レイヤ 2 トランスペアレント ファイアウォール

レイヤ 2 トランスペアレント ファイアウォールは、ブリッジされたパケットに対して動作し、ローカル スイッチド イーサネット ポートのペアで有効になります。これらのポート経由で転送される埋め込み IP パケットは、ルーティング ネットワーク内の通常の IP パケットと同様に検査されます。トランスペアレント ファイアウォール設定では、ゾーンベース ファイアウォールまたはレイヤ 3 ファイアウォール設定をレイヤ 2 インターフェイスに適用できます。

このモジュールでは、レイヤ 2 トランスペアレント ファイアウォール機能の概要を紹介します。

レイヤ 2 トランスペアレント ファイアウォールのサポートに関する制約事項

  • アドレス解決プロトコル(ARP)インスペクションはサポートされていません。

  • ブリッジ ドメイン、ブリッジ ドメイン インターフェイス(BDI)、オーバーレイ トランスポート仮想化(OTV)、X-Connect、仮想プライベート LAN サービス(VPLS)、VxLAN、非 IP フローといったレイヤ 2 フォワーディング テクノロジーはサポートされません。

  • イーサネット フレームでは、通常の IP または単純な VLAN のみがサポートされています。トランスペアレント ファイアウォールは TCP リセット(RST)パケットを生成し、これらのパケットをサポートされているイーサネット フレームで送信します。

  • TCP RST はボックス内高可用性スイッチオーバーの後ではサポートされません。

  • 仮想 TCP(vTCP)はサポートされません。

  • ネットワーク アドレス変換(NAT)、ボックスツーボックス(B2B)高可用性、マルチプロトコル ラベル スイッチング(MPLS)、仮想ルーティングおよび転送(VRF)インスタンス、VRF 対応ソフトウェア インフラストラクチャ(VASI)、Locator-ID Separation Protocol(LISP)はレイヤ 2 スイッチ パスではサポートされません。

  • イーサネット運用管理および保守(OAM)、接続障害管理(CFM)といった非 IP パケット フローはサポートされません。

  • トランスペアレント ファイアウォール クラス マップでは、レイヤ 2 ベースのアクセス コントロール リスト(ACL)はサポートされません。

レイヤ 2 トランスペアレント ファイアウォールについて

レイヤ 2 トランスペアレント ファイアウォールのサポート

従来のゾーンベース ファイアウォールは、ネットワーク内でレイヤ 3 ノードのように機能し、ノードをパス スルーする IP トラフィックを検査します。従来のファイアウォールはルーテッド ホップであり、保護されたサブネットのいずれかに接続するホストのデフォルト ゲートウェイとして機能します。ただし、このレイヤ 3 ファイアウォールを既存のネットワークに配置するには、ネットワークを再びサブネット化しなければならないため、多くの時間とリソースが必要です。レイヤ 2 トランスペアレント ファイアウォールはネットワークに対して透過的であり、セグメント間でレイヤ 3 の分離は必要ありません。トランスペアレント ファイアウォールは、「Bump In The Wire」または「ステルス ファイアウォール」のように動作し、接続されたデバイスへのルータ ホップとしては認識されません。トランスペアレント ファイアウォールはルーティング対象のホップではないので、既存のネットワークに容易に導入できます。IP 再アドレッシングは不要です。トランスペアレント ファイアウォールはブリッジされたパケットに対して動作し、レイヤ 3 ファイアウォールはルーティングされるパケットに対して動作します。

トランスペアレント ファイアウォールは、ローカル スイッチド イーサネット ポートのペアで有効になります。これらのポート経由で転送される埋め込み IP パケットは、ルーティング ネットワーク内の通常の IP パケットと同様に検査されます。トランスペアレント ファイアウォールが検査するのは IP パケットのみです。

トランスペアレント ファイアウォール セッションは、5 タプル情報(送信元 IP アドレス、宛先 IP アドレス、送信元ポート、宛先ポート、プロトコル)が格納された IP レイヤ 3 およびレイヤ 4 ヘッダーを使用して作成されます。トランスペアレント ファイアウォールはレイヤ 2 プロトコルとしてイーサネットのみをサポートし、IPv4 アドレスと IPv6 アドレスの両方をサポートします。

トランスペアレント ファイアウォール設定では、ゾーンベース ファイアウォールまたはレイヤ 3 ファイアウォール設定をレイヤ 2 インターフェイスに適用できます。レイヤ 3 ファイアウォールとレイヤ 2 トランスペアレント ファイアウォールの両方を同じデバイスで共存させることができます。

トランスペアレント ファイアウォールでは、次のトポロジで IP(Internet Control Message Protocol(ICMP)、TCP、UDP)インスペクションをサポートします。

  • 2 つの GigabitEthernet インターフェイス間。

  • GigabitEthernet インターフェイスと GigabitEthernet サブインターフェイス間。

  • 2 つの GigabitEthernet サブインターフェイス間。

トランスペアレント ファイアウォールは、ポリシーを関連付けずに次のパケットを渡します。

  • アドレス解決プロトコル(ARP)

  • マルチキャスト パケット:Routing Information Protocol(RIP)、Open Shortest Path First(OSPF)、OSPF バージョン 3(OSPFv3)、Enhanced Interior Gateway Routing Protocol(EIGRP)IPv4 および IPv6 パケット、Intermediate System-to-Intermediate System(ISIS)IPv4 および IPv6 パケット

