IP マルチキャストの最適化:IGMP ステート制限

IGMP ステート制限の前提条件

  • IP マルチキャストを有効にして、Protocol Independent Multicast(PIM)インターフェイスを設定するには、『IP Multicast: PIM Configuration Guide』の「Configuring Basic IP Multicast」モジュールに記載されているタスクを使用します。

  • すべての ACL を設定する必要があります。詳細については、『Security Configuration Guide: Access Control Lists』ガイドの「Creating an IP Access List and Applying It to an Interface」モジュールを参照してください。

IGMP ステート制限の制約事項

デバイスごとに 1 つのグローバル制限と、インターフェイスごとに 1 つの制限を設定できます。

IGMP ステート制限に関する情報

ここでは、IGMP ステート制限について説明します。

IGMP ステート制限

IGMP ステート制限機能を使用すると、IGMP ステート リミッタの設定が可能になり、この設定により、IGMP メンバーシップ レポート(IGMP 加入)により生成される mroute ステートの数がグローバルに、またはインターフェイスごとに制限されます。設定されている制限を超えたメンバーシップ レポートは、IGMP キャッシュに入れられません。この機能により、DoS(サービス拒絶)攻撃を防止したり、すべてのマルチキャスト フローがほぼ同量の帯域幅を使用するネットワーク環境でマルチキャスト CAC メカニズムを提供したりできます。


(注)  


IGMP ステート リミッタは、IGMP、IGMP v3lite、および URL Rendezvous Directory(URD)メンバーシップ レポートから生じる route ステートの数に、グローバルまたはインターフェイスごとに制限をかけます。


IGMP ステート制限機能の設計

  • グローバル コンフィギュレーション モードで IGMP ステート リミッタを設定すると、キャッシュに格納できる IGMP メンバーシップ レポートの数に対してグローバルな制限を指定できます。

  • インターフェイス コンフィギュレーション モードで IGMP ステート リミッタを設定すると、IGMP メンバーシップ レポートの数に対してインターフェイスごとの制限を指定できます。

  • ACL を使用すれば、グループまたはチャネルがインターフェイス制限に対してカウントされることがなくなります。標準 ACL または拡張 ACL を指定できます。標準 ACL は、(*, G) ステートがインターフェイスへの制限から除外されるように定義するのに使用できます。拡張 ACL は、(S, G) ステートがインターフェイスへの制限から除外されるように定義するのに使用できます。拡張 ACL は、拡張アクセス リストを構成する許可文または拒否文の中でソース アドレスとソース ワイルドカードに 0.0.0.0 を指定することにより((0, G) とみなされます)インターフェイスへの制限から除外される (*, G) ステートを定義するのにも使用できます。

  • デバイスごとに 1 つのグローバル制限と、インターフェイスごとに 1 つの制限を設定できます。

IGMP ステート リミッタのメカニズム

IGMP ステート リミッタのメカニズムは、次のとおりです。

  • ルータが特定のグループまたはチャネルに関する IGMP メンバーシップ レポートを受信するたびに、Cisco IOS ソフトウェアは、グローバル IGMP ステート リミッタまたはインターフェイスごとの IGMP ステート リミッタが制限に達したかどうかを確認します。

  • グローバル IGMP ステート リミッタだけが設定されていて、その制限に達していない場合は、IGMP メンバーシップ レポートは受け入れられます。設定されている制限に達した場合は、以降の IGMP メンバーシップ レポートは無視され(ドロップされ)、次のいずれかの形式の警告メッセージが生成されます。

    • 
      %IGMP-6-IGMP_GROUP_LIMIT: IGMP limit exceeded for <group (*, group address)> on <interface type number> by host <ip address>
    • 
      %IGMP-6-IGMP_CHANNEL_LIMIT: IGMP limit exceeded for <channel (source address, group address)> on <interface type number> by host <ip address>
      
  • インターフェイスごとの IGMP ステート リミッタだけに達した場合、各制限はそれが設定されているインターフェイスに対してだけカウントされます。

  • グローバル IGMP ステート リミッタとインターフェイスごとの IGMP ステート リミッタの両方が設定されている場合、インターフェイスごとの IGMP ステート リミッタに設定されている制限も実施されますが、グローバル制限により制約されます。

IGMP ステート制限の設定方法

ここでは、IGMP ステート制限を設定する方法について説明します。

IGMP ステート リミッタの設定

IGMP ステート リミッタは、IGMP、IGMP v3lite、および URD メンバーシップ レポートから生じる route ステートの数に、グローバルにかまたはインターフェイスごとに制限をかけます。

グローバルな IGMP ステート リミッタの設定

デバイスごとに 1 つのグローバルな IGMP ステート リミッタを設定するには、次の任意作業を実行します。

手順
  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Device> enable

特権 EXEC モードを有効にします。

  • パスワードを入力します(要求された場合)。

ステップ 2

configure terminal

例:

Device# configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

ip igmp limit number

例:

Device(config)# ip igmp limit 150

IGMP メンバーシップ レポート(IGMP 加入)から生じる mroute ステートの数に対するグローバルな制限を設定します。

ステップ 4

end

例:

Device(config-if)# end

現在のコンフィギュレーション セッションを終了して、特権 EXEC モードに戻ります。

ステップ 5

show ip igmp groups

例:

Device# show ip igmp groups

(任意)デバイスに直接接続されているレシーバと IGMP によって学習されたレシーバを持つマルチキャスト グループを表示します。

インターフェイスごとの IGMP ステート リミッタの設定

インターフェイスごとの IGMP ステート リミッタを設定するには、次の任意作業を実行します。

手順
  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Device> enable

特権 EXEC モードを有効にします。

  • パスワードを入力します(要求された場合)。

ステップ 2

configure terminal

例:

Device# configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

interface type number

例:

Device(config)# interface GigabitEthernet 1/0/0

インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。

  • ホストに接続されているインターフェイスを指定します。

ステップ 4

ip igmp limit number [except access-list ]

例:

Device(config-if)# ip igmp limit 100 

IGMP メンバーシップ レポート(IGMP 加入)の結果として作成される mroute ステートの数に対するインターフェイスごとの制限を設定します。

ステップ 5

次のいずれかを実行します。

  • exit
  • end
例:
Device(config-if)# exit
Device(config-if)# end
  • (任意)現在のコンフィギュレーション セッションを終了して、グローバル コンフィギュレーション モードに戻ります。別のインターフェイスでインターフェイスごとのリミッタを設定するには、ステップ 3 および 4 を繰り返します。

  • 現在のコンフィギュレーション セッションを終了して、特権 EXEC モードに戻ります。

ステップ 6

show ip igmp interface [type number ]

例:

Device# show ip igmp interface 

(任意)インターフェイス上の IGMP のステータスと設定およびマルチキャスト ルーティングに関する情報を表示します。

ステップ 7

show ip igmp groups

例:

Device# show ip igmp groups

(任意)デバイスに直接接続されているレシーバと IGMP によって学習されたレシーバを持つマルチキャスト グループを表示します。

IGMP ステート制限の設定例

ここでは、IGMP ステート制限の設定例を紹介します。

IGMP ステート リミッタの設定例

次の例は、すべてのマルチキャスト フローがほぼ同量の帯域幅を使用するネットワーク環境でマルチキャスト CAC を提供するために、IGMP ステート リミッタを設定する方法を示します。

この例では、図に示すトポロジを使用します。


(注)  


次の図および例では設定内のルータを使用していますが、任意のデバイス(ルータやスイッチ)を使用できます。


図 1. IGMP ステート制限のサンプル トポロジ

この例では、サービス プロバイダーは、300 の標準画質(SD)TV チャネルを提供しています。各 SD チャネルが、約 4 Mbps を使用します。

このサービス プロバイダーは、デジタル加入者回線アクセス マルチプレクサ(DSLAM)に接続されている PE ルータ上のギガビット イーサネット インターフェイスを、リンクの帯域幅の 50%(500 Mbps)をインターネット、音声、およびビデオ オン デマンド(VoD)サービス提供の加入者が利用できるようにしたうえで、リンクの帯域幅の残りの 50%(500 Mbps)は SD チャネル提供の加入者が利用できるようにプロビジョニングしなければなりません。

各 SD チャネルが同量の帯域幅(4 Mbps)を使用するため、このサービス プロバイダーが提供するサービスのプロビジョニングに必要な CAC は、インターフェイスごとの IGMP ステート リミッタを使用して提供できます。インターフェイスごとに必要な必須 CAC を調べるために、チャネルの総数を 4 で割ります(各チャネルが 4 Mbps の帯域幅を使用するため)。したがって、インターフェイスごとに必要な必須 CAC は、次のようになります。

500Mbps / 4Mbps = 125 mroute

必須 CAC がわかったら、サービス プロバイダーは、その結果を使用して、PE ルータ上でギガビット イーサネット インターフェイスをプロビジョニングするのに必要な IGMP ごとのステート リミッタを設定します。このサービス プロバイダーは、ネットワークの CAC 要件に基づいて、ギガビット イーサネット インターフェイスから外部へ転送できる SD チャネルを(常時)125 に制限しなければなりません。SD チャネルのプロビジョンのためのインターフェイスごとの IGMP ステート制限を 125 に設定すると、リンクの帯域幅の 50% は常に SD チャネルの提供に確保しなければならない(しかし使用が 50% を超えてはならない)500 Mbps の帯域幅にインターフェイスをプロビジョニングできます。

次の設定は、サービス プロバイダーがインターフェイスごとの mroute ステート リミッタを使用して、加入者に提供する SD チャネルとインターネット、音声、および VoD サービス用にインターフェイス ギガビット イーサネット 0/0 をプロビジョニングする方法を示します。


interface GigabitEthernet0/0/0
description --- Interface towards the DSLAM ---
.
.
.
ip igmp limit 125

その他の参考資料

関連資料

関連項目

マニュアル タイトル

この章で使用するコマンドの完全な構文および使用方法の詳細。

の「IP マルチキャスト ルーティングのコマンド」の項を参照してください。Command Reference (Catalyst 9200 Series Switches)

IP マルチキャストの最適化の機能履歴:IGMP ステート制限

次の表に、このモジュールで説明する機能のリリースおよび関連情報を示します。

これらの機能は、特に明記されていない限り、導入されたリリース以降のすべてのリリースで使用できます。

リリース

機能

機能情報

Cisco IOS XE Fuji 16.9.2

IP マルチキャストの最適化:IGMP ステート制限

IGMP ステート制限機能を使用すると、IGMP ステート リミッタの設定が可能になり、この設定により、IGMP メンバーシップ レポート(IGMP 加入)により生成される mroute ステートの数がグローバルに、またはインターフェイスごとに制限されます。設定されている制限を超えたメンバーシップ レポートは、IGMP キャッシュに入れられません。

Cisco IOS XE Cupertino 17.9.1

IP マルチキャストの最適化:IGMP ステート制限

この機能は、このリリースで導入された Cisco Catalyst 9200CX シリーズ スイッチの C9200CX-12P-2X2G、C9200CX-8P-2X2G、および C9200CX-12T-2X2G モデルに実装されました。

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