単方向リンク検出(UDLD)プロトコル

初版:2013 年 3 月 28 日

このドキュメントでは、Cisco ASR 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータで単方向リンク検出(UDLD)プロトコルを設定する方法について説明します。

機能情報の確認

ご使用のソフトウェア リリースでは、このモジュールで説明されるすべての機能がサポートされているとは限りません。最新の機能情報と注意事項については、ご使用のプラットフォームとソフトウェアリリースに対応したリリースノートドキュメントを参照してください。このモジュールで説明される機能に関する情報、および各機能がサポートされるリリースの一覧については、「Cisco 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータでの UDLD の設定に関する機能情報」を参照してください。

プラットフォームのサポート、および Cisco IOS、Catalyst オペレーティング システム ソフトウェア イメージのサポートに関する情報を検索するには、Cisco Feature Navigator を使用します。Cisco Feature Navigator には、http://www.cisco.com/go/cfn からアクセスします。Cisco.com のアカウントは必要ありません。

目次

UDLD プロトコルの制約事項

現在、Cisco ASR 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータの UDLD プロトコルには次の制限があります。

  • 高可用性(HA)はサポートされていませんが、イーサネットポートがアップ状態で、ポートで UDLD が有効になっている場合、UDLD は自動的に検出を実行します。
  • ギガビットイーサネット、10 ギガビットイーサネット、およびファスト イーサネット インターフェイスでのみサポートされます。
  • 基本的な UDLD 機能のみサポートされます。

UDLD プロトコルに関する情報

続くセクションでは、UDLD の機能について説明します。

UDLD の概要

シスコ独自の UDLD プロトコルにより、LAN ポートに接続された光ファイバまたは銅製(カテゴリ 5 ケーブルなど)イーサネットケーブルを使用して接続されたデバイスで、ケーブルの物理構成をモニターし、単方向リンクの存在を検出することができます。単方向リンクはスパニング ツリー トポロジ ループなど、さまざまな問題の原因となるため、単方向リンクが検出された場合、UDLD は影響を受けた LAN ポートをシャットダウンして、該当するユーザーにアラートを表示します。

UDLD は、レイヤ 1 プロトコルと協調してリンクの物理ステータスを検出するレイヤ 2 プロトコルです。レイヤ 1 では、物理的シグナリングおよび障害検出は、自動ネゴシエーションによって処理されます。UDLD は、ネイバー ID の検出、誤って接続された LAN ポートのシャットダウンなど、自動ネゴシエーションでは実行不可能な処理を実行します。自動ネゴシエーションと UDLD の両方をイネーブルにすると、レイヤ 1 と 2 の検出機能が連動し、物理的および論理的な単方向接続、および他のプロトコルの誤動作を防止します。

リンク上でローカルデバイスが送信したトラフィックはネイバーで受信されるが、ネイバーから送信されたトラフィックはローカルデバイスで受信されない場合に、単方向リンクが発生します。対になったファイバケーブルのうち一方の接続が切断された場合、自動ネゴシエーションがアクティブである限り、そのリンクはアップ状態が維持されなくなります。このようなシナリオでは、論理リンクは不定であり、UDLD は何の処理も行いません。レイヤ 1 で両方の光ファイバが正常に動作している場合は、レイヤ 2 で UDLD が、これらの光ファイルが正しく接続されているかどうか、および正しいネイバー間でトラフィックが双方向に流れているかを調べます。自動ネゴシエーションはレイヤ 1 で動作するため、このチェックは自動ネゴシエーションでは実行できません。

Cisco ASR 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータは、UDLD が有効な LAN ポートのネイバーデバイスに、UDLD パケットを定期的に送信します。このパケットが一定時間内にエコーバックされ、かつ特定の確認応答(エコー)がない場合には、そのリンクは単方向リンクとしてフラグ付けされ、LAN ポートがシャットダウンされます。単方向リンクが正しく識別されディセーブルされるようにするには、リンクの両端のデバイスで UDLD プロトコルがサポートされている必要があります。


(注)  


