保護スイッチング モジュール
この章では、Cisco ONS 15454 Dense Wavelength Division Multiplexing(DWDM; 高密度波長分割多重)ネットワークで使用される Protection Switching Module(PSM; 保護スイッチング モジュール)カードについて説明します。装着およびカードのターンアップ手順については、『Cisco ONS 15454 DWDM Procedure Guide』を参照してください。カードの安全性と適合性に関する情報については、マニュアル『Cisco Optical Transport Products Safety and Compliance Information』を参照してください。
(注) 特に指定のない限り、「ONS 15454」は、ANSI と ETSI 両方のシェルフ アセンブリを指します。
この章の内容は、次のとおりです。
• PSM カードの概要
• 主な特徴
• PSM のブロック図
• PSM 前面プレートのポート
• PSM カードレベル インジケータ
• PSM 双方向スイッチング
7.1 PSM カードの概要
PSM カードは、スプリッタ保護機能を実行します。PSM カードの送信(TX)セクション(図 7-1 を参照)では、共通受信ポートで受け取った信号はハードウェア スプリッタにより使用中の送信ポートと保護送信ポートの両方に複製されます。PSM カードの受信(RX)セクション(図 7-1 を参照)では、スイッチは、2 つの入力信号(使用中および保護受信ポート)の 1 つを共通送信ポート経由で送信する信号として選択するために提供されています。
PSM カードは複数の保護構成をサポートしています。
• チャネル保護:PSM COM ポートは TXP/MXP トランク ポートに接続されます。
• ライン(またはパス)保護:PSM の使用中(W)ポートと保護(P)ポートは、外部ラインに直接接続されます。
• 多重化セクション保護:PSM は、MUX/DMX ステージと増幅ステージの間に取り付けられます。
• スタンドアロン:PSM を任意のスロットに装着して、すべてのノード構成をサポートできます。
PSM カードは、任意のノードのスロット 1 ~ 6 と 12 ~ 17 に装着できるシングルスロット カードです。PSM カードの前面パネルには 6 つの LC-PC-II 光コネクタがあります。チャネル保護構成では、PSM カードをピアの TXP/MXP カードとは異なるシェルフに装着できます。
(注) Cisco Transport Planner が設計したデフォルトのレイアウトを使用することを強く推奨します。このレイアウトでは、PSM カードとピアの TXP/MXP カードをできるだけ近くに配置して、ケーブル管理を簡略化します。
PSM カードに対してサポートされているノード構成の詳細については、「PSM カードでサポートされるノード構成」を参照してください。
PSM カードに対してサポートされているネットワーク トポロジの詳細については、「PSM カードのネットワーク トポロジ」を参照してください。
7.2 主な特徴
PSM カードの機能には次の機能があります。
• 光スペクトルの C バンド(1529 ~ 1562.5 nm の波長)と L バンド(1570.5 ~ 1604 nm の波長)で動作します。
• 双方向の非リバーティブ保護スキームを実装します。双方向スイッチングの詳細については、「PSM 双方向スイッチング」を参照してください。
• PSM カードがプロビジョニングされている場合、スプリッタ保護グループの自動作成をサポートします。
• ITU-T G.873.1 に基づくスイッチング優先度をサポートします。
• 設定可能しきい値によるパフォーマンス モニタリングとアラーム処理をサポートします。
• ファイバ切断時に使用される安全メカニズム Automatic Laser Shutdown(ALS; 自動レーザー遮断)をサポートします。ALS は回線保護設定の場合のみ適用可能です。カードの ALS プロビジョニングの詳細については、『 Cisco ONS 15454 DWDM Procedure Guide 』を参照してください。ネットワークで ALS を実装するようにカードを使用する方法については、「ネットワークのオプティカル セーフティ」を参照してください。
7.3 PSM のブロック図
図 7-1 に、PSM カードの簡略化されたブロック図を示します。
図 7-1 PSM のブロック図
7.4 PSM 前面プレートのポート
PSM カードの前面プレートには、6 つの光ポートがあります。
• COM RX(着信)は入力信号ポートです。
• COM TX(送信)は出力信号ポートです。
• W-RX は使用中の入力信号ポート(受信セクション)です。
• W-TX は使用中の出力信号ポート(送信セクション)です。