  • Protocol-Independent Multicast(PIM)IPv4 および IPv6 パケット

  • Hot Standby Router Protocol(HSRP)、Virtual Router Redundancy Protocol(VRRP)、および Gateway Load Balancing Protocol(GLBP)

  • Internet Group Management Protocol(IGMP)およびマルチキャスト リスナー検出(MLD)

レイヤ 2 トランスペアレント ファイアウォールの設定方法

ゾーンベース ファイアウォールと同じ設定を使用してレイヤ 2 トランスペアレント ファイアウォールを設定できます。詳細は、「ゾーンベース ファイアウォール」モジュールを参照してください。

レイヤ 2 トランスペアレント ファイアウォールの設定例

例:レイヤ 2 トランスペアレント ファイアウォールの設定

次に、TCP インスペクションと UDP インスペクションを使用してレイヤ 2 トランスペアレント ファイアウォールを設定する例を示します。

  • クラス マップを定義します。

  • ポリシー マップを定義します。

  • ゾーンとゾーン ペアを定義します。

  • インターフェイス GigabitEthernet 0/0/0 と GigabitEthernet 0/0/1 をファイアウォール ゾーンにアタッチします。

  • GigabitEthernet 0/0/0 と GigabitEthernet 0/0/1 を接続することにより、ローカル スイッチングを有効にします。

!Class map configuration
Device# configure terminal
Device(config)# class-map typ inspect match-any lan-wan-inspect-tcp
Device(config-cmap)# match protocol tcp
Device(config-cmap)# match protocol udp
Device(config-cmap)# match protocol icmp
Device(config-cmap)# exit
Device(config-cmap)# exit
Device(config)# class-map type inspect match-any wan-lan-inspect-udp
Device(config-cmap)# match protocol tcp
Device(config-cmap)# match protocol udp
Device(config-cmap)# match protocol icmp
Device(config-cmap)# exit

Device(config-cmap)# exit

!Policy map configuration
Device(config)# policy-map type inspect policy-wan-lan
Device(config-pmap)# class type inspect lan-wan-inspect-tcp
Device(config-pmap-c)# inspect
Device(config-pmap-c)# exit
Device(config-pmap)# class class-default
Device(config-pmap)# class type inspect wan-lan-inspect-udp
Device(config-pmap-c)# inspect
Device(config-pmap-c)# exit
Device(config-pmap)# class class-default
Device(config-pmap-c)# exit
Device(config-pmap)# exit

!Zones and zone pair configuration
Device(config)# zone security lan
Device(config-sec-zone)# exit
Device(config)# zone security wan
Device(config-sec-zone)# exit
Device(config)# zone-pair security lan2wan source lan destination wan
Device(config-sec-zone-pair)# service-policy type inspect policy-lan-wan
Device(config-sec-zone-pair)# exit
Device(config)# zone-pair security wan2lan source wan destination lan
Device(config-sec-zone-pair)# service-policy type inspect policy-wan-lan
Device(config-sec-zone-pair)# exit

! Interface configuration
Device(config)# interface gigabitethernet 0/0/0
Device(config-if)# no ip address
Device(config-if)# zone-member security lan
Device(config-if)# exit
Device(config)# interface gigiabitethernet 0/0/1
Device(config-if)# no ip address
Device(config-if)# zone-member security wan
Device(config-if)# exit

!Local switching configuration
Device(config)# connect l2fw-conn gigabitethernet 0/0/0 gigabitethernet 0/0/1
Device(config)# end

レイヤ 2 トランスペアレント ファイアウォールに関する追加情報

関連資料

関連項目 マニュアル タイトル

Cisco IOS コマンド

『Cisco IOS Master Command List, All Releases』

セキュリティ コマンド

ゾーンベースのファイアウォール

Zone-Based Policy Firewalls, Configuration Guide』の「Zone-Based Policy Firewalls」モジュール

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レイヤ 2 トランスペアレント ファイアウォールに関する機能情報

次の表に、このモジュールで説明した機能に関するリリース情報を示します。この表は、ソフトウェア リリース トレインで各機能のサポートが導入されたときのソフトウェアリリースだけを示しています。その機能は、特に断りがない限り、それ以降の一連のソフトウェアリリースでもサポートされます。

プラットフォームのサポートおよびシスコ ソフトウェアイメージのサポートに関する情報を検索するには、Cisco Feature Navigator を使用します。Cisco Feature Navigator にアクセスするには、www.cisco.com/go/cfn に移動します。Cisco.com のアカウントは必要ありません。
表 1. レイヤ 2 トランスペアレント ファイアウォールに関する機能情報

機能名

リリース

機能情報

レイヤ 2 トランスペアレント ファイアウォール

Cisco IOS XE 3.15S

レイヤ 2 トランスペアレント ファイアウォールは、ブリッジされたパケットに対して動作し、ローカル スイッチド イーサネット ポートのペアで有効になります。これらのポート経由で転送される埋め込み IP パケットは、ルーティング ネットワーク内の通常の IP パケットと同様に検査されます。トランスペアレント ファイアウォール設定では、ゾーンベース ファイアウォールまたはレイヤ 3 ファイアウォール設定をレイヤ 2 インターフェイスに適用できます。

この機能は、Cisco ASR 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータとシスコ クラウド サービス ルータ 1000V シリーズでサポートされます。

この機能のために導入または変更されたコマンドはありません。