WAN モニタリング

この章は、次の項で構成されています。

WANMon について

WANMon は、次の製品とインターフェイスの WAN リンクのリカバリ要件に対応する柔軟なソリューションです。

  • 物理ネットワーク:4G LTE とイーサネット(WAN ポート)

  • 仮想リンク:非暗号マップベースの IPSec トンネル(レガシーまたは FlexVPN)。つまり、インターフェイスとして設定する任意の IPSec トンネルです。

WANMon を有効にして、WAN リンクをモニタし、リンク障害トリガーの受信時にリンクリカバリアクションを開始します。

組み込みの復旧動作

次に、リンクタイプに固有の組み込みリカバリプロセスの 3 つのレベルを示します。

リンクタイプ リカバリ アクション
レベル 0(即時) レベル 1(アクティブ) レベル 2(最終手段)

4G LTE

インターフェイスをクリアしてから shut/no-shut

モジュールのリロード

システム リロード

イーサネット

インターフェイスをクリアしてから shut/no-shut

アクションなし

システム リロード

トンネル

Shut/no-shut

アクションなし

システム リロード

各レベルには、実行される組み込みリカバリアクションに基づく 2 つの時間ベースのしきい値があります。次に、各レベルのデフォルト設定を示します。

  • threshold は、リンク障害トリガーを受信してから、指定されたレベルで設定されたリカバリアクションを開始するまでの待機時間です(分単位)。

  • mintime は、リンクがダウンしたままの場合にリカバリアクションを実行する頻度です。

次に、組み込み値を示します。

レベル

threshold

mintime

説明

レベル 0

10 分

10 分

リンクがダウンしてから 10 分後にレベル 0 のアクションをトリガーします。10 分以下の間隔で繰り返します。

レベル 1

60 分

60 分

リンクがダウンしてから 10 分後にレベル 1 のアクションをトリガーします。60 分以下の間隔で繰り返します。

レベル 2

480 分

60 分

リンクがダウンした 480 分後にレベル 2 のアクションをトリガーします。60 分以下の間隔で繰り返します。


(注)  


しきい値を 0 に指定すると、そのレベルのリカバリアクションは実行されません。これを使用すると、他の WAN リンクが動作している可能性がある中でリンク障害トリガーを受信したときに、システムのリロード(組み込みのレベル 2 のリカバリアクション)を回避できます。

前提条件

WANMon モジュールが使用可能であることを確認します。WANMon モジュールは、tm_w3316anmon.tcl ポリシーファイルとして IOS-XE イメージに含まれています。

注意事項と制約事項

  • WANMon は、セルラーインターフェイスに必要な IP アドレスチェック(ユーザ設定なし)を自動的に実行します。

  • 他のすべてのインターフェイスでは、WANMon は IP アドレスチェックを実行しません。

  • WANMon は、リンクリセッタアプレットがモニタするアプリケーションイベントを生成することによって、ユーザ指定のアクションを間接的にトリガーします。

  • 本稼働中のネットワークでは、各コマンドによって起こる可能性がある影響を十分確認してください。

WANMon の設定

ルータで WANMon を有効にして特定のインターフェイスに WAMMon サポートを割り当てることができます。必要に応じて、組み込みリカバリアクションのオーバーライド、カスタムリカバリリンクの定義、およびトラックオブジェクト値を設定して IP アドレスチェックを無効にするためのイベントマネージャの環境ポリシーの定義を実行できます。デフォルトでは、WANMon は無効になっています。

手順

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

event manager policy tm_wanmon.tcl authorization bypass

WANMon リンクのリカバリモジュールを有効にします。

このポリシーによって呼び出される CLI の許可を回避するには、authorization bypass を使用します。

ステップ 2

event manager environment wanmon_if_list <instance> {interface name { ipsla <instance>}}

WAN のインターフェイスに WANMon を設定し、これがインターフェイス コンフィギュレーション コマンドであることを示します。

(注)  

 
プレフィックス wanmon_if_list を持つ環境変数でインターフェイス設定を構成します。

インスタンスを指定することで、複数のインターフェイスを使用できます。

必ず、完全なインターフェイス名(cellular0/1/0 または cellular0/3/0)を指定します。

必要に応じて、IP SLA icmp-echo トリガーを設定できます。インスタンスを指定することで、複数の IP SLA トリガー を使用できます。

(注)  