• P-RX は保護入力信号ポート(受信セクション)です。
• P-TX は、保護出力信号ポート(送信セクション)です。
すべてのポートには、光パワーおよび他の関連しきい値をモニタするフォトダイオードがあります。COM-RX ポートには、光パワーをモニタする仮想フォトダイオード(ポートの光パワーをファームウェアで計算)があります。W-RX、P-RX、W-TX、および P-TX ポートは、Variable Optical Attenuator(VOA; 可変光減衰器)によって提供される光電源調整機能を備えています。PSM カード内に搭載されているすべての VOA は、制御減衰モードで動作します。
図 7-2 に、PSM カードの前面プレートを示します。
図 7-2 PSM カードの前面プレート
7.5 PSM カードレベル インジケータ
表 7-1 に、PSM カード上の 3 つのカードレベル LED インジケータを示します。
表 7-1 PSM カードレベル インジケータ
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レッドの FAIL LED |
レッドの FAIL LED は、カードのプロセッサの準備ができていないか、内部ハードウェア障害が発生していることを示します。レッドの FAIL LED が消えない場合は、カードを交換してください。 |
グリーンの ACT LED |
グリーンの ACT LED は、PSM がトラフィックを伝送中であるか、またはトラフィックを伝送する準備ができていることを示します。 |
オレンジの SF LED |
オレンジの SF LED は、カードの 1 つまたは複数のポートで LOS などの信号障害または信号状態が発生していることを示します。このオレンジの SF LED は、送信および受信用のファイバが正しく接続されていない場合にも点灯します。ファイバを正しく接続すると、ライトは消えます。 |
7.6 PSM 双方向スイッチング
VOA は、PSM カード内でハードウェア スプリッタの後に装備されます。VOA は、2 枚のピア PSM カードが関連する保護構成で、1 つファイバ カットがある場合に、双方向スイッチングを実装します。図 7-3 に、PSM カードの双方向スイッチング機能を説明するサンプル構成を示します。
図 7-3 PSM 双方向スイッチング
この例では、 図 7-3 に示すようにステーション A からステーション B までの使用中のパスにファイバ カットがあります。ファイバ カットの結果、ステーション B の W-RX ポートで LOS アラームが発生し、トラフィックは即座に P-RX ポートに切り替えられます。同時に、ステーション B は W-TX ポートでの伝送も停止します(約 25 マイクロ秒間)。その結果、ステーション A の W-RX ポートで LOS アラームが発生します。このため、ステーション A でもトラフィックが P-RX ポートに切り替えられます。このようにして、PSM は、2 つのステーション間でデータを交換することなく、双方向スイッチングを行います。
2 つのステーションは、シグナリング プロトコル(オーバーヘッド バイト)を使用して通信していないので、PSM カード上の Manual または Force 保護スイッチは、トラフィック ヒットを作成することで実装されます。たとえば、ステーション A で Manual または Force 保護スイッチを実行するとします。アクティブ パスの TX VOA は、25 ミリ秒間 Automatic VOA Shutdown(AVS)に設定されます。このため、ステーション B は、メンテナンス動作と実際の障害の区別がつかないため、トラフィックをもう 1 つのパスに切り替えます。25 ミリ秒後、ステーション A の VOA が自動的にリセットされます。しかし、PSM カードで非リバーティブ スイッチング保護スキームが使用されているため、ステーション B が自力で元に戻ることはありません。
スイッチングを効果的に実装するには、両方のステーションで Lockout コマンドと Force コマンドを実行する必要があります。両方のステーションでこれらのコマンドを実行しない場合、遠端と近端の PSM が正しく配置されないことがあります。不正な配置でパスが回復されると、トラフィックが自動的に回復しない可能性があります。トラフィックを回復する Force 保護スイッチを実行する必要があります。
(注) アクティブ パスが使用中のパスの場合、回線保護構成の PSM カードで 2 重の障害(使用中のパスと保護パスの両方がファイバ カットのためダウン)が発生した場合、パスを修復する順序が重要です。使用中のパスを先に修復すると、トラフィックは自動的に回復します。しかし、保護パスを先に修復すると、トラフィックは自動的に回復しません。保護パスでトラフィックを回復するように Force 保護スイッチを実行する必要があります。