Cisco CleanAir について
Cisco CleanAir は、共有ワイヤレス スペクトラムに関する問題の予防的な管理を目的に設計されたソリューションです。この機能を使用すると、共有スペクトラムの全ユーザを確認できます(ネイティブ デバイスと外部干渉源の両方)。また、この情報に基づいてネットワークが対処できるようにします。たとえば、干渉デバイスを手動で排除することや、システムによって自動的にチャネルを変更して干渉を受けないようにすることができます。CleanAir は、スペクトラム管理と無線周波数(RF)の可視性を提供します。
Cisco CleanAir システムは CleanAir 対応アクセス ポイントおよび Cisco Catalyst 9800 シリーズ ワイヤレス コントローラ で構成されます。アクセスポイントは工業、科学、医療用(ISM)帯域で動作するすべてのデバイスの情報を収集し、これらの情報を潜在的な干渉源として特定および評価してコントローラ に転送します。コントローラコントローラ は、アクセスポインを制御し、干渉デバイスを表示します。
ライセンス不要の帯域で動作している各デバイスについては、Cisco CleanAir はその種類、ワイヤレス ネットワークに与える影響の程度、取るべき対策を提示します。これによって RF がシンプルになり、管理者が RF のエキスパートである必要がなくなります。
ワイヤレス LAN システムは、ライセンス不要の 2.4 GHz および 5 GHz ISM 帯域で動作します。電子レンジやコードレス電話、そして Bluetooth デバイスなどの多くのデバイスもこれらの帯域で稼働するため、Wi-Fi の動作に悪影響を与える可能性があります。
Voice over Wireless や IEEE 802.11n 無線通信などの非常に高度な WLAN サービスの一部は、ISM 帯域を合法的に使用する他の機器からの干渉によって、重大な影響を受ける可能性があります。Cisco CleanAir 機能の統合により、この RF 干渉の問題に対処できます。
Cisco CleanAir 関連の用語
用語 | 説明 |
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AQI | 電波品質の指標。AQI は空気汚染物質に基づいた電波品質の指標です。AQI が 0 の場合は不良で、AQI が 85 より大きいと良好です。 |
AQR | 電波品質レポート。AQR には、特定されたすべての発生源からの干渉全体に関する情報(AQI で表される)や、最も重大な干渉カテゴリの概要が示されます。AQR は 15 分ごとにモビリティ コントローラに送信され、30 秒ごとに迅速モードで送信されます。 |
DC | デューティ サイクル。チャネルがデバイスで使用される時間の割合。 |
EDRRM | イベント駆動型 RRM。EDRRM は、緊急事態にあるアクセス ポイントが、正常な RRM 間隔をバイパスし、すぐにチャネルを変更できるようにします。 |
IDR | アクセスポイントがコントローラ に送信する干渉デバイス レポート。 |
ISI | 干渉の重大度指標。ISI は、干渉の重大度の指標です。 |
RSSI | 受信信号強度インジケータ。RSSI は受信した無線信号における電力の測定値です。アクセス ポイントはこの電力で干渉デバイスを認識します。 |
Cisco CleanAir のコンポーネント
Cisco CleanAir の基本的なアーキテクチャは、Cisco CleanAir 対応 AP およびdeviceで構成されます。

Cisco CleanAir テクノロジーを搭載したアクセス ポイントは、非 Wi-Fi 干渉源に関する情報を収集しそれを処理します。アクセスポイントは、電波品質レポート(AQR)および干渉デバイスレポート(IDR)を収集してコントローラ に送信します。
コントローラは CleanAir 対応のアクセス ポイントを制御および設定し、スペクトラム データを収集および処理します。コントローラは CleanAir の基本機能およびサービスを設定し、現在のスペクトラム情報を表示するローカル ユーザ インターフェイス(GUI および CLI)を提供します。また、コントローラは RRM TPC と DCM を使用して、干渉デバイスを検出、マージ、および軽減します。詳細については、「干渉デバイスのマージ」を参照してください。
Cisco CleanAir システムにおいて、deviceは次のような処理を実行します。
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アクセス ポイントにおける Cisco CleanAir 機能を設定する。
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Cisco CleanAir の機能の設定やデータ収集のためのインターフェイス(GUI、CLI)を提供する。
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スペクトラム データを表示する。
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アクセス ポイントから AQR を収集して処理し、電波品質データベースに保存する。AQR には、特定されたすべての発生源からの干渉全体に関する情報(電波品質の指標(AQI)で表す)や、最も重大な干渉カテゴリの概要が示されます。また CleanAir システムでは、干渉の種類別レポートに未分類の干渉情報を含めることができ、未分類の干渉デバイスによる干渉が頻繁に生じる場合に対処することができます。
