スイッチのスタックの管理
スイッチは、単独で機能させることも、スイッチのスタックに接続することもできます。デフォルトで、デバイスはスタッカブルですが、スタック ポートを備えていません。デフォルトでは、スイッチ上のすべてのポートがネットワークポートになっています。スタックポートのないスイッチは、それ自体だけによるスタック内のアクティブユニットと見なすことができます。また、スタックポートのないスイッチをスタンドアロンスイッチと見なすこともできます。複数のスイッチをスタックするには、スイッチ上で必要なネットワークポートをスタックポートとして再設定し、そのスタックポートを備えたスイッチをリングまたはチェーントポロジに接続します。
スタック内のスイッチ(ユニット)は、スタックポートを介して接続されます。その後、これらのスイッチは、単一の論理スイッチとして一括して管理されます。スタック ポートを Link Aggregation Group(LAG)のメンバーにすることによって、スタック ポートの帯域幅を増やすこともできます。
スタックは、単一のアクティブ/スタンバイと複数のメンバーのモデルに基づいています。スタックには次のような利点があります。
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ネットワーク容量を動的に拡張または縮小することができます。管理者は、ユニットを追加することで、スタック内のポート数を動的に増やしながら、一元管理を維持することができます。同様に、ユニットを除去して、ネットワーク容量を減らすことができます。
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スタック構成のシステムは、次の方法で冗長性をサポートしています。
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スタンバイユニットは、元のアクティブユニットに障害が発生すると、そのスタックのアクティブユニットになります。
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スタック システムは、チェーンとリングの 2 タイプのトポロジをサポートしています。リングトポロジでは、スタックポートのいずれかで障害が生じると、スタックはチェーントポロジとなり継続して機能します。
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リング スタック内のポートでは、スタック ポート リンクのいずれかで障害が生じた場合のデータ パケット損失期間を短縮するために、ファスト スタック リンク フェールオーバーと呼ばれるプロセスがサポートされています。スタックが新しいチェーン トポロジに回復するまで、スタック ユニットは、障害の生じたスタック構成ポートを介して送信されると想定されるパケットをループ バックし、ループ バックされたパケットを残りのスタック構成ポートを介して宛先へ送信します。ファスト スタック リンク フェールオーバーの間は、アクティブ/スタンバイユニットがアクティブのまま正常に機能しつづけます。
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スタックトポロジ
スタック内のユニットは、次のタイプのトポロジのいずれかで接続できます。
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チェーン トポロジ:各ユニットがネイバー ユニットに接続されているが、最初と最後のユニットの間にケーブル接続はありません。
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リング トポロジ:各ユニットがネイバー ユニットに接続されています。最後のユニットは、最初のユニットに接続されます。以下は、8 ユニット スタックのリング トポロジを示しています。
リング トポロジの方が、チェーン トポロジより信頼性が高いです。リング内の 1 つのリンクの障害はスタックの機能に影響しませんが、一方、チェーン接続の 1 つのリンクの障害はスタックの分割を引き起こすことがあります。
トポロジディスカバリ
スタックは、トポロジ ディスカバリと呼ばれるプロセスによって確立されます。このプロセスは、スタック ポートのアップ/ダウン状態の変更によってトリガーされます。このプロセスをトリガーするイベントの例を次に示します。
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リングからチェーンへのスタック トポロジが変化する
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2 つのスタックが 1 つのスタックにマージされる
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スタックが分割される
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他のメンバーユニットがスタックに挿入される(たとえば、ユニットが障害のために、それ以前にスタックから切断されたため)。これは、チェーン トポロジで、スタックの中間のユニットで障害が生じた場合に発生することがあります。
トポロジ ディスカバリ中には、スタック内の各ユニットが、トポロジ情報を含むパケットを交換します。トポロジ ディスカバリ プロセスが完了すると、各ユニットには、スタック内のすべてのユニットのスタック マッピング情報が含まれます。
スタック内のユニットの障害
アクティブユニットに障害が発生すると、スタンバイユニットがプライマリの役割を引き継ぎ、スタックは正常に動作しつづけます。
スタンバイスイッチがアクティブスイッチの代わりになることができるように、両方のユニットは常に予約された状態が維持されます。予約モードでは、アクティブスイッチとそのスタンバイスイッチがスタティック設定(スタートアップ コンフィギュレーション ファイルと実行コンフィギュレーション ファイルの両方に含まれる)と同期されます。スタンバイ スイッチ コンフィギュレーション ファイルは、前のアクティブスイッチに残ります。
STP 状態テーブル、動的に学習された MAC アドレス、動的に学習された SmartPort タイプ、MAC マルチキャスト テーブル、LACP、GVRP などのダイナミック プロセス状態情報は、同期されません。アクティブスイッチの設定中は、スタンバイユニットとすぐに同期されます。同期は、コマンドが実行されるとすぐに、実行されます。これは透過的です。
ユニットが動作中のスタックに挿入され、スタンバイユニットとして選択されると、アクティブスイッチはスタンバイユニットが最新の設定を保持できるようにそれと同期し、その後、SYNC COMPLETE SYSLOG メッセージを生成します。これは、スタンバイユニットとアクティブユニットが同一化したときにのみ表示される一意の SYSLOG メッセージで、次のように表示されます:%DSYNCH-I-SYNCH_SUCCEEDED: Synchronization with unit 2 is finished successfully.
