イノベーションの転換期の渦中で… IPネットワーキング新時代の幕開け

インターネットブームが始まって以来、ルータは一貫してサービスプロバイダのバックボーンや大企業のネットワークでその役割を果たし、パケットをその宛先に送り届けることに貢献してきた。たとえば、E メールやファイルの共有など一般的に使われている Web ベースのデータアプリケーションの大部分は、一定レベルのパケット損失や遅延、ジッタなどを許容しながらも、それがエンドユーザーに及ぼす影響を最低限に押し留めることができたのである。
ますます高いレベルが要求されるネットワークの可用性や QoS (Quality of Service) をサポートするためにルータは時を追って進化し続けてきたと言えるだろう。

INDEX

  1. 大きな期待
  2. 変化の予感
  3. IP ネットワーキングの新時代
  4. ルータの強化
  5. 中断を最小限に減らす
  6. MPLS の成熟
  7. ソフトウェアの強化
  8. さらに前進

大きな期待

どの業界でも技術進化に向けられたまなざしは同じ傾向にあるが、ル-タへの期待は膨らむ一方だ。さらに、IP ネットワーク用の新しいアプリケーションが続々と登場しており、その中には E メール以上にネットワークのパフォーマンスを気にしなければいけないものも少なくない。たとえば、遅延やジッタに極めて敏感なリアルタイムの IP 音声加入サービスや、サービスプロバイダが他のキャリアに対して音声サービスを卸売する場合のアプリケーションを考えてみよう。さらに、エンド・ツー・エンドの“情報転送レート保証 (committed information rates)”を要求する IP VPN (Virtual Private Network) や、扱いが難しいマルチキャストや高い QoS が求められるビデオオンデマンドサービス配信なども登場しつつある。

これらは、広範な全 IP サービスのほんの一部分にすぎない。サービスプロバイダ、企業、および一般ユーザーの要求の増大、そして新しいアプリケーションの高度化によって、IP ルーティング業界はアーキテクチャのイノベーションに向かって舵をとり、さらに新しい段階へと進むべき時期を迎えているのである。

IP ルーティングのインフラを保持する者にとって、拡張性とパフォーマンスに対して今後ますます大きな期待がかけられることは必至だ。そのためには、ネットワークコンバージェンスのあるべき姿を実現するための高い可用性、拡張性、および柔軟性を持ったサービス環境がすぐにも必要となってくるのである。このビジョンは、IP/MPLS (IP Multiprotocol Label Switching) の統合型パケットインフラストラクチャ上に構築され、現段階ではまだそれぞれ別々のネットワーク上で提供されている多くの通信サービスを統合に導くものだ。それは、今まで十分なサービスを提供してきたルーティングシステムとは基本的に異なるアーキテクチャをもった新たなシステムを使って構築される。この新しいルーティングシステムは今後数十年間の需要に対応できる拡張性や継続的なシステムの可用性、また、これまでにないようなサービス提供の柔軟性を提供することができる。これは、新しいサービスや加入者の増加に対応して、キャパシティを追加するサービスプロバイダ POP (Points of Presence) の拡大に伴う管理負荷やコストを大幅に軽減してくれるものである。

次ページへ