Cisco Catalyst 4500 シリーズ

Cisco Universal Power Over Ethernet:ネットワークの可能性を引き出す

ホワイトペーパー





Cisco Universal Power Over Ethernet:ネットワークの可能性を引き出す



はじめに


エンタープライズ ワークスペースは、コミュニケーション、コラボレーション、セキュリティ、生産性の向上を目指してネットワークに接続される新たなデバイスと歩調を合わせながら、急速に進化しています。Power over Ethernet(PoE)は、LAN ケーブルを経由してネットワーク接続されたデバイスへの給電方式として近年広く導入され、エンタープライズ ワークスペース環境にあるさまざまなエンドポイントに電力を供給してきました。Cisco® Catalyst® 4500E は PoE テクノロジー市場をリードし、最大 60 W の電力を供給する Universal PoE(UPOE)テクノロジーを採用して、より広範なエンドポイント サポートを可能にし、更なる進化を遂げました。さらに、ハイ アベイラビリティ、運用コストの低減、短期間の導入といった利点も備えています。

このホワイト ペーパーでは、Cisco UPOE テクノロジーの概要を説明します。シスコがどのように PoE テクノロジーを UPOE に進化させたか、企業導入を簡素化した UPOE の使用例、および UPOE アーキテクチャと運用についてご紹介します。

PoE テクノロジーの進化


近年、エンタープライズ ワークスペースはより一層 IP ネットワーク インフラストラクチャに集約されています。PoE は、ネットワーク接続されたデバイスへの給電方式として最も広く導入されているテクノロジーの 1 つであり、次のような利点があります。

  • ハイ アベイラビリティ:深刻な事態(緊急通報など)に備えて電力を確保し、無停止サービスを保証します。
  • 運用コストの削減:ワイヤリング クローゼットのバックアップ電源を一元化し、ネットワークの耐障害性をより低価格で提供します。
  • 導入時間の短縮:すべてのエンドポイントで電源コンセントを使う必要性をなくしたことで、新しいキャンパス アクセス ネットワーク インフラストラクチャを短時間で導入できます。
  • Cisco EnergyWise および Energy-Efficient Ethernet(EEE)と組み合わせることで、コストを削減しながらコーポレート サステナビリティ要件を容易に実現します。

コミュニケーション、コラボレーション、セキュリティ、および生産性の向上を目的として、より多くのエンド デバイスが導入されてエンタープライズ ワークスペースが進化するにつれ、PoE の必要性も、これまで以上に大きな消費電力で常に最新のエンド デバイスに対応する方向に変化しています。図 1 に、PoE の進化を示します。

図 1 PoE 標準と Cisco Catalyst 4500E によるシスコの供給電力の変化

図 1 PoE 標準と Cisco Catalyst 4500E によるシスコの供給電力の変化
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シスコは、2000 年に第一世代のシスコ先行標準 PoE を発表して以来、Power over Ethernet テクノロジーをリードしてきました。第一世代では、データ トラフィックを運ぶイーサネット ケーブルから、エンド デバイスに最大 6.3 W の給電が可能でした。この先行標準 PoE は、Cisco IP Phone 7906G/7911G/7941G などのエンドポイントをサポートしていました。

2003 年 6 月、IEEE は Power over Ethernet テクノロジーの IEEE 802.3af を承認しました。この標準では、Power-Sourcing Equipment(PSE; 給電側機器)とも呼ばれるネットワーク デバイスから、Powered Device(PD; 受電デバイス)とも呼ばれるエンド デバイスへの最大供給電力が 15.4 W と規定されました。ケーブル損失のため、PD が利用できる平均最大消費電力は 12.95 W です。これは、Cisco IP Phone 7941G-GE/7961G-GE/7985G およびワイヤレス アクセス ポイントなどの幅広いエンド デバイスに拡大されました。

