双方向フォワーディング検出の設定

このマニュアルでは、双方向フォワーディング検出(BFD)プロトコルを有効にする方法について説明します。BFD はあらゆるメディア タイプ、カプセル化、トポロジ、およびルーティング プロトコルの高速転送パス障害検出時間を提供するように設計された検出プロトコルです。

BFD は高速転送パス障害検出に加えて、ネットワーク管理者向けの整合性のある障害検出方法を提供します。ネットワーク管理者は BFD を使用して、ルーティングプロコル毎に異なる hello メカニズムの多様な検出時間でなく、一定の検出時間で転送パスの障害を検出できるため、ネットワーク プロファイリングおよびプランニングが容易になります。また、再コンバージェンス時間の整合性が保たれ、予測可能になります。

双方向フォワーディング検出の前提条件

  • Cisco Express Forwarding および IP ルーティングが、関連するすべてのスイッチで有効になっている必要があります。

  • BFD をスイッチに展開する前に、BFD でサポートされている IP ルーティングプロトコルのいずれかを設定する必要があります。使用しているルーティング プロトコルの高速コンバージェンスを実装する必要があります。高速コンバージェンスの設定については、お使いのバージョンの Cisco IOS ソフトウェアの IP ルーティングのマニュアルを参照してください。Cisco IOS ソフトウェアの BFD ルーティングプロトコルのサポートの詳細については、「双方向フォワーディング検出の制約事項」の項を参照してください。

双方向フォワーディング検出の制約事項

  • BFD は直接接続されたネイバーだけに対して動作します。BFD のネイバーは 1 ホップ以内に限られます。BFD はマルチホップ設定をサポートしていません。

  • プラットフォームおよびインターフェイスによっては、BFD サポートを利用できないものがあります。特定のプラットフォームまたはインターフェイスで BFD がサポートされているかどうか確認し、プラットフォームとハードウェアの正確な制約事項を入手するには、お使いのソフトウェアバージョンの Cisco IOS ソフトウェアのリリースノートを参照してください。

  • 自己生成パケットの QoS ポリシーは BFD パケットと一致しません。

  • class class-default コマンドは BFD パケットと一致します。そのため、適切な帯域幅の可用性を確認して、オーバーサブスクリプションによる BFD パケットのドロップを防ぐ必要があります。

  • BFD HA はサポートされていません。

  • YANG 運用モデルを使用して個々の BFD 間隔値を削除すると、BFD 間隔設定全体が削除されます。

双方向フォワーディング検出について

ここでは、双方向フォワーディング検出について説明します。

BFD の動作

BFD は、2 つの隣接デバイス間の転送パスで、オーバーヘッドの少ない短期間の障害検出方法を提供します。これらのデバイスには、インターフェイス、データリンク、および転送プレーンが含まれます。

BFD はインターフェイス レベルおよびルーティング プロトコル レベルで有効にする検出プロトコルです。シスコでは、BFD 非同期モードをサポートしています。BFD 非同期モードは、デバイス間の BFD ネイバー セッションをアクティブにして維持するための、2 台のシステム間の BFD 制御パケットの送信に依存します。したがって、BFD セッションを作成するには、両方のシステム(または BFD ピア)で BFD を設定する必要があります。BFD が適切なルーティングプロトコルに対してインターフェイスおよびデバイスレベルで有効になると、BFD セッションが作成されます。BFD タイマーがネゴシエーションされ、BFD ピアはネゴシエーションされた間隔で BFD 制御パケットの相互送信を開始します。

ネイバー関係

BFD は、高速 BFD ピア障害検出時間を個別に提供します。これは、すべてのメディアタイプ、カプセル化、トポロジ、ルーティングプロトコル(BGP、EIGRP、IS-IS、OSPF など)から独立しています。BFD は、ローカルデバイスのルーティングプロトコルに高速障害検出通知を送信して、ルーティングテーブル再計算プロセスを開始します。これにより BFD は、ネットワーク コンバージェンス時間全体を大幅に短縮できます。下の図は、OSPF と BFD を実行する 2 台のデバイスがある単純なネットワークを示しています。OSPF がネイバー(1)を検出すると、ローカル BFD プロセスに要求を送信します。OSPF ネイバーデバイスとの BFD ネイバーセッションが開始されます(2)。OSPF ネイバー デバイスとの BFD ネイバー セッションが確立されます(3)。

