EIGRP

この章では、Enhanced Interior Gateway Routing Protocol(EIGRP)を使用してデータをルーティングし、認証を実行し、ルーティング情報を再配布するように ASA を設定する方法について説明します。

EIGRP について

EIGRP は、シスコが開発した、IGRP の拡張バージョンです。IGRP や RIP と異なり、EIGRP が定期的にルート アップデートを送信することはありません。EIGRP アップデートは、ネットワーク トポロジが変更された場合にだけ送信されます。EIGRP を他のルーティング プロトコルと区別する主な機能には、迅速なコンバージェンス、可変長サブネット マスクのサポート、部分的アップデートのサポート、複数のネットワーク レイヤ プロトコルのサポートなどがあります。

EIGRP を実行するルータでは、すべてのネイバー ルーティング テーブルが格納されているため、代替ルートに迅速に適応できます。適切なルートが存在しない場合、EIGRP はそのネイバーにクエリーを送信して代替のルートを検出します。これらのクエリーは、代替ルートが検出されるまで伝搬します。EIGRP では可変長サブネット マスクがサポートされているため、ルートはネットワーク番号の境界で自動的に集約されます。さらに、任意のインターフェイスの任意のビット境界で集約を行うように EIGRP を設定することもできます。EIGRP は定期的なアップデートを行いません。その代わり、ルートのメトリックが変更されたときだけ、部分的なアップデートを送信します。部分的アップデートの伝搬では、境界が自動的に設定されるため、その情報を必要とするルータだけがアップデートされます。これらの 2 つの機能により、EIGRP の帯域幅消費量は IGRP に比べて大幅に減少します。

ネイバー探索は、ASA が直接接続されているネットワーク上にある他のルータをダイナミックに把握するために使用するプロセスです。EIGRP ルータは、マルチキャスト hello パケットを送信して、ネットワーク上に自分が存在していることを通知します。ASA は、新しいネイバーから hello パケットを受信すると、トポロジ テーブルに初期化ビットを設定してそのネイバーに送信します。ネイバーは、初期化ビットが設定されたトポロジ アップデートを受信すると、自分のトポロジ テーブルを ASA に返送します。

hello パケットはマルチキャスト メッセージとして送信されます。hello メッセージへの応答は想定されていません。ただし、スタティックに定義されたネイバーの場合は例外です。neighbor コマンドを使用して(または ASDM で [Hello Interval] を設定して)ネイバーを設定すると、そのネイバーへ送信される hello メッセージはユニキャスト メッセージとして送信されます。ルーティング アップデートと確認応答が、ユニキャスト メッセージとして送信されます。

このネイバー関係が確立した後は、ネットワーク トポロジが変更された場合にだけ、ルーティング アップデートが交換されます。ネイバー関係は、hello パケットによって維持されます。ネイバーから受信した各 hello パケットには、保持時間が含まれています。ASA は、この時間内にそのネイバーから hello パケットを受信すると想定できます。ASA が保持時間内にそのネイバーからアドバタイズされた hello パケットを受信しない場合、ASA はそのネイバーを使用不能と見なします。

EIGRP プロトコルは、ネイバーの検出、ネイバーの回復、Reliable Transport Protocol(RTP)、およびルート計算に重要な DUAL を含む、4 の主要なアルゴリズム テクノロジーと 4 つの主要なテクノロジーを使用します。DUAL は、最小コストのルートだけでなく、宛先へのすべてのルートをトポロジ テーブルに保存します。最小コストのルートはルーティング テーブルに挿入されます。その他のルートは、トポロジ テーブルに残ります。メインのルートに障害が発生したら、フィジブル サクセサから別のルートが選択されます。サクセサとは、宛先への最小コスト パスを持ち、パケット転送に使用される隣接ルータです。フィジビリティ計算によって、パスがルーティング ループを形成しないことが保証されます。

フィジブル サクセサがトポロジ テーブル内にない場合、必ずルート計算が発生します。ルートの再計算中、DUAL は EIGRP ネイバーにルートを求めるクエリーを送信して、次に EIGRP ネイバーがそのネイバーにクエリーを送信します。ルートのフィジブル サクセサがないルータは、到達不能メッセージを返します。

ルートの再計算中、DUAL は、ルートをアクティブとマークします。デフォルトでは、ASA は、ネイバーから応答が返ってくるのを 3 分間待ちます。ASA がネイバーから応答を受信しないと、そのルートは stuck-in-active とマークされます。トポロジ テーブル内のルートのうち、応答しないネイバーをフィジブル サクセサとして指しているものはすべて削除されます。


(注)  


EIGRP ネイバー関係では、GRE トンネルを使用しない IPsec トンネルの通過はサポートされていません。


EIGRPv6

EIGRP for IPv6 は、EIGRP IPv4 と同様に設定できます。EIGRPv6 は、IPv6 ピアとのみ通信し、IPv6 ルートのみをアドバタイズします。EIGRPv6 は、多くの点で EIGRPv4 に似ています。

  • DUAL は、同じメトリックでルートの計算と選択に使用されます。

  • 大規模なネットワークの実装に合わせて拡張できます。

  • ネイバー、ルーティング、およびトポロジテーブルは維持されます。

  • 等コストロードバランシングと不等コストロードバランシングの両方が提供されます。

ただし、EIGRPv6 は、次のような多くの点で EIGRPv4 とは異なります。

  • network コマンドは IPv6 では使用されません。EIGRP はリンクを使用して設定されます。

  • 設定時に各インターフェイスで EIGRPv6 を明示的に有効にする必要があります。

Null0 および EIGRP

デフォルトでは、EIGRP は Null0 ルートをサマリールートとしてピアにアドバタイズして、サマリーをアドバタイズしているルータがルートを持たないパケットを転送しないようにします。

たとえば、R1 と R2 の 2 つのルータについて考えてみます。R1 の 3 つのインターフェイスには、192.168.0.0/24、192.168.1.0/24、および 192.168.3.0/24 のネットワークがあります。R1 をサマリールート 192.168.0.0/22 で設定し、そのルートを R2 にアドバタイズします。R2 に 192.168.2.x の IP パケットがある場合、そのパケットは R1 に転送されます。R1 は、ルーティングテーブルに 192.168.2.x がないため、パケットをドロップします。ただし、R1 が ISP にも接続されており、ISP を指しているデフォルトルートがある場合、192.168.2.x パケットは ISP に転送されます。この転送アクションを防ぐために、EIGRP は、Null0 を指している、サマリールートに一致するエントリを生成します。したがって、192.168.2.x のパケットが受信されると、R1 はデフォルトルートを使用する代わりにパケットをドロップします。

