MPLS QoS:EXP の分類およびマーキング

MPLS EXP の分類とマーキング

QoS EXP Matching 機能を使用すれば、マルチプロトコル ラベル スイッチング(MPLS)Experimental ビット(EXP ビット)フィールドを変更することで、ネットワーク トラフィックを分類し、マーキングすることができます。このモジュールでは、MPLS EXP フィールドを使用してネットワーク トラフィックを分類してマーキングするための概念情報と設定作業について説明します。

MPLS EXP の分類とマーキングの前提条件

  • スイッチは MPLS プロバイダー エッジ(PE)またはプロバイダー(P)ルータとして設定する必要があります。この設定には、有効なラベル プロトコルと基礎となる IP ルーティング プロトコルの設定を含めることができます。

MPLS EXP の分類とマーキングの制約事項

  • MPLS の分類とマーキングは、運用可能な MPLS ネットワーク内でのみ実行できます。

  • MPLS EXP 分類とマーキングは、MPLS がイネーブルになっているインターフェイスか、またはその他のインターフェイス上の MPLS トラフィックでのみサポートされます。

  • パケットが入力で IP タイプ オブ サービス(ToS)またはサービス クラス(CoS)によって分類された場合は、出力で MPLS EXP によって再分類できません(インポジション ケース)。ただし、パケットが入力で MPLS によって分類された場合は、出力で IP ToS、CoS、または Quality of Service(QoS)グループによって再分類できます(ディスポジション ケース)。

  • プロトコルの境界を越えてトラフィックに QoS を適用するには、QoS グループを使用します。入力トラフィックを分類し、QoS グループに割り当てることができます。その後に、出力で QoS グループを分類し、QoS を適用することができます。

  • パケットが MPLS でカプセル化されている場合は、IP などの他のプロトコルの MPLS ペイロードをチェックして分類またはマーキングすることはできません。MPLS EXP マーキングのみが MPLS によってカプセル化されたパケットに影響します。

MPLS EXP の分類とマーキングに関する情報

このセクションでは、MPLS EXP の分類およびマーキングに関する情報を示します。

MPLS EXP の分類とマーキングの概要

QoS EXP Matching 機能を使用すれば、MPLS パケットの MPLS EXP フィールドに値を設定することによってネットワーク トラフィックを整理できます。MPLS EXP フィールドで異なった値を選択することにより、輻輳時にパケットが必要なプライオリティを持つようパケットをマーキングすることができます。MPLS EXP 値の設定によって次のことが可能になります。

  • トラフィックの分類

    分類プロセスでマーキングするトラフィックが選択されます。分類は、トラフィックを複数の優先順位レベル、つまり、サービス クラスに分割することによりこのプロセスを実施します。トラフィック分類は、クラス ベースの QoS プロビジョニングのプライマリ コンポーネントです。詳細については、『Classifying Network Traffic』モジュールを参照してください。

  • トラフィックのポリシングとマーキング

    ポリシングでは、設定されたレートを上回るトラフィックが廃棄されるか、別のドロップ レベルにマーキングされます。トラフィックのマーキングは、パケット フローを特定してそれらを区別する方法です。パケット マーキングを利用すれば、ネットワークを複数の優先プライオリティ レベルまたはサービス クラスに分割することができます。詳細については、『Marking Network Traffic』モジュールを参照してください。

MPLS 実験フィールド

MPLS Experimental ビット(EXP)フィールドは、ノードからパケットに付加される QoS 処理(Per-Hop Behavior)を定義するために使用可能な MPLS ヘッダー内の 3 ビット フィールドです。IP ネットワークでは、DiffServ コード ポイント(DSCP)(6 ビット フィールド)でクラスとドロップ優先順位が定義されます。EXP ビットは、IP DSCP でエンコードされた情報の一部を伝達するためにも、ドロップ優先順位をエンコードするためにも使用できます。

デフォルトで、Cisco IOS ソフトウェアは、IP パケットの DSCP または IP precedence の上位 3 ビットを MPLS ヘッダー内の EXP フィールドにコピーします。このアクションは、MPLS ヘッダーが初めて IP パケットに付加されたときに実行されます。ただし、DSCP または IP precedence と EXP ビットとの間のマッピングを定義することによって、EXP フィールドを設定することもできます。このマッピングは、 set mpls experimental コマンドまたは police コマンドを使用して設定されます。詳細については、「MPLS EXP の分類とマーキングの方法」を参照してください。