図 1. OSPF で構成されたネットワーク上の BFD プロセス
ネイバー関係は BFD を使用して確立されます

以下の図に、ネットワークで障害が発生した場合を示します(1)。OSPF ネイバーデバイスとの BFD ネイバー セッションが停止されます(2)。BFD はローカル OSPF プロセスに BFD ネイバーに接続できなくなったことを通知します(3)。ローカル OSPF プロセスは OSPF ネイバー関係を解除します(4)。代替パスが使用可能な場合、デバイスはただちにそのパスでコンバージェンスを開始します。

図 2. ネットワーク障害発生時の BFD プロセス
ネットワーク障害時に BFD を使用してネイバー セッションを削除★

ルーティングプロトコルは、取得したネイバーそれぞれについて、BFD に登録する必要があります。ネイバーが登録されると、セッションがまだ存在していない場合、BFD によって、ネイバーとのセッションが開始されます。

次のとき、OSPF では、BFD を使用して登録が行われます。

  • ネイバーの有限状態マシン(FSM)は、Full ステートに移行します。

  • OSPF BFD と BFD の両方が有効にされます。

ブロードキャスト インターフェイスでは、OSPF によって、指定ルータ(DR)とバックアップ指定ルータ(BDR)とともにのみ、BFD セッションが確立されます。このセッションは、DROTHER ステートの 2 台のルータ間では確立されません。

BFD の障害検出

BFD セッションが確立され、タイマー否定が完了すると、BFD ピアは BFD 制御パケットを送信します。パケットは、より高速なレートである点を除き、IGP hello プロトコルと同じように動作して活性を検出します。次の点に注意する必要があります。

  • BFD はフォワーディング パスの障害検出プロトコルです。BFD は障害を検出しますが、ルーティングプロトコルが障害が発生したピアをバイパスするように機能する必要があります。

  • Cisco IOS XE Denali 16.3.1 以降、シスコ デバイスは BFD バージョン 0 をサポートしています。実装では、デバイスが複数のクライアントプロトコルに 1 つの BFD セッションを使用します。たとえば、同じピアへの同じリンクを介してネットワークで OSPF および EIGRP を実行している場合、1 つの BFD セッションだけが確立されます。BFD は両方のルーティングプロトコルとセッション情報を共有します。

BFD バージョンの相互運用性

デフォルトでは、すべての BFD セッションがバージョン 1 で実行され、バージョン 0 と相互運用可能です。システムで自動的に FD バージョン検出が実行される場合、ネイバー間の BFD セッションがネイバー間の最も一般的な BFD バージョンで実行されます。たとえば、BFD ネイバーが BFD バージョン 0 を実行し、他の BFD ネイバーがバージョン 1 を実行している場合、セッションで BFD バージョン 0 が実行されます。show bfd neighbors [details ] コマンドの出力で、BFD ネイバーが実行している BFD バージョンを確認できます。

BFD バージョンの検出の例については、エコーモードがデフォルトで有効になった EIGRP ネットワークでの BFD の設定の例を参照してください。

BFD セッションの制限

作成できる BFD セッションの最大数は 128 です。

非ブロードキャスト メディア インターフェイスに対する BFD サポート

Cisco IOS XE Denali 16.3.1 以降、BFD 機能は、ルーテッド SVI と L3 ポートチャネルでサポートされます。bfd interval コマンドは、BFD モニタリングを開始するインターフェイスで設定する必要があります。

ステートフル スイッチオーバーでのノンストップ フォワーディングの BFD サポート

通常、ネットワーキング デバイスを再起動すると、そのデバイスのすべてのルーティング ピアがデバイスの終了および再起動を検出します。この遷移によってルーティング フラップが発生し、そのために複数のルーティング ドメインに分散される可能性があります。ルーティングの再起動によって発生したルーティングフラップによって、ルーティングが不安定になります。これはネットワーク全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼします。ノンストップ フォワーディング(NSF)は、ステートフル スイッチオーバー(SSO)が有効になっているデバイスのルーティングフラップを抑制するのに役立ち、そのためネットワークの不安定さが減少します。

NSF では、ルーティングプロトコル情報がスイッチオーバー後に保存されるとき、既知のルータでデータパケットのフォワーディングを継続できます。NSF を使用すると、ピア ネットワーキング デバイスでルーティング フラップが発生しません。データ トラフィックはインテリジェント ラインカードまたはデュアル フォワーディング プロセッサを介して転送されますが、スタンバイ RP では、スイッチオーバー中に障害が発生したアクティブな RP からの制御と見なされます。NSF の動作の重要な点の 1 つは、ラインカードとフォワーディングプロセッサがスイッチオーバー中も稼働状態を維持できることです。これらは、アクティブ RP の転送情報ベース(FIB)で最新の状態を維持します。