EIGRP のガイドライン

ファイアウォール モードのガイドライン

ルーテッド ファイアウォール モードでのみサポートされています。トランスペアレント ファイアウォール モードはサポートされません。

クラスタのガイドライン

個別インターフェイス モードのクラスタの場合、EIGRP はルータ ID としてクラスタ プールを使用してクラスタのピアとの関係を形成できます。

IPv6 のガイドライン

IPv6 ルーティングをサポートします。

コンテキストのガイドライン

  • デフォルトでは、共有インターフェイス間でのマルチキャスト トラフィックのコンテキスト間交換がサポートされていないため、EIGRP インスタンスは共有インターフェイス間で相互に隣接関係を形成できません。ただし、EIGRP プロセスの EIGRP プロセス設定で静的ネイバー設定を使用すると、共有インターフェイスでの EIGRP ネイバーシップを形成できます。

  • 個別のインターフェイスでのコンテキスト間 EIGRP がサポートされています。

再配布のガイドライン

EIGRP が、OSPF ネットワークの一部であるデバイスで設定されている場合、またはその逆の場合は、ルートにタグを付けるように OSPF ルータが設定されていることを確認します(EIGRP はルートタグをサポートしていません)。

EIGRP を OSPF に再配布し、OSPF を EIGRP に再配布する場合は、いずれかのリンクまたはインターフェイスで障害が発生したときや、ルート発信元がダウンしたときにも、ルーティングループが発生します。あるドメインから同じドメインに再度ルートを再配布することを避けるため、ルータは、再配布する際にドメインに属しているルートにタグ付けすることができます。そして、そのタグに基づいて、リモートルータでそれらのルートをフィルタ処理できます。それらのルートはルーティングテーブルにインストールされないため、再度同じドメインに再配布されることはありません。

その他のガイドライン

  • 最大 1 つの EIGRP プロセスがサポートされます。

  • 設定の変更が適用されるたびに、EIGRP 隣接関係のフラップが発生し、特に配布リスト、オフセット リスト、および集約への変更のネイバーからの(送信または受信された)ルーティング情報が変更されます。ルータが同期されると、EIGRP はネイバー間の隣接関係を再確立します。隣接関係が壊れて再確立されると、ネイバー間で学習されたすべてのルートが消去され、新しい配布リストを使用して、ネイバー間の同期がすべて新しく実行されます。

  • また、EIGRP ネイバーの最大数にも制限はありません。ただし、不要な EIGRP フラップを防ぐために、ユニットあたりの数を 500 に制限することを推奨します。

EIGRP の設定

この項では、システムで EIGRP プロセスをイネーブルにする方法について説明します。EIGRP をイネーブルにした後に、システムで EIGRP プロセスをカスタマイズする方法については、次の項を参照してください。

EIGRP のイネーブル化

ASA でイネーブルにすることができる EIGRP ルーティング プロセスは 1 つだけです。

手順


ステップ 1

EIGRP ルーティング プロセスを作成して、この EIGRP プロセスのルータ コンフィギュレーション モードを開始します。

router eigrp as-num

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2

EIGRP IPv6 ルーティングプロセスをイネーブルにするには、次のコマンドを入力します。

as-num 引数には、EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号を指定します。

ステップ 2

EIGRP ルーティングに参加するインターフェイスとネットワークを設定します。

network ip-addr [mask]

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# network 10.0.0.0 255.0.0.0

このコマンドで、1 つ以上の network 文を設定できます。

直接接続されるネットワークとスタティック ネットワークが定義済みネットワークに含まれていれば、それらが ASA によってアドバタイズされます。さらに、定義されたネットワークに含まれる IP アドレスを持つインターフェイスだけが、EIGRP ルーティング プロセスに参加します。

アドバタイズするネットワークに接続されているインターフェイスを EIGRP ルーティングに参加させない場合は、EIGRP のインターフェイスの設定を参照してください。


EIGRP スタブ ルーティングのイネーブル化

ASA を EIGRP スタブ ルータとしてイネーブル化し、設定することができます。スタブ ルーティングを使用すると、ASA で必要となるメモリおよび処理要件を減らすことができます。ASA をスタブ ルータとして設定すると、ローカル以外のトラフィックがすべて配布ルータに転送されるようになり、完全な EIGRP ルーティング テーブルを維持する必要がなくなります。一般に、配布ルータからスタブ ルートに送信する必要があるのは、デフォルト ルートだけです。

スタブ ルータから配布ルータには、指定されたルートだけが伝搬されます。スタブ ルータである ASA は、サマリー、接続されているルート、再配布されたスタティック ルート、外部ルート、および内部ルートに対するクエリーすべてに、応答として「inaccessible」というメッセージを返します。ASA がスタブとして設定されているときは、自身のスタブ ルータとしてのステータスを報告するために、特殊なピア情報パケットをすべての隣接ルータに送信します。スタブ ステータスの情報を伝えるパケットを受信したネイバーはすべて、スタブ ルータにルートのクエリーを送信しなくなり、スタブ ピアを持つルータはそのピアのクエリーを送信しなくなります。スタブ ルータが正しいアップデートをすべてのピアに送信するには、配布ルータが必要です。

手順


ステップ 1

EIGRP ルーティング プロセスを作成して、この EIGRP プロセスのルータ コンフィギュレーション モードを開始します。

router eigrp as-num

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2

as-num 引数には、EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号を指定します。

ステップ 2

EIGRP ルーティングに参加するインターフェイスとネットワークを設定します。

network ip-addr [mask]

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# network 10.0.0.0 255.0.0.0

このコマンドで、1 つ以上の network 文を設定できます。

直接接続されるネットワークとスタティック ネットワークが定義済みネットワークに含まれていれば、それらが ASA によってアドバタイズされます。さらに、定義されたネットワークに含まれる IP アドレスを持つインターフェイスだけが、EIGRP ルーティング プロセスに参加します。

アドバタイズするネットワークに接続されているインターフェイスを EIGRP ルーティングに参加させない場合は、パッシブ インターフェイスの設定の項を参照してください。

ステップ 3

スタブ ルーティング プロセスを設定します。

eigrp stub {receive-only |[connected ] [redistributed ] [static ] [summary ]}

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# network 10.0.0.0 255.0.0.0
ciscoasa(config-router)# eigrp stub {receive-only | [connected] [redistributed] [static] [summary]}

スタブ ルーティング プロセスから配布ルータにアドバタイズされるネットワークを指定する必要があります。スタティック ルートおよび接続されているネットワークが、自動的にスタブ ルーティング プロセスに再配布されることはありません。

(注)  

 

スタブ ルーティング プロセスでは、完全なトポロジ テーブルは維持されません。スタブ ルーティングには、ルーティングの決定を行うために、少なくとも配布ルータへのデフォルト ルートが必要です。