続々と登場する消費電力の大きなエンド デバイスに対応するため、IEEE は給電能力を最大 30 W に拡大した新標準 802.3at を発表しました。この標準は、IEEE 802.11n のワイヤレス アクセス ポイント、防犯用監視カメラなどのより新しいデバイスを含めた、広い範囲のエンド デバイスに対象を拡大しています。Cisco Catalyst 4500E は、2007 年に 30 W PoE テクノロジーを導入した業界初のイーサネット スイッチでした。IEEE 802.3at 標準が登場する 2 年前のことです。さらに、2009 年に承認された IEEE 802.3at 標準にも準拠しています。

エンタープライズ ワークスペースにネットワーク接続デバイスが増え、消費電力効率がアップしていくと、PoE テクノロジーの利点を活用して、こうしたデバイスのプロビジョニングと導入を簡素化し、コストを抑制するビジネス チャンスも増加します。PoE テクノロジーは、さらに広範囲のデバイス サポートを可能にする、デバイスあたり最大 60 W の給電能力を備えています。業界屈指のスイッチ ポートあたり 60 W PoE を誇る Cisco UPOE は、次世代のワークスペース環境における新たな導入オプションといえます。

UPOE の使用例


Cisco UPOE は、ネットワーク インフラストラクチャを簡素化し、たとえば仮想デスクトップ インフラストラクチャ(VDI)や金融業の立会場、エンタープライズ ワークスペース、会議室、ホテルの客室、小売業などの接続環境の総所有コストを軽減します。業界のリーダーおよび社内の開発担当との協力を通じて、Cisco UPOE とさまざまなエンド デバイスの互換性が実現しました。代表的なエンド デバイスは次のとおりです。

  • Samsung 製一体型ディスプレイ VDI ゼロ クライアント
  • BT IP タレット
  • Cisco Catalyst コンパクト スイッチ
  • Cisco Personal TelePresence® システム
  • 建物管理と防犯用デバイス

次のセクションでは、UPOE の使用例をいくつか紹介します。

仮想デスクトップ インフラストラクチャ

セキュリティ、変化するグローバル ビジネスの動向、TCO 要件、ユーザのモバイル化と多様化といった課題への対策として、仮想デスクトップ インフラストラクチャ(VDI)は企業にますます浸透しつつあります。VDI は、データセンターでホストおよび管理されるデスクトップにいつでも、どこからでもセキュアにアクセスできるようにすることで、従業員、パートナー、コンサルタントのワークスタイルを根本から変えます。次のような利点があります。

  • コンプライアンス、データの安全の確保、コントロール
  • 迅速なデスクトップ導入とスケーラビリティ
  • 一元化、合理化されたデスクトップのライフサイクル管理を軸とした総所有コストの低減

VDI を導入することにより、エンド ユーザのデバイスはシン クライアント、つまりホスティングされた仮想デスクトップとのやり取りに特化し、よりコストを抑えて最適化されたデバイスに生まれ変わることができます。UPOE はシン クライアントとディスプレイに PoE 電力を供給することで、導入を大幅に簡素化することが可能です。UPOE には次の導入オプションが必要です。

  • 一体型ディスプレイ:ワークスペースの簡素化を目的として、ベンダーが販売を開始したディスプレイ モニタです。シン クライアント、ソフトフォン機能を統合し、1 つに融合したエンド ポイントをエンド ユーザに提供します。テクノロジーの進歩により、この VDI シン クライアント ディスプレイの消費電力を、50 W 以内に収めることに成功しました。たとえば、Samsung NC220 ディスプレイ モニタは、シン クライアント機能を一体化していますが、消費電力は 51 W 未満です。UPOE を採用した VDI システムは UPOE 電力を使用して、柔軟性に優れたプラグアンドプレイ展開が可能です(図 2 を参照)。
図 2 一体型ディスプレイを使用した VDI

図 2 一体型ディスプレイを使用した VDI


  • IP 電話付きのバックパック VDI モジュール:Cisco VXC 2100 は、ユーザにエンド ポイントを提供する Cisco Unified IP Phone 8900 または 9900 シリーズと物理的に統合されたコンパクトなデバイスです。
  • スタンドアロン型 VDI デバイス:Cisco VXC 2200 は、洗練されたデザインを特徴とする、スタンドアロン型で設置面積の小さなゼロ クライアント デバイスです。UPOE によって、ユーザは VXC 2200 とネイティブの LED ディスプレイの両方に電力を供給できます。

VDI の導入において UPOE には次のような利点があります。

柔軟な導入:ワークスペースにデータと電力を同時に供給できるため、ネットワーク管理者は、変化するビジネス ニーズに柔軟に対応し、従業員、ゲスト、契約業者にアクセス権を提供できるようになります。

総所有コストの削減:UPOE は、次のような方法で企業の TCO 削減を支援します。

  • 電源を集約して集中管理し、コンセントの必要性を排除
  • 一般的な電源アダプタと比べても極めて効率の良いスイッチ電源装置
  • ユーザ個人に頼らず、ネットワークを通じて稼働時間を最適化
  • 乱雑なケーブル配線を削減

金融取引所

IP を利用した現在の金融業の立会場では、複数のスクリーンを使用する、リアルタイムにビデオ画像を配信する、電話会議を使用する、最新画像を瞬時に入手するといった、トレーダーからのさまざまな要求があり、ネットワーク設計者はこれに対応しなければなりません。これらの要求すべてに、ネットワークの主要機能であるハイ アベイラビリティ、マルチキャスト/バッファリング アーキテクチャが必要です。Cisco Catalyst 4500E は、今日の IP を活用した立会場のトレンドに対応した最適な機能を備えています。このプラットフォームは、一貫性と低遅延のもとでライン レートのユニキャスト/マルチキャスト スイッチング機能をすべてのユーザ アクセス ポートに提供するほか、金融関連企業には欠かすことのできない豊富なボーダーレス ネットワーク サービスを提供します。これらのサービスには、ハードウェアの全体的な冗長性を備えたハイ アベイラビリティや、インサービス ソフトウェア アップグレード、Flexible Netflow(FnF)によるアプリケーションの可視性などのソフトウェア機能、WireShark などのホステッド アプリケーションが含まれます。

IP トレーディング環境における主要デバイスの 1 つは、金融トレーダーに総合的なコミュニケーション ツールを提供する IP タレット システムです。現在の IP タレットは、ハイ アベイラビリティを確保するために壁面コンセントから電力を集め、各トレーダーの机の下に UPS 電源をバックアップとして設置しています。UPOE テクノロジーを導入することで、IP のデータおよび電力は、Cisco Catalyst 4500E が実現する単体で高い耐障害性を持つネットワーク インフラストラクチャ(図 3 を参照)に集約できます。これによって、ケーブル配線と統合バックアップ電源を簡素化してクローゼット内に収め、総所有コストを大きく削減することが可能になりました。

図 3 Cisco Catalyst 4500E が実現する金融業の立会場

図 3 Cisco Catalyst 4500E が実現する金融業の立会場
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シスコは市場を代表する次の IP タレット ベンダーと提携し、このソリューションを提供しています。

  • British Telecom
  • IP Trade
  • Speakerbus

サービス業と小売業の環境

リピート顧客に大きな比重が置かれるサービス業および小売業では、カスタマー エクスペリエンスが重要な役割を果たします。小売業界は、テクノロジーの発展を最大限に活用して有意義なカスタマー エクスペリエンスを生み出し、収益の向上に繋げています。さらに、上昇するエネルギー コストによって環境に配慮した企業活動への関心は高まりを見せています。革新的な Cisco Catalyst 4500E はこのような戦略に対応することができます。

UPOE により、シスコの最新コンパクト スイッチである 3560C または 2960C で POE パススルーを使用した複数のエンドポイントへの電力供給が実現しました(図 4 参照)。また、ネットワーク エッジに到達し、ワイヤリング クローゼット外への導入時に PoE およびギガビット イーサネットの接続を提供する、先進のセキュリティ サービスを可能にしました。このソリューションは、ワイヤリングの制限を軽減し、ネットワークの一元化を実現しました。

図 4 サービス業における UPOE 導入

図 4 サービス業における UPOE 導入
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主な利点は次のとおりです。

エネルギー管理:中央管理機能によって、ホテルでは客室設備の電源のオン/オフを効率的に管理できるようになりました。チェックイン時間までに客室の準備を整えるだけでなく、宿泊客の退室時に、選択したデバイスの電源をオフにしてホテルのエネルギー コストを抑えることが可能です。

運用の容易さ:UPOE 対応のコンパクト スイッチにより、ホテルではニーズ ベースで会議やセミナーを計画することが可能になりました。

UPOE アーキテクチャ


IEEE 802.3af および IEEE 802.3at で定義されているとおり、PoE は、クラス D(またはカテゴリ 5e)以上のツイスト ペア ケーブル(4 本中 2 本)を使用して電力を供給します。ケーブル配線の仕様は、ISO/IEC 11801:1995 に指定されています。PSE はシングル ペア(ペア 1、2、および 3、6)のみを使用して PSE から PD に電力を供給し、スペアのペア(ペア4、5、および 7、8)はアイドル状態で保留します。このアーキテクチャは、ポートあたり最大 30 W を給電可能です (図 5 を参照)。

図 5 PoE および PoE+ アーキテクチャ

図 5 PoE および PoE+ アーキテクチャ


UPOE は、PoE と同じケーブル配線標準を使用します。2 本のツイスト ペアではなく、標準のイーサネット ケーブル配線(カテゴリ 5e 以上)にある 4 本すべてのペアを使用し、最大 60 W の給電能力を実現しています。

4 ペア システムのアーキテクチャはいたってシンプルで、2 ペアの設計を拡大したものです。2 ペア システムは PSE コントローラを 1 つ使用して、ケーブルのシグナル ペアを通して PD に電力を供給します。新しい 4 ペア システムでは、PSE コントローラを 2 つ使用して、シグナル ペアとスペア ペアの両方に電力を供給します。図 6 に、UPOE アーキテクチャを示します。

図 6 UPoE アーキテクチャ

図 6 UPoE アーキテクチャ


表 1 に、Poe、PoE Plus、UPOE の簡単な比較をまとめました。

表 1 PoE/PoE Plus/UPOE の比較

  PoE PoE Plus UPOE
最小限必要なケーブル タイプ Cat5e Cat5e Cat5e
IEEE 標準 802.3af 802.3at シスコ固有
PSE ポートあたりの最大電力 15.4 W 30 W 60 W
PD への最大電力 12.95 W 25.5 W 51 W
使用するツイスト ペア 2 本 2 本 4 本


UPOE ケーブルの放熱


Cisco UPOE は、イーサネット ケーブル内のツイスト ペア 4 本すべてを使用して電力を供給するため、2 本だけを使う PoE Plus 以上に効率的な給電方式です。同じ電力供給を UPOE と PoE Plus で比較した場合にチャネル損失が半分に削減されることからも、その効率の良さがわかります。さらに、ケーブル配線の規格委員会(IEEE 802.3 の公式連絡委員会の一部であるISO/IECおよびTIA/TR-42)が発表した推奨事項では、UPOE は PoE Plus 要件に準拠した同等の標準のケーブル配線インフラストラクチャを上回る電力に対応できることが指摘されています。この結果を表 2 に示します。

表 2 TIA TR-42 および ISO/IEC によるテスト結果

TIA TR-42 推奨 ISO/IEC 推奨
温度上昇 ツイスト ペアあたりの最大電流 50 V での最大電力 温度上昇 ツイスト ペアあたりの最大電流 50 V での最大電力
5 420 mA 37.5 W 5 420 mA 37.5 W
7.5 520 mA 45.2 W 7.5 550 mA 47.4 W
10 600 mA 51.0 W 10 600 mA 51.0 W
12.5 670 mA 55.8 W 12.5 680 mA 56.4 W
15 720 mA 59.0 W 15 720 mA 59.0 W


最大 51 W の UPOE 容量で、100 本のケーブルからなるバンドルの温度は 10 度上昇します。これは、802.3at で指定された PoE Plus ケーブル標準の要件です。

UPOE の運用


このセクションでは電力の検出、分類、ネゴシエーションから、PD の電力供給にいたる UPOE の運用手順を説明します。

PD の検出と分類

UPOE のハードウェア検出および分類メカニズムは、IEEE 802.3 標準に準拠しています。PSE と PD は、物理レイヤ メカニズム セットを使用してエンドポイントの接続を検出し、続いてそれらのエンドポイントを電力要件のレベルごとにマッピングされた異なるカテゴリに分類します。表 3 に PoE クラスを示します。

表 3 PoE クラス

クラス 使用クラス PSE から出力される最小電力レベル PD での最大電力レベル クラスの説明
0 デフォルト 15.4 W 0.44 〜 12.95 W 分類なし
1 オプション 4.0 W 0.44 〜 3.84 W 極めて低
2 オプション 7.0 W 3.84 〜 6.49 W
3 オプション 15.4 W 6.49 〜 12.95 W
4
4
802.3af で予約済み
802.3at
クラス 0 とみなす
30 W
12.95 W 〜 25.5 W


電源投入時、UPOE デバイスは PoE デバイスとみなされ、デフォルト電力の 15.4 W が割り当てられます。PSE と PD がオンになった後は、電力ネゴシエーション フェーズが始まり、PSE から PD に正確にどれだけの電力がプロビジョニングされるかが決定されます。

UPOE 電力ネゴシエーション

UPOE は、同じ CDP および LLDP 電力ネゴシエーション メカニズムおよびアルゴリズムを使用してインライン電力のネゴシエーションを行います。また、PSE ハードウェア機能および電力バジェットに応じて、最大 60 W の要求を可能にするよう範囲が拡張されています。シスコは、UPOE に新しい CDP および LLDP TLV を採用して、4 ペアの PoE 機能に対応しました。これは、4 ペア PoE 機能を必要とするすべての PD において、少なくともこれらの CDP/LLDP TLV を導入し、管理者が有効にする場合またはデフォルトで有効にする場合に必須です。

  • UPOE LLDP TLV

UPOE には新しい LLDP TLV(「MDI を使用した 4 線式電力」TLV)が採用されました。この TLV はすべての運用モード、すなわち 802.3af、802.3at 以降で LLDP パケット内に存在します。PD はこの TLV を使用して、4 ペア関連の機能と要件を PSE にアドバタイズし、PSE はそれに従って PD に電力を供給します。

表 4 に、LLDP のフレーム形式を示します。

表 4 LLDP フレーム形式

TLV タイプ TLV 情報ストリング長 Cisco OUI 識別子 Cisco OUI サブタイプ PSE/PD 機能
7 ビット 9 ビット 3 オクテット 1 オクテット 1 オクテット


TLV のフィールド値は次のとおりです。

TLV タイプ = 127(組織固有の TLV)

TLV ストリング長 = 5(5 バイト)

Cisco OUI 識別子 = 00-01-42(0x000142)

Cisco OUI サブタイプ = 1

この TLV は 4 ペア PoE ネゴシエーションを必要とする PD および PSE に実装する必要があります。

  • UPOE CDP TLV

新しい CDP TLV(「スペア ペア PoE」TLV)も同じ目的で採用されました。これは 1 オクテット長で、LLDP TLV の PSE/PD 機能フィールドと同じ構造を持っています。表 5 を参照してください。

表 5 PSE/PD 機能フィールド

ビット 機能 値/意味
0 4 ペア PoE サポート 0 = なし
1 = あり
1 スペア ペア検出/分類が必要 0 = なし
1 = あり
2 PD スペア ペアの望ましい状態 0 = 無効
1 = 有効
3 PSE スペア ペアの運用状態 0 = 無効
1 = 有効
B 4:7 予約済み  


図 7 UPOE の運用

図 7 UPOE の運用
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この新しい CDP および LLDP TLV によって、PSE と PD は図 7 に示す手順で UPOE 電力要件をネゴシエーションします。

1. PD は、まずシグナル ペアのみで IEEE 802.3af/at 仕様どおりの電力を供給されます。

2. PD と PSE は、UPOE CDP または LLDP TLV の事前定義を通じて、それぞれの 4 ペア PoE 機能をアドバタイズし続けます。PD が PSE からこの TLV を受け取った時点でそれが 4 ペア PoE 対応の PSE であることがわかるため、30 W 以上の電力レベルを要求できるようになります。また、PSE が PD からこの TLV を受け取った時点でそれが 4 ペア PoE 対応の PD であることがわかるため、スペア ペアに電力を供給できるようになります。

3. シグナル ペアの PD がオンになり、4 ペア TLV が交換された後、PD はスペア ペアをいつでも有効にできるように要求する場合があります。PD は「PD スペア ペアの望ましい状態」ビットを設定して、これを UPOE LLDP または CDP TLV を通して PSE に発信します。この要求を受け取った PSE は、PoE ポート ファームウェア要求を送信して、スペア ペアの電力供給を有効にします。スペア ペアの電力供給がオンになるまでには一定の時間が必要で、その間にポートに一連のイベントが発生します。

4. スペア ペアの電力供給を有効にした後、PSE は「PSE スペア ペアの運用状態」ビット セットを持つ UPOE TLV を PD に送信し、スペア ペアの電力供給に成功したことを知らせます。

5. PD が 30 W 以上の電力が必要な場合、PSE から PSE スペア ペアの運用状態が有効になったことを知らせる TLV を受け取った後でのみ要求できます。要求が PSE に送信されると、PSE に十分な電力バジェットがあれば、要求された電力を該当ポートに割り当て、PD にアドバタイズを戻します。PD には、この応答を受信した場合のみ最大電力が供給されます。

PSE に十分な電力バジェットがないか、ポートに最大電力に対する設定上の制限があるために PD が要求する電力を満たせない場合、スイッチは単純に現在 PD に割り当てられている電力を戻します。したがって、PD は、PSE が以前にアドバタイズした [Allocated Power] フィールドに基づいてハードウェアのみに電力を供給する必要があります。

UPOE スプリッタ


UPOE スプリッタは、PoE をネイティブ サポートしていないエンド デバイスをサポートしつつ、PoE の電力供給による利点を損なわずに柔軟な導入を実現します。

さらに、UPOE スプリッタはデータと PoE 電力の両方を標準のイーサネット ケーブルを使用した PSE から受け取ります。もう一方のスプリッタの端では、データと PoE 電力両方を転送できる標準のイーサネット ケーブルと、電力のみを供給する DC コネクタに分割されます。エンド デバイスの状況に応じて、スプリッタは次の 2 種類のモードで動作します。

  • PoE パススルー モード: このモードでは、スプリッタのイーサネット ケーブルはデータと PoE 電力の両方を通し、DC コネクタは電力のみを通します。イーサネット ケーブルと DC コネクタは、最大 51 W の UPOE 電力を共有します。たとえば、図 8 の VDI 導入では、UPOE スプリッタを使用して専用の PoE 対応シン クライアントを接続し、イーサネット ケーブルを通してデータと電力を供給しています。ディスプレイ モニタの電力は DC コネクタからのみ供給されます。
  • 非 PoE パススルー モード: このモードでは、UPOE スプリッタのイーサネット ケーブルはデータのみを転送し、DC ケーブルは最大 51 W の電力を供給します。このモードは、イーサネット ポートと入力電源を個別に備えたエンド デバイスをサポートします。または、1 台のエンド デバイスとのイーサネット接続のみを行いながら、ワークスペースにある他のエンド デバイスに電力を供給することも可能です。たとえば、図 9 の IP タレットでは、スプリッタのイーサネット ケーブルは IP タレットのイーサネット ポートに接続されてネットワーク接続を行っていますが、電力は DC コネクタから得ています。
図 8 PoE パススルー

図 8 PoE パススルー
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図 9 非 PoE パススルー

図 9 非 PoE パススルー

図 9 非 PoE パススルー


このスプリッタは PSE と電力をネゴシエーションするメカニズムをサポートしていないため、PSE ポートの「強制モード」を設定してスプリッタと接続する必要があります。

強制モードは、PSE および PD 間の L2 ネゴシエーションなしで、自動的にスペア ペアに電力を供給します。このモードは、UPOE 対応デバイスでのみ使用してください。それ以外では、デバイスを破損する恐れがあります。

Cisco Catalyst 4500E UPOE ライン カード


Cisco UPOE は、最初に Cisco Catalyst 4500E シリーズのスイッチング プラットフォームに採用されました。これは、業界で最も広く導入されているモジュラ型アクセス スイッチング プラットフォームです。このプラットフォームは最先端の PoE テクノロジーとして再びリーダーシップを発揮しています。

新しいライン カードである WS-X4748-UPOE+E は、UPOE のサポート用として発表されました。このライン カードの主な機能は次のとおりです。

  • UPOE:24 ポート同時に、ポートあたり最大 60 W の給電が可能
  • 全ポートで同時に、ポートあたり最大 30 W のインライン給電が可能
  • Energy Efficient Ethernet 802.3az
  • IEEE 802.3af/at およびシスコ先行標準 PoE の下位互換性
  • LLDP ベースの動的電力ネゴシエーション機能
  • ノンブロッキングの 48 10/100/1000 Mbps ポート
  • ハードウェアの IEEE 802.1ae および Cisco TrustSec® 機能
  • L2-4 ジャンボ フレームのサポート(最大 9,216 バイト)

UPOE 導入時の電源一元化


UPOE と Cisco Catalyst 4500E を併せて導入する場合、次の AC 電源のいずれかを使用することをお勧めします。

  • PWR-C45-4200ACV
  • PWR-C45-6000ACV

表 6 に、コンバイン モードでこれら 2 つの電源装置がサポートできる PD の最大数を示します。

表 6 サポートされる最大 PD 数

  標準の 802.3af クラス 0 および 3(ポートあたり 15.4 W) 標準の 802.3at クラス 4
(ポートあたり 30 W)
Cisco UPOE
(ポートあたり 60 W)
4200WAC 374 192 96
6000WAC 384 269 134


これらの電源装置の詳細については、 http://www.cisco.com/en/US/docs/switches/lan/catalyst4500/hardware/catalyst4500e/installation/guide/0aspecs.html [英語] の電源仕様を確認してください。

Cisco Power Calculator は、特定の PoE 構成に必要な供給電力の計算に役立ちます。計算結果には、出力電流、出力電力、およびシステムの発熱量が表示されます。また、要件に合った電源装置と、それらの電力管理モードがリスト表示されます。

具体的な構成の電力を計算するには、http://tools.cisco.com/cpc [英語] にある Cisco Power Calculator を使用してください。

まとめ


Cisco Universal PoE は、60 W の給電容量を備え、幅広いエンド デバイスをサポートしてさまざまな状況に使用できます。運用コストの低減、ハイ アベイラビリティ、導入時間の短縮によって、企業への導入を簡素化します。既存の PoE および PoE Plus 導入環境との最大の相互運用性と下位互換性を備えた、透過的な移行プロセスを実現します。Cisco Catalyst 4500E は業界で最も広く導入されているモジュラ型アクセス スイッチング プラットフォームであり、Universal PoE テクノロジーを業界で初めて採用しています。UPOE を採用した Cisco Catalyst 4500E は優れた性能と耐障害性、アプリケーションの詳細な可視性を備え、Cisco TrustSec の安全性と併せて次世代型のエンタープライズ ワークスペースを実現します。