IEEE 802.3bt タイプ 4 デバイスのケーブル接続要件の分析
2017 年版の National Electrical Code(NEC)には、Power over Ethernet(PoE)システムの制限についての記述があります。この制限は導線ごとの電流に基づくもので、Power on Ethernet を提供する大規模なケーブル バンドルで発生する可能性のある熱上昇を最小限に抑えることを目的としています。
![]() (注) |
NEC ではケーブル バンドルについて、少なくとも 1.0 m(40 インチ)にわたって、密接に包装された構成でまとめて結束されているか、互いに接触している、ケーブルのグループとして定義しています。 |
イーサネット システムで使用される標準のカテゴリ ケーブルは、8 本の導線で構成されています。IEEE 802.3af および 802.3at システムは、このうち 4 本の導線だけを使用して電流を送ります。Cisco UPOE および IEEE 802.3bt システムは、8 本の導線すべてを使用して電流を送ります。次の表に、それぞれの標準規格で許可されている最大電流と、関連するケーブルあたりおよび導線あたりの電流の一覧を示します。
標準 |
ケーブル電流 |
導線電流 |
---|---|---|
802.3af |
350 mA |
175 mA |
802.3at |
600 mA |
300 mA |
Cisco UPOE |
1200 mA |
300 mA |
802.3bt |
1732 mA |
433 mA |
NEC に準拠するためのケーブル接続システムの分析は、セクション 840.160 から始まります。
- 一覧に記載されている 4 ペアの通信ケーブルを、通信回線用に取り付ける場合、または 725.154(A) に従ってクラス 2 およびクラス 3 のケーブルに置き換えて取り付ける場合は、725.144 に準拠するものとします。
- 例外:一覧に記載されている 4 ペアの通信ケーブルを、電源の定格電流が 24 AWG 以上の任意の導線において 0.3 アンペアを超えない場所に取り付ける場合は、725.144 に準拠した通信ケーブルの取り付けは必須ではないものとします。
この結果、802.3af、802.3at、および Cisco UPOE システムでは、導線が 24 AWG 以上の場合はこれ以上の考慮は必要ありません。また、TIA-568 準拠の水平ケーブルには最低でも 24 AWG の導線が必要です。そのため、60 W 以下を供給する IEEE 標準規格に準拠した PoE システムでは、これ以上ケーブルについての考慮は必要ありません。
IEEE 802.3bt タイプ 4 システム(クラス 7 およびクラス 8、75 W および 90 W)は、0.3 A の例外の対象にはなりません。したがって、NEC 準拠の分析はセクション 725.144 に移ります。
- タイプ CL3P、CL2P、CL3R、CL2R、CL3、または CL2 の送信電力およびデータの場合、導線ごとの定格電流は、周囲温度 30 °C(86 °F)において表 725.144 の電流容量を超えないものとします。周囲温度が 30 °C(86 °F)を超える場合は、310.15(B) の修正要因が適用されるものとします。
- 例外:導線が 24 AWG 以上で、電源の定格電流が 0.3 アンペアを超えない取り付けでは、725.144 への準拠は必須ではないものとします。
- タイプ CL3P-LP、CL2P-LP、CL3R-LP、CL2R-LP、CL3-LP、または CL2-LP については、「-LP」の直後に示されるアンペア上限を導線ごとの定格電流として、電源から機器への電力供給が許されるものとし、機器へのデータ送信が許されるものとします。
次の表は表 725.144 から導出したもので、10.15(B) を使用して 45 °C の周囲温度に合わせて調整してあります。
緑のセルの値は、IEEE タイプ 4 PoE システムの値として許容されます。

45 °C に合わせて調整された NEC 2020 表 725.144 の分析と、セクション 725.144 の要件の結果から、定格 75 °C、23 AWG の導線によるカテゴリ 6a ケーブルをバンドル サイズ 192 以下で使用することを推奨します。