シミュレーションの概要

Cisco Crosswork Planning のネットワーク シミュレーションでは、特定のトラフィックデマンド、ネットワークトポロジ、設定、および状態に基づいて、ネットワーク全体のデマンドルーティングとトラフィック分布が計算されます。シミュレーションは、プランニング、トラフィック エンジニアリング、ワーストケースの障害分析といった他のほとんどのツールの基盤となる Cisco Crosswork Planning の基本機能です。IGP、MPLS RSVP-TE、BGP、QoS、VPN、マルチキャストなど、多数のプロトコルおよびモデルがサポートされています。

この章では、Cisco Crosswork Planning のシミュレーションの一般的な機能に焦点を合わせて説明します。個々のプロトコルおよびモデルについては、それぞれの章で説明します。

ここでは、次の内容について説明します。

ネットワーク シミュレーションのユースケース

ネットワーク シミュレーションで実行できることの一部を、次に示します。

  • what-if 分析:ネットワークモデルのいずれかの側面を変更した場合に何が起こるのかを調べることができます。次に例を示します。

    • リンクまたはノードに障害が発生する何が起こるのか。

    • メトリックを変更すると何が起こるのか。

    • トポロジを変更すると何が起こるのか。

    詳細については、what-If 分析の実行 を参照してください。

  • 復元力分析を使用したキャパシティプランニング:ノード、SRLG、LAG、またはサイトで障害が発生した場合に何が起こるのかをシミュレートできます。Cisco Crosswork Planning には、このプロセスを自動化して分析を提供するシミュレーション分析ツールがあります。ツールを実行すると、「ワーストケース」のシナリオを確認でき、輻輳のリスクが最も高いエリアが強調表示されます。さらに、ワーストケースを引き起こす障害の詳細情報を示す [障害影響(Failure impact)] ビューも表示されます。詳細については、ワーストケースの障害による影響の評価 を参照してください。

  • キャパシティプランニングと予測Cisco Crosswork Planning を使用すると、1 つのデマンドまたは一連のデマンドに増加のパーセンテージを適用して、その将来の増加を予測できます。詳細については、トラフィック増加の影響の評価 を参照してください。

自動再シミュレーション

デフォルトでは、新しく開いたプランファイルの自動再シミュレーションは無効になっています。自動再シミュレーションをデフォルトで有効になるように設定するには、右上隅にある をクリックし、[自動再シミュレーション(Auto-resimulate)] チェックボックスをオンにします。この設定を更新すると、特定のプランファイルに適用されます。この特定のファイルを開くたびに、同じ設定が使用されます。

図 1. 自動再シミュレーションの設定

再シミュレーションが発生する可能性のある変更のタイプは、通常、ネットワーク内のルーティングに影響する変更です。

  • トポロジの変更(オブジェクトの追加や削除、明示的なパスの変更など)

  • オブジェクトの状態の変更(オブジェクトでの障害発生、オブジェクトの非アクティブ化など)

  • 多数のプロパティの変更(メトリック、キャパシティ、遅延など)

さらに、現在のシミュレーションに影響を与えたり、それを無効にする変更がプランファイルに加えられた場合は、再シミュレーションを手動でトリガーできます。これを行うには、[ネットワーク設計(Network Design)] ページで アイコンをクリックします。

プランオブジェクトの状態

オブジェクトの状態は、シミュレーションに影響し、オブジェクトが動作可能かどうかを決定します。

  • [障害状態(Failed State)]:オブジェクトに障害が発生しているかどうかを示します。

  • [アクティブ状態(Active State)]:オブジェクトが、シミュレートされたネットワークで使用できるかどうかを示します。たとえば、オブジェクトが、管理目的でダウンしているために使用できない場合があります。

  • [動作状態(Operational State)]:オブジェクトが動作可能かどうかを示します。たとえば、障害が発生しているため、非アクティブであるため、または依存する他のオブジェクトが動作していないために、オブジェクトが動作不能になることがあります。