(注)  


set ip dscp により設定されたポリシーマップは、プロバイダーエッジデバイスではサポートされません。MPLS ラベルインポジションノードのポリシーアクションは、set mpls experimental imposition 値に基づく必要があります。ただし、入力インターフェイスと出力インターフェイスの両方がレイヤ 3 ポートである場合、アクション set ip dscp が指定されたポリシーマップはサポートされます。


MPLS EXP マーキング操作を実行するには、テーブルマップを使用します。入力ポリシー内の別のトラフィック クラスに QoS グループを割り当て、テーブルマップを使用して QoS グループを出力ポリシー内の DSCP および EXP マーキングに変換することをお勧めします。

MPLS EXP の分類とマーキングのメリット

ネットワーク経由で伝送されるパケットの IP precedence フィールド値をサービス プロバイダーが変更したくない場合は、MPLS EXP フィールド値を使用して IP パケットを分類してマーキングできます。

MPLS EXP フィールド用の複数の値を選択することにより、ネットワーク輻輳が発生した場合に重大なパケットが優先されるようにそのようなパケットをマーキングすることができます。

MPLS EXP の分類とマーキングの方法

このセクションでは、MPLS EXP を分類およびマーキングする方法に関する情報を示します。

MPLS カプセル化パケットの分類

match mpls experimental topmost コマンドを使用すれば、MPLS ドメイン内のパケット EXP 値に基づくトラフィック クラスを定義できます。これらのクラスは、police コマンドを使用して EXP トラフィックをマーキングするサービス ポリシーを定義するために使用できます。

手順
  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Device> enable

特権 EXEC モードを有効にします。

  • パスワードを入力します(要求された場合)。

ステップ 2

configure terminal

例:

Device# configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

class-map [match-all | match-any ] class-map-name

例:

Device(config)# class-map exp3

トラフィックを指定したクラスにマッチングするために使用するクラス マップを作成し、クラス マップ コンフィギュレーション モードを開始します。

  • クラス マップ名を入力します。

ステップ 4

match mpls experimental topmost mpls-exp-value

例:

Device(config-cmap)# match mpls experimental topmost 3

一致基準を指定します。

(注)  

 

match mpls experimental topmost コマンドは、最上位ラベル ヘッダー内の EXP 値に基づいてトラフィックを分類します。

ステップ 5

end

例:

Device(config-cmap)# end 

(任意)特権 EXEC モードに戻ります。

最も外側のラベルでの MPLS EXP のマーキング

インポーズされたラベル エントリの MPLS EXP フィールドの値を設定するには、次の作業を実行します。

始める前に

通常の設定では、インポジションでの MPLS パケットのマーキングが IP ToS または CoS フィールドに基づく入力分類で使用されます。


(注)  


IP インポジション マーキングでは、デフォルトで、IP precedence 値が MPLS EXP 値にコピーされます。



(注)  


プロバイダーエッジのイーグレスポリシーは、入力時の再マーキングポリシーがある場合にのみ、MPLS EXP クラスの一致により機能します。入力時のプロバイダーエッジは IP インターフェイスであり、デフォルトでは DSCP 値のみが信頼されています。入力時の再マーキングポリシーを設定しない場合、キューイングのラベルは MPLS EXP 値ではなく DSCP 値に基づいて生成されます。ただし、中継プロバイダールータは MPLS インターフェイス上で動作するため、入力時の再マーキングポリシーを設定しなくても機能します。



(注)  


set mpls experimental imposition コマンドは、新しいまたは追加の MPLS ラベルが追加されたパケットに対してのみ機能します。


手順
  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Device> enable

特権 EXEC モードを有効にします。

  • パスワードを入力します(要求された場合)。

ステップ 2

configure terminal

例:

Device# configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

policy-map policy-map-name

例:

Device(config)# policy-map mark-up-exp-2

作成されるポリシー マップの名前を指定し、ポリシー マップ コンフィギュレーション モードを開始します。

  • ポリシー マップ名を入力します。

ステップ 4

class class-map-name

例:

Device(config-pmap)# class prec012

トラフィックを指定したクラスにマッチングするために使用するクラス マップを作成し、クラス マップ コンフィギュレーション モードを開始します。

  • クラス マップ名を入力します。

ステップ 5

set mpls experimental imposition mpls-exp-value

例:

Device(config-pmap-c)# set mpls experimental imposition 2

上部のラベルの MPLS EXP フィールドの値を設定します。

ステップ 6

end

例:

Device(config-pmap-c)# end 

(任意)特権 EXEC モードに戻ります。

ラベル スイッチド パケットでの MPLS EXP のマーキング

ラベル スイッチド パケットでの MPLS EXP フィールドを設定するには、次の作業を実行します。

始める前に

(注)  


set mpls experimental topmost コマンドは、MPLS トラフィックの最も外側のラベルに EXP をマークします。入力ポリシーでのこのマーキングにより、出力ポリシーに MPLS EXP 値に基づく分類を含める必要があります。


手順
  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Device> enable

特権 EXEC モードを有効にします。

  • パスワードを入力します(要求された場合)。

ステップ 2

configure terminal

例:

Device# configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

policy-map policy-map-name

例:

Device(config)# policy-map mark-up-exp-2

作成されるポリシー マップの名前を指定し、ポリシー マップ コンフィギュレーション モードを開始します。

  • ポリシー マップ名を入力します。

ステップ 4

class class-map-name

例:

Device(config-pmap)# class-map exp012

トラフィックを指定したクラスにマッチングするために使用するクラス マップを作成し、クラス マップ コンフィギュレーション モードを開始します。

  • クラス マップ名を入力します。

ステップ 5

set mpls experimental topmost mpls-exp-value

例:

Device(config-pmap-c)# set mpls experimental topmost 2

出力インターフェイスの最上位ラベルの MPLS EXP フィールド値を設定します。

ステップ 6

end

例:

Device(config-pmap-c)# end 

(任意)特権 EXEC モードに戻ります。

条件付きマーキングの設定

すべてのインポーズされたラベルに MPLS EXP フィールドの値を条件付きで設定するには、次の作業を実行します。

始める前に

(注)  


set-mpls-exp-topmost-transmit アクションは、MPLS カプセル化パケットにのみ影響します。 set-mpls-exp-imposition-transmit アクションは、パケットに追加されたすべての新しいラベルに影響します。


手順
  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:

Device> enable

特権 EXEC モードを有効にします。

  • パスワードを入力します(要求された場合)。

ステップ 2

configure terminal

例:

Device# configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

policy-map policy-map-name

例:

Device(config)# policy-map ip2tag

作成されるポリシー マップの名前を指定し、ポリシー マップ コンフィギュレーション モードを開始します。

  • ポリシー マップ名を入力します。

ステップ 4

class class-map-name

例:

Device(config-pmap)# class iptcp

トラフィックと指定されたクラスを照合するために使用するクラス マップを作成し、ポリシーマップ クラス コンフィギュレーション モードを開始します。

  • クラス マップ名を入力します。

ステップ 5

police cir bps bc pir bps be

例:

Device(config-pmap-c)# police cir 1000000 pir 2000000

分類するトラフィック用のポリサーを定義し、ポリシーマップ クラス ポリシング コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 6

conform-action transmit

例:

Device(config-pmap-c-police)# conform-action transmit 3

ポリサーで指定された値に適合するパケットに対して実行するアクションを定義します。

  • この例では、パケットが認定情報レート(cir)に適合する場合または適合バースト(bc)サイズ以内の場合に、MPLS EXP フィールドが 3 に設定されます。

ステップ 7

exceed-action set-mpls-exp-topmost-transmit dscp table dscp-table-value

例:

Device(config-pmap-c-police)# exceed-action set-mpls-exp-topmost-transmit dscp table dscp2exp

ポリサーで指定された値を上回るパケットに対して実行するアクションを定義します。

ステップ 8

violate-action drop

例:

Device(config-pmap-c-police)# violate-action drop

レートが最大情報レート(pir)を超えており、bc と be の範囲外のパケットに対して実行するアクションを定義します。

  • 違反アクションを指定する前に、超過アクションを指定する必要があります。

  • この例では、パケット レートが pir レートを超えており、bc と be の範囲外の場合に、パケットがドロップされます。

ステップ 9

end

例:

Device(config-pmap-c-police)# end 

(任意)特権 EXEC モードに戻ります。

MPLS EXP の分類とマーキングの設定例

このセクションでは、MPLS EXP の分類とマーキングの設定例を示します。

例:MPLS カプセル化パケットの分類

MPLS EXP クラス マップの定義

次に、MPLS 実験値 3 を含むパケットと一致する exp3 という名前のクラス マップを定義する例を示します。

Device(config)# class-map exp3 
Device(config-cmap)# match mpls experimental topmost 3 
Device(config-cmap)# exit 
ポリシー マップの定義とポリシー マップの入力インターフェイスへの適用

次の例では、上の例でポリシー マップを定義するために作成したクラス マップを使用します。また、この例では、入力トラフィックの物理インターフェイスにポリシー マップを適用します。