 
WANMon は SLA ID のステータスのみを確認します。icmp-echo が最も一般的ですが、必要に応じて、他のタイプの SLA プローブ(udp-echo など)も代わりに使用できます。

ステップ 3

event manager environment wanmon_if_listx {interface name { recovery Level0 {Level1 } Level2}}

(任意)組み込みしきい値をオーバーライドします。

ステップ 4

publish-event sub-system 798 type 2000 arg1 <interface name> arg2 <level >

(任意)リンクリセットアプレットを使用してカスタムリカバリアクションを設定します。

<interface > は完全なインターフェイス名です(cellular0/1/0 や cellular0/3/0 など)。

<level > は、目的のリンクリカバリアクションに一致するように、0、1、または 2 になります。

ステップ 5

{stub <track-stub-id > }

(任意)イベントマネージャの環境ポリシーを使用してトラックオブジェクト値を設定できます。WANMon は、外部アプレットがスタブオブジェクトを追跡できるように、リンク状態を反映するための track-stub-object 値を設定できます。

ステップ 6

event manager environment wanmon_if_listx {<interface name > { checkip <instance >}}

(任意)IP アドレスチェックを無効にします。

次のタスク


event manager policy tm_wanmon.tcl authorization bypass

次に、セルラーおよびイーサネットのインターフェイスを設定するイベントマネージャコマンドの例を示します。


event manager environment wanmon_if_list1 {cellular0/1/0 {ipsla 1}} 
event manager environment wanmon_if_list2 {GigabitEthernet0/0/0 {ipsla 2}}

この例では、カスタムリカバリのしきい値を設定します。


event manager environment wanmon_if_list {cellular0/1/0 {recovery 20 {90 75} 600}

引数の説明

  • レベル 0 のしきい値は、リンク障害トリガーの 20 分後に設定されます。レベル 0 のリカバリアクションは、セルラーインターフェイスに対して実行されます。10 分以下の間隔(デフォルト)で無期限に繰り返します。

  • レベル 1 のしきい値は 90 分に設定されます。レベル 1 のリカバリアクションは、セルラーインターフェイスに対して実行されます。75 分以下の間隔で繰り返します。

  • レベル 2 のしきい値は 600 分(10 時間)に設定されます。

次は、track-stub-object 値を 21 に設定します。


conf t
track 21 stub-object
event manager environment wanmon_if_list {cellular0/1/0 {ipsla 1} {stub 21}

WANMon 設定の確認

WANMon 設定を確認するには、次の手順を実行します。

手順

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

show event manager policy registered

WAN モニタリングポリシーを表示します。

ステップ 2

show event manager environment

インターフェイスの設定時に設定されたインターフェイス環境変数を表示します。

次のタスク


show event manager policy registered
1    script    system  multiple   Off   Thu Jan 16 18:44:29 2014  tm_wanmon.tcl

show event manager environment
1 wanmon_if_list   {cell0/1/0 {ipsla 1}}

設定例

ここでは、次の例を示します。

WANMon セルラーインターフェイスの設定例


track 1 ip sla 1
ip sla 1
 icmp-echo 172.27.166.250
 timeout 6000
 frequency 300
ip sla schedule 1 life forever start-time now
event manager environment wanmon_if_list {cellular0/1/0 {ipsla 1}}
event manager policy tm_wanmon.tcl authorization bypass

複数 WAN リンクのモニタリング例


track 1 ip sla 1
track 21 stub-object
ip sla 1
 icmp-echo 172.27.166.250
 timeout 6000
 frequency 300
ip sla schedule 1 life forever start-time now
track 2 ip sla 2
track 22 stub-object
ip sla 2
 icmp-echo 10.27.16.25
 timeout 6000
 frequency 300
ip sla schedule 2 life forever start-time now

event manager environment wanmon_if_list1 {cellular0/1/0 {ipsla 1} {stub 21}}

event manager policy tm_wanmon.tcl authorization bypass