デュアル RP をサポートするデバイスでは、SSO が RP の 1 つをアクティブなプロセッサとして確立し、他の RP はスタンバイプロセッサに割り当てられます。SSO は、アクティブプロセッサとスタンバイプロセッサの間で情報を同期します。アクティブ RP に障害が発生したとき、アクティブ RP がネットワーキングデバイスから削除されたとき、またはメンテナンスのために手動で停止されたときに、アクティブプロセッサからスタンバイプロセッサへのスイッチオーバーが発生します。

障害検出に BFD を使用することの利点

機能を導入するときは、あらゆる代替策を検討し、トレードオフに注意することが重要です。

IS-IS、および OSPF の通常の導入で BFD に最も近い代替策は、EIGRP、IS-IS、および OSPF ルーティングプロトコルの障害検出メカニズムを修正することです。IS-IS または OSPF に fast hello を使用する場合、これらの Interior Gateway Protocol(IGP)プロトコルによって障害検出メカニズムが最小 1 秒に減少します。

BFD を実装する方が、ルーティングプロトコルのタイマー値を減らすよりも、いくつかの点で優れています。

  • IS-IS、および OSPF のタイマー縮小によって達成可能なのは最小でも 1 秒または 2 秒の障害検出タイマーであるのに対して、BFD は 1 秒未満の障害検出を提供できます。

  • BFD はどんな特定のルーティングプロトコルにも関連付けられていないため、IS-IS、および OSPF のための汎用的で整合性のある障害検出メカニズムとして使用できます。

  • BFD の一部をデータプレーンに分散できるため、完全にコントロールプレーンで処理される IS-IS、および OSPF のタイマーを縮小するよりも CPU の負荷を軽くすることができます。

双方向フォワーディング検出の設定方法

ここでは、双方向フォワーディング検出の設定について説明します。

インターフェイスでの BFD セッション パラメータの設定

インターフェイスで BFD を設定するには、BFD セッションの基本パラメータを設定する必要があります。BFD ネイバーに対して BFD セッションを実行するインターフェイスごとに、この手順を繰り返します。

次の手順は、物理インターフェイスの BFD 設定手順を示しています。SVI とイーサチャネルにそれぞれ対応する BFD タイマー値を使用してください。

手順

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:


Device>enable

特権 EXEC モードを有効にします。

パスワードを入力します(要求された場合)。

ステップ 2

configure terminal

例:


Device#configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

次のいずれかの手順を実行します。

  • ip address ipv4-address mask
  • ipv6 address ipv6-address/mask

例:

インターフェイスの IPv4 アドレスの設定:

Device(config-if)#ip address 10.201.201.1 255.255.255.0
インターフェイスの IPv6 アドレスの設定:

Device(config-if)#ipv6 address 2001:db8:1:1::1/32 
インターフェイスに IP アドレスを設定します。

ステップ 4

bfd interval milliseconds min_rx milliseconds multiplier interval-multiplier

例:


Device(config-if)#bfd interval 100 min_rx 100 multiplier 3

インターフェイスで BFD を有効にします。

BFD interval 設定は、それを設定したサブインターフェイスが削除されたときに削除されます。

BFD interval 設定は次のような場合には削除されません。

  • IPv4 アドレスがインターフェイスから削除された場合

  • IPv6 アドレスがインターフェイスから削除された場合

  • IPv6 がインターフェイスで無効にされた場合

  • インターフェイスがシャットダウンされた場合

  • インターフェイスで IPv4 CEF がグローバルまたはローカルで無効にされた場合

  • インターフェイスで IPv6 CEF がグローバルまたはローカルで無効にされた場合

ステップ 5

end

例:


Device(config-if)#end

インターフェイス コンフィギュレーション モードを終了し、特権 EXEC モードに戻ります。

ダイナミック ルーティング プロトコルに対する BFD サポートの設定

次のセクションでは、ダイナミック ルーティング プロトコルの BFD サポートに関する設定について説明します。

IS-IS に対する BFD サポートの設定

ここでは、IS-IS が BFD の登録プロトコルとなり、BFD から転送パスの検出障害メッセージを受信するように、IS-IS に対する BFD サポートを設定する手順について説明します。IS-IS に対する BFD サポートをイネーブルにするには、2 つの方法があります。

