるために必要な認証文字列として、 word を設定する例を示します。
次に、hello パケット間隔が 5 秒、ルータがダウンしたと見なされるまでの時間が 15 秒となるように、スタンバイ グループ 1 のタイマーを設定する例を示します。
ICMP リダイレクト メッセージの HSRP サポートのイネーブル化
ICMP は、エラーをレポートするためのメッセージ パケットや IP 処理に関連する他の情報を提供する、ネットワーク層インターネット プロトコルです。ICMP には、ホストヘのエラーパケットの方向付けや送信などの診断機能があります。
スイッチで HSRP が動作している場合、ホストが HSRP グループ内のルータのインターフェイス(または実際の)MAC アドレスを検出できないことに注意してください。ICMP によってホストがルータの実際の MAC アドレスへリダイレクトされて、そのルータに障害が発生した場合、ホストからのパケットは消失します。
HSRP が設定されたインターフェイスでは、ICMP リダイレクト メッセージが自動的にイネーブルになります。この機能は、HSRP を介した発信 ICMP リダイレクト メッセージをフィルタリングします。HSRP では、ネクスト ホップ IP アドレスが HSRP 仮想 IP アドレスに変更される可能性があります。
HSRP グループおよびクラスタリングの設定
デバイスが HSRP スタンバイ ルーティングに参加し、クラスタリングがイネーブルの場合は、同じスタンバイ グループを使用して、コマンド スイッチの冗長性および HSRP の冗長性を確保できます。同じ HSRP スタンバイ グループをイネーブルにし、コマンド スイッチおよびルーティングの冗長性を確保するには、 cluster standby-group HSRP-group-name [ routing-redundancy ] グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。 routing-redundancy キーワードを指定せずに同じ HSRP スタンバイ グループ名でクラスタを作成すると、そのグループに対する HSRP スタンバイ ルーティングはディセーブルになります。
次に、スタンバイ グループ my_hsrp をクラスタにバインドし、同じ HSRP グループをイネーブルにしてコマンド スイッチおよびルータの冗長性に使用する例を示します。このコマンドを実行できるのは、コマンド スイッチに対してだけです。スタンバイ グループの名前または番号が存在しない場合、またはスイッチがクラスタ メンバー スイッチである場合は、エラー メッセージが表示されます。
HSRP のトラブルシューティング
表 49-63 で説明されている状況のいずれかが発生した場合、以下のメッセージが表示されます。
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HSRP 設定の表示
HSRP 設定を表示するには、次の特権 EXEC モードで次のコマンドを使用します。
show standby [ interface-id [ group ]] [ brief ] [ detail ]
スイッチ全体、特定のインターフェイス、HSRP グループ、またはインターフェイスの HSRP グループに関する HSRP 情報を表示できます。HSRP 情報の概要または詳細のいずれを表示するかを指定することもできます。デフォルト表示は detail です。多数の HSRP グループがある場合に、修飾子を指定しないで show standby コマンドを使用すると、正確に表示されないことがあります。
次に、 show standby 特権 EXEC コマンドを実行し、2 つのスタンバイグループ(グループ 1 およびグループ 100)の HSRP 情報を表示する例を示します。
VRRP の設定
仮想ルータ冗長プロトコル(VRRP)は、LAN 上の VRRP ルータに対し、1 台または複数台の仮想ルータの役割をダイナミックに割り当てる選択プロトコルです。この場合、マルチアクセス リンク上にある何台かのルータが同じ仮想 IP アドレスを使用できるようにします。VRRP ルータは、LAN に接続された 1 つ以上の他のルータと連係して VRRP プロトコルを実行するように設定されます。VRRP 設定では、1 台のルータが仮想マスター ルータとして選定され、他のルータは仮想マスター ルータが機能を停止した場合のバックアップとして動作します。
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