音声、ビデオ、および統合データ(AVVID)の設計のためのアーキテクチャでは、通常、冗長性のためにプライマリとセカンダリの Cisco CallManager サーバを設置することが推奨されています。 プライマリの Cisco CallManager サーバに障害が発生すると、セカンダリの Cisco CallManager サーバに引き継がれ、IP 電話機はこのサーバにリホームされます。
このシナリオは、IP 電話機間の通信のために機能します。 ところが、H.323 ゲートウェイで、障害が発生している(アウトオブサービスの)プライマリの Cisco CallManager サーバへダイレクトするようになっている場合、セカンダリの Cisco CallManager サーバへリダイレクトする方法が必要になります。
音声カードが装備されていて、Voice over IP(VoIP)用の設定がされている Cisco AS5300、36xx、26xx、MC3810、1750 の各ルータでは、この手順が機能します これは、各 Cisco CallManager サーバ用にそれぞれ設定されている H.323 ゲートウェイ上での 2 つの VoIP ダイヤル ピアを利用することにより、実行可能です。
このドキュメントに関する固有の要件はありません。
このドキュメントの情報は、次のソフトウェアとハードウェアのバージョンに基づくものです。
IP Plus 機能セットの Cisco IOS® ソフトウェア リリース 12.1.2T、
Cisco 2610 ゲートウェイ
Cisco CallManager 3.x および 4.0
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されたものです。 このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、クリアな(デフォルト)設定で作業を開始しています。 ネットワークが稼働中の場合は、コマンドが及ぼす潜在的な影響を十分に理解しておく必要があります。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
このセクションでは、このドキュメントで説明している機能の設定に使用するための情報を説明します。
注: このドキュメントで使用されているコマンドの詳細を調べるには、Command Lookup Tool(登録ユーザ専用)を使用してください。
このドキュメントでは、次のネットワーク構成を使用しています。
このドキュメントでは次の設定を使用します。
Cisco 2610
Cisco 2610 |
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Current configuration: version 12.1 voice class h323 1 h225 timeout tcp establish 3 !--- Set the timeout to three seconds. dial-peer voice 100 voip preference 1 !--- Make this the first choice dial peer. ip precedence 5 destination-pattern 1... voice-class h323 1 !--- Apply the voice class to the dial peer. session target ipv4:10.10.10.2 !--- This is the address of the primary Cisco CallManager. dtmf-relay h245-alpha dial-peer voice 101 voip preference 2 !--- This is the second choice. ip precedence 5 destination-pattern 1... session target ipv4:10.10.10.3 !--- This is the address of the secondary Cisco CallManager. dtmf-relay h245-alpha end |
場合によっては、パブリッシャ と サブスクライバ が、それぞれ セカンダリ と プライマリ のサーバとして使用されます。 この場合、サブスクライバはコール処理を行う Cisco CallManager サーバなので、これには低い優先度が割り当てられます。一方、パブリッシャは SQL データベースと LDAP ディレクトリの両方の処理を行うようになっています。 サブスクライバに問題があると、コールはパブリッシャにルーティングされ、パブリッシャでもコールのルーティングが行えます。
注: 優先度の順序を設定する際には、優先度番号の低いものが、高い優先度になります。 優先度 0 のダイヤル ピアが最高の優先度になり、これがデフォルト値です。 優先度の値には、0 ~ 10 が可能です。
さらに設定手順を説明します。
プライマリの Cisco CallManager サーバをポイントするダイヤル ピアを優先度 1 で設定します。
注: この場合、2 つのダイヤル ピアでの宛先パターンが同じなので、preference コマンドが有効です。そうでない場合は、「最長一致」によって置き換えられます。
プライマリの Cisco CallManager サーバ |
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dial-peer voice 100 voip preference 1 !--- Make this the first choice dial peer. ip precedence 5 destination-pattern 1... voice-class h323 1 !--- Apply the voice class to the dial peer. session target ipv4:10.10.10.2 !--- This is the address of the primary Cisco CallManager. dtmf-relay h245-alpha |