UDLD は、不要なトラフィックの送信を避けるために、すべてのポートにおいてデフォルトで無効になっています。

次の図は、単方向リンクが発生した状態の一例を示したものです。スイッチ B は、ポート上のスイッチ A からのトラフィックを正常に受信します。ただし、スイッチ A は同じポートのスイッチ B からのトラフィックを受信しません。UDLD によって問題が検出され、ポートがディセーブルになります。

図 1. 単方向リンク

UDLD アグレッシブモードの設定

UDLD アグレッシブモードは、そのモードをサポートするネットワークデバイス間のポイントツーポイントのリンク上に限って設定します。UDLD アグレッシブモードをイネーブルに設定した場合、UDLD ネイバー関係が確立されている双方向リンク上のポートは UDLD パケットの受信を停止します。UDLD はネイバーとの接続を再確立しようとします。再試行が 8 回失敗すると、ポートはディセーブルになります。

スパニング ツリー ループを防止するため、間隔がデフォルトの 15 秒である非アグレッシブな UDLD でも、(デフォルトのスパニング ツリー パラメータを使用して)ブロッキング ポートがフォワーディング ステートに移行する前に、単方向リンクをシャットダウンすることができます。

UDLD アグレッシブモードが有効な場合、UDLD は、次のシナリオでトラフィックが廃棄されないように、リンク上のポートでエラーを無効化します。

  • リンクの一方の側でポート(TX または RX)スタックを使用している場合。
  • リンクの一方の側がダウンしているが、もう一方の側がアップしたままの場合。

UDLD のデフォルト設定

次の表に、UDLD のデフォルト設定を示します。

表 1. UDLD のデフォルト設定

機能

デフォルト値

UDLD グローバル イネーブル ステート

グローバルにディセーブル

UDLD アグレッシブ モード

ディセーブル

ポート別の UDLD イネーブル ステート(光ファイバ メディア用)

ディセーブル

ポート別の UDLD イネーブル ステート(ツイストペア(銅製)メディア用)

すべてのイーサネット 10/100 および 1000BASE-TX LAN ポートでディセーブル

UDLD プロトコルの設定方法

このセクションでは、UDLD プロトコルの設定方法について説明します。

UDLD のグローバルなイネーブル化

すべての光ファイバ LAN ポートで UDLD をグローバルに有効にするには、次のタスクを実行します。

手順の概要

  1. enable
  2. configure terminal
  3. udld {enable | aggressive }

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:


Router# enable

特権 EXEC モードをイネーブルにします。

プロンプトが表示されたらパスワードを入力します。

ステップ 2

configure terminal

例:


Router# configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

udld {enable | aggressive }

例:


no udld {enable | aggressive}

例:


Router(config)# udld  enable 

光ファイバ LAN ポートで UDLD をグローバルに有効にします。

(注)  

 
このコマンドでは、光ファイバ LAN ポートのみが設定されます。LAN ポートを個別に設定すると、このコマンドの設定がオーバーライドされます。

光ファイバ LAN ポートで UDLD をグローバルに無効化するには、このコマンドの no 形式を使用します。

個々の LAN インターフェイスでの UDLD の有効化

個々の LAN インターフェイスで UDLD を有効にするには、次のタスクを実行します。

手順の概要

  1. enable
  2. configure terminal
  3. interface type slot/port
  4. udld port [aggressive]

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Router> enable 

Enables the privileged EXEC mode.

Enter your password, if prompted.

ステップ 2

configure terminal

例:


Router# configure terminal 

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

interface type slot/port

例:


Router(config)# interface gigabitethernet2/2

設定する LAN ポートを選択します。

ステップ 4

udld port [aggressive]

例:


no udld port [aggressive]

例:


Router(config)# udld port aggressive

特定のポート上で UDLD を有効にします。aggressive キーワードを入力してアグレッシブモードをイネーブルにします。光ファイバ LAN ポートの場合、このコマンドはudld enable グローバル コンフィギュレーション コマンドによる設定を上書きします。

光ファイバ以外の LAN ポートで UDLD を無効にするには、このコマンドの no 形式を使用します。


On fiber-optic LAN ports, the no udld port command reverts the LAN port configuration to the udld enable global configuration command setting.

光ファイバ LAN インターフェイス上での UDLD のディセーブル化

個々の光ファイバ LAN ポートで UDLD を無効にするには、次のタスクを実行します。

手順の概要

  1. enable
  2. configure terminal
  3. interface type slot/port
  4. udld port disable

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Router> enable 

Enables the privileged EXEC mode.