アクティブ/スタンバイのスイッチオーバー
スタックのアクティブスイッチで障害が発生すると、スイッチオーバーが発生します。スタンバイユニットがアクティブとなり、そのプロセスとプロトコルスタックがすべて初期化され、スタック全体の責任を担います。その結果、このユニット内のトラフィック転送が一時的に中断されますが、メンバーユニットはアクティブのままです。
![]() (注) |
STP が使用され、ポートのリンクがアップしている場合、STP ポートの状態は一時的に「ブロッキング」になり、トラフィックを転送したり、MAC アドレスを学習したりすることはできません。これによって、アクティブなユニット間のスパニング ツリー ループを防いでいます。 |
メンバーユニットの取り扱い
スタンバイユニットがアクティブスイッチになっている間、メンバーユニットはアクティブなままで、元のアクティブスイッチからの設定に基づいてパケットの転送を継続します。これにより、ユニット内でのデータ トラフィックの中断は最小限に抑えられます。スタンバイユニットがアクティブ状態への移行を完了したら、次の操作を実行することによって、メンバーユニットを一度に 1 つずつ初期化します。
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メンバーユニットの設定をクリアしてデフォルトにリセットします(新しいアクティブユニットからの間違った設定を回避するため)。その結果、メンバーユニットでのトラフィック転送が中断されます。
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関連するユーザー設定をメンバーユニットに適用します。
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ポートの STP 状態、動的 MAC アドレス、アクティブユニットとメンバーユニットの間のリンク稼働/ダウンステータスといった動的情報を交換します。アクティブスイッチが STP に基づいてポートの状態を「転送中」に設定すると、メンバーユニットでのパケット転送が再開されます。
(注)
MAC アドレスが学習または再学習されるまで、不明なユニキャスト MAC アドレスへのパケット フラッディングが発生します。
フェールオーバー後の元のアクティブユニットの再接続
フェールオーバー後に、元のアクティブスイッチが再接続されると、アクティブ選択プロセスが実行されます。元のアクティブスイッチ(ユニット 1)がアクティブユニットとして再選択されると、現在のアクティブスイッチ(元のバックアップユニットだったユニット 2)はリブートし、再度バックアップになります。
![]() (注) |
アクティブユニットのフェールオーバー中も、スタンバイユニットの稼働時間は保持されます。 |
スタック ポート
デフォルトでは、デバイス上のすべてのポートは、ネットワーク(アップリンク)ポートです。ユニットを接続するには、デバイスを接続するために使用するポートのタイプをスタック ポートとして変更する必要があります。これらのポートは、ユニットの間でデータおよびプロトコル パケットを転送するために使用されます。
スタック ポート リンク アグリゲーション
隣接する 2 台のユニットが接続されている場合は、それらを接続しているスタック ポートが自動的にスタック LAG に割り当てられます。この機能によって、単一ポートの帯域幅を超えて、スタック ポートのスタック帯域幅を増やすことができます。ユニットあたり最大 2 つのスタック LAG を指定できます。
スタック LAG は、2 ~最大数(ユニット タイプに応じる)のスタック ポートで構成できます。
スタック ポートの状態
スタック ポートは、次のいずれかの状態になります。
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ダウン:ポートの動作状態がダウンであるか、またはスタック ポートの動作状態がアップであるが、そのポート上でトラフィックを渡すことができません。
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アクティブ:スタック ポートは、スタック ポートの動作状態がアップで、そのポートでトラフィックを渡すことができ、それがスタック LAG のメンバーであるスタック LAG に追加されました。
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スタンバイ:スタック ポートの動作状態がアップで、そのポートで双方向トラフィックを渡すことができるが、そのポートをスタック LAG に追加することはできず、そのポートはトラックを送信しません。ポートがスタンバイ状態になる考えられる理由は、次のとおりです。
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単一のネイバーと接続するために、異なる速度のスタック ポートが使用された。
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スタック LAG の物理的な制約
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スタック LAG には、同じ速度のポートを含める必要があります。
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トポロジがリング/チェーンでないスタックにユニットを接続しようとすると(たとえば、1 つのユニットを 3 つ以上のネイバー ユニットに接続しようとする - スター トポロジ)、2 つのスタック LAG のみがアクティブになり、残りのスタック ポートはスタンバイ モード(非アクティブ)に設定されます。
ポート速度の自動選択
ケーブルがポートに接続されると、スタック構成ケーブル タイプが自動的に検出されます(自動検出はデフォルト設定)。システムはスタック ケーブル タイプを自動的に特定し、そのケーブルとポートでサポートされている最高速度を選択します。
ケーブル タイプが認識されない場合は、SYSLOG メッセージ(情報レベル)が表示されます。