マルチパス動作の設定

MPO の概要

速で動く移動体システムでは、高速な車上のネットワーク接続が期待されます。これは、途切れることのない高信頼な路車間無線通信を意味します。しかし、ネットワークの動的な性質、無線周波数の環境条件、およびさまざまな Wi-Fi 標準に従うローミングにより、パケット損失が発生します。マルチパスオペレーション(MPO)は、複数のワイヤレスパスにパケットの重複する複製を送信することにより、信頼性を高めます。この特許取得済みのテクノロジーは、優先順位の高いトラフィックを最大 4 倍に複製し、ハードウェア障害を減らして可用性を高め、遅延を短縮し、干渉の影響を軽減します。

MPO は、モバイルシステムとワイヤレスネットワークのバックエンド インフラストラクチャの間に複数のラベルスイッチドパス(LSP)を確立するためのアプローチを採用しています。複数の LSP により、優先順位の高いパケットを冗長パス経由で送信することで、パケット損失を低減できます。

MPO の機能

デフォルトでは、MPLS は、車両とインフラストラクチャ間のデータ伝送用に、単一のワイヤレスリンクを使用して単一のトンネルを確立します。2 つの車載無線機で 2 つの無線インターフェイスを使用する場合は、4 つの MPLS トンネルを設定して MPO 保護対象トラフィックを送信できます。保護対象トラフィックに複数のリンクを使用するように MPO を設定すると、使用可能な各ワイヤレスリンク上に MPLS トンネルが作成されます。各ワイヤレスリンクによって、MPO 保護対象トラフィックが複製されます。1 つのワイヤレスリンクに障害が発生しても、他のリンクがトラフィックを複製します。UIW リリース 17.14.1 では、MPO で高速フェールオーバーがサポートされます。

MPO パケットの複製と重複除去

MPO では、複製されたパケットが複数のワイヤレスチャンネルを介して(さまざまなアクセスポイントに)送信されます。これにより信頼性が確保され、受信側アクセスポイントの空間ダイバーシティにより、少なくとも 1 つの複製が正しく受信される可能性が大幅に向上します。重複除去は、異なるワイヤレスパスで受信されたパケットの重複を解消するための、MPO のもう 1 つの機能です。

その結果、配信されるパケットにはシーケンス番号が割り当てられているため、重複除去アルゴリズムはすでに受信したパケットの複製を削除できます。

複製と重複除去のプロセスを以下に示します。

複製と重複除去のアルゴリズムでは、次の処理が実行されます。
  • パケット損失と非対称な高遅延/可変遅延パスに対処します。

  • バッファリングによって発生する追加のパケット遅延をなくします。

  • 重複パケットとシーケンス外のパケットを削除します。

  • CPU、リソース、およびメモリの効率を向上させます。

CLI を使用した MPO 機能の設定

MPO 機能を設定するには、次の CLI コマンドを使用します。

Device# configure fluidity mpo

cos:MPO 冗長性(一度に 1 つの CoS のみ)で保護するトラフィックのサービスクラス(CoS)を設定します。有効な cos の範囲は 0 ~ 7 で、デフォルト値は 6 です。

path:モバイルデバイスのみによって確立される同時冗長パスの最大数を設定します。有効な最大パスリンクの範囲は 1 ~ 4 で、デフォルト値は 1 です。

rssi:ワイヤレスリンクの最小 RSSI しきい値を冗長パス(dB)として設定します(モバイルデバイスのみ)。有効な最小 rssi 値の範囲は 0 ~ 96 で、デフォルト値は 20 です。

telemetry:特定の MPO テレメトリの有効化/無効化を設定します。telemetry 値は、有効:M=1 または無効:M=0(デフォルト)です

Device# configure fluidity mpo status

disabled:MPO の複製/重複除去を無効にします。

rx-only:MPO ステータスを rx-only に設定します。着信 MPLS トラフィックの重複除去し、発信トラフィックを複製しません。

enabled:MPO を有効にします。発信トラフィックを複製して、着信 MPLS トラフィックを重複除去します。

例:
Device# configure fluidity mpo cos C ( C value from 0 to 7 (default 6))
Device# configure fluidity mpo path max N ( N value from 1 to 4 ( default 1))
Device# configure fluidity mpo rssi min R ( R value from 0 to 96 ( default 20))
Device# configure fluidity mpo telemetry T (T can be one of: enabled: M=1
                                             Disabled: M=0 (default))
Device# configure fluidity mpo status S ( S can be one of:
                                          enabled: E=1 F=1
                                          rx-only: E=1 F=0
                                          disabled: E=0 F=1 (default))
次に、MPO カウンタを使用した UDP テレメトリストリームの例を示します。
Device# configure fluidity mpo telemetry <enabled | disabled>
Device# configure telemetry server 192.168.0.200
Device# configure telemetry export enable
Device# configure fluidity mpo telemetry enabled

MPO 設定パラメータを確認するには、次の show コマンドを使用します。

Device# show fluidity mpo config

例:

Device# show fluidity mpo config
                 Status: enabled
                 Path max links: 2
                 RSSI min: 20
                 CoS: 6

CLI を使用した MPO 機能の確認(MPO 監視)

show mpls config コマンドの出力:

Device# show mpls config
                    5.42.42.43:
                    path_id : 0
                    ilm : 136000
                    nhlfe : 16:
                    lbr : 5.42.42.42
                    age : 6.980000028 { 5.42.42.42 5.42.42.43 }

                    path_id : 1
                    ilm : 136001
                    nhlfe : 18:
                    lbr : 5.42.42.42
                    age : 6.970000026 { 5.42.42.42 5.42.42.43 }

show fluidity mpo statistics コマンドの出力:

Device# show fluidity mpo statistics (on Mesh End)
            table-size 2:

             MAC address : 40:36:5A:15:C8:50        8C:89:A5:83:EB:71 
             Tx-1        : 0                        208
             Tx-2        : 0                        208
             Rx-Accept-1 : 178                      0
             Rx-Accept-2 : 30                       0
             Rx-Drop-1   : 30                       0
             Rx-Drop-2   : 178                      0
             Lost-1-only : 0                        0
             Lost        : 0                        0

Device# show fluidity mpo statistics (on Mobile Primary unit)
            table-size 2:

            MAC address : 40:36:5A:15:C8:50        8C:89:A5:83:EB:71 
            Tx-1        : 208                      0
            Tx-2        : 208                      0
            Rx-Accept-1 : 0                        182
            Rx-Accept-2 : 0                        26
            Rx-Drop-1   : 0                        26
            Rx-Drop-2   : 0                        182
            Lost-1-only : 0                        0
            Lost        : 0                        0
 

MAC address:パケットを送信している外部ネットワークデバイスの送信元 L2 アドレス。

Tx-1 および Tx-2:これらのカウンタは、それぞれ、プライマリパスとセカンダリパス(使用可能なすべてのセカンダリパス、つまりパス ID 1 ~ 3 の累積合計)で送信されたパケットの数を表しています。

Rx-Accept-1 および Rx-Accept-2:これらのカウンタは、それぞれ、プライマリパスまたはセカンダリパスのいずれかで重複除去プロセスで受信および破棄されたパケットの数を表しています。

Lost-1-only:セカンダリパスの重複除去プロセスで受信されて受け入れられ、プライマリパスでは受信されず受け入れられなかったパケットの数。

Lost:プライマリパスとセカンダリパスの両方で失われたパケットの累積数。

show fluidity network コマンドの出力:

Device# show fluidity network (on Mesh End and Mobile Primary)

                    unit 5.21.201.60  infrastructure meshend primary
                    vehicles 4  total_mobiles 5
                    infrastructure 1  backbone 0  meshend 5.21.201.60

                    Vehicle ID : + 85313616
                    Path : 0
                    Infrastr.ID : 5.21.201.60
                    Via : R1
                    Mobile ID : 5.21.200.80
                    Via : R2
                    H/O seq : 5710
                    H/O age : 36.597
                    #M: 2
                    Primary ID : 5.21.200.80
                    Secondary IDs : 5.21.201.204

                    Vehicle ID : + 85313616
                    Path : 1
                    Infrastr.ID : 5.21.201.60
                    Via : R2
                    Mobile ID : 5.21.201.204
                    Via : R2
                    H/O seq : 5711
                    H/O age : 5.909
                    #M: 2
                    Primary ID : 5.21.200.80
                    Secondary IDs : 5.21.201.204


(注)  


中間ノード(MP およびモバイルセカンダリ)には、パスのサブセットのみがあります。

MPO パス ID 0:プライマリパス、その他:冗長パス。


show eng-stats コマンドの出力:

Device# show eng-stats (on mobile primary unit)
....
Fluidity role : primary 
vehicle id : 0
static  : 3.21.201.60 [FC:58:9A:15:C7:D2]
mobile  : 4.21.200.80 [FC:58:9A:15:B9:13]
snr : 42
rssi : -54
dop : 40
chan : 132/40
handoff: 21.518258794
time : 2
Current:
ho_seq: 7  pending: false  age: 21.518303221  primary: 5.21.200.80
[0] - <3.21.201.60 - 4.21.200.80> status SUCCESS seq 6 id 0 age 59.469266332 rssi 42
[1] - <4.21.201.60 - 4.21.201.204> status SUCCESS seq 7 id 1 age 21.518317752 rssi 41
last primary: <3.21.201.60 - 4.21.200.80>
free ids: 7 6 5 4 3 2
current missing path mask: 1111110

HO Table
static  : 3.21.201.60 [FC:58:9A:15:C7:D2]
mobile  : 4.21.200.80 [FC:58:9A:15:B9:13]
rssi : 42
dop : 40
chan : 132/40
updated : 74
skip : 0

static  : 4.21.201.60 [FC:58:9A:15:C7:D3]
mobile  :  4.21.201.204 [FC:58:9A:15:E4:D3]
rssi : 41
dop : 40
chan : 100/40
updated : 18
skip : 0
rssi_delta : 6 3
threshold : 35

MPO の制限事項

MPO が有効になっている場合、次のハンドオフ機能は使用できません。

  • ポール禁止およびポール近接

  • 色分け

  • 負荷分散