Enter your password, if prompted.

ステップ 2

configure terminal

例:


Router# configure terminal 

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

interface type slot/port

例:


Router(config)# interface gigabitethernet2/2

設定する LAN ポートを選択します。

ステップ 4

udld port disable

例:


no udld port disable

例:


Router(config)# udld port disable

光ファイバの LAN ポート上で UDLD をディセーブルにします。

このコマンドの no 形式を実行すると、udld enable グローバル コンフィギュレーション コマンド設定に戻ります。

(注)  

 
このコマンドは、光ファイバ LAN ポートでのみサポートされています。

UDLD プローブメッセージ間隔の設定

アドバタイズメントモードにあり、現在双方向に設定されているポートで、UDLDプローブメッセージ間隔を設定するには、次のタスクを実行します。

手順の概要

  1. enable
  2. configure terminal
  3. udld message time interval

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Router> enable 

Enables the privileged EXEC mode.

Enter your password, if prompted.

ステップ 2

configure terminal

例:


Router# configure terminal 

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

udld message time interval

例:


no udld message

例:


Router(config)# udld message time  60

アドバタイズメントモードにあり、現在双方向に設定されているポートで、UDLDプローブメッセージの間隔を設定します。有効な値は 7 ~ 90 秒です。

このコマンドをデフォルト値(15 秒)に戻すには、このコマンドの no 形式を使用します。

無効化された LAN インターフェイスの手動リセット

UDLD によってシャットダウンされたすべての LAN ポートをリセットするには、次のタスクを実行します。

手順の概要

  1. enable
  2. udld reset

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Router> enable 

Enables the privileged EXEC mode.

Enter your password, if prompted.

ステップ 2

udld reset

例:


Router# udld reset

UDLD によってシャットダウンされたすべての LAN ポートをリセットします。

無効化された LAN インターフェイスの自動的なリセット

UDLD によってシャットダウンされたすべての LAN ポートを自動的にリセットするには、次のタスクを実行します。

手順の概要

  1. enable
  2. configure terminal
  3. udld recovery
  4. udld recovery interval interval

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Router> enable 

Enables the privileged EXEC mode.

Enter your password, if prompted.

ステップ 2

configure terminal

例:


Router# configure terminal 

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

udld recovery

例:


no udld recovery

例:


Router(config)# udld recovery 

UDLD error disabled 状態のリカバリタイマーを有効にします。

UDLD error disabled 状態のリカバリタイマーを無効にするには、このコマンドの no 形式を使用します。

ステップ 4

udld recovery interval interval

例:


no udld recovery interval

例:


Router(config)# udld recovery interval 100 

UDLD error disabled 状態から回復する時間を指定します。有効値の範囲は 30 ~ 86400 秒です。

このコマンドをデフォルト値(300 秒)に戻すには、このコマンドの no 形式を使用します。

UDLD のデバッグ

UDLD アクティビティのデバッグを有効にするには、次のタスクを実行します。

手順の概要

  1. enable
  2. debug udld {events | packets | registries}

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Router> enable 

Enables the privileged EXEC mode.

Enter your password, if prompted.

ステップ 2

debug udld {events | packets | registries}

例:

no debug udld  {events | packets | registries}

例:


Router#
 debug udld events

UDLD プロセスイベント、パケット、またはレジストリイベントのデバッグを有効にします。

UDLD プロセスイベント、パケット、またはレジストリイベントのデバッグを無効にするには、このコマンドの no 形式を使用します。

UDLD プロトコルの設定例

このセクションでは、次の設定例を示します。

例:UDLD 設定の検証

例:ネイバーに関する情報の検証

例:すべての UDLD インターフェイスステータスの表示

例:UDLD 設定の検証

次に、show コマンドを使用して UDLD 設定を検証する例を示します。

show udld interface-id コマンドの出力例


Router# show udld gigabitethernet2/2
Interface Gi2/2
---
Port enable administrative configuration setting: Follows device default
Port enable operational state: Enabled
Current bidirectional state: Bidirectional
Current operational state: Advertisement
Message interval: 60
Time out interval: 5
No multiple neighbors detected
	