テーブルの [障害(Failed)] 列と [アクティブ(Active)] 列には、ステータスが視覚的に表示されます。同様に、[動作(Operational)] 列を表示して、計算された動作状態を確認できます。各列で、「true」はオブジェクトがその状態にあることを意味し、「false」はそうでないことを意味します。[インターフェイス(Interfaces)] テーブルの [アクティブ状態(Active state)] の「true」または「false」には、関連する回線が反映されていることに注意してください。プロットでは、これらの状態がグラフィカルな表現(赤色の円内に白色のバツ印または下矢印)で示されます。

[アクティブ(Active)]、[障害(Failed)]、および [動作(Operational)] 列は、次のオブジェクトに関して使用できます。

  • 回線

  • ノード

  • サイト

  • ポート

  • ポート回線

  • SRLG

  • 外部エンドポイントメンバー

障害状態

[シミュレートされたトラフィック(Simulated traffic)] ビューで障害の影響を確認する最も簡単な方法は、デマンドを設定してからオブジェクトに障害を発生させることです。結果としてトラフィックが増加した場所がプロットにすぐに表示され(障害が発生した回線)、[インターフェイス(Interfaces)] テーブルの [シミュレートされた使用率(Util sim)] 列にトラフィックの変化が反映されます。その後、デマンドは障害を回避して再ルーティングされます(障害が発生した回線を回避したデマンドの再ルーティング)。

デマンドが障害を回避して再ルーティングされないように指定するには、デマンドの [編集(Edit)] ウィンドウで [再ルーティング可能(Reroutable)] チェックボックスをオフにします。これは、インターフェイスに L2 トラフィックを含める方法として使用できます。たとえば、L2 トラフィックを表すために、インターフェイスを介して 1 ホップの再ルーティング不可能なデマンドを構築できます。その他の再ルーティング可能なデマンドは、通常どおりインターフェイスを介して構築できます。インターフェイスに障害が発生すると、L2 トラフィックが削除され、L3 トラフィックが再ルーティングされます。

障害を発生させるインターフェイスを選択すると、実際には、関連する回線で障害が発生します。障害を発生させることができるオブジェクトの完全なリストについては、「状態」に記載されているリストを参照してください。

図 2. 障害が発生した回線
図 3. 障害が発生した回線を回避したデマンドの再ルーティング

オブジェクトの障害化と回復

障害を発生させることができるオブジェクトの完全なリストについては、「状態」に記載されているリストを参照してください。

オブジェクトに障害を発生させたり回復したりするには、次の手順を実行します。

手順

ステップ 1

オブジェクトをそれぞれのテーブルから選択します。

ステップ 2

[アクション(Actions)] 列で、 > [障害化(Fail)] オプションの順にクリックします。

ネットワークプロットでは、障害が発生したオブジェクトに赤色のバツ印のアイコンが付きます(障害が発生した回線などを参照)。

ステップ 3

障害が発生すると、メニューオプションが > [回復(Recover)] に変更されます。このオプションを使用して、障害が発生したオブジェクトを回復します。


SRLG 内の回線の保護

回線を、SRLG 障害および SRLG ワーストケース分析に含まれないように保護できますが、動作には次のような違いが生じます。

  • 前の手順で説明したように SRLG に個別に障害を発生させた場合、これらの回線には障害が発生しません。ただし、回線自体に障害を発生させると、障害が発生します。

  • これらの回線は、SRLG に含まれているかどうかに関係なく、シミュレーション分析に含まれないように保護されます。

この設定は、FRR SRLG のルーティング方法には影響しないことに注意してください。FRR SRLG については、RSVP-TE ルーティングの最適化を参照してください。

手順

ステップ 1

プランファイルを開きます(プランファイルを開くを参照)。[ネットワーク設計(Network Design)] ページに表示されます。

ステップ 2

回線の [保護(Protected)] プロパティを設定します。

  1. 右側にある [ネットワークサマリー(Network Summary)] パネルで、[回線(Circuits)] テーブルから 1 つ以上の回線を選択します。

  2. [Edit] アイコン をクリックします。

    (注)  

     

