次の項では、拡張ロケーション コール アドミッション制御のアーキテクチャに関する情報を提供します。
モデルベースのコール アドミッション制御
拡張ロケーション コール アドミッション制御(CAC)はモデル ベースの CAC メカニズムです。 管理者は、ネットワークのモデルを作成して、ネットワーク インフラストラクチャによるメディアの処理方法を決定します。
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ネットワークのモデルがより正確で詳細であれば、ネットワーク内部の帯域幅の管理と輻輳の回避がより効率的になります。 ただし、モデルでは一時的なネットワークの障害状態を考慮できません。
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管理者は Cisco Unified Communications Manager インターフェイスを通して、ネットワーク モデルに基づいて拡張ロケーション CAC メカニズムを設定します。
管理者がモデルを作成してそれを Cisco Unified Communications Manager データベースに入力したら、ロケーション帯域幅マネージャ(LBM)がすべての発信ロケーションと終端ロケーション間の有効経路を計算して、その経路に沿った各リンクとロケーションから帯域幅を削減します。
2 つのロケーション間でコールが承認されると、LBM がコール中にその経路に沿った各リンクとロケーションから帯域幅を削減(予約)します。 この帯域幅削減は対称的(双方向)に行われます。 たとえば、G.711 オーディオ コールの場合は、80 kb の帯域幅がコール経路内の各リンクとロケーションに割り当てられたオーディオ割り当てから削減されます。 コールが終端されると、LBM が帯域幅削減を復元します。
管理者は、ロケーション間の承認だけでなく、ロケーション間コールの承認も制限したい場合に、帯域幅割り当てをロケーションだけでなく、リンクにも割り当てることができます。
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デフォルトで、ロケーション間の帯域幅割り当ては無制限です。
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ロケーション帯域幅マネージャ
ロケーション帯域幅マネージャ(LBM)はすべての Cisco Unified Communications Manager ノード上、あるいはクラスタ内で選択されたごく一部の Cisco Unified Communications Manager ノード上に置いて動作させることが可能です。 LBM は、機能サービスであり、サービスアビリティ設定ページから起動/停止できます。
ロケーション帯域幅マネージャの主な機能を以下に示します。
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モデル形成と経路決定
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クラスタ内の他の LBM への、または、クラスタ間でのモデルの複製
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Unified CM からの帯域幅要求の提供
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クラスタ内の他の LBM への、または、クラスタ間での帯域幅削減の複製
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要求に関する設定済み情報と動的情報のサービスアビリティへの提供
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ロケーション RTMT カウンタの更新
LBM サービスが起動すると、ローカル データベースから設定済みのロケーション情報が読み取られます。 これには、設定済みのロケーション、それらのロケーション内のオーディオ、ビデオ、およびイマーシブ ビデオの容量、特定のロケーションから他のロケーションへのリンク、それらのリンクに割り当てられた重み付け、およびそれらのリンク上でのオーディオ、ビデオ、およびイマーシブ ビデオの容量が含まれます。 LBM サービスがこれらの値を使用してローカル モデルを作成します。 クラスタ内の他の LBM は、データベース内の同じデータにアクセスできるため、起動時に同じローカル モデルを作成します。 これで、LBM は残りのクラスタと同期化され、サービスの提供準備が整います。
各 Cisco Callmanager サービスは、LBM グループで指定されているように、クラスタ内の LBM サービスと通信します。 デフォルトで、各 Cisco Callmanager サービスはクラスタ内のローカル LBM と通信します。
各 LBM サービスは、そのクラスタ内の他の LBM と通信するだけでなく、他のクラスタ内の LBM サービスとも LBM ハブを通して通信できます。 クラスタ内の LBM サービスは完全にメッシュ化されています。
LBM サービスは、接続元と接続先間の可能性のある各経路に対応するリンクの重み付けを追加することにより、接続元ロケーションから接続先ロケーションへの有効経路を計算します。 最小累積重み付けの経路が有効経路として指定されます。 同じ重み付けの経路が複数存在する場合は、LBM が使用すべき経路を選択します。 接続元ロケーションと接続先ロケーションが同じすべてのコールが同じ経路を使用します。
下の図は、Hub_none から Loc_14 への有効経路を計算する例を示しています。
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Hub_none から Loc_12 を経由して Loc_14 までの経路は重み付けの合計が 20 の有効経路です。
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Hub_none から Loc_14 までの経路は重み付けが 20 を超える 60 のため、有効経路ではありません。
図 3. ロケーション CAC 有効予約経路の決定
重要な考慮事項の一部を以下に示します。
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管理者が LBM グループ設定を使用することで、Cisco Unified Communications Manager から通信可能な LBM サービスを選択できます。
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すべての Cisco Unified Communications Manager ノード上で LBM サービスを実行する必要はありません。
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管理者は、帯域幅削減のネットワーク遅延を最小化するための考慮事項に基づいて LBM グループを設定できます。