	Entry 1
---
	Expiration time: 146
	Device ID: 1
	Current neighbor state: Bidirectional
	Device name: 0050e2826000
	Port ID: 2/1 
	Neighbor echo 1 device: SAD03160954
	Neighbor echo 1 port: Gi1/1
	Message interval: 5
	CDP Device name: 066527791

例:ネイバーに関する情報の検証

次に、ネイバーに関する情報を表示する例を示します。

show udld neighbors コマンドの出力例


Router# show udld neighbors
Port     Device Name                    Device ID    Port-ID OperState
-------- ------------------------------ ------------ ------- --------------
Gi3/1    SAL0734K5R2                    1            Gi4/1   Bidirectional
Gi4/1    SAL0734K5R2                    1            Gi3/1   Bidirectional

例:すべての UDLD インターフェイスステータスの表示

次に、すべての UDLD インターフェイスステータスを表示する例を示します。

show udld コマンドの出力例


Router# show udld
Interface Gi0/0/0
---
Port enable administrative configuration setting: Follows device default
Port enable operational state: Disabled
Current bidirectional state: Unknown
Interface Gi0/0/1
---
Port enable administrative configuration setting: Follows device default
Port enable operational state: Disabled
Current bidirectional state: Unknown
Interface Fa0/1/0
---
Port enable administrative configuration setting: Disabled
Port enable operational state: Disabled
Current bidirectional state: Unknown
Interface Fa0/1/1
---
Port enable administrative configuration setting: Disabled
Port enable operational state: Disabled
.
.
.

その他の参考資料

続くセクションでは、Cisco ASR 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータの単方向リンク検出(UDLD)プロトコルに関する参考資料を紹介します。

関連資料

関連項目

マニュアル タイトル

Cisco IOS 設定の基本

『Cisco IOS Configuration Fundamentals Command Reference』

標準

標準

タイトル

この機能がサポートする新しい規格または変更された規格はありません。

MIB

MIB

MIB のリンク

なし

選択したプラットフォーム、Cisco IOS リリース、およびフィーチャ セットに対する MIB を特定してダウンロードするには、次の URL にある Cisco MIB Locator を使用します。

http://www.cisco.com/go/mibs

RFC

RFC1

タイトル

RFC 5171

シスコ単方向リンク検出(UDLD)プロトコル

1 サポートされている RFC がすべて記載されているわけではありません。

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説明

リンク

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http://www.cisco.com/cisco/web/support/index.html

Cisco 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータでの UDLD の設定に関する機能情報

次の表に、このモジュールで説明した機能をリストし、特定の設定情報へのリンクを示します。Cisco IOS リリース 3.9S 以降で導入または変更された機能のみが表に記載されています。

ご使用の Cisco IOS ソフトウェア リリースによっては、コマンドの中に一部使用できないものがあります。特定のコマンドに関するリリース情報については、対応するコマンド リファレンス マニュアルを参照してください。

プラットフォームのサポートおよびソフトウェアイメージのサポートに関する情報を検索するには、Cisco Feature Navigator を使用します。Cisco Feature Navigator を使用すると、特定のソフトウェアリリース、機能セット、またはプラットフォームをサポートする Cisco IOS および Cisco Catalyst オペレーティング システム ソフトウェア イメージを確認できます。Cisco Feature Navigator には、http://www.cisco.com/go/cfn からアクセスします。Cisco.com のアカウントは必要ありません。

表 2. Cisco 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータでの UDLD の設定に関する機能情報

機能名

リリース

機能情報

単方向リンク検出(UDLD)プロトコル

3.9S

シスコ独自の UDLD プロトコルにより、LAN ポートに接続された光ファイバまたは銅製(カテゴリ 5 ケーブルなど)イーサネットケーブルを使用して接続されたデバイスで、ケーブルの物理構成をモニターし、単方向リンクの存在を検出することができます。単一方向リンクが検出されると、関連する LAN ポートを UDLD がシャットダウンし、ユーザーに警告します。単方向リンクは、スパニング ツリー トポロジ ループをはじめ、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。

この機能は、Cisco IOS XE リリース 3.9S で、Cisco ASR 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータに導入されました。

この機能に関する詳細については、次の各項を参照してください。