    単一の回線を編集している場合は、[アクション(Actions)] 列の下にある > [編集(Edit)] オプションを使用することもできます。

  3. [保護(Protected)] チェックボックスをオンにします。これは、[状態(State)] フィールドのオプションとして提供されます。

  4. [保存(Save)] をクリックします。

ステップ 3

SRLG に含まれる回線を保護するための [ネットワークオプション(Network options)] プロパティを設定します。

  1. ツールバーで [ネットワークオプション(Network options)] をクリックするか、[アクション(Actions)] > [編集(Edit)] > [ネットワークオプション(Network options)] の順に選択します。

  2. [Simulation] タブをクリックします。

  3. [IGP プロセス全体でのルートの再配布(Redistribute routes across IGP process)] セクションで、[保護された回線を SRLG 障害から除外(Exclude protected circuits from SRLG failure)] チェックボックスをオンにします。

  4. [保存(Save)] をクリックします。


アクティブ状態

アクティブ/非アクティブ状態は、オブジェクトが、測定されたトラフィックまたはシミュレートされたトラフィックの計算に使用できるかどうかを識別します。オブジェクトは、次の理由で非アクティブになる場合があります。

  • 管理目的でダウンしている。

  • プレースホルダである。たとえば、オブジェクトのインストールをプランニングしており、そのオブジェクトをネットワークプロットに表示する場合など。

  • コピーされたプランには存在するが、検出された元のプランには存在していなかった。

1 つまたは複数のオブジェクトのアクティブ状態を同時に変更できます。インターフェイスのアクティブ状態を変更すると、実際には、関連する回線が変更されます。

[アクティブ(Active)] または [非アクティブ(Inactive)] に設定できるオブジェクトの完全なリストは、次のとおりです。

  • 回線(Circuits)

  • ノード

  • サイト

  • ポート

  • ポート回線

  • SRLG

  • 外部エンドポイントメンバー

  • デマンド

  • LSP

  • LSP パス

障害と同様に、オブジェクトをアクティブから非アクティブに変更すると、デマンドのルーティング方法にすぐに影響し、[インターフェイス(Interfaces)] テーブルの [シミュレートされた使用率(Util sim)] 列に影響します(非アクティブ回線)。

図 4. 非アクティブ回線

アクティブまたは非アクティブ状態の設定

状態を [アクティブ(Active)] または [非アクティブ(Inactive)] に設定できるオブジェクトの完全なリストについては、「アクティブ状態」に記載されているリストを参照してください。

オブジェクトの状態を [アクティブ(Active)] に設定するには、次の手順を実行します。

手順

ステップ 1

プランファイルを開きます(プランファイルを開くを参照)。[ネットワーク設計(Network Design)] ページに表示されます。

ステップ 2

右側にある [ネットワークサマリー(Network Summary)] パネルで、1 つ以上の目的のオブジェクトを、それぞれのテーブルから選択します。

ステップ 3

[Edit] アイコン をクリックします。

(注)  

 

