Cisco AppNav は WAN 最適化のネットワーク統合を簡素化するハードウェアおよびソフトウェア ソリューションです。さらに、プロビジョニング、可視性、拡張性、非対称性、およびハイ アベイラビリティに関する課題を解決します。

Cisco AppNav ソリューションは、強力なクラスおよびポリシー メカニズムを使用し、Cisco WAAS デバイス間でトラフィックを分散して最適化することで、代行受信スイッチやルータへの依存を低減します。ISR-WAAS を使用し、サイトやアプリケーションに基づいてトラフィックを最適化できます。これにはデバイスレベルおよびテンプレートベースの設定が含まれます。

Cisco IOS-XE ソフトウェアのインテリジェント ロードバランシング メカニズムによって、Cisco WAAS および OneFirewall（Cisco WAAS を初期ターゲットとする）を含むさまざまな製品への TCP トラフィックの転送が可能です。ルータ管理は、Cisco Prime Infrastructure ネットワーク管理アプリケーションによって実行されます。

Cisco AppNav ソリューションは、Cisco AppNav コントローラ（AC）と呼ばれる配信ユニットと WAAS サービス ノード（SN）で構成されます。Cisco AppNav コントローラはフローを配信し、サービス ノードはフローを処理します。最大 4 台の Cisco AppNav-XE（ルータ）をグループ化して Cisco AppNav コントローラ グループ（ACG）を形成し、非対称フローとハイ アベイラビリティに対応できます。ただし、ACG 内のすべてのルータは同じプラットフォームにあり、メモリ容量が同じである必要があります。

Cisco AppNav ソリューションのコンポーネントは、次の機能を実行します。

• AppNav コントローラ：ルータからサービス ノードにインテリジェントにトラフィックを配信するコンポーネントです。Cisco AppNav コントローラは、Cisco ISR-4400、Cisco CSR、および Cisco ASR 1K プラットフォーム上の Cisco IOS-XE Release 3.10 の一部です。
• Cisco WAAS サービス ノード：トラフィック フローを最適化します。Cisco IOS-XE コンテナで稼働するスタンドアロン アプライアンスや仮想化 ISR-WAAS などのさまざまなフォーム ファクタで利用できます。
• Cisco WAAS Central Manager：ISR-WAAS のモニタリングおよび設定に使用されます。
• この章では、ルータでの Cisco AppNav コントローラ機能の設定について説明します。

次の図は、Cisco AppNav のコンポーネントについて説明しています。

Cisco AppNav コンポーネントを使用する利点は次のとおりです。

• 各サービス ノードの負荷に基づいて、インテリジェントに新しいフローをリダイレクトできます。これには、個々のアプリケーション アクセラレータの負荷が含まれます。
• 最適化を必要としないフローの場合、サービス ノードがパケットを直接渡すよう Cisco AppNav コントローラに通知するため、遅延やリソース使用量が最小化されます。
• サービス ノードを追加または除去する際のトラフィックへの影響が最小限になります。
• Cisco AppNav コンポーネントは VRF をサポートします。トラフィックがサービス ノードから戻るときに VRF 情報が維持されます。しかし、Cisco Prime Infrastructure では VRF はサポートされていません。
• Messaging Application Programming Interface（MAPI）や仮想デスクトップ インフラストラクチャ（VDI）などの特定のアプリケーションの場合、コンポーネントを使用することで一連のフローが同じサービス ノードにリダイレクトされます。
• 1 方向のトラフィックが Cisco AppNav コントローラを通過し、リターン トラフィックが別の Cisco AppNav コントローラを通過する状況で、非対称フローを最適化できます。ただし、どちらも同じ ISR-WAAS にトラフィックをリダイレクトします。これは、Cisco AppNav コントローラ グループを使用して行います。

Cisco AppNav テクノロジーにより、IP フローをルータで代行受信し、一連の Cisco WAAS サービス ノードに送信して処理できます。Cisco IOS-XE Release 3.10 でサポートされる Cisco AppNav の初期アプリケーションは Cisco WAAS に含まれます。

関連項目

• Cisco AppNav 設定の前提条件
• Cisco AppNav の設定方法

トラフィックを Cisco WAAS サービス ノードにリダイレクトするには、ルータでいくつかのパラメータを設定する必要があります。Cisco WAAS 仮想アプライアンスのインストールの一環として Cisco AppNav 設定が生成される場合、これは対応するユーザに対して透過的です。テンプレートまたはデバイス ワーク センターを使用して設定する場合は、ユーザがより直接的に関与します。