Device(config)# policy-map change-exp-3-to-2
Device(config-pmap)# class exp3
Device(config-pmap-c)# set mpls experimental topmost 2
Device(config-pmap)# exit
Device(config)# interface GigabitEthernet 0/0/0
Device(config-if)# service-policy input change-exp-3-to-2
Device(config-if)# exit
ポリシー マップの定義とポリシー マップの出力インターフェイスへの適用

次の例では、上の例でポリシー マップを定義するために作成したクラス マップを使用します。また、この例では、出力トラフィックの物理インターフェイスにポリシー マップを適用します。

Device(config)# policy-map WAN-out
Device(config-pmap)# class exp3
Device(config-pmap-c)# shape average 10000000
Device(config-pmap-c)# exit
Device(config-pmap)# exit
Device(config)# interface GigabitEthernet 0/0/0
Device(config-if)# service-policy output WAN-out
Device(config-if)# exit

例:最も外側のラベルでの MPLS EXP のマーキング

MPLS EXP インポジション ポリシー マップの定義

次の例では、転送されたパケットの IP precedence 値に基づいて MPLS EXP インポジション値を 2 に設定するポリシー マップを定義します。

Device# configure terminal 
Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
Device(config)# class-map prec012
Device(config-cmap)# match ip prec 0 1 2
Device(config-cmap)# exit
Device(config)# policy-map mark-up-exp-2
Device(config-pmap)# class prec012
Device(config-pmap-c)# set mpls experimental imposition 2
Device(config-pmap-c)# exit
Device(config-pmap)# exit
MPLS EXP インポジション ポリシー マップをメイン インターフェイスに適用する

次に、ポリシー マップをギガビット イーサネット インターフェイス 0/0/0 に適用する例を示します。

Device# configure terminal 
Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
Device(config)# interface GigabitEthernet 0/0/0
Device(config-if)# service-policy input mark-up-exp-2
Device(config-if)# exit

例:ラベル スイッチド パケットの MPLS EXP のマーキング

MPLS EXP ラベル スイッチド パケット ポリシー マップの定義

次の例では、転送されたパケットの MPLS EXP 値に基づいて MPLS EXP 最上位値を 2 に設定するポリシー マップを定義します。

Device# configure terminal 
Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
Device(config)# class-map exp012
Device(config-cmap)# match mpls experimental topmost 0 1 2
Device(config-cmap)# exit
Device(config-cmap)# policy-map mark-up-exp-2
Device(config-pmap)# class exp012
Device(config-pmap-c)# set mpls experimental topmost 2
Device(config-pmap-c)# exit
Device(config-pmap)# exit
メイン インターフェイスへの MPLS EXP ラベル スイッチド パケット ポリシー マップの適用

次に、ポリシー マップのメイン インターフェイスへの適用例を示します。

Switch# configure terminal 
Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
Device(config)# interface GigabitEthernet 0/0/0
Device(config-if)# service-policy input mark-up-exp-2
Device(config-if)# exit

例:条件付きマーキングの設定

この例では、ip2tag ポリシー マップに含まれる iptcp クラス用のポリサーを作成し、そのポリシー マップをギガビット イーサネット インターフェイスに適用します。


Device(config)# policy-map ip2tag
Device(config-pmap)# class iptcp
Device(config-pmap-c)# police cir 1000000 pir 2000000
Device(config-pmap-c-police)# conform-action transmit
Device(config-pmap-c-police)# exceed-action set-mpls-exp-imposition-transmit 2
Device(config-pmap-c-police)# violate-action drop
Device(config-pmap-c-police)# exit
Device(config-pmap-c)# exit
Device(config-pmap)# exit
Device(config)# interface GigabitEthernet 0/0/1
Device(config-if)# service-policy input ip2tag

その他の参考資料

関連資料

関連項目

マニュアル タイトル

QoS コマンド

『Cisco IOS Quality of Service Solutions Command Reference』

QoS MPLS EXP の機能履歴

次の表に、このモジュールで説明する機能のリリースおよび関連情報を示します。

これらの機能は、特に明記されていない限り、導入されたリリース以降のすべてのリリースで使用できます。

リリース

機能

機能情報

Cisco IOS XE Everest 16.5.1a

QoS MPLS EXP

QoS EXP Matching 機能を使用すると、マルチプロトコル ラベル スイッチング(MPLS)Experimental ビット(EXP ビット)フィールドを変更することで、ネットワークトラフィックを分類、マーキング、およびキューイングできます。

Cisco Feature Navigator を使用すると、プラットフォームおよびソフトウェアイメージのサポート情報を検索できます。Cisco Feature Navigator には、http://www.cisco.com/go/cfn [英語] からアクセスします。