  • ルータ コンフィギュレーション モードで bfd all-interfaces コマンドを使用して、IS-IS が IPv4 ルーティングをサポートしているすべてのインターフェイスに対して BFD を有効にできます。次にインターフェイス コンフィギュレーション モードで isis bfd disable コマンドを使用すると、1 つ以上のインターフェイスに対して BFD を無効にできます。

  • インターフェイス コンフィギュレーション モードで isis bfd コマンドを使用すると、IS-IS がルーティングしているインターフェイスのサブセットに対して BFD を有効にできます。

IS-IS に対する BFD サポートを設定するには、次のいずれかの手順に従います。

前提条件
  • IS-IS は、関連するすべてのデバイスで実行する必要があります。

  • BFD セッションを BFD ネイバーに対して実行するインターフェイスで、BFD セッションの基本パラメータを設定する必要があります。詳細については、「インターフェイスでの BFD セッションパラメータの設定」の項を参照してください。


    (注)  


    show bfd neighbors details コマンドの出力には、設定された間隔が表示されます。ハードウェア オフロードされた BFD セッションが 50 ms の倍数でない Tx および Rx 間隔で設定されていたために変更された間隔は出力に表示されません。


すべてのインターフェイスの IS-IS に対する BFD サポートの設定

IPv4 ルーティングをサポートするすべての IS-IS インターフェイスで BFD を設定するには、この項の手順に従います。

手順
  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Device>enable

特権 EXEC モードを有効にします。

パスワードを入力します(要求された場合)。

ステップ 2

configure terminal

例:

Device#configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

router isis area-tag

例:

Device(config)#router isis tag1

IS-IS プロセスを指定し、ルータ コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 4

bfd all-interfaces

例:

Device(config-router)#bfd all-interfaces

IS-IS ルーティング プロセスに関連付けられたすべてのインターフェイスで、BFD をグローバルにイネーブルにします。

ステップ 5

exit

例:

Device(config-router)#exit

(任意)デバイスでグローバル コンフィギュレーション モードに戻ります。

ステップ 6

interface type number

例:

Device(config)#interface fastethernet 6/0

(任意)インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 7

ip router isis [ tag ]

例:

Device(config-if)#ip router isis tag1

(任意)インターフェイスで IPv4 ルーティングのサポートをイネーブルにします。

ステップ 8

isis bfd [disable ]

例:

Device(config-if)#isis bfd

(任意)IS-IS ルーティング プロセスに関連付けられた 1 つ以上のインターフェイスに対して、インターフェイスごとに BFD を有効または無効にします。

(注)  

 

コンフィギュレーション モードで bfd all-interfaces コマンドを使用して IS-IS が関連付けられたすべてのインターフェイスで以前に BFD を有効にしていた場合にのみ、disable キーワードを使用する必要があります。

ステップ 9

end

例:

Device(config-if)#end

インターフェイス コンフィギュレーション モードを終了して、デバイスが特権 EXEC モードに戻ります。

ステップ 10

show bfd neighbors [details ]

例:

Device#show bfd neighbors details

(任意)BFD ネイバーがアクティブで、BFD が登録したルーティング プロトコルが表示されるかどうかの検証に使用できる情報を表示します。

ステップ 11

show clns interface

例:

Device#show clns interface

(任意)IS-IS に対する BFD が、関連付けられた特定の IS-IS インターフェイスに対してイネーブルになっているかどうかを検証するために使用できる情報を表示します。

1 つ以上のインターフェイスの IS-IS に対する BFD サポートの設定

1 つ以上の IS-IS インターフェイスだけに BFD を設定するには、この項の手順に従います。

手順
  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Device>enable

特権 EXEC モードを有効にします。

パスワードを入力します(要求された場合)。

ステップ 2

configure terminal

例:

Device#configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

interface type number

例:

Device(config)#interface fastethernet 6/0

インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 4

ip router isis [ tag ]

例:

Device(config-if)#ip router isis tag1

インターフェイスで IPv4 ルーティングのサポートをイネーブルにします。

ステップ 5

isis bfd [disable]

例:

Device(config-if)#isis bfd

IS-IS ルーティング プロセスに関連付けられた 1 つ以上のインターフェイスに対して、インターフェイスごとに BFD をイネーブルまたはディセーブルにします。

(注)  

 

コンフィギュレーション モードで bfd all-interfaces コマンドを使用して IS-IS が関連付けられたすべてのインターフェイスで BFD を有効にした場合にのみ、disable キーワードを使用する必要があります。

ステップ 6

end

例:

Device(config-if)#end

インターフェイス コンフィギュレーション モードを終了して、デバイスが特権 EXEC モードに戻ります。

ステップ 7

show bfd neighbors [details ]

例:

Device#show bfd neighbors details

(任意)BFD ネイバーがアクティブで、BFD が登録したルーティング プロトコルが表示されるかどうかの検証に使用できる情報を表示します。

ステップ 8

show clns interface

例:

Device#show clns interface

(任意)IS-IS に対する BFD が、関連付けられた特定の IS-IS インターフェイスに対してイネーブルになっているかどうかを検証するために使用できる情報を表示します。

OSPF に対する BFD サポートの設定

ここでは、OSPF が BFD の登録プロトコルとなり、BFD から転送パスの検出障害メッセージを受信するように、OSPF に対する BFD サポートを設定する手順について説明します。すべてのインターフェイスでグローバルに OSPF に対する BFD を設定するか、または 1 つ以上のインターフェイスで選択的に設定することができます。

OSPF に対する BFD サポートを有効にするには、2 つの方法があります。

  • ルータ コンフィギュレーション モードで bfd all-interfaces コマンドを使用して、OSPF がルーティングしているすべてのインターフェイスに対して BFD を有効にできます。インターフェイス コンフィギュレーション モードで ip ospf bfd [disable ] コマンドを使用して、個々のインターフェイスで BFD サポートを無効にできます。

  • インターフェイス コンフィギュレーション モードで ip ospf bfd コマンドを使用すると、OSPF がルーティングしているインターフェイスのサブセットに対して BFD を有効にできます。

OSPF に対する BFD サポートのタスクについては、次の項を参照してください。

すべてのインターフェイスの OSPF に対する BFD サポートの設定

すべての OSPF インターフェイスに BFD を設定するには、この項の手順に従います。

すべての OSPF インターフェイスに対して BFD を設定するのではなく、特定の 1 つ以上のインターフェイスに対して BFD サポートを設定する場合は、「1 つ以上のインターフェイスの OSPF に対する BFD サポートの設定」の項を参照してください。

始める前に
  • OSPF は、参加しているすべてのデバイスで実行されている必要があります。

  • BFD セッションを BFD ネイバーに対して実行するインターフェイスで、BFD セッションの基本パラメータを設定する必要があります。詳細については、「インターフェイスでの BFD セッションパラメータの設定」の項を参照してください。

手順
  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Device>enable

特権 EXEC モードを有効にします。

パスワードを入力します(要求された場合)。

ステップ 2

configure terminal

例:

Device#configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

router ospf process-id

例:

Device(config)#router ospf 4

OSPF プロセスを指定し、ルータ コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 4

bfd all-interfaces

例:

Device(config-router)#bfd all-interfaces

OSPF ルーティング プロセスに関連付けられたすべてのインターフェイスで、BFD をグローバルに有効にします。

ステップ 5

exit

例:

Device(config-router)#exit

(任意)デバイスでグローバル コンフィギュレーション モードに戻ります。ステップ 7 を実行して 1 つ以上のインターフェイスに対して BFD を無効にする場合にだけ、このコマンドを入力します。

ステップ 6

interface type number

例:

Device(config)#interface fastethernet 6/0

(任意)インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。ステップ 7 を実行して 1 つ以上のインターフェイスに対して BFD を無効にする場合にだけ、このコマンドを入力します。

ステップ 7

ip ospf bfd [disable ]

例:

Device(config-if)#ip ospf bfd disable

(任意)OSPF ルーティング プロセスに関連付けられた 1 つ以上のインターフェイスに対して、インターフェイスごとに BFD を無効にします。

(注)  

 

コンフィギュレーション モードで bfd all-interfaces コマンドを使用して OSPF が関連付けられたすべてのインターフェイスで BFD を有効にした場合にのみ、disable キーワードを使用する必要があります。

ステップ 8

end

例:

Device(config-if)#end

インターフェイス コンフィギュレーション モードを終了して、特権 EXEC モードに戻ります。

ステップ 9

show bfd neighbors [details ]

例:

Device#show bfd neighbors detail

(任意)BFD ネイバーがアクティブで、BFD が登録したルーティング プロトコルが表示されるかどうかの検証に使用できる情報を表示します。

ステップ 10

show ip ospf

例:

Device#show ip ospf

(任意)OSPF に対して BFD が有効になっているかどうかを検証するために使用できる情報を表示します。

1 つ以上のインターフェイスの BFD over IPv4 に対する OSPF サポートの設定

1 つ以上の OSPF インターフェイスで BFD を設定するには、この項の手順に従います。

手順
  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Device>enable

特権 EXEC モードを有効にします。

パスワードを入力します(要求された場合)。

ステップ 2

configure terminal

例:

Device#configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

interface type number

例:

Device(config)#interface fastethernet 6/0

インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 4

ip ospf bfd [disable ]

例:

Device(config-if)#ip ospf bfd

OSPF ルーティング プロセスに関連付けられた 1 つ以上のインターフェイスに対して、インターフェイスごとに BFD を有効または無効にします。

(注)  

 

ルータ コンフィギュレーション モードで bfd all-interfaces コマンドを使用して OSPF が関連付けられたすべてのインターフェイスで BFD を有効にした場合にのみ、disable キーワードを使用します。

ステップ 5

end

例:

Device(config-if)#end

インターフェイス コンフィギュレーション モードを終了して、デバイスが特権 EXEC モードに戻ります。

ステップ 6

show bfd neighbors [details ]

例:

Device#show bfd neighbors details

(任意)BFD ネイバーがアクティブで、BFD が登録したルーティング プロトコルが表示されるかどうかの検証に使用できる情報を表示します。

(注)  

 

ハードウェア オフロードされた BFD セッションが、50 ms の倍数でない Tx および Rx 間隔で設定されると、ハードウェア間隔が変更されます。ただし、show bfd neighbors details コマンドの出力には、変更された間隔ではなく、設定された間隔値のみが表示されます。

ステップ 7

show ip ospf

例:

Device#show ip ospf

(任意)OSPF に対して BFD サポートが有効になっているかどうかを検証するために使用できる情報を表示します。

HSRP に対する BFD サポートの設定

ホットスタンバイ ルータ プロトコル(HSRP)の BFD サポートをイネーブルにするには、次の作業を実行します。この手順のステップは、HSRP ピアに BFD セッションを実行する各インターフェイスで行ってください。

デフォルトでは、HSRP は BFD をサポートします。BFD に対する HSRP サポートが手動でディセーブルになっている場合、デバイス レベルで再びイネーブルにして、すべてのインターフェイスに対してグローバルに BFD サポートをイネーブルにするか、またはインターフェイス レベルでインターフェイスごとにイネーブルにすることができます。

始める前に
  • HSRP は、参加しているすべてのデバイスで実行されている必要があります。

  • シスコ エクスプレス フォワーディングをイネーブルにする必要があります。

手順
  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Device>enable

特権 EXEC モードを有効にします。

パスワードを入力します(要求された場合)。

ステップ 2

configure terminal

例:

Device#configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

ip cef [distributed ]

例:

Device(config)#ip cef

シスコ エクスプレス フォワーディングまたは分散型シスコ エクスプレス フォワーディングをイネーブルにします。

ステップ 4

interface type number

例:

Device(config)#interface FastEthernet 6/0

インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 5

ip address ip-address mask

例:

Device(config-if)#ip address 10.1.0.22 255.255.0.0

インターフェイスに IP アドレスを設定します。

ステップ 6

standby [group-number ] ip [ip-address [secondary ]]

例:

Device(config-if)#standby 1 ip 10.0.0.11

HSRP をアクティブにします。

ステップ 7

standby bfd

例:

Device(config-if)#standby bfd

(任意)インターフェイスで BFD に対する HSRP をイネーブルにします。

ステップ 8

exit

例:

Device(config-if)#exit

インターフェイス コンフィギュレーション モードを終了します。

ステップ 9

standby bfd all-interfaces

例:

Device(config)#standby bfd all-interfaces

(任意)すべてのインターフェイスで BFD に対する HSRP をイネーブルにします。

ステップ 10

exit

例:

Device(config)#exit

グローバル コンフィギュレーション モードを終了します。

ステップ 11

show standby neighbors

例:

Device#show standby neighbors

(任意)BFD に対する HSRP サポートについての情報を表示します。

スタティック ルーティングに対する BFD サポートの設定

スタティック ルーティングのための BFD サポートを設定するには、このタスクを実行します。各 BFD ネイバーに対してこの手順を繰り返します。詳細については、「例:スタティック ルーティングに対する BFD サポートの設定」の項を参照してください。

手順

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:


Device>enable

特権 EXEC モードを有効にします。

パスワードを入力します(要求された場合)。

ステップ 2

configure terminal

例:


Device#configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

interface type number

例:


Device(config)#interface serial 2/0

インターフェイスを設定し、インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 4

次のいずれかの手順を実行します。

  • ip address ipv4-address mask
  • ipv6 address ipv6-address/mask

例:

インターフェイスの IPv4 アドレスの設定:

Device(config-if)#ip address 10.201.201.1 255.255.255.0
インターフェイスの IPv6 アドレスの設定:

Device(config-if)#ipv6 address 2001:db8:1:1::1/32 
インターフェイスに IP アドレスを設定します。

ステップ 5

bfd interval milliseconds mix_rx milliseconds multiplier interval-multiplier

例:


Device(config-if)#bfd interval 500 min_rx 500 multiplier 5

インターフェイスで BFD を有効にします。

bfd interval 設定は、それを設定したサブインターフェイスが削除されたときに削除されます。

bfd interval 設定は次のような場合には削除されません。

  • IPv4 アドレスがインターフェイスから削除された場合

  • IPv6 アドレスがインターフェイスから削除された場合

  • IPv6 がインターフェイスから無効にされた場合

  • インターフェイスがシャットダウンされた場合

  • インターフェイスで IPv4 CEF がグローバルまたはローカルに無効にされた場合

  • インターフェイスで IPv6 CEF がグローバルまたはローカルに無効にされた場合

ステップ 6

exit

例:


Device(config-if)#exit

インターフェイス コンフィギュレーション モードを終了し、グローバル コンフィギュレーション モードに戻ります。

ステップ 7

ip route static bfd interface-type interface-number ip-address [group group-name [passive]]

例:


Device(config)#ip route static bfd TenGigabitEthernet1/0/1 10.10.10.2 group group1 passive 

スタティック ルートの BFD ネイバーを指定します。

  • BFD が直接接続されたネイバーだけでサポートされているため、interface-type interface-number 、および ip-address 引数は必須です。

ステップ 8

ip route [vrf vrf-name] prefix mask {ip-address | interface-type interface-number [ip-address]} [dhcp] [distance] [name next-hop-name] [permanent | track number] [tag tag]

例:


Device(config)#ip route 10.0.0.0 255.0.0.0 

スタティック ルートの BFD ネイバーを指定します。

ステップ 9

exit

例:


Device(config)#exit

グローバル コンフィギュレーション モードを終了し、特権 EXEC モードに戻ります。

ステップ 10

show ip static route

例:


Device#show ip static route

(任意)スタティック ルート データベース情報を表示します。

ステップ 11

show ip static route bfd

例:


Device#show ip static route bfd 

(任意)設定された BFD グループおよび nongroup エントリからスタティック BFD の設定に関する情報を表示します。

ステップ 12

exit

例:


Device#exit

特権 EXEC モードを終了し、ユーザー EXEC モードに戻ります。

BFD エコー モードの設定

デフォルトでは BFD エコー モードが有効になっていますが、方向ごとに個別に実行できるように、無効にすることもできます。

BFD エコー モードは非同期 BFD で動作します。エコー パケットはフォワーディング エンジンによって送信され、検出を実行するために、同じパスで転送されます。反対側の BFD セッションはエコー パケットの実際のフォワーディングに関与しません。エコー機能およびフォワーディング エンジンが検出プロセスを処理するため、2 つの BFD ネイバー間で送信される BFD 制御パケットの数が減少します。また、フォワーディング エンジンが、リモート システムを介さずにリモート(ネイバー)システムの転送パスをテストするため、パケット間の遅延のばらつきが向上する可能性があり、それによって BFD バージョン 0 を BFD セッションの BFD 制御パケットで使用する場合に、障害検出時間を短縮できます。

エコー モードを両端で実行している(両方の BFD ネイバーがエコー モードを実行している)場合は、非対称性がないと表現されます。

前提条件

  • BFD は、参加しているすべてのデバイスで実行されている必要があります。

  • CPU 使用率の上昇を避けるために、BFD エコーモードを使用する前に、no ip redirects コマンドを入力して、Internet Control Message Protocol(ICMP)リダイレクトメッセージの送信を無効にする必要があります。

  • BFD セッションを BFD ネイバーに対して実行するインターフェイスで、BFD セッションの基本パラメータを設定する必要があります。詳細については、「インターフェイスでの BFD セッション パラメータの設定」の項を参照してください。

機能制限

BFD エコー モードは、ユニキャスト リバース パス転送(uRPF)の設定との組み合わせでは動作しません。BFD エコー モードと uRPF の設定がイネーブルの場合、セッションはフラップします。

非対称性のない BFD エコー モードの無効化

この手順では、非対称性のない BFD エコーモードを無効化にする方法を示します。デバイスからはエコーパケットが送信されず、デバイスはネイバーデバイスから受信する BFD エコーパケットを転送しません。

各 BFD デバイスに対してこの手順を繰り返します。

手順
  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Device>enable

特権 EXEC モードを有効にします。

パスワードを入力します(要求された場合)。

ステップ 2

configure terminal

例:

Device#configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

no bfd echo

例:

Device(config)#no bfd echo

BFD エコー モードを無効にします。

no 形式を使用すると、BFD エコーモードを無効にできます。

ステップ 4

end

例:

Device(config)#end

グローバル コンフィギュレーション モードを終了し、特権 EXEC モードに戻ります。

BFD テンプレートの作成と設定

シングルホップ テンプレートは一連の BFD 間隔値を指定するために設定できます。BFD テンプレートの一部として指定される BFD 間隔値は、1 つのインターフェイスに限定されるものではありません。


(注)  


BFD テンプレートを設定すると、エコーモードが無効になります。


シングルホップ テンプレートの設定

BFD シングルホップ テンプレートを作成し、BFD インターバル タイマーを設定するには、次の手順を実行します。

手順
  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Device>enable

特権 EXEC モードを有効にします。

パスワードを入力します(要求された場合)。

ステップ 2

configure terminal

例:

Device#configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

bfd-template single-hop template-name

例:

Device(config)#bfd-template single-hop bfdtemplate1

シングルホップ BFD テンプレートを作成し、BFD コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 4

interval min-tx milliseconds min-rx milliseconds multiplier multiplier-value

例:

Device(bfd-config)#interval min-tx 120 min-rx 100 multiplier 3

BFD パケット間での送受信間隔を設定し、ピアが使用不能であると BFD が宣言する前に損失される連続的な BFD 制御パケット数を指定します。

ステップ 5

end

例:

Device(bfd-config)#end

BFD コンフィギュレーション モードを終了し、デバイスを特権 EXEC モードに戻します。

BFD のモニタリングとトラブルシューティング

ここでは、維持とトラブルシューティングのために BFD 情報を取得する方法について説明します。これらのタスクのコマンドを必要に応じて任意の順序で入力できます。

ここでは、次の Cisco プラットフォームに対する BFD のモニタリングとトラブルシューティングについて説明します。

BFD のモニタリングとトラブルシューティング

BFD のモニタリングまたはトラブルシューティングを実行するには、この項の 1 つ以上の手順に従います。

手順
  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Device>enable

特権 EXEC モードを有効にします。

パスワードを入力します(要求された場合)。

ステップ 2

show bfd neighbors [details ]

例:

Device#show bfd neighbors details

(任意)BFD 隣接関係データベースを表示します。

details キーワードを指定すると、すべての BFD プロトコル パラメータとネイバーごとにタイマーが表示されます。

ステップ 3

debug bfd [packet | event ]

例:

Device#debug bfd packet

(任意)BFD パケットのデバッグ情報を表示します。

双方向フォワーディング検出の設定の機能履歴

次の表に、このモジュールで説明する機能のリリースおよび関連情報を示します。

これらの機能は、特に明記されていない限り、導入されたリリース以降のすべてのリリースで使用できます。

リリース

機能

機能情報

Cisco IOS XE Fuji 16.9.2

双方向フォワーディング検出

BFD はあらゆるメディア タイプ、カプセル化、トポロジ、およびルーティング プロトコルの高速転送パス障害検出時間を提供するように設計された検出プロトコルです。

Cisco Feature Navigator を使用すると、プラットフォームおよびソフトウェアイメージのサポート情報を検索できます。Cisco Feature Navigator には、http://www.cisco.com/go/cfn [英語] からアクセスします。