次の 3 とおりの方法で Cisco AppNav を設定できます。

• 単一デバイスでの Cisco AppNav の設定
• テンプレートを使用した複数デバイス上での Cisco AppNav の設定
• ISR-WAAS コンテナで作成する場合の Cisco AppNav の設定方法

Cisco AppNav 設定には次のいずれかを使用します。

• コントローラ：共同でトラフィックをリダイレクトするルータのリスト。これは IP アドレスのリストです。この内のいずれか 1 つが Cisco AppNav を設定するルータに属している必要があります。
• Cisco WAAS サービス ノード グループ（SNG）：リダイレクトするトラフィックのターゲットで、一連の IP アドレスとして定義された 1 つ以上の SNG が含まれます。
• クラス マップ：着信および発信トラフィックを分類する一連のクラス マップ。クラス マップは一連の一致条件で構成され、これらを組み合わせて対象トラフィックを指定します。次の 3 種類の条件に基づいてトラフィックを照合できます。
  • 送信元および宛先の IP アドレスとポートに基づいてトラフィックを選択するアクセス コントロール リスト（ACL）。
  • 固定ポート番号に依存せずに、Microsoft のポート マッパー サービスを使用するトラフィックを選択するためのプロトコル。MAPI、および他の Microsoft プロトコルのホストを含みます。
  • リモート エンドの特定の Cisco WAAS サービス ノードを通過したトラフィックを照合するリモート デバイス。リモート デバイスは MAC アドレスで識別されます。
• ポリシー マップ：Cisco AppNav ポリシー マップはルールの番号付きリストです。各ルールで特定のタイプのトラフィックに対する処理を指定します。したがって、ルールはクラス マップとアクションで構成されます。このアクションは、サービス ノード グループへのリダイレクトかパス スルーのいずれかになります。
• クラスタ：Cisco WAAS クラスタとは、ポリシー マップ、コントローラ グループ、およびポリシー マップが使用する一連のサービス ノード グループを組み合わせたものです。クラスタは有効化または無効化できます。Cisco Prime Infrastructure では複数のクラスタを定義できますが、一度に有効にできるのは 1 つのみです。クラスタのコントローラとノード間の通信を保護するため、認証キーが使用されます。
• Cisco WAAS インターフェイス：Cisco WAAS が有効になっているインターフェイスでのみトラフィックを最適化できます。

WAN 最適化テンプレートとデバイス ワーク センターの両方にデフォルト ポリシーがあります。デフォルト ポリシーを構成する複数のクラス マップは、Cisco ISR-WAAS によって最適化されるさまざまなタイプのトラフィック（HTTP、CIFS、TCP など）を照合します。テンプレートにも、これらの各クラス マップのルールから成るポリシー マップが含まれます。デフォルトでは、一致したすべてのトラフィックは単一のサービス ノード グループにリダイレクトされます。

Cisco AppNav ソリューションが明示的に有効にされているインターフェイスでのみトラフィックが再ルーティングされます。インターフェイス ロールと論理オブジェクトを使用すると、各インターフェイスの名前を手動で定義することなく、複数のデバイス上の特定のインターフェイスにポリシーを定義できます。テンプレートをデバイスに導入すると、インターフェイス ロールは一連の実際のインターフェイスに解決されます。

デバイスごとのテンプレート導入中に、Cisco WAAS が有効になっているインターフェイスの設定を上書きできます。ただし、テンプレート導入プロセスを簡素化するためには、インターフェイス ロールを 1 つ以上定義してテンプレートの一部として保存することをお勧めします。また、[設定（Configuration）] > [テンプレート（Templates）] > [共有ポリシーオブジェクト（Shared Policy Objects）] > [インターフェイスロール（Interface Role）] でインターフェイス ロールを定義することもできます。

Cisco AppNav は、Cisco 4451-X ISR デバイスまたはプラットフォームでのみ設定できます。また、ISR-WAAS アクティベーションの必須ソフトウェア バージョンが、バージョン 3.10 以降である必要があります。この方法では、Cisco WAAS 仮想アプライアンス ノード（ISR4451X-WAAS）のインストールの一環として、自動的に設定が行われます。

• 単一のサービス ノード グループに、新しく作成された ISR-WAAS が含まれます。
• Cisco WAAS サービス ノードによって最適化される各種のトラフィックに対して、クラス マップが作成されます。
• すべての TCP トラフィックを Cisco WAAS サービス ノードにリダイレクトするデフォルト ポリシー マップが作成されます。
• Cisco WAAS クラスタが作成されます。
• インターフェイス ロール（コンテナ アクティベーション時に指定）で表されたインターフェイスで Cisco WAAS が有効化されます。

この方式で Cisco AppNav を設定する方法については、「Cisco WAAS コンテナの作成」を参照してください。