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アクセス ポイントから IDR を収集して処理し、干渉デバイス データベースに保存する。
![]() (注) |
コントローラで Cisco CleanAir を無効にしてスペクトル インテリジェンス(SI)を有効にすると、CleanAir と電波品質レポートの両方が無効になります。ただし SI AP の電波品質は引き続き読み込まれ、show ap dot11 5ghz/24ghz cleanair config コマンドを実行すると、無効として表示されます。これは、SI AP が電波品質を報告する場合に想定される動作です。 この場合、スペクトル インテリジェンスは CleanAir 機能のサブセットです。スペクトル インテリジェンスの詳細については、『Spectrum Intelligence Deployment Guide』を参照してください。 |
Cisco CleanAir で検出できる干渉の種類
Cisco CleanAir アクセス ポイントでは、干渉を検出してその重大度をレポートすることができます。スペクトラム イベント駆動型 RRM は、このような緩和方法の 1 つです。
Wi-Fi チップをベースとする RF 管理システムには、次のような共通の特性があります。
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Wi-Fi 信号として識別できない RF エネルギーはノイズとして報告される。
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チャネル計画の割り当てに使用するノイズの測定値は、一部のクライアント デバイスに悪影響を及ぼす可能性のある不安定さや急速な変化を避けるために、一定の期間において平均化される傾向がある。
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測定値が平均化されることで、測定値の精度が低下する。そのため、平均化された後、クライアントに混乱をもたらす信号が緩和を必要とするものに見えない場合がある。
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現在使用できる RF 管理システムは、本質的にはすべて事後対応型である。
Cisco CleanAir はこれらと異なり、ノイズの発生源だけでなく、WLAN に対する潜在的な影響まで明確に特定することができます。このような情報を入手することにより、ネットワーク内におけるノイズを考慮し、理にかなった、可能であれば予防的な判断を行うことができます。通常、CleanAir には自発的干渉イベントが使用されます。
![]() (注) |
イベント駆動型 RRM は、Cisco CleanAir 対応でローカル モードにあるアクセス ポイントによってのみ動作します。 |
![]() (注) |
Qualcomm Atheros チップセットを使用するすべての AP は、無線が干渉を検出した場合も、電波品質を 100% として送信します。 |
突発的干渉は、ネットワーク上に突然発生する干渉であり、おそらくは、あるチャネル、またはある範囲内のチャネルが完全に妨害を受けます。Cisco CleanAir のスペクトラム イベント駆動型 RRM 機能を使用すると、電波品質(AQ)のしきい値を設定できます。このしきい値を超過した場合は、影響を受けたアクセス ポイントに対してチャネル変更がただちに行われます。ほとんどの RF 管理システムでは干渉を回避できますが、この情報がシステム全体に伝搬するには時間を要します。Cisco CleanAir では AQ 測定値を使用してスペクトラムを連続的に評価するため、対応策を 30 秒以内に実行します。たとえば、アクセス ポイントがビデオ カメラからの干渉を受けた場合は、そのカメラが動作し始めてから 30 秒以内にチャネル変更によってアクセス ポイントを回復させることができます。Cisco CleanAir では干渉源の識別と位置の特定も行うため、後からその装置の永続的な緩和処理も実行できます。
Bluetooth デバイスの場合、Cisco CleanAir 対応のアクセス ポイントで干渉の検出と報告を行うことができるのは、そのデバイスがアクティブに送信しているときだけです。Bluetooth デバイスには、さまざまな省電力モードがあります。たとえば、接続されたデバイス間でデータまたは音声がストリーム化されている最中に干渉が検出されます。
EDRRM および AQR の更新モード
EDRRM は、緊急事態にあるアクセス ポイントが、正常な RRM 間隔をバイパスしてすぐにチャネルを変更できるようにするための機能です。CleanAir アクセス ポイントは AQ を常に監視し、AQ を 15 分ごとに報告します。AQ は分類された干渉デバイスのみを報告します。EDRRM の主なメリットは短い処理時間です。干渉デバイスがアクティブ チャネルで動作しており、EDRRM をトリガーするのに十分な AQ の低下を引き起こした場合、クライアントはそのチャネルまたはアクセス ポイントを使用できなくなります。チャネルからアクセス ポイントを削除する必要があります。EDRRM はデフォルトではイネーブルになっていません。最初に CleanAir をイネーブルにしてから、EDRRM をイネーブルにします。