Cisco Secure Firewall ASA の概要

Cisco Secure Firewall ASA は、高度なステートフル ファイアウォールおよび VPN コンセントレータ機能を 1 つのデバイスで提供します。ASA は、複数のセキュリティ コンテキスト(仮想ファイアウォールに類似)、クラスタリング(複数のファイアウォールを 1 つのファイアウォールに統合)、トランスペアレント(レイヤ 2)ファイアウォールまたはルーテッド(レイヤ 3)ファイアウォール オペレーション、高度なインスペクション エンジン、IPsec VPN、SSL VPN、クライアントレス SSL VPN サポートなど、多数の高度な機能を含みます。


(注)  


ASDM では、多数の ASA バージョンをサポートしています。ASDM のマニュアルおよびオンライン ヘルプには、ASA でサポートされている最新機能がすべて含まれています。古いバージョンの ASA ソフトウェアを実行している場合、ご使用のバージョンでサポートされていない機能がこのマニュアルに含まれている場合があります。各章の機能履歴テーブルを参照して、機能がいつ追加されたかを確認してください。ASA の各バージョンでサポートされている ASDM の最小バージョンについては、『Cisco ASA Compatibility(Cisco ASA の互換性)』[英語] を参照してください。特殊なサービス非推奨のサービスおよびレガシー サービス も参照してください。


ASDM 要件

ASDM Java の要件

ASDM は、Oracle JRE 8.0asdm-version.binまたは OpenJRE 1.8.x(asdm-openjre-version.binを使用してインストールできます。

ASDM の Oracle バージョンが ASA パッケージに含まれています。 OpenJRE バージョンを使用する場合は、それを ASA にコピーし、そのバージョンの ASDM を使用するように ASA を構成する必要があります。


(注)  


ASDM は Linux ではサポートされていません。


表 1. ASDM オペレーティングシステムとブラウザの要件

オペレーティング システム

ブラウザ

Oracle JRE

OpenJRE

Firefox

Safari

Chrome

Microsoft Windows(英語および日本語):

  • 11

  • 10

    (注)  

     

    ASDM ショートカットに問題がある場合は、ASDM の互換性に関する注意事項の「Windows 10」を参照してください。

  • 8

  • 7

  • Server 2016 と Server 2019

  • Server 2012 R2

  • Server 2012

  • Server 2008

対応

サポートなし

対応

8.0 バージョン 8u261 以降

1.8

(注)  

 

Windows 7 または 10(32 ビット)のサポートなし

Apple OS X 10.4 以降

はい

はい

対応(64 ビット バージョンのみ)

8.0 バージョン 8u261 以降

1.8

ASDM の互換性に関する注意事項

次の表に、ASDM の互換性に関する警告を示します。

条件

注意

ASDM Launcher と ASDM バージョンの互換性

「デバイスマネージャを起動できません(Unable to Launch Device Manager)」というエラーメッセージが表示されます。

新しい ASDM バージョンにアップグレードしてからこのエラーが発生した場合は、最新の Launcher を再インストールする必要があります。

  1. ASA(https://<asa_ip_address>)で ASDM Web ページを開きます。

  2. [ASDMランチャーのインストール(Install ASDM Launcher)] をクリックします。

    図 1. ASDM Launcher のインストール
    ASDM Launcher のインストール
  3. ユーザー名とパスワードのフィールドを空のままにし(新規インストールの場合)、[OK] をクリックします。

    HTTPS 認証が設定されていない場合は、ユーザー名およびイネーブル パスワード(デフォルトで空白)を入力しないで ASDM にアクセスできます。CLI で enable コマンドを最初に入力したときに、パスワードを変更するように求められます。ASDM にログインしたときには、この動作は適用されません。空白のままにしないように、できるだけ早くイネーブルパスワードを変更することをお勧めします。:HTTPS 認証をイネーブルにした場合、ユーザー名と関連付けられたパスワードを入力します。認証が有効でない場合でも、ログイン画面で(ユーザー名をブランクのままにしないで)ユーザー名とパスワードを入力すると、ASDM によってローカル データベースで一致がチェックされます。

ASA との日時の不一致により、自己署名証明書が無効になります

ASDM は自己署名 SSL 証明書を検証し、ASA の日付が証明書の [発行日(Issued On)] と [有効期限(Expires On)] の日付の範囲内にない場合は起動しません。日時が一致しない場合は、次のエラーが表示されます。

図 2. 証明書が無効です
証明書が無効です

この問題を解決するには、ASA で正しい時刻を設定し、リロードします。

証明書の日付を確認するには、次の手順を実行します(例は Chrome)。

  1. https://device_ip に移動します。

  2. メニューバーの [安全ではない(Not secure)] テキストをクリックします。

  3. [証明書が無効です(Certificate is not valid)] をクリックして、証明書ビューアを開きます。

  4. [有効期間(Validity Period)] をオンにします。

図 3. 証明書ビューア
証明書ビューア

Windows Active Directory ディレクトリアクセス

場合によっては、Windows ユーザーの Active Directory 設定によって、Windows で ASDM を正常に起動するために必要なプログラムファイルの場所へのアクセスが制限されることがあります。次のディレクトリへのアクセスが必要です。

  • デスクトップフォルダ

  • C:\Windows\System32C:\Users\<username>\.asdm

  • C:\Program Files (x86)\Cisco Systems

Active Directory がディレクトリアクセスを制限している場合は、Active Directory 管理者にアクセスを要求する必要があります。

Windows 10

This app can't run on your PC」エラー メッセージ。

ASDM ランチャをインストールすると、Windows 10 によって ASDM ショートカットターゲットが Windows Scripting Host パスに置き換えられて、このエラーが発生することがあります。ショートカットターゲットを修正するには、次の手順を実行します。

  1. [Start] > [Cisco ASDM-IDM Launcher] を選択し、[Cisco ASDM-IDM Launcher] アプリケーションを右クリックします。

  2. [More] > [Open file location] を選択します。

    Windows は、ショートカットアイコンを使用してディレクトリを開きます。

  3. ショートカット アイコンを右クリックして、[Properties] を選択します。

  4. [Target] を次のように変更します。

    C:\Windows\System32\wscript.exe invisible.vbs run.bat

  5. [OK] をクリックします。

OS X

OS X では、ASDM の初回実行時に、Java のインストールを要求される場合があります。必要に応じて、プロンプトに従います。インストールの完了後に ASDM が起動します。

OS X 10.8 以降

ASDM は Apple Developer ID で署名されていないため、実行できるようにする必要があります。セキュリティの設定を変更しないと、エラー画面が表示されます。

  1. ASDM を実行できるようにするには、[Cisco ASDM-IDM Launcher] アイコンを右クリック(または Ctrl キーを押しながらクリック)して、[Open] を選択します。

  2. 同様のエラー画面が表示されますが、この画面から ASDM を起動できます。[Open] をクリックします。ASDM-IDM ランチャが起動します。

(ASA 5500 および ISA 3000)ASA では強力な暗号化ライセンス(3DES/AES)が必要

(注)  

 

スマートライセンスモデルを使用すると、強力な暗号化ライセンスを使用せずに ASDM でのアクセスが可能になります。

ASDM では、ASA に SSL 接続する必要があります。Cisco が提供している 3DES PAK ライセンスを要求できます。

  1. https://www.cisco.com/jp/go/license にアクセスします。

  2. [従来のライセンス(Traditional Licenses)] で、 [LRPへのアクセス(Access LRP)]をクリックします。

  3. [ライセンスを取得(Get Licenses)] をクリックし、ドロップダウンリストから [IPS、Crypto、その他...(IPS, Crypto, Other...)] を選択します。

  4. [Search by Keyword] フィールドに「ASA」と入力します。

  5. [Product] リストで [Cisco ASA 3DES/AES License] を選択し、[Next] をクリックします。

  6. ASA のシリアル番号を入力し、プロンプトに従って ASA の 3DES/AES ライセンスを要求します。

  • 自己署名証明書または信頼できない証明書

  • IPv6

  • Firefox および Safari

ASA が自己署名証明書または信頼できない証明書を使用する場合、Firefox と Safari では、IPv6 を介した HTTPS を使用して参照する場合にはセキュリティ例外を追加することはできません。https://bugzilla.mozilla.org/show_bug.cgi?id=633001 を参照してください。この警告は、Firefox または Safari から ASA に発信されるすべての SSL 接続に影響します(ASDM 接続を含む)。この警告を回避するには、信頼できる認証局が ASA に対して発行した適切な証明書を設定します。

  • ASA で SSL 暗号化を行うには、RC4-MD5 と RC4-SHA1 を両方とも含めるか、Chrome で SSL false start を無効にする必要があります。

  • Chrome

RC4-MD5 および RC4-SHA1 アルゴリズム(これらのアルゴリズムはデフォルトでイネーブル)の両方を除外するために ASA の SSL 暗号化を変更した場合、Chrome の「SSL false start」機能のために Chrome は ASDM を起動できません。これらのアルゴリズムのいずれかを再度有効にすることを推奨します([設定(Configuration)] > [デバイス管理(Device Management)] > [詳細(Advanced)] > [SSL設定(SSL Settings)] ペインを参照)。または、「Run Chromium with flags」に従って --disable-ssl-false-start フラグを使用して Chrome の SSL false start を無効にできます。

ハードウェアとソフトウェアの互換性

サポートされるすべてのハードウェアおよびソフトウェアの一覧は、『Cisco ASA Compatibility』 を参照してください。

新機能

このセクションでは、各リリースの新機能を示します。


(注)  


syslog メッセージガイドに、新規、変更済み、および廃止された syslog メッセージを記載しています。


ASA 9.23(1)/ASDM 7.23(1) の新機能

リリース:2025 年 3 月 5 日

特長

説明

プラットフォーム機能

Cisco Secure Firewall 1230/1240/1250

Cisco Secure Firewall 1230/1240/1250 は、1RU ラックマウント可能なファイアウォールです。

Cisco Secure Firewall 4200 の接続制限の引き上げ

最大接続数が引き上げられました。

  • 4225:3,000 万 → 9,000 万

  • 4245:6,000 万 → 18,000 万

ファイアウォール機能

RADIUS Message-Authenticator 属性のサポート。

Message-Authenticator 属性は、Blast- RADIUS 攻撃を防ぐために使用されます。メッセージ オーセンティケータをサポートするように RADIUS サーバーをアップグレードした場合は、このオプションを有効にして、Blast- RADIUS 攻撃を防御できます。有効にする場合、すべての要求と応答にメッセージ オーセンティケータが含まれている必要があります。含まれていない場合、認証は失敗します。

[RADIUSサーバーの追加/編集(Add/Edit RADIUS Server) ] ダイアログボックスに、[RADIUS サーバーからメッセージ オーセンティケータが必要(Require Message-Authenticator for all RADIUS Responses)] オプションが追加されました。

新規 Umbrella API。

秘密キーを持つ API キーを使用する Cisco Umbrella オープンAPIを使用して、Cisco Umbrella を設定できるようになりました。

次の画面が変更されました。[構成(Configuration)] > [ファイアウォール(Firewall)] > [オブジェクト(Objects)] > [Unbrella]

フロー オフロードは Secure Firewall 3100/4200 に対してデフォルトで有効です

フロー オフロードはデフォルトで有効です。

新規/変更された画面:[構成(Configuration)] > [ファイアウォール(Firewall)] > [高度(Advanced)] > [エンジン オフロード(Engine Offload)]

高可用性とスケーラビリティの各機能

すべての Cisco Secure Firewall 1200 モデルでマルチ コンテキストをサポート

マルチ コンテキスト モードのサポートが追加されました。Cisco Secure Firewall 1210/1220

  • Cisco Secure Firewall 1210CE-5 コンテキスト。

  • Cisco Secure Firewall 1210CP:5 コンテキスト。

  • Cisco Secure Firewall 1220CX:10 コンテキスト。

スイッチポートはマルチ コンテキスト モードではサポートされていません。マルチ コンテキスト モードに変換する前に、すべてのインターフェイスをルータ インターフェイスに変換する必要があります。

Cisco Secure Firewall 1230/1240/1250 も最初のリリースでマルチ コンテキスト モードをサポートしています。

  • Cisco Secure Firewall 1230:25 コンテキスト。

  • Cisco Secure Firewall 1240:25 コンテキスト。

  • Cisco Secure Firewall 1250:25 コンテキスト。

クラスタ リダイレクト: Cisco Secure Firewall 4200 非対称クラスタ トラフィックのフロー オフロードのサポート

非対称フローの場合、クラスタリダイレクトにより、転送ノードはハードウェアにフローをオフロードできます。この機能はデフォルトで有効になっています。

既存のフローのトラフィックが別のノードに送信されると、そのトラフィックはクラスタ制御リンクを介してオーナー ノードにリダイレクトされます。非対称フローは、クラスタ制御リンクに大量のトラフィックを作成する可能性があるため、フォワーダにこれらのフローをオフロードさせると、パフォーマンスが向上します。

追加/変更された画面: [構成 (Configuration)] > [ファイアウォール(Firewall)] > [高度(Advanced)] > [オフ ロードエンジン(Offload Engine)] > [クラスタ リダイレクト オフロード(Cluster Redirect Offload)]

フェールオーバー中のロールスイッチ時間の短縮

フェールオーバーが発生すると、新しいアクティブデバイスが MAC アドレスエントリごとにマルチキャストパケットを生成して、すべてのブリッジ グループ インターフェイスに送信し、アップストリームスイッチにルーティングテーブルを更新させます。マルチキャストパケットを生成してブリッジインターフェイスに送信するこのタスクは、データプレーンで非同期に実行されるようになっため、コントロールプレーンでの重要なフェールオーバータスクを遅延なく続行できます。

この機能拡張により、フェールオーバー中のロールスイッチ時間が短縮され、ダウンタイムが短縮されます。

クラスタノード参加時の MTU ping テスト

クラスタに参加したノードは、クラスタ制御リンク MTU と一致するパケットサイズで制御ノードに ping を送信することで MTU の互換性をチェックします。ping が失敗すると、通知が生成されるため、接続スイッチの MTU 不一致を修正して再試行することができます。

インターフェイス機能

Cisco Secure Firewall 1210CP IEEE 802.3bt のサポート(PoE++ および Hi-PoE)

IEEE 802.3bt のサポートに関連する次の改善を確認してください。

  • PoE++ と Hi-PoE:ポートあたり最大 90 W。

  • シングルシグネチャおよびデュアルシグネチャの受電デバイス(PD)。

  • パワーバジェットが先着順で行われます。

  • show power inline にパワーバジェットフィールドが追加されました。

新規/変更された画面:

  • [Configuration] > [Device Setup] > [Interface Settings] > [Interfaces] > [Edit] > [Power Over Ethernet]

  • [Monitoring] > [Interfaces] > [Power Over Ethernet]

ライセンス機能

ASA 仮想に対する柔軟な永続ライセンスの予約

ASA 仮想の場合、RAM と vCPU に関係なく、モデル固有のライセンスを永続ライセンス予約用に設定できます。ASA 仮想に割り当てられたメモリに関係なく、永続ライセンスの予約ライセンスを切り替えることができます。また、モデル ライセンスを変更せずに、 ASA 仮想 に割り当てられたメモリと vCPU を変更することもできます。

ASA 仮想 の 9.23.1 より前のバージョンにダウングレードすると、ライセンスのステータスが [未登録(Unregistered)] になります。柔軟な永続ライセンス予約で ASA 仮想 をダウングレードしないことをお勧めします。

管理、モニタリング、およびトラブルシューティングの機能

TLS デバイス証明書に対する Automated Certificate Management Environment(ACME)プロトコル

ASA トラストポイントに自動証明書管理環境(ACME)プロトコルを設定して、TLS デバイス証明書を管理できます。ACME は、自動更新、ドメイン検証、および簡単な登録と失効によって、簡素化された証明書管理を可能にします。認証に Let's Encrypt CA サーバーを使用するか、他の ACME サーバーを使用するかを選択できます。ACME は認証に http01 方式を使用します。

新規または変更された画面:

[アイデンティティ証明書の追加(Add Identity Certificate)] > [新しいアイデンティティ証明書の追加(Add a new Identity Certificate)] > [詳細(Advanced)] > [CAからの要求(Request from a CA)]

VPN 機能

Secure Firewall 4200 のクラスタリングを使用した分散型サイト間 VPN

Firepower 4200 上の ASA クラスタは、分散モードでサイト間 VPN をサポートします。分散モードでは、(集中モードなどの)制御ノードだけでなく、ASA クラスタのメンバー間で多数のサイト間 IPsec IKEv2 VPN 接続を分散させることができます。これにより、集中型 VPN の機能を超えて VPN サポートが大幅に拡張され、高可用性が実現します。

新規または変更された画面:

[Monitoring] > [ASA Cluster] > [ASA Cluster] > [VPN Cluster Summary]

[Monitoring] > [VPN] > [VPN Statistics] > [Sessions]

[Configuration] > [Device Management] > [High Availablility and Scalability] > [ASA Cluster]

[Wizards] > [Site-to-Site]

[Monitoring] > [VPN] > [VPN Statistics] > [Sessions]

[Monitoring] > [ASA Cluster] > [ASA Cluster] > [VPN Cluster Summary]

[Monitoring] > [ASA Cluster] > [ASA Cluster] > [System Resource Graphs] > [CPU/Memory]

[Monitoring] > [Logging] > [Real-Time Log Viewer]

分散型サイト間 VPN モードの Cisco Secure Firewall 4200 のクラスタ制御リンクのトラフィックの IPsec フローのオフロード

分散型サイト間 VPN モードの非対称フローの場合、IPsec フロー オフロードにより、フロー オーナーは、クラスタ制御リンクを介して転送されたハードウェア内の IPsec トラフィックを復号できます。この機能は構成可能ではありません。IPsec フローのオフロードを有効にすると常に使用できます。

追加/変更された画面:[設定(Configuration)] > [ファイアウォール(Firewall)] > [高度(Advanced)] > [IPsecオフロード(IPsec Offload)]

ファイアウォール機能の概要

ファイアウォールは、外部ネットワーク上のユーザーによる不正アクセスから内部ネットワークを保護します。また、ファイアウォールは、人事部門ネットワークをユーザー ネットワークから分離するなど、内部ネットワーク同士の保護も行います。Web サーバーまたは FTP サーバーなど、外部のユーザーが使用できるようにする必要のあるネットワーク リソースがあれば、ファイアウォールで保護された別のネットワーク(非武装地帯(DMZ)と呼ばれる)上に配置します。ファイアウォールによって DMZ に許可されるアクセスは限定されますが、DMZ にあるのは公開サーバーだけのため、この地帯が攻撃されても影響を受けるのは公開サーバーに限定され、他の内部ネットワークに影響が及ぶことはありません。また、特定アドレスだけに許可する、認証または認可を義務づける、または外部の URL フィルタリング サーバーと協調するといった手段によって、内部ユーザーが外部ネットワーク(インターネットなど)にアクセスする機会を制御することもできます。

ファイアウォールに接続されているネットワークに言及する場合、外部ネットワークはファイアウォールの手前にあるネットワーク、内部ネットワークはファイアウォールの背後にある保護されているネットワーク、そして DMZ はファイアウォールの背後にあるが、外部ユーザーに制限付きのアクセスが許されているