POS の概要
Asynchronous Transfer Mode(ATM; 非同期転送モード)およびフレームリレーと異なり、イーサネットは本来、SONET/SDH とインターフェイスするように設計されていませんでした。イーサネットのデータ パケットは、SONET/SDH ネットワーク上で転送するために、SONET/SDH フレームにフレーム化およびカプセル化する必要があります。このフレーム化およびカプセル化処理は POS として知られています。
図20-1 ONS ノードでのイーサネットから POS へのプロセス
すべての ONS イーサネット カードは POS を使用します。イーサネット フレームは、標準ファスト イーサネットまたはギガビット イーサネット ポートのカードに到着し、ONS イーサネット カードのフレーム化メカニズムによって処理されて、POS フレームにカプセル化されます。POS フレームが ONS イーサネット カードから POS 回線に出ると、この回線は ONS ノードの他の SONET 回線(STS)または SDH 回線(VC)と同じように処理されます。この回線は相互接続され、光カードのポートから SONET/SDH ネットワークへ SONET/SDH 信号を送出します。
POS 回線の宛先は、ONS イーサネット カードまたは POS インターフェイスをサポートする他の装置です。宛先カードで受信した POS フレームは、データ パケットが取り外されてイーサネット フレームに処理されます。次に、イーサネット フレームは、ONS イーサネット カードの標準イーサネット ポートに送信されて、イーサネット ネットワークに送信されます。
G シリーズ、CE シリーズ、および E シリーズ(port-mapper モードに設定)ONS イーサネット カードは、SONET/SDH または POS 回線をカードのいずれかのイーサネット ポートに直接マップします。ML シリーズおよび E シリーズ(EtherSwitch モードに設定)ONS イーサネット カードには、カードの標準イーサネット ポートを備えたスイッチング ファブリックのスイッチポートとして POS ポートが含まれます。ONS 15454 および ONS 15454 SDH ML シリーズ カードも レイヤ 3 機能をサポートします。
POS 相互運用性
同じファミリーのイーサネット カード間の POS 回線に加えて、異なるファミリーの一部のイーサネット カード間の POS 回線の作成も可能です。Cisco Transport Controller(CTC)の回線作成ウィザードでは、特定のイーサネット カード タイプを回線作成の送信元カードとして選択したときに、宛先カード オプションの下に使用可能な相互運用できるイーサネット カードが表示されます。SDH ノードからの回線と SONET ノードからの回線を混在するこはできません。
POS 回線は、マッパータイプのカードとスイッチタイプの ONS イーサネット カード間で作成できます。ただし、回線からポートへの転送だけが可能であり、スイッチング機能はサポートされません。たとえば、POS 回線の送信元カードとして ONS 15454 ML シリーズ カードを使用する場合、G シリーズまたは CE シリーズが宛先カードとして使用できます。ただし、ML シリーズ スイッチ機能をすべて設定できるわけではありません。たとえば、ML シリーズと ML シリーズとの間の回線では、接続された POS ポートを VLAN のメンバーとして設定できますが、接続された G シリーズの POS ポートは、G シリーズ カードが VLAN をサポートしないために、VLAN メンバーとして設定できません。
イーサネット カード POS で相互運用を行うためには、次の主要な 3 つの POS ポートの特性が一致する必要があります。
• POS カプセル化
• CRC サイズ
• フレーミング モード
Frame-mapped Generic Framing Procedure(GFP-F)フレーミング モードを使用する場合には、CRC サイズ オプションが両方のエンド ポイントで一致する必要がありません。
すべてのイーサネット カードが相互運用できるわけではなく、また、すべての POS ポート特性オプションをサポートするわけではありません。次に示す 2 つの表に、相互運用可能なイーサネット カードとその特性を示します。 表20-1 に、High-Level Data Link Control(HDLC; ハイレベル データリンク制御)フレーミング モードがサポートされて設定されているカードに対する情報を示します。
表20-2 に、GFP-F フレーミング モードがサポートされ設定されているカードに対する情報を示します。 表20-2 と GFP-F フレーミングでは、LEX という用語は ITU-T G.7041 に基づいた GFP-F 上の標準マップ イーサネットを表します。GFP-F フレーミングでは、Cisco IOS CLI も lex キーワードを使用して ITU-T G.7041 に基づいた GFP-F 上の標準マップ イーサネットを表します。
表20-1 HDLC フレーミングでの ONS SONET/SDH イーサネット カードの相互運用性(カプセル化タイプと CRC も含む)
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ML シリーズ
(ONS 15310-CL/ONS 15310-MA)
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独自仕様 LEX(CRC 16) |
独自仕様 |
互換性なし |
LEX(CRC 16) |
互換性なし |
互換性なし |
ポートマップ E シリーズ
(ONS 15454 SONET/SDH)
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独自仕様 |
独自仕様 |
互換性なし |
互換性なし |
互換性なし |
互換性なし |
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互換性なし |
互換性なし |
LEX(CRC 16) LEX(CRC 32) |
LEX(CRC 16) LEX(CRC 32) |
LEX(CRC 32) |
LEX(CRC 32) |
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LEX(CRC 16) |
互換性なし |
LEX(CRC 16) LEX(CRC 32) |
LEX(CRC 16) LEX(CRC 32) Cisco HDLC PPP/BCP |
LEX(CRC 32) |
LEX(CRC 32) |
ML シリーズ
(ONS 15310-CL/ ONS 15310-MA)
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互換性なし |
互換性なし |
LEX(CRC 32) |
LEX(CRC 32) |
LEX(CRC 32) |
LEX(CRC 32) |
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互換性なし |
互換性なし |
LEX(CRC 32) |
LEX(CRC 32) |
LEX(CRC 32) |
LEX(CRC 32) |
表20-2 GFP-F フレーミングでの ONS SONET/SDH イーサネット カードの相互運用性(カプセル化タイプを含む)
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LEX(CRC 32) Cisco HDLC(CRC 32) PPP/BCP(CRC 32) |
LEX(CRC 32) Cisco HDLC(CRC 32) PPP/BCP(CRC 32) |
LEX(CRC 32) |
ML シリーズ(ONS 15310-CL/ ONS 5310-MA)
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LEX(CRC 32) Cisco HDLC(CRC 32) PPP/BCP(CRC 32) |
LEX(CRC 32 またはなし) Cisco HDLC(CRC 32またはなし) PPP/BCP(CRC 32 またはなし) |
LEX(CRC 32 またはなし) |
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LEX(CRC 32) |
LEX(CRC 32 またはなし) |
LEX(CRC 32 またはなし) |
(注) RPR では、すべての ML シリーズ カードで LEX カプセル化が必要です。
(注) GFP-F 上では、LEX は ITU-T G.7041 に基づいた GFP-F 上の標準マップ イーサネットです。
GFP-F フレーミングは、Release 5.0 以降のソフトウェアを実行しているノードのみでサポートされています。また、ML100T-12 カードおよび ML1000-2 カードでは、GFP-F フレーミングを行うために Field Programmable Gate Array(FPGA)バージョン 4.0 以降が必要です。
POS カプセル化タイプ
ONS イーサネット カードは、Cisco Ethernet-over-SONET LEX(LEX)、Cisco HDLC、Point-to-Point Protocol(PPP)/Bridging Control Protocol(ポイントツーポイント プロトコル/BCP)、および E シリーズ 専用の 4 つの POS カプセル化方式をサポートします。ONS イーサネット送信元カードおよび宛先カードは、相互運用を行うために同じ POS カプセル化方式で設定する必要があります。すべての ONS イーサネット カードが相互運用できるわけではなく、すべてのカプセル化タイプをサポートするわけではありません。
LEX
Cisco EoS LEX は ONS イーサネット カードの主要なカプセル化方式です。このカプセル化は HDLC フレーミングで行われ、そのプロトコル フィールドは、Internet Engineering Task Force(IETF; インターネット技術特別調査委員会)の Request For Comments(RFC; コメント要求)1841 で指定された値に設定されます。GFP-F フレーミングでの Cisco IOS CLI も lex キーワードを使用します。GFP-F フレーミングでは、lex キーワードを使用して ITU-T G.7041 に基づいた GFP-F 上の標準マップ イーサネットを表します。
図20-2 に、HDLC フレーミングでの EoS LEX を示します。
LEX は、ONS 15454 および ONS 15454 SDH E シリーズ カードを除く、すべての ONS イーサネット カードでサポートされます。
図20-2 HDLC フレーミングでの LEX
PPP/BCP
PPP カプセル化方式は、RFC 2615(PPP-over-SONET/SDH)の標準実装で、SONET 上で 802.1Q タグ付きおよびタグなしイーサネット フレームを送信するために RFC 3518(BCP)が標準実装されています。図20-3 に、BCP を示します。
図20-3 HDLC フレーミングでの BCP
ONS 15454/ONS 15454 SDH の ML シリーズでは、ルーティング機能をサポートします。このカードの POS ポートが PPP カプセル化によってルーティングをサポートするように設定された場合、IP パケットは、標準 0x0021 プロトコル コード ポイントを使用する HDLC フレームにマップされます。図20-4 に PPP を示します。
図20-4 HDLC フレーミングでの PPP フレーム
Cisco HDLC
Cisco HDLC は、シリアル インターフェイスへパケットをマッピングするシスコ標準方式です。このカプセル化は、ML シリーズ カードを、Cisco HDLC 準拠のルータおよびスイッチの POS インターフェイスへインターフェイスする場合に使用できます。
IP パケットの搬送に使用する場合、同じ HDLC フレーム構造が使用されますが、プロトコル フィールドは 0x0800 に設定され、ペイロードに IP パケットが含まれます。図20-5 に、Cisco HDLC を示します。
図20-5 HDLC フレーミングでの Cisco HDLC
E シリーズ専用
E シリーズでは、HDLC に似た専用のカプセル化方式を使用します。この方式は、LEX、Cisco HDLC、または PPP/BCP との互換性がありません。この専用のカプセル化方式は、E シリーズが他の ONS イーサネット カードと相互運用するのを防ぎます。
リリース 5.0 以降では、ONS 15327 E シリーズ カード、E10/100-4 は、本来の専用 E シリーズ カプセル化だけでなく、16 ビット CRC の LEX カプセル化もサポートします。
(注) E シリーズ カード(ONS 15327 または ONS 15454)のどちらも G シリーズ カードと相互運用できません。
POS フレーミング モード
この POS フレーミング モードは、データ パケットをフレーム化して POS 信号にカプセル化するための、ONS イーサネット カードで使用するフレーミング メカニズムのタイプです。これらのデータ パケットは当初、ONS イーサネット カードの標準ファスト イーサネットまたはギガビット イーサネット インターフェイスに入力されるイーサネット フレームにカプセル化されていました。すべての ONS イーサネット カードは HDLC フレーミングをサポートします。また、ML シリーズおよび CE シリーズ カードは、GFP-F フレーミング モードもサポートします。
HDLC フレーミング
HDLC は、最も使用されているレイヤ 2 プロトコルのうちの 1 つです。HDLC プロトコルで使用されるフレーミング メカニズムである、HDLC フレーミングは、ONS イーサネット カード上の POS を含め、さまざまな他のプロトコルで使用されています。HDLC フレーミング メカニズムの詳細については、IETF の RFC 1662「PPP in HDLC-like Framing」を参照してください。
HDLC フレームでは、ゼロ挿入/削除処理(ビット スタッフイングとして一般に知られている)を使用して、区切りフラグのビット パターンがフラグ間のフィールドで発生しないようにします。HDLC フレームは同期を取ります。このため、クロッキング方式の提供と、フレームの送受信の同期を取るために物理層に依存します。
GFP-F フレーミング
GFP は、さまざまなサービス タイプを SONET/SDH の標準ベースのマッピング方式を定義しています。ML シリーズおよび CE シリーズは、GFP 向けの PDU 型クライアント シグナル アダプテーション モードである、GFP-F をサポートします。GFP-F では、1 つの可変長データ パケットを 1 つの GFP パケットにマッピングします。
GFP は、共通機能とペイロード固有の機能で構成されます。共有機能はすべてのペイロードで共有されます。ペイロード固有の機能は、ペイロードの種類によって異なります。GFP は ITU 勧告 G.7041 で詳しく定義されています。
特定の ONS イーサネット カードの POS 特性
ここでは、特定の ONS イーサネット カードでサポートされるさまざまなフレーム化オプションとカプセル化オプションを説明します。
ONS 15327 E-10/100-4 フレーム化オプションとカプセル化オプション
Release 5.0 以降のソフトウェアでは、ONS 15327 の、ポートマップ モードに設定された E-10/100-4 カードで、LEX カプセル化の設定または本来の専用 E シリーズ カプセル化の設定を選択できます。LEX カプセル化を設定した場合、ONS 15327 E シリーズ カードは ML シリーズ カードと相互運用できます。E-10/100-4 を EtherSwitch モードに設定した場合、本来の専用 E シリーズ カプセル化に限定されます。ONS 15327 の E シリーズ カードは、16 ビット CRC に限定されます。図20-6 に、ONS 15327 E シリーズのフレーム化とカプセル化を示します。
(注) E シリーズ カード(ONS 15327 または ONS 15454)のどちらも G シリーズ カードと相互運用できません。
ポートのプロジジョニング手順については、『ONS 15327 Procedure Guide』を参照してください。
図20-6 ONS 15327 E シリーズのカプセル化オプションおよびフレーム化オプション
ONS 15454 および ONS 15454 SDH E シリーズのフレーム化オプションとカプセル化オプション
ONS 15454 や ONS 15454 SDH の E シリーズ カードでは LEX を利用できません。これらのカードは、E シリーズ カード以外のカードとの POS の相互運用を許可しない、本来の専用 E シリーズ カプセル化に限定されます。図20-7 に、ONS 15454 および ONS 15454 SDH の E シリーズのフレーム化とカプセル化を示します。
図20-7 ONS 15454 および ONS 15454 SDH E シリーズのカプセル化オプションおよびフレーム化オプション
G シリーズのカプセル化およびフレーム化
G シリーズ カードは、ONS 15454、ONS 15454 SDH、および ONS 15327 プラットフォームでサポートされています。G シリーズ カードは、LEX カプセル化と HDLC フレーム化をサポートします。このカードでは、他の POS フレーミング モードやカプセル化オプションはありません。図20-8 に、G シリーズのカプセル化とフレーム化を示します。
図20-8 ONS G シリーズのカプセル化オプションおよびフレーム化オプション
ONS 15454、ONS 15454 SDH、ONS 15310-CL、および ONS 15310-MA CE シリーズ カードのカプセル化とフレーム化
CE-100T-8 カードは、ONS 15454、ONS 15454 SDH、ONS 15310-CL、および ONS 15310-MA プラットフォームで使用できます。CE-1000-4 カードは、ONS 15454 および ONS 15454 SDH プラットフォームで使用できます。このカードは、HDLC フレーミングおよび GFP-F フレーミングをサポートします。GFP-F または HDLC フレーミング モードでは、LEX カプセル化のみがサポートされます。図20-9 に、CE シリーズのフレーム化とカプセル化を示します。
図20-9 ONS CE-100T-8 および ONS CE-1000-4 のカプセル化オプションとフレーム化オプション
ONS 15310 ML-100T-8 のカプセル化およびフレーム化
ONS 15310 の ML-100T-8 カードは、HDLC フレーミングおよび GFP-F フレーミングをサポートします。HDLC フレーミング モードでは、LEX がサポートされます。GFP-F フレーミング モードでは、LEX、Cisco HDLC、および PPP/BCP カプセル化がサポートされます。また、LEX カプセル化は、ML シリーズ カードの RPR 用のカプセル化です。RPR では、どちらのフレーミング モードでも LEX カプセル化が必要です。
ONS 15454 および ONS 15454 SDH ML シリーズ プロトコルのカプセル化およびフレーム化
ONS 15454 および ONS 15454 SDH の ML シリーズ カードは、HDLC フレーミングおよび GFP-F フレーミングをサポートします。HDLC フレーミング モードおよび GFP-F フレーミング モードの両方で、LEX、Cisco HDLC、および PPP/BCP カプセル化がサポートされます。また、LEX カプセル化は、ML シリーズ カードの RPR 用のカプセル化です。RPR では、どちらのフレーミング モードでも LEX カプセル化が必要です。図20-10 に、ONS 15454 および ONS 15454 SDH のフレーム化オプションおよびカプセル化オプションを示します。
図20-10 ML シリーズのフレーム化オプションおよびカプセル化オプション
イーサネットのクロッキングと SONET/SDHのクロッキング
イーサネットのクロッキングは非同期です。IEEE 802.3 のクロック許容値により、ネットワークの一部のリンクでは他のリンクより 200 ppm(パーツまたはビット/100万)まで遅くなっても構いません(0.02%)。あるリンクの回線レートで発生したトラフィック ストリームは、0.02% 遅い他のリンクを経由できます。速いソース クロックまたは遅い中間のクロックにより、エンドツーエンドのスループットがソース リンク レートの 99.98% にしかならない場合があります。
従来、イーサネットは共有メディアで、複数の装置からの結合により集約ポイントで回線レートを上回るような短いバーストを除き、十分に利用されていません。この使用モデルのため、イーサネットの非同期クロッキングが容認されてきました。損失のない TDM 転送に慣れている一部のサービス プロバイダーは、イーサネットが 99.98% のスループットしか保証しないことに驚くかもしれません。
E シリーズ カードを除く、ONS イーサネット カードのクロッキング拡張により、最速対応ソース クロックより最悪でも 50 ppm しか遅くないイーサネット送信レートが保証されます。つまり、最悪の場合でも 50 ppm のクロッキング損失であり、99.995% のスループットが保証されます。多くの場合、カードのクロックは送信元トラフィックのクロックより速いので、回線レート トラフィック転送の損失はゼロになります。実際の結果は、トラフィック ソース トランスミッタのクロック変動によって異なります。