セカンダリの Cisco CallManager サーバをポイントするダイヤル ピアを優先度 2 で設定します。
セカンダリの Cisco CallManager サーバ |
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dial-peer voice 101 voip preference 2 !--- This is the second choice. ip precedence 5 destination-pattern 1... session target ipv4:10.10.10.3 !--- This is the address of the secondary Cisco CallManager. dtmf-relay h245-alpha |
セカンダリの Cisco CallManager サーバを優先度 1 で使用するには、このゲートウェイのための Cisco CallManager の設定で Run H.225D On Every Node フラッグにチェックマークが入っていることを確認してください。 これにチェックマークが入っていないと、コールのセットアップで 10 ~15 秒の遅延が発生します。 この状態になると、この値にチェックマークを入れて、関連ゲートウェイをリセットする必要があります。
H.323 ゲートウェイで H.225 タイマーを 3 秒に下げます。
デフォルトでは、「無応答」の障害で優先度の低いダイヤル ピアへのリダイレクションを制御する H.225 タイマーが Q.931 Call Proceeding タイマーの 10 秒タイマーよりも長いため、この手順は必須です。 ISDN トランクから H.323 ゲートウェイにコールが到着して、機能していない Cisco CallManager に転送されると、ルータでは 40 秒待機してから、優先度の低いダイヤル ピアの使用を試みるか、コールをクリアします。 これが発生するまでに、H.323 ゲートウェイで信号を発している ISDN Q.931 では、すでに ISDN スイッチに対して ISDN Q.931 CALL DISCONNECT を送信済みです。 ルータから送信されるのは、0x8066:「recovery on timer expiry」の ISDN クリアリング コードです。
H.323 ゲートウェイでは別のダイヤルピアの使用を試みるため、Call Proceeding タイマーのリセットはできません。 そのため、H.323 ゲートウェイでは、Q.931(Incoming Call Proceeding)タイマーで許容されている 10 秒以内に、セカンダリの Cisco CallManager サーバを利用して、ピアの切り替えとコールの遂行を行う必要があります。
H.225 タイマーが 3 秒に設定されている場合、ルータではプライマリの Cisco CallManager サーバへの接続を試みます。 3 秒間応答がないと、セカンダリの Cisco CallManager サーバへフォールバックされます。
H.225 タイマーを 3 秒に設定するには、voice class h323 1 コマンドを発行します。
H.225 タイマーを 3 秒に設定 |
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voice class h323 1 h225 timeout tcp establish 3 !--- Set the timeout to three seconds. |
ダイヤル ピアに音声クラスを適用するには、voice class h323 1 コマンドを発行します。
音声クラスを適用 |
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dial-peer voice 100 voip voice-class h323 1 !--- Apply the voice class to the dial peer. |
ダイヤル ピアが設定されていて、up ステートであることを確認するには、show dial-peer voice summary コマンドを発行します。
show dial-peer voice summary コマンドの使用 |
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2600GW# show dial-peer voice summary dial-peer hunt 0 PASS TAG TYPE ADMIN OPER PREFIX DEST-PATTERN PREF THRU SESS-TARGET PORT 100 voip up up 1... 1 syst ipv4:10.10.10.2 101 voip up up 1... 2 syst ipv4:10.10.10.3 200 pots up up 0 0 1/0/0 201 pots up up 0 0 1/0/1 2600GW# |
上記の show コマンドでは、VoIP ダイヤル ピア 100 と 101 で Administrative と Operational ステートが up になっていることが示されています。
ダイヤル ピア 100 の優先度は 1 で、Cisco CallManager 10.10.10.2 をポイントしています。
ダイヤル ピア 101 の優先度は 2 で、Cisco CallManager 10.10.10.3 をポイントしています。
注: プライマリの Cisco CallManager サーバで 3 秒のタイムアウト以内にコールが受け付けられないと、初期コール セットアップがセカンダリの Cisco CallManager に切り替わります。 ISDN Q.931 Call Progress タイマーが、この短時間の切り替わり中に時間切れになることはありません。
特定の show コマンドは、Output Interpreter Tool(登録ユーザ専用)によってサポートされています。このツールを使用すると、show コマンド出力の分析を表示できます。
現在のところ、この設定に関する特定のトラブルシューティング情報はありません。