EIGRP のカスタマイズ

ここでは、EIGRP ルーティングをカスタマイズする方法について説明します。

EIGRP ルーティング プロセスのネットワークの定義

[Network] テーブルでは、EIGRP ルーティング プロセスで使用されるネットワークを指定できます。EIGRP ルーティングに参加するインターフェイスは、これらのネットワーク エントリで定義されるアドレスの範囲内に存在する必要があります。アドバタイズされる直接接続およびスタティックのネットワークも、これらのネットワーク エントリの範囲内である必要があります。

[Network] テーブルには、EIGRP ルーティング プロセス用に設定されているネットワークが表示されます。このテーブルの各行には、指定した EIGRP ルーティング プロセス用に設定されているネットワーク アドレスおよび関連するマスクが表示されます。

手順


ステップ 1

EIGRP ルーティング プロセスを作成して、この EIGRP プロセスのルータ コンフィギュレーション モードを開始します。

router eigrp as-num

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2

as-num 引数には、EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号を指定します。

ステップ 2

EIGRP ルーティングに参加するインターフェイスとネットワークを設定します。

network ip-addr [mask]

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# network 10.0.0.0 255.0.0.0

このコマンドで、1 つ以上の network 文を設定できます。

直接接続されるネットワークとスタティック ネットワークが定義済みネットワークに含まれていれば、それらが ASA によってアドバタイズされます。さらに、定義されたネットワークに含まれる IP アドレスを持つインターフェイスだけが、EIGRP ルーティング プロセスに参加します。

アドバタイズするネットワークに接続されているインターフェイスを EIGRP ルーティングに参加させない場合は、パッシブ インターフェイスの設定を参照してください。


EIGRP のインターフェイスの設定

アドバタイズするネットワークに接続されているインターフェイスを EIGRP ルーティングに参加させない場合は、インターフェイスが接続されているネットワークが対象に含まれるように network コマンドを設定し、passive-interface コマンドを使用して、そのインターフェイスが EIGRP アップデートを送受信しないようにします。

手順


ステップ 1

EIGRP ルーティング プロセスを作成して、この EIGRP プロセスのルータ コンフィギュレーション モードを開始します。

router eigrp as-num

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2

EIGRP IPv6 ルーティングプロセスをイネーブルにするには、次のコマンドを入力します。

ipv6 router eigrp as-num

例:


ciscoasa(config)# ipv6 router eigrp 2

as-num 引数には、EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号を指定します。

ステップ 2

EIGRP ルーティングに参加するインターフェイスとネットワークを設定します。

network ip-addr [mask]

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# network 10.0.0.0 255.0.0.0

このコマンドで、1 つ以上の network 文を設定できます。 ただし、network コマンドは EIGRP IPv6 では使用されません。

直接接続されるネットワークとスタティック ネットワークが定義済みネットワークに含まれていれば、それらが ASA によってアドバタイズされます。さらに、定義されたネットワークに含まれる IP アドレスを持つインターフェイスだけが、EIGRP ルーティング プロセスに参加します。

アドバタイズするネットワークに接続されているインターフェイスを EIGRP ルーティングに参加させない場合は、EIGRP ルーティング プロセスのネットワークの定義を参照してください。

ステップ 3

候補となるデフォルト ルート情報の送受信を制御します。

no default-information {in | out | WORD}

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# network 10.0.0.0 255.0.0.0
ciscoasa(config-router)# no default-information {in | out | WORD}

no default-information in コマンドを入力すると、候補のデフォルト ルート ビットが受信ルート上でブロックされます。

no default-information out コマンドを入力すると、アドバタイズされるルートのデフォルト ルート ビット設定がディセーブルになります。

詳細については、EIGRP でのデフォルト情報の設定を参照してください。

ステップ 4

EIGRP パケットの MD5 認証をイネーブルにします。

authentication mode eigrp as-num md5

例:


ciscoasa(config)# authentication mode eigrp 2 md5

as-num 引数は、ASA に設定されている EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号です。EIGRP がイネーブルになっていないか、または誤った番号を入力した場合には、ASA が次のエラー メッセージを返します。


% Asystem(100) specified does not exist

詳細については、インターフェイスでの EIGRP 認証のイネーブル化を参照してください。

ステップ 5

遅延値を設定します。

delay value

例:


ciscoasa(config-if)# delay 200

value 引数は 10 マイクロ秒単位で入力します。2000 マイクロ秒の遅延を設定するには、value に 200 を入力します。

インターフェイスに割り当てられている遅延値を表示するには、show interface コマンドを使用します。

詳細については、インターフェイス遅延値の変更を参照してください。

ステップ 6

hello 間隔を変更します。

hello-interval eigrp as-num seconds

例:


ciscoasa(config)# hello-interval eigrp 2 60

詳細については、EIGRP Hello 間隔と保持時間のカスタマイズを参照してください。

ステップ 7

保持時間を変更します。

hold-time eigrp as-num seconds

例:


ciscoasa(config)# hold-time eigrp 2 60

詳細については、EIGRP Hello 間隔と保持時間のカスタマイズを参照してください。


パッシブ インターフェイスの設定

1 つ以上のインターフェイスを受動インターフェイスとして設定できます。EIGRP の場合、受動インターフェイスではルーティング アップデートが送受信されません。

手順


ステップ 1

EIGRP ルーティング プロセスを作成して、この EIGRP プロセスのルータ コンフィギュレーション モードを開始します。

router eigrp as-num

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2

as-num 引数には、EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号を指定します。

ステップ 2

EIGRP ルーティングに参加するインターフェイスとネットワークを設定します。このコマンドで、1 つ以上の network 文を設定できます。

network ip-addr [mask]

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# network 10.0.0.0 255.0.0.0

直接接続されるネットワークとスタティック ネットワークが定義済みネットワークに含まれていれば、それらが ASA によってアドバタイズされます。さらに、定義されたネットワークに含まれる IP アドレスを持つインターフェイスだけが、EIGRP ルーティング プロセスに参加します。

アドバタイズするネットワークに接続されているインターフェイスを EIGRP ルーティングに参加させない場合は、EIGRP ルーティング プロセスのネットワークの定義を参照してください。

ステップ 3

インターフェイスが EIGRP ルーティング メッセージを送受信しないようにします。

passive-interface {default | if-name}

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# network 10.0.0.0 255.0.0.0
ciscoasa(config-router)# passive-interface {default}

default キーワードを使用すると、すべてのインターフェイスで EIGRP ルーティング アップデートが無効になります。nameif コマンドで定義したインターフェイス名を指定すると、指定したインターフェイスで EIGRP ルーティング アップデートが無効になります。EIGRP ルータ コンフィギュレーション内で、複数の passive-interface コマンドを使用できます。


