はじめに

改訂日:2019 年 2 月 19 日

このわずか数年の間に、ビジネスの境界を超えてコミュニケーションの強化とコラボレーションの拡大を実現する多くの新しいコラボレーション ツールが市場に投入されました。組織がコラボレーション アプリケーションから得ているビジネスの付加価値は、従業員の生産性向上とお客様との関係強化です。コラボレーション分野の著しい進化により、導入の簡素化、相互運用性の向上、ユーザ エクスペリエンスの全体的な改善が実現しました。

現在のコラボレーション ソリューションでは、ビデオ、音声、そして Web による参加者を一元的な会議環境に統合することが可能になっています。この Cisco Validated Design(CVD)ガイドに含まれるガイドラインは、コラボレーション アーキテクチャ全体を考慮して記載されています。内容をより適切に編成する目的で、サブシステムが使用されています。また、サブシステムの推奨事項をテストし、これらのサブシステムの推奨事項が、関連サブシステムの推奨事項と一致していることを確認しています。

この章の新規情報とは

C:表 1-1 に、この章に新しく追加されたトピック、またはこのマニュアルの以前のリリースから大幅に改訂されたトピックの一覧を示します。

 

C:表 1-1 新規情報、またはこのマニュアルの以前のリリースからの変更情報

新規トピックまたは改訂されたトピック
説明箇所
改訂日

Cisco Prime License Manager を Cisco Smart Software Manager に置き換える

C:表 1-2

2017年8月30日

追加した Cisco Webex Room シリーズ エンドポイント

C:表 1-3

2017年8月30日

アーキテクチャの概要

このエンタープライズ コラボレーション向けプリファード アーキテクチャの CVD は、Cisco Collaboration ポートフォリオの全製品のうち、エンタープライズ市場セグメントに最適な製品で構成されます。このプリファード アーキテクチャ導入モデルはすぐに使える規範的な導入モデルで、組織とそのビジネス ニーズの変化に対応できる拡張性を備えています。この規範的なアプローチでは、複数のシステムレベルのコンポーネントを簡単に統合でき、組織がそれぞれのビジネス ニーズに最適な機能、サービス、キャパシティを選択できます。

このエンタープライズ コラボレーション向けプリファード アーキテクチャの CVD は、ユーザ数が 1,000 人を超える導入環境に対応したエンドツーエンドのコラボレーションを実現します。これよりも小規模な導入環境の場合は、『 Preferred Architecture Design Overview and CVDs for Midmarket Collaboration 』を参照してください。

このエンタープライズ コラボレーション向け推奨アーキテクチャの CVD では、重要なアプリケーションの高可用性を実現します。このアーキテクチャは次の主要なサービスを通じてモバイル ワーカー、パートナー、お客様に拡張できる、高度なコラボレーション サービスをサポートします。

  • 音声コミュニケーション
  • インスタント メッセージおよびプレゼンス
  • 高精細度ビデオおよびコンテンツ共有
  • リッチ メディア会議機能
  • モバイル ワーカーやリモート ワーカーへの対応
  • 企業間(B2B)音声/ビデオ通信
  • ユニファイド ボイス メッセージング

シスコのエンドポイントは適応性が高く、IP ネットワークをサポートしているため、このアーキテクチャを導入すれば、組織が現行データ ネットワークを使用して音声通話とビデオ通話の両方に対応できます。このプリファード アーキテクチャでは、帯域幅管理についての包括的なアプローチを採用しています。ここにはエンドツーエンドの QoS アーキテクチャ、コール アドミッション制御、ビデオ レート アダプテーション メカニズム、および復元力メカニズムが組み込まれており、マネージド ネットワークでもアンマネージド ネットワークでもパーベイシブ ビデオの展開に最適なユーザ エクスペリエンスを提供します。

エンタープライズ コラボレーション向けシスコ プリファード アーキテクチャは、C:図 1-1 に示すように、可用性とセキュリティを備えた集中管理型のサービスを提供します。これらのサービスはリモート オフィスや移動の多い社員に容易に拡張でき、本社との通信が失われた場合でも重要なサービスの可用性を提供できます。これは、新たな導入環境を設計する場合や既存の導入環境を拡大する場合のベースとなる基本アーキテクチャとして理解しておく必要があります。推奨アーキテクチャの進展に伴い、製品やソリューションが追加され、このアーキテクチャは拡大します。

C:図 1-1 エンタープライズ コラボレーション向けシスコ推奨アーキテクチャ

 

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C:表 1-2 に、このアーキテクチャで使用されている製品を示します。製品の分類と役割定義がしやすいように製品をモジュールに分けて記載しています。この CVD の内容はこのモジュールと同じ構成になっています。

 

C:表 1-2 エンタープライズ コラボレーション向けシスコ推奨アーキテクチャのコンポーネント

モジュール
コンポーネント
目的

コール制御

Cisco Unified Communications Manager(Unified CM)

Cisco Unified Communications Manager IM and Presence Service

Cisco Integrated Services Router(ISR)

コール制御は、ユーザとエンドポイントに対し、登録、呼処理、リソース管理、およびインスタント メッセージおよびプレゼンスの機能を提供します。また、リモート オフィスのリモート サイト耐障害性も備えています。

会議

Cisco Meeting Server

Cisco TelePresence Management Suite(TMS)

Cisco Webex Software as a Service(クラウド)

会議では、3 者以上が音声、ビデオ、およびコンテンツ共有によりリアルタイムで通信できます。リソースをオンプレミスに配置することも、クラウドでホストすることもできます。

コラボレーション エッジ

Cisco Expressway-C

Cisco Expressway-E

Cisco Integrated Services Router(ISR)

Cisco Aggregation Services Routers (ASR)

コラボレーション エッジは、リモート登録サービス、外部通信、相互運用性を提供します。

ボイス メッセージング

Cisco Unity Connection

Cisco Unity Connection は、ユニファイド メッセージングとボイスメール サービスを提供します。

コラボレーション管理サービス

Cisco Prime Collaboration Deployment

Cisco Prime Collaboration Deployment は、ユニファイド コミュニケーション アプリケーションの管理を支援します。以前のバージョンのクラスタ ソフトウェアから新しい仮想マシンへの移行、新規インストール、既存のクラスタでのアップグレードなどのタスクを実行できます。

Cisco Smart Software Manager

簡略化された全社的なライセンス管理を提供するインター ネット ベースの Web ポータルです。Cisco Smart Software Manager を使用すると、管理者は展開内の Cisco Unified CM ライセンスと Cisco Unity Connection ライセンスを一括管理できます。

Cisco Prime Collaboration Provisioning

Cisco Prime Collaboration プロビジョニングは、システム設定、ユーザとデバイスのプロビジョニング、および簡略化された移動/追加/変更を行うためのテンプレート ベースの集中型コンソールを備えており、コラボレーション システムの迅速な設定を可能にします。

セキュリティー

すべてのコンポーネント

セキュリティ:デフォルトで有効になるセキュリティ機能から、展開で推奨されるセキュリティ機能に至るまで、さまざまな機能が組み込まれています。セキュリティ機能の例には、このソリューション内のすべてのコンポーネントに関する不正アクセス防止、料金詐欺行為防止、証明書の生成と管理、および暗号化のプロビジョニングと有効化が含まれます。

帯域幅管理

このドキュメントのすべての章に記載されているネットワーク インフラストラクチャと製品

帯域幅管理には、エンドツーエンドの QoS アーキテクチャ、コール アドミッション制御、ビデオ レート アダプテーション メカニズム、および復元力メカニズムが組み込まれており、マネージド ネットワークでもアンマネージド ネットワークでもパーベイシブ ビデオの展開に最適なユーザ エクスペリエンスを提供します。

サイジング

このマニュアルのすべての章に記載されている製品

仮想マシン配置ツール(VMPT)

このマニュアルで説明するすべてのモジュールのサイジングと、仮想マシンの配置の例。

ネットワーク サービス

エンタープライズ コラボレーション向けプリファード アーキテクチャでは、構造化されて可用性と回復力が高いネットワーク インフラストラクチャ、およびドメイン ネーム システム(DNS)、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)、TFTP(Trivial File Transfer Protocol)、ネットワーク タイム プロトコル(NTP)を含むネットワーク サービスの統合セットが必要です。シスコのアプリケーションおよびエンドポイントでこれらの基本ネットワーク サービスがどのように使用されるかについて、詳しくは『 Cisco Collaboration SRND 』の「 Network Services 」の項を参照してください。

仮想化

複数のアプリケーションを仮想化して物理サーバ上で統合することで、コストを節約し、ラック スペースを最小限に抑え、所要電力量を削減し、導入と管理を簡素化できます。仮想化は、組織で変更が必要になる際のハードウェアの再導入とソフトウェア アプリケーションのスケーリングにも対応します。

Cisco Unified Computing System(UCS)上の Cisco Unified Communications

Cisco UCS サーバは、ユニファイド コミュニケーション(UC)コア アプリケーションを使用して十分なテストが行われており、仮想環境で信頼性と一貫したパフォーマンスを実現することが確認されています。UC アプリケーションを UCS サーバに導入するには 2 つのオプションがあります。

  • UCS テスト済みリファレンス構成(TRC)の UC

UCS TRC は、UCS サーバ コンポーネントの特定のハードウェア構成です。これらのコンポーネントには、CPU、メモリ、ハード ディスク(ローカル ストレージの場合)、RAID コントローラ、および電源などがあります。特定の TRC については、『 Collaboration Virtualization Hardware 』の Web サイトを参照してください。

  • UCS ベースの UC

UCS ベースのハードウェア構成では、UC アプリケーションの検証は明示的に実施されていません。したがって、UC アプリケーションが UCS ベースのハードウェアにインストールされる場合に、UC アプリケーション仮想マシンのパフォーマンスの予測や保証は行われません。この場合、シスコはガイダンスのみを提供します。プリセールスでのハードウェア設計によって、UC アプリケーションが必要とするパフォーマンスを実現できるかどうかの確認は、お客様の責任で行っていただきます。

Cisco Collaboration Virtualization 』のすべてのルールに準拠している限り、このどちらのオプションも Cisco Technical Assistance Center(TAC)で完全にサポートされます。

Cisco Business Edition 7000(BE7000)

Cisco BE7000 は、仮想ハイパーバイザとアプリケーション インストール ファイルがプリインストールされており、すぐに利用できる状態で出荷される仮想化 UCS 上に構築されています。BE7000 は、UCS TRC であり、UC アプリケーションが特定の UCS 設定で明示的にテストされています。Cisco BE7000 ソリューションは、1 つの統合プラットフォーム上で、高度な音声、ビデオ、メッセージ、インスタント メッセージおよびプレゼンス、およびコンタクト センターの各機能を提供します。Cisco BE7000 について詳しくは、『 Cisco Business Edition 7000 Solutions Data Sheet 』を参照してください。

コア アプリケーション

エンタープライズ コラボレーション向け推奨アーキテクチャでは、ハードウェアとソフトウェアの冗長性を提供するため、次の仮想化アプリケーションが複数の Cisco UCS サーバに導入されます。

  • Cisco Unified Communications Manager
  • Cisco Unified Communications Manager IM and Presence Service
  • Cisco Unity Connection
  • Cisco Expressway(Expressway-C および Expressway-E で構成)
  • Cisco Meeting Server
  • Cisco TelePresence Management Suite

重要なビジネス アプリケーションの可用性を最大限に引き出すため、常に冗長構成で導入することを推奨します。

コラボレーション エンドポイント

この CVD ガイドでの推奨事項は、シスコの音声 & ビデオ エンドポイント(Cisco Jabber などのソフト クライアントを含む)を前提としています。これらのエンドポイントは SIP を使用して Cisco Unified Communications Manager(Unified CM)に登録します。 C:表 1-3 に、最適な機能とユーザエクスペリエンスを実現するための推奨エンドポイントを示します。

 

C:表 1-3 Cisco Collaboration Endpoints

製品
説明
モバイル:
  • Android 向けの Jabber
  • iPhone/iPad 向けの Jabber
デスクトップ:
  • Mac 向けの Jabber
  • Windows 向けの Jabber

音声、ビデオ、ボイスメール、インスタント メッセージ、およびプレゼンス機能を統合し、モバイル デバイスとパーソナル コンピュータのためのセキュア エッジ トラバーサルを備えたソフト クライアント。

Cisco IP Phone 8800 シリーズ

パブリック スペース、一般オフィスでの使用、単一回線と複数回線、および音声/ビデオ電話機

Cisco IP Phone 8832

IP 会議用電話

Cisco Webex DX 80

デスクトップ向けパーソナル TelePresence エンドポイント

Cisco MX シリーズ

多目的ルーム向け TelePresence エンドポイント

Cisco SX シリーズ

インテグレータシリーズテレプレゼンスエンドポイント

Cisco Webex Room シリーズ

コラボレーション統合機能および多目的ルーム エンドポイント