単一のオブジェクトを編集している場合は、[アクション(Actions)] 列の下にある > [編集(Edit)] オプションを使用することもできます。

ステップ 4

[状態(State)] フィールドで、[アクティブ(Active)] チェックボックスをオンまたはオフに切り替えます。

チェックマークがある場合は、オブジェクトがアクティブであることを意味します。非アクティブにするには、このチェックボックスをオフにします。

ステップ 5

[保存(Save)] をクリックします。


動作状態

動作状態により、オブジェクトが機能しているかどうかが識別されます。動作状態は設定できず、障害状態とアクティブ状態に基づいて自動的に計算されます。

  • 障害が発生したオブジェクトまたは非アクティブなオブジェクトは、動作上ダウンしています。

  • オブジェクトが機能するために他のオブジェクトに依存している場合、その動作状態は、それらのオブジェクトの状態を反映します。

障害が発生したか非アクティブになったオブジェクト

動作上ダウンするオブジェクト

ノード

障害が発生したノードに接続されている回線

サイト

障害が発生したサイト内のサイト、ノード、および回線

SRLG

障害が発生した SRLG 内のオブジェクト

ポート

障害が発生したポートを含むポート回線

シミュレートされたキャパシティ

[キャパシティ(Capacity)] 列には、インターフェイス、回線、ポート、およびポート回線の設定済み物理キャパシティが表示されます。各回線、ポート、およびポート回線には、[編集(Edit)] ウィンドウの [キャパシティ(Capacity)] フィールドで設定できる物理キャパシティがあります。インターフェイスには、[設定済みキャパシティ(Configured capacity)] フィールドで設定できる設定可能キャパシティがあります。 これらのプロパティから、オブジェクトごとにシミュレートされたキャパシティ(Capacity sim)が導出されます。

[シミュレートされたキャパシティ(Capacity sim)] 列は、ネットワークの状態(キャパシティを減少させる障害が含まれる場合がある)に基づいて計算されたオブジェクトのキャパシティです。[インターフェイス(Interfaces)]、[回線(Circuits)]、および [インターフェイスキュー(Interface Queues)] テーブルに示されるすべての使用率の数値は、この [シミュレートされたキャパシティ(Capacity sim)] の値に基づいて計算されます。[シミュレートされたキャパシティ(Capacity sim)] の値を参照する場合は、その計算に関して注意が必要ないくつかのルールがあります。

  • 回線のキャパシティが指定されている場合は、それが回線の [シミュレートされたキャパシティ(Capacity sim)] になり、他のすべてのキャパシティ(インターフェイスおよび構成ポートのキャパシティ)は無視されます。回線キャパシティ(インターフェイス キャパシティではなく)を指定することは、既存のキャパシティを変更する最も簡単な方法です。これは、構築プランニングなどに役立ちます。

  • 回線にキャパシティがない場合、その [シミュレートされたキャパシティ(Capacity sim)] は、その構成インターフェイスの最小キャパシティ値です。インターフェイス キャパシティは、関連付けられたポートのキャパシティ値の合計です。インターフェイスにポートがない場合、またはポートにキャパシティがない場合は、インターフェイスの [設定済みキャパシティ(Configured capacity)] プロパティと同じになります。


    (注)  


    インターフェイスの [編集(Edit)] ウィンドウのフィールドは [設定済みキャパシティ(Configured capacity)] であり、[インターフェイス(Interfaces)] テーブルの列名は [キャパシティ(Capacity)] です。


  • 2 つのポートがポート回線によって明示的に接続されている場合、ポート回線の [シミュレートされたキャパシティ(Capacity sim)] は、それら 3 つの最小キャパシティに設定されます。これにより、接続の各側のキャパシティが効果的にネゴシエートされます。

  • LAG インターフェイスでは、構成 LAG メンバーのいずれかが動作上ダウンしている場合、インターフェイスの [シミュレートされたキャパシティ(Capacity sim)] 列には、ダウンしているすべての LAG メンバーの総キャパシティによって減らされた値が表示されます。たとえば、4 ポートの 4000 Mbps の LAG で 1000 Mbps のポートが動作上ダウンしている場合、その LAG インターフェイスのシミュレートされたキャパシティは 3000 Mbps になります。


    (注)  


    [シミュレートされたキャパシティ(Capacity sim)] の計算でポートのペアが考慮される場合、考慮されるには両方が動作可能である必要があります。

シミュレートされた遅延

[遅延(Delay)] は、[回線の編集(Edit Circuit)] ウィンドウで設定できるプロパティです。

図 5. [回線の編集(Edit Circuit)] ウィンドウ

L3 回線遅延を使用する、Cisco Crosswork Planning のすべての遅延計算(メトリック最適化など)では、[シミュレートされた遅延(Delay sim)] の値が使用されます。

[回線(Circuits)] テーブルの列

説明

遅延

回線でのミリ秒(ms)単位の一方向伝送遅延。

[シミュレートされた遅延(Delay sim)]

(派生)回線の [遅延(Delay)] の値が入力されている場合は、[シミュレートされた遅延(Delay sim)] 列にコピーされます。