インターフェイスでのサマリー集約アドレスの設定

サマリー アドレスはインターフェイスごとに設定できます。ネットワーク番号の境界以外でサマリー アドレスを作成する場合、または自動ルート集約がディセーブルになった ASA でサマリー アドレスを使用する場合は、手動でサマリー アドレスを定義する必要があります。ルーティング テーブルに他にも個別のルートがある場合、EIGRP は、他の個別ルートすべての中で最小のメトリックと等しいメトリックで、サマリー アドレスをインターフェイスからアドバタイズします。

手順


ステップ 1

EIGRP で使用される遅延値を変更するインターフェイスのインターフェイス コンフィギュレーション モードに入ります。

interface phy_if

例:


ciscoasa(config)# interface inside

ステップ 2

サマリー アドレスを作成します。

summary-address eigrp as-num address mask [distance ]

例:


ciscoasa(config-if)# summary-address eigrp 2 address mask [20]

EIGRP IPv6 のサマリーアドレスを作成します。

ipv6 summary-address eigrp as-num address mask [distance ]

例:

ciscoasa(config-if)# int gigabitEthernet 0/0
ciscoasa(config-if)# ipv6 summary-address eigrp 1 4001::1/64 ?
interface mode commands/options:
  <1-255>  Administrative distance

デフォルトでは、定義する EIGRP サマリー アドレスのアドミニストレーティブ ディスタンスは 5 になります。この値は、summary-address コマンドにオプションの引数 distance を指定して変更できます。


インターフェイス遅延値の変更

インターフェイス遅延値は、EIGRP ディスタンス計算で使用されます。この値は、インターフェイスごとに変更できます。

手順


ステップ 1

EIGRP で使用される遅延値を変更するインターフェイスのインターフェイス コンフィギュレーション モードに入ります。

interface phy_if

例:


ciscoasa(config)# interface inside

ステップ 2

遅延値を設定します。

delay value

例:


ciscoasa(config-if)# delay 200

value 引数は 10 マイクロ秒単位で入力します。2000 マイクロ秒の遅延を設定するには、value に 200 を入力します。

(注)  

 

インターフェイスに割り当てられている遅延値を表示するには、show interface コマンドを使用します。


インターフェイスでの EIGRP 認証のイネーブル化

EIGRP ルート認証では、EIGRP ルーティング プロトコルからのルーティング アップデートに対する MD5 認証を提供します。MD5 キーを使用したダイジェストが各 EIGRP パケットに含まれており、承認されていない送信元からの不正なルーティング メッセージや虚偽のルーティング メッセージが取り込まれないように阻止します。

EIGRP ルート認証は、インターフェイスごとに設定します。EIGRP メッセージ認証対象として設定されたインターフェイス上にあるすべての EIGRP ネイバーには、隣接関係を確立できるように同じ認証モードとキーを設定する必要があります。


(注)  


EIGRP ルート認証をイネーブルにするには、事前に EIGRP をイネーブルにする必要があります。


手順


ステップ 1

EIGRP ルーティング プロセスを作成して、この EIGRP プロセスのルータ コンフィギュレーション モードを開始します。

router eigrp as-num

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2

as-num 引数は、EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号です。

ステップ 2

EIGRP ルーティングに参加するインターフェイスとネットワークを設定します。

network ip-addr [mask]

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# network 10.0.0.0 255.0.0.0

  • このコマンドで、1 つ以上の network 文を設定できます。

  • 直接接続されるネットワークとスタティック ネットワークが定義済みネットワークに含まれていれば、それらが ASA によってアドバタイズされます。さらに、定義されたネットワークに含まれる IP アドレスを持つインターフェイスだけが、EIGRP ルーティング プロセスに参加します。

  • アドバタイズするネットワークに接続されているインターフェイスを EIGRP ルーティングに参加させない場合は、EIGRP の設定を参照してください。

ステップ 3

EIGRP メッセージ認証を設定するインターフェイスのインターフェイス コンフィギュレーション モードに入ります。

interface phy_if

例:


ciscoasa(config)# interface inside

ステップ 4

EIGRP パケットの MD5 認証をイネーブルにします。

authentication mode eigrp as-num md5

例:


ciscoasa(config)# authentication mode eigrp 2 md5

as-num 引数は、ASA に設定されている EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号です。EIGRP がイネーブルになっていないか、または誤った番号を入力した場合には、ASA が次のエラー メッセージを返します。


% Asystem(100) specified does not exist

ステップ 5

MD5 アルゴリズムで使用するキーを設定します。

authentication key eigrp as-num key key-id key-id

例:


ciscoasa(config)# authentication key eigrp 2 cisco key-id 200

  • as-num 引数は、ASA に設定されている EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号です。EIGRP がイネーブルになっていないか、または誤った番号を入力した場合には、ASA が次のエラー メッセージを返します。

    
    % Asystem(100) specified does not exist%
    
    
  • key 引数には、アルファベット、数字、特殊文字を含む最大 16 文字を含めることができます。key 引数では空白を使用できません。

  • key-id 引数には、0 ~ 255 の範囲の数字を指定できます。


EIGRP ネイバーの定義

EIGRP hello パケットはマルチキャスト パケットとして送信されます。EIGRP ネイバーが、トンネルなど、非ブロードキャスト ネットワークを越えた場所にある場合、手動でネイバーを定義する必要があります。手動で EIGRP ネイバーを定義すると、hello パケットはユニキャスト メッセージとしてそのネイバーに送信されます。

手順


ステップ 1

EIGRP ルーティング プロセスを作成して、この EIGRP プロセスのルータ コンフィギュレーション モードを開始します。

router eigrp as-num

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2

as-num 引数には、EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号を指定します。

ステップ 2

EIGRP ルーティングに参加するインターフェイスとネットワークを設定します。

network ip-addr [mask]

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# network 10.0.0.0 255.0.0.0

ステップ 3

スタティック ネイバーを定義します。

neighbor ip-addr interface if_name

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# neighbor 10.0.0.0 interface interface1

例:

EIGRP IPv6 の場合

ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# neighbor 2001:DB8:0:ABCD::1 interface interface1

ip-addr 引数には、ネイバーの IP アドレスを指定します。

if-name 引数は、ネイバーを使用可能にしている nameif コマンドで指定したインターフェイスの名前です。1 つの EIGRP ルーティング プロセスに対して複数のネイバーを定義できます。

(注)  

 

ネイバーシップ設定を有効にするには、EIGRP ルーティングに参加するインターフェイス ネットワークを設定する必要があります。


EIGRP へのルート再配布

RIP および OSPF で検出されたルートを、EIGRP ルーティング プロセスに再配布することができます。スタティック ルートおよび接続されているルートも、EIGRP ルーティング プロセスに再配布できます。接続されているルートが、EIGRP コンフィギュレーション内の network 文で指定された範囲に含まれている場合、再配布する必要はありません。


(注)  


RIP 限定:この手順を開始する前に、ルート マップを作成し、指定されたルーティング プロトコルのうち RIP ルーティング プロセスに再配布されるルートを詳細に定義する必要があります。


手順


ステップ 1

EIGRP ルーティング プロセスを作成して、この EIGRP プロセスのルータ コンフィギュレーション モードを開始します。

router eigrp as-num

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2

as-num 引数には、EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号を指定します。

ステップ 2

(オプション)EIGRP ルーティング プロセスに再配布するルートに適用するデフォルト メトリックを指定します。

default-metric bandwidth delay reliability loading mtu

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# default-metric bandwidth delay reliability loading mtu

EIGRP ルータ コンフィギュレーション内にデフォルト メトリックを指定しない場合、各 redistribute コマンドにメトリック値を指定する必要があります。redistribute コマンドで EIGRP メトリックを指定し、EIGRP ルータ コンフィギュレーション内に default-metric コマンドが含まれている場合、redistribute コマンドのメトリックが使用されます。

ステップ 3

接続済みルートを EIGRP ルーティング プロセスに再配布します。

redistribute connected [metric bandwidth delay reliability loading mtu] [route-map map_name]

例:


ciscoasa(config-router)# redistribute connected [metric bandwidth delay reliability loading mtu] [route-map map_name]

EIGRP ルータ コンフィギュレーション内に default-metric コマンドが含まれていない場合、redistribute コマンドに EIGRP メトリック値を指定する必要があります。

ステップ 4

スタティック ルートを EIGRP ルーティング プロセスに再配布します。

redistribute static [route-map map_name]

例:


ciscoasa(config-router)# redistribute static [route-map map_name]

このコマンドは、すべてのスタティック ルートを EIGRP に渡します。選択的スタティックルートを再配布するには、スタティックルートを含むアクセスリストを作成してから、ルートマップに含めてください。

例:


ciscoasa(config)# ip access-list extended R1_Loopback
ciscoasa(config-ext-nacl)#permit ip host 1.1.1.1 any
ciscoasa(config-ext-nacl)#exit

ciscoasa(config)#route-map Permit_to_Distribute
ciscoasa(config-route-map)#match ip address R1_Loopback
ciscoasa(config-route-map)#exit

ルート マップを作成した後、次のように redistribute コマンドに含めます。

例:


ciscoasa(config)#router eigrp 2
ciscoasa(config-router)#redistribute static subnets route-map Permit_to_Distribute

ステップ 5

ルートを OSPF ルーティング プロセスから EIGRP ルーティング プロセスに再配布します。

redistribute ospf pid [match {internal | external [1 | 2] | nssa-external [1 | 2]}] [metric bandwidth delay reliability loading mtu] [route-map map_name]

例:


ciscoasa(config-router): redistribute ospf pid [match {internal | external [1 | 2] | 
nssa-external [1 | 2]}] [metric bandwidth delay reliability loading mtu] [route-map map_name]

ステップ 6

ルートを RIP ルーティング プロセスから EIGRP ルーティング プロセスに再配布します。

redistribute rip [metric bandwidth delay reliability load mtu] [route-map map_name]

例:


ciscoasa(config-router): redistribute rip [metric bandwidth delay 
reliability load mtu] [route-map map_name]


EIGRP でのネットワークのフィルタリング


(注)  


この手順を開始する前に、標準の ACL を作成し、その中にアドバタイズするルートを定義する必要があります。つまり、標準の ACL を作成し、その中に送信または受信したアップデートからフィルタリングするルートを定義します。


手順


ステップ 1

EIGRP ルーティング プロセスを作成して、この EIGRP プロセスのルータ コンフィギュレーション モードを開始します。

router eigrp as-num

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2

as-num 引数には、EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号を指定します。

ステップ 2

EIGRP ルーティングに参加するインターフェイスとネットワークを設定します。

ciscoasa(config-router)# network ip-addr [mask]

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# network 10.0.0.0 255.0.0.0

このコマンドで、1 つ以上の network 文を設定できます。

直接接続されるネットワークとスタティック ネットワークが定義済みネットワークに含まれていれば、それらが ASA によってアドバタイズされます。さらに、定義されたネットワークに含まれる IP アドレスを持つインターフェイスだけが、EIGRP ルーティング プロセスに参加します。

アドバタイズするネットワークに接続されているインターフェイスを EIGRP ルーティングに参加させない場合は、EIGRP のインターフェイスの設定を参照してください。

ステップ 3

EIGRP ルーティング アップデートで送信するネットワークをフィルタリングします。

distribute-list acl out [connected | ospf | rip | static | interface if_name]

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# network 10.0.0.0 255.0.0.0
ciscoasa(config-router): distribute-list acl out [connected]

インターフェイスを指定して、そのインターフェイスが送信するアップデートだけにフィルタを適用することができます。

EIGRP ルータ コンフィギュレーション内に、複数の distribute-list コマンドを入力できます。

ステップ 4

EIGRP ルーティング アップデートで受信するネットワークをフィルタリングします。

distribute-list acl in [interface if_name]

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# network 10.0.0.0 255.0.0.0
ciscoasa(config-router): distribute-list acl in [interface interface1]

インターフェイスを指定して、そのインターフェイスが受信するアップデートだけにフィルタを適用することができます。


EIGRP Hello 間隔と保持時間のカスタマイズ

ASA は、ネイバーを検出する目的、およびネイバーが到達不能または動作不能になったことを把握する目的で、定期的に hello パケットを送信します。デフォルトでは、hello パケットは 5 秒間隔で送信されます。

hello パケットは、ASA の保持時間をアドバタイズします。保持時間によって、EIGRP ネイバーに、ASA を到達可能と見なす時間の長さを知らせます。アドバタイズされた保持時間内にネイバーが hello パケットを受信しなかった場合、ASA は到達不能と見なされます。デフォルトでは、アドバタイズされる保持時間は 15 秒です(hello 間隔の 3 倍)。

hello 間隔とアドバタイズされる保持時間のいずれも、インターフェイスごとに設定します。保持時間は hello 間隔の 3 倍以上に設定することをお勧めします。

手順


ステップ 1

hello 間隔またはアドバタイズされる保持時間を設定するインターフェイスのインターフェイス コンフィギュレーション モードに入ります。

interface phy_if

例:


ciscoasa(config)# interface inside

ステップ 2

hello 間隔を変更します。

hello-interval eigrp as-num seconds

例:


ciscoasa(config)# hello-interval eigrp 2 60

EIGRP IPv6 の hello 間隔を変更します。

ipv6 hello-interval eigrp as-num seconds

例:


ciscoasa(config)# ipv6 hello-interval eigrp 2 60

ステップ 3

保持時間を変更します。

hold-time eigrp as-num seconds

例:


ciscoasa(config)# hold-time eigrp 2 60

EIGRP IPv6 の保持時間を変更します。

ipv6 hold-time eigrp as-num seconds

例:


ciscoasa(config)# ipv6 hold-time eigrp 2 60


自動ルート集約の無効化

自動ルート集約は、デフォルトでイネーブルになっています。EIGRP ルーティング プロセスは、ネットワーク番号の境界で集約を行います。このことは、不連続ネットワークがある場合にルーティングの問題の原因となることがあります。

たとえば、ネットワーク 192.168.1.0、192.168.2.0、192.168.3.0 が接続されているルータがあり、それらのネットワークがすべて EIGRP に参加しているとすると、EIGRP ルーティング プロセスはそれらのルートに対しサマリー アドレス 192.168.0.0 を作成します。さらにネットワーク 192.168.10.0 と 192.168.11.0 が接続されているルータがこのネットワークに追加され、それらのネットワークが EIGRP に参加すると、これらもまた 192.168.0.0 として集約されます。トラフィックが誤った場所にルーティングされる可能性をなくすために、競合するサマリー アドレスを作成するルータでの自動ルート集約をディセーブルにする必要があります。

手順


ステップ 1

EIGRP ルーティング プロセスを作成して、この EIGRP プロセスのルータ コンフィギュレーション モードを開始します。

router eigrp as-num

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2

as-num 引数には、EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号を指定します。

ステップ 2

自動ルート集約をディセーブルにします。

no auto-summary

例:


ciscoasa(config-router)# no auto-summary

自動サマリー アドレスのアドミニストレーティブ ディスタンスは 5 です。


EIGRP でのデフォルト情報の設定

EIGRP アップデート内のデフォルト ルート情報の送受信を制御できます。デフォルトでは、デフォルト ルートが送信され、受け入れられます。デフォルト情報の受信を禁止するように ASA を設定すると、候補のデフォルト ルート ビットが受信ルート上でブロックされます。デフォルト情報の送信を禁止するように ASA を設定すると、アドバタイズされるルートのデフォルト ルート ビット設定が無効になります。

手順


ステップ 1

EIGRP ルーティング プロセスを作成して、この EIGRP プロセスのルータ コンフィギュレーション モードを開始します。

router eigrp as-num

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2

as-num 引数には、EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号を指定します。

ステップ 2

EIGRP ルーティングに参加するインターフェイスとネットワークを設定します。

network ip-addr [mask]

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# network 10.0.0.0 255.0.0.0

このコマンドで、1 つ以上の network 文を設定できます。

直接接続されるネットワークとスタティック ネットワークが定義済みネットワークに含まれていれば、それらが ASA によってアドバタイズされます。さらに、定義されたネットワークに含まれる IP アドレスを持つインターフェイスだけが、EIGRP ルーティング プロセスに参加します。

アドバタイズするネットワークに接続されているインターフェイスを EIGRP ルーティングに参加させない場合は、EIGRP のインターフェイスの設定を参照してください。

ステップ 3

候補となるデフォルト ルート情報の送受信を制御します。

no default-information {in | out | WORD}

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# network 10.0.0.0 255.0.0.0
ciscoasa(config-router)# no default-information {in | out | WORD}

(注)  

 

no default-information in コマンドを入力すると、候補のデフォルト ルート ビットが受信ルート上でブロックされます。no default-information out コマンドを入力すると、アドバタイズされるルートのデフォルト ルート ビット設定がディセーブルになります。


EIGRP スプリット ホライズンのディセーブル化

スプリット ホライズンは、EIGRP アップデート パケットとクエリー パケットの送信を制御します。スプリット ホライズンがインターフェイスでイネーブルになると、アップデート パケットとクエリー パケットは、このインターフェイスがネクスト ホップとなる宛先には送信されません。この方法でアップデート パケットとクエリー パケットを制御すると、ルーティング ループが発生する可能性が低くなります。

デフォルトでは、スプリット ホライズンはすべてのインターフェイスでイネーブルになっています。

スプリット ホライズンは、ルート情報が、その情報の発信元となるインターフェイスからルータによってアドバタイズされないようにします。通常、特にリンクが切断された場合には、この動作によって複数のルーティング デバイス間の通信が最適化されます。ただし、非ブロードキャスト ネットワークでは、この動作が望ましくない場合があります。このような場合は、EIGRP を設定したネットワークを含め、スプリット ホライズンをディセーブルにする必要が生じることもあります。

インターフェイスでのスプリット ホライズンをディセーブルにする場合、そのインターフェイス上のすべてのルータとアクセス サーバーに対してディセーブルにする必要があります。

EIGRP スプリット ホライズンをディセーブルにするには、次の手順を実行します。

手順


ステップ 1

EIGRP で使用される遅延値を変更するインターフェイスのインターフェイス コンフィギュレーション モードに入ります。

interface phy_if

例:


ciscoasa(config)# interface phy_if

ステップ 2

スプリット ホライズンをディセーブルにします。

no split-horizon eigrp as-number

例:


ciscoasa(config-if)# no split-horizon eigrp 2

EIGRP IPv6 のスプリットホライズンをディセーブルにします。

no ipv6 split-horizon eigrp as-number

例:


ciscoasa(config-if)# no ipv6 split-horizon eigrp 2


EIGRP プロセスの再始動

EIGRP プロセスを再始動したり、再配布またはカウンタをクリアしたりすることができます。

手順


EIGRP プロセスを再始動するか、再配布またはカウンタをクリアします。

clear eigrp pid {1-65535 | neighbors | topology | events)}

例:


ciscoasa(config)# clear eigrp pid 10 neighbors


EIGRPv6 プロセスの設定

ここでは、システムで EIGRP IPv6 プロセスをイネーブルにして設定する方法について説明します。

EIGRPv6 の有効化

ASA で有効にできる EIGRPv6 ルーティングプロセスは 1 つだけです。

手順


IPv6 の EIGRP ルーティングプロセスを作成して、この EIGRP プロセスのルータ コンフィギュレーション モードを開始します。

ipv6 router eigrp as-num

例:

ciscoasa(config)# ipv6 router eigrp 2

as-num 引数には、EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号を指定します。


EIGRPv6 のフィルタルール


(注)  


この手順を開始する前に、標準の ACL を作成し、その中にアドバタイズするルートを定義する必要があります。つまり、標準の ACL を作成し、その中に送信または受信したアップデートからフィルタリングするルートを定義します。


手順


ステップ 1

EIGRP ルーティング プロセスを作成して、この EIGRP プロセスのルータ コンフィギュレーション モードを開始します。

ipv6 router eigrp as-num

例:


ciscoasa(config)# ipv6 router eigrp 2

as-num 引数には、EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号を指定します。

ステップ 2

インターフェイスからアドバタイズされる EIGRP for IPv6 ルーティングアップデートに、プレフィックスリストを適用します。

distribute-list prefix-list name out interface if_name

例:


ciscoasa(config)# ipv6 router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# distribute-list acl out interface interface2

EIGRP ルータ コンフィギュレーション内に、複数の distribute-list コマンドを入力できます。

ステップ 3

インターフェイス上で受信される EIGRP for IPv6 ルーティングアップデートに、プレフィックスリストを適用します。

distribute-list prefix-list name in [interface if_name]

例:


ciscoasa(config)# ipv6 router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# distribute-list acl in interface interface1


EIGRPv6 のインターフェイスの設定

アドバタイズするネットワークに接続されているインターフェイスを EIGRP ルーティングに参加させない場合は、インターフェイスが接続されているネットワークが対象に含まれるように ASA を設定し、passive-interface コマンドを使用してそのインターフェイスが EIGRP アップデートを送受信しないようにします。

手順


ステップ 1

EIGRP ルーティングプロセスを作成して、この EIGRP プロセスのルータ コンフィギュレーション モードを開始します。

ipv6 router eigrp as-num

例:


ciscoasa(config)# ipv6 router eigrp 2

as-num 引数には、EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号を指定します。

ステップ 2

候補となるデフォルト ルート情報の送受信を制御します。

no default-information {in | out | WORD}

例:


ciscoasa(config)# ipv6 router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# network 10.0.0.0 255.0.0.0
ciscoasa(config-router)# no default-information {in | out | WORD}

no default-information in コマンドを入力すると、候補のデフォルト ルート ビットが受信ルート上でブロックされます。

no default-information out コマンドを入力すると、アドバタイズされるルートのデフォルト ルート ビット設定がディセーブルになります。

詳細については、EIGRP でのデフォルト情報の設定を参照してください。

ステップ 3

hello 間隔を変更します。

ipv6 hello-interval eigrp as-num seconds

例:


ciscoasa(config-if)# int gigabitEthernet 0/0
ciscoasa(config-if)# ipv6 hello-interval eigrp 2 60 

詳細については、EIGRP Hello 間隔と保持時間のカスタマイズを参照してください。

ステップ 4

保持時間を変更します。

ipv6 hold-time eigrp as-num seconds

例:


ciscoasa(config-if)# int gigabitEthernet 0/0
ciscoasa(config-if)# ipv6 hold-time eigrp 2 60 

詳細については、EIGRP Hello 間隔と保持時間のカスタマイズを参照してください。


EIGRPv6 のパッシブインターフェイスの設定

1 つ以上のインターフェイスを受動インターフェイスとして設定できます。EIGRPv6 の場合、受動インターフェイスではルーティングアップデートが送受信されません。

手順

ステップ 1

EIGRPv6 ルーティングプロセスを作成して、この EIGRP プロセスのルータ コンフィギュレーション モードを開始します。

ipv6 router eigrp as-num

例:

ciscoasa(config)# ipv6 router eigrp 2

as-num 引数には、EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号を指定します。

ステップ 2

インターフェイスが EIGRP ルーティング メッセージを送受信しないようにします。

passive-interface {default | if-name}

例:

ciscoasa(config)# ipv6 router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# passive-interface {default}

default キーワードを使用すると、すべてのインターフェイスで EIGRPv6 ルーティングアップデートが無効になります。nameif コマンドで定義したインターフェイス名を指定すると、指定したインターフェイスで EIGRP ルーティング アップデートが無効になります。EIGRPv6 ルータ コンフィギュレーションでは、複数の passive-interface コマンドを使用できます。


EIGRPv6 へのルートの再配布

OSPF、BGP、ISIS で検出されたルートを EIGRP IPv6 ルーティングプロセスに再配布できます。スタティック ルートおよび接続されているルートも、EIGRP ルーティング プロセスに再配布できます。

手順


ステップ 1

EIGRP ルーティング プロセスを作成して、この EIGRP プロセスのルータ コンフィギュレーション モードを開始します。

ipv6 router eigrp as-num

例:


ciscoasa(config)# ipv6 router eigrp 2

as-num 引数には、EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号を指定します。

ステップ 2

(オプション)EIGRP ルーティング プロセスに再配布するルートに適用するデフォルト メトリックを指定します。

default-metric[ bandwidth | delay | reliability | loading | mtu]

例:


ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# default-metric bandwidth 10 delay 20

EIGRP ルータ コンフィギュレーション内にデフォルト メトリックを指定しない場合、各 redistribute コマンドにメトリック値を指定する必要があります。redistribute コマンドで EIGRP メトリックを指定し、EIGRP ルータ コンフィギュレーション内に default-metric コマンドが含まれている場合、redistribute コマンドのメトリックが使用されます。

(注)  

 

default-metric を指定すると、ASA の show run-config コマンドでは default-metric 設定は表示されません。

ステップ 3

接続済みルートを EIGRP ルーティング プロセスに再配布します。

redistribute connected [metric bandwidth | delay | reliability | loading | mtu] [route-map map_name]

例:


ciscoasa(config-router)# redistribute connected [metric bandwidth 100] [route-map map_name]

EIGRP ルータ コンフィギュレーション内に default-metric コマンドが含まれていない場合、redistribute コマンドに EIGRP メトリック値を指定する必要があります。

ステップ 4

スタティック ルートを EIGRP ルーティング プロセスに再配布します。

redistribute static [metric bandwidth | delay | reliability | loading | mtu] [route-map map_name]

例:


ciscoasa(config-router): redistribute static [route-map map_name]

ステップ 5

ルートを OSPF ルーティング プロセスから EIGRP ルーティング プロセスに再配布します。

redistribute ospf pid [match {internal | external [1 | 2] | nssa-external [1 | 2]}] [metric bandwidth delay reliability loading mtu] [route-map map_name]

例:


ciscoasa(config-router)# redistribute ospf pid [match {internal | external [1 | 2] | 
nssa-external [1 | 2]}][route-map map_name]

ステップ 6

BGP ルーティングプロセスからのルートを EIGRP ルーティングプロセスに再配布します。

redistribute bgp [metric bandwidth delay reliability load mtu] [route-map map_name]

例:


ciscoasa(config-router)# redistribute bgp [route-map map_name]

ステップ 7

ISIS ルーティングプロセスからのルートを EIGRP ルーティングプロセスに再配布します。

redistribute isis [level-1 | level-2 | level-1-2][include-connected | metric number | metric-type | tag | route-map map_name]

例:


ciscoasa(config-router)# redistribute isis [level-1] [metric delay 20 [route-map map_name]]


EIGRPv6 ネイバーの定義

EIGRP hello パケットはマルチキャスト パケットとして送信されます。EIGRP ネイバーが、トンネルなど、非ブロードキャスト ネットワークを越えた場所にある場合、手動でネイバーを定義する必要があります。手動で EIGRP ネイバーを定義すると、hello パケットはユニキャスト メッセージとしてそのネイバーに送信されます。

手順


ステップ 1

EIGRP ルーティング プロセスを作成して、この EIGRP プロセスのルータ コンフィギュレーション モードを開始します。

ipv6 router eigrp as-num

例:


ciscoasa(config)# ipv6 router eigrp 2

as-num 引数には、EIGRP ルーティング プロセスの自律システム番号を指定します。

ステップ 2

スタティック ネイバーを定義します。

neighbor ip-addr interface if_name

例:


ciscoasa(config)# ipv6 router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# neighbor 2001:DB8:0:ABCD::1 interface interface1

ip-addr 引数には、ネイバーの IP アドレスを指定します。

if-name 引数は、ネイバーを使用可能にしている nameif コマンドで指定したインターフェイスの名前です。1 つの EIGRP ルーティング プロセスに対して複数のネイバーを定義できます。


EIGRP のモニタリング

次のコマンドを使用して、EIGRP ルーティング プロセスをモニタできます。コマンド出力の例と説明については、コマンド リファレンスを参照してください。また、ネイバー変更メッセージとネイバー警告メッセージのロギングをディセーブルにできます。

さまざまな EIGRP ルーティング統計情報をモニターまたはディセーブル化するには、次のいずれかのコマンドを入力します

  • router-id

    EIGRP プロセスの router-id を表示します。

  • show eigrp [as-number] events [{start end} | type]

    EIGRP イベント ログを表示します。

  • show eigrp [as-number] interfaces [if-name] [detail]

    EIGRP ルーティングに参加するインターフェイスを表示します。

  • show eigrp [ as-number] neighbors [detail | static] [if-name]

    EIGRP ネイバー テーブルを表示します。

  • show eigrp [as-number] topology [ip-addr [mask] | active | all-links | pending | summary | zero-successors]

    EIGRP トポロジ テーブルを表示します。

  • show eigrp [as-number] traffic

    EIGRP トラフィックの統計情報を表示します。

  • show mfib cluster

    転送する側のエントリおよびインターフェイスに関する MFIB 情報を表示します。

  • show route cluster

    クラスタリングに関する追加ルートの同期の詳細を表示します。

  • no eigrp log-neighbor-changes

    ネイバー変更メッセージのロギングをディセーブルにします。EIGRP ルーティング プロセスのルータ コンフィギュレーション モードでこのコマンドを入力します。

  • no eigrp log-neighbor-warnings

    ネイバー警告メッセージのロギングをディセーブルにします。

  • show ipv6 eigrp as-number interface interface

    EIGRP IPv6トポロジテーブルを表示します。

  • show ipv6 eigrp [as-number] traffic

    EIGRP IPv6 トラフィックの統計情報を表示します。

  • show ipv6 eigrp [ as-number] neighbors[ if-name]

    EIGRP IPv6 ネイバーテーブルを表示します。

  • show ipv6 eigrp interfaces[ if-name]

    特定のインターフェイスに関するネイバー関連情報を表示します。

  • show ipv6 eigrp [as-number] topology [ipv6-address [mask] | active | all-links | pending | summary | zero-successors]

    EIGRP IPv6トポロジテーブルを表示します。

  • show ipv6 eigrp [as-number] events [{start - end} | type]

    EIGRP IPv6 イベントログを表示します。

  • show ipv6 eigrp timers

    設定されている hello タイマーとホールドタイマーを表示します。

EIGRP の例

次の例に、さまざまなオプションのプロセスを使用して EIGRP をイネーブルにし、設定する方法を示します。

手順


ステップ 1

EIGRP をイネーブルにするには、次のコマンドを入力します。


ciscoasa(config)# router eigrp 2
ciscoasa(config-router)# network 10.0.0.0 255.0.0.0

ステップ 2

EIGRP ルーティング メッセージの送信または受信からインターフェイスを設定するには、次のコマンドを入力します。


ciscoasa(config-router)# passive-interface {default}

ステップ 3

EIGRP ネイバーを定義するには、次のコマンドを入力します。


ciscoasa(config-router)# neighbor 10.0.0.0 interface interface1

ステップ 4

EIGRP ルーティングに参加するインターフェイスとネットワークを設定するには、次のコマンドを入力します。


ciscoasa(config-router)# network 10.0.0.0 255.0.0.0

ステップ 5

EIGRP ディスタンス計算で使用されるインターフェイス遅延値を変更するには、次のコマンドを入力します。


ciscoasa(config-router)# exit
ciscoasa(config)# interface phy_if
ciscoasa(config-if)# delay 200


EIGRP の履歴

表 1. EIGRP の機能の履歴

機能名

プラットフォーム リリース

機能情報

EIGRP サポート

7.0(1)

Enhanced Interior Gateway Routing Protocol(EIGRP)を使用するデータのルーティング、認証の実行、およびルーティング情報の再配布とモニタリングのサポートが追加されました。

route eigrp コマンドが導入されました。

マルチ コンテキスト モードのダイナミック ルーティング

9.0(1)

EIGRP ルーティングは、マルチ コンテキスト モードでサポートされます。

クラスタ

9.0(1)

EIGRP の場合、バルク同期、ルートの同期およびレイヤ 2 ロード バランシングは、クラスタリング環境でサポートされます。

show route clusterdebug route cluster、show mfib cluster、debug mfib cluster の各コマンドが導入または変更されました。

EIGRP Auto-Summary

9.2(1)

EIGRP の [Auto-Summary] フィールドはデフォルトでディセーブルになりました。

EIGRPv6 のサポート

9.20(1)

Enhanced Interior Gateway Routing Protocol(EIGRP)を使用するデータのルーティング、認証の実行、およびルーティング情報の再配布とモニタリングについて IPv6 のサポートが追加されました。

次のコマンドが導入されました。ipv6 eigrp ipv6 hello-interval eigrp ipv6 hold-time eigrp ipv6 split-horizon eigrp show ipv6 eigrp interface show ipv6 eigrp traffic show ipv6 eigrp neighbors show ipv6 eigrp interface ipv6 summary-address eigrp show ipv6 eigrp topology show ipv6 eigrp events show ipv6 eigrp timers clear ipv6 eigrp 、および clear ipv6 router eigrp