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LBM グループは、ネットワーク障害時の CAC メカニズムの可用性を維持するために LBM サービスの冗長性を提供できます。
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Cisco Unified Communications Manager が通信対象の LBM サービスを検索しようとする際は、次のように動作します。
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属している LBM グループの関連付けを尊重します。
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割り当てられた LBM グループが存在しない場合、または、空の LBM グループが割り当てられている場合、Cisco Unified Communications Manager はアクティブになっているローカル LBM を使用します。
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使用可能な LBM が存在しない場合は、Cisco Unified Communications Manager がサービス パラメータを使用してコールの処理方法を決定します。
LBM サービスを選択的にアクティブにして、LBM グループを設定する場合は、次の点に留意してください。
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コール処理サイトごとに 1 つ以上の LBM をアクティブにします。 スタンドアロン サーバ上での LBM のアクティブ化を検討します。
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分離データ センター配置の場合は、データ センターごとに 1 つ以上の LBM をアクティブにします。
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アクティブ サーバに対する影響を軽減するために、アクティブ サーバとスタンバイ サーバが存在するスタンバイ サーバ上での LBM のアクティブ化を検討します。
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使用可能なローカル LBM サービスに接続します。
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複数のサイトが存在するクラスタの場合は、データ センター内または最も近い地域サイト内の LBM サービスを選択します。
クラスタ間ロケーション コール アドミッション制御
クラスタ間のモデル ベースのロケーション CAC を使用した場合は、Cisco Unified Communications Manager クラスタごとに制御対象のローカル モデルが割り当てられます。 システム間複製メカニズムを通して、リモート システムから各モデルを抽出して内部メモリに保存することにより、企業ネットワーク内のシステムごとに、ローカル モデルが他のシステムに伝播され、企業ネットワーク全体のグローバル モデルが作成されます。 クラスタ間ロケーション CAC に参加している企業ネットワーク内の各システム内の LBM サービスがそのローカル メモリにグローバル モデルを保存します。
コールがクラスタを越えて発信された場合は、発信システムと終端システムがシグナリング プロトコル(SIP シグナリング プロトコルなど)を通して相互にロケーションとコール ID を交換し合います。 終端クラスタと発信クラスタは、グローバル ロケーション CAC モデルを使用してエンドツーエンドでローカルにロケーション CAC 帯域幅を予約してから、企業ネットワーク内の他のシステムに帯域幅予約を複製します。
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システム間帯域幅複製メッセージの量が膨大になる可能性があります。 企業ネットワーク内の複製がより効率的になるように注意深く LBM ハブを選択します。
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ローカル システムごとにグローバル モデルから帯域幅を予約して削除を複製するため、競合状態が発生する可能性があります。 競合状態が発生した場合は、帯域幅が削減されるコールを上回るコールが承認される可能性があります。
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ネットワークをモデル化する場合は、帯域幅が削減されるコールを上回るコールが承認される可能性を許可する保守的な帯域幅容量を前提とします。
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クラスタ間ロケーション コール アドミッション コール設定の考慮事項
ローカル クラスタとリモート クラスタ間のクラスタ間ロケーション CAC を設定する場合の考慮事項の一部を以下に示します。
クラスタ間ロケーション コール アドミッション制御のレプリケーション
拡張ロケーション CAC LBM 複製ネットワークは、モデル トポロジ、複数のクラスタ全体での帯域幅削減、およびクラスタ内での帯域幅削減を複製するために使用されます。 すべての LBM サービスがクラスタ内で完全に接続され、すべての LBM ハブがクラスタ間で完全に接続されます。 LBM ハブではない LBM サービスは、そのクラスタ内の LBM ハブを通してのみクラスタ間複製に参加します。
LBM ハブ グループは、LBM ハブがリモート クラスタ内の他の LBM ハブと通信するためのメカニズムを提供します。 このメカニズムにより、LBM ハブは他のすべての LBM ハブとの完全にメッシュ化された複製ネットワークを構築します。
ロケーション帯域幅マネージャ ハブ
ロケーション帯域幅マネージャ(LBM)ハブの説明を以下に示します。
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LBM ハブ グループが割り当てられた LBM サービスがハブになります。
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クラスタに複数の LBM ハブが含まれている場合は、IP アドレスが最も小さい LBM ハブが他のリモート クラスタへのメッセージの送信元として機能します。
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LBM ハブは、割り当てられたクラスタ ID ごとにリモート LBM ハブへのリンクを整理します。
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メッセージの送信元として機能する LBM ハブが、メッセージを送信する各クラスタの最初の LBM ハブを選択します。
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リモート クラスタからメッセージを受信する LBM ハブが、受信したメッセージをクラスタ内の他の LBM サービスに転送します。