イノベーションの転換期の渦中で… IPネットワーキング新時代の幕開け

INDEX

  1. 大きな期待
  2. 変化の予感
  3. IP ネットワーキングの新時代
  4. ルータの強化
  5. 中断を最小限に減らす
  6. MPLS の成熟
  7. ソフトウェアの強化
  8. さらに前進

ルータの強化

ルータのハードウェアおよびソフトウェアのデザインでは、コンピュータおよび電話業界における大容量並列処理やモジュラ型プロセス隔離の概念が流用され始めている。その 1つのゴールは、一定のルータが PSTN (Public Switched Telephone Network) 交換機に期待されるファイブナイン (99.999%) の可用性を達成できるようにすることである。

従来から、複数の複雑なルーティング階層に冗長性の高いルータを展開することで、ファイブナインの可用性を実現できるルーティングネットワークを設計することは可能だった。しかし、個々のルータでこのようなアップタイムを一貫して達成することはできなかったとシスコのコア・アンド・エッジ・ルーティング担当プロダクトマーケティング・マネージャーであるブライアン・ドハティー (Brian Daugherty) は指摘している。しかし、これに対して「“常時稼動 (always-on)”しながら、万一どのハードウェアやソフトウェアに障害が発生してもシステム全体の可用性に与える影響を最低限に抑え、パケットのフォワーディングとコントロールプレーンの処理を分散させる高度な分散型ハードウェアおよびソフトウェアのアーキテクチャを持つ Cisco CRS-1 によって、この状況は変りつつある」と語っている。

Cisco IOS Software ファミリーで最も新しい Cisco IOS XR は、特に統合型パケットインフラストラクチャの拡張性、可用性、および柔軟性に対処するために開発されたものだ。高度なモジュラ型の特質によって、非常にきめ細かなプロセスの隔離と分散が可能となり、クリティカルなシステムプロセスを個々にスタート / 停止、あるいはアップグレードすることができる。さらに、マルチシェルフシステムのどこへでもプロセッサリソースを自動的に移動させ、活用の最適化を実現してくれるのである。多くのシステムプロセスで使われる複雑なステート情報は、プロセスの再スタート全体を通じて保持され、中断を伴わないアップグレードと障害復旧を可能にすることができるのだとドハティーは補足して語った。

マサチューセッツ州ケンブリッジにあるフォレスタ・リサーチのアソシエイト・アナリストであるロバート・ホワイトリー (Robert Whiteley) はこう述べている。

「シスコは CRS-1 によって、公衆交換電話網に匹敵する製品を構築し、業界内で他を大きく引き離したのです」

ホワイトリーは、CRS-1 の中でも最も印象的なのはスイッチファブリックだと語る。旧来製品とは全くアーキテクチャを異にするこのルータは、サービス中のアップグレードが可能で、動的な自動ルーティングを行い、また、マルチキャストトラフィックの伝送への最適設計が図られた 3ステージ・スイッチファブリックを有している。

たとえば、このルータは最大 100万のマルチキャストグループに対してファブリック内で直接マルチキャストのトラフィックをネイティブに複製し、パケットプロセッサからのマルチキャストパケットの複製をオフロードすることができる。

ビデオオンデマンドのようなアプリケーションを目指すためには、マルチキャストを処理するコアルータのスイッチファブリックとラインカードが非常に重要になるだろうとホワイトリーは予想する。しかし、それを後から組み込むのは決して容易ではない。彼はこう続けた。

「いまや、マルチキャストの複製プロセスは非常に優秀で、実際ワイヤスピードで実行されるのです」

以上の開発実績は、まさに業界をコミュニケーションの新時代に導くであろうイノベーションの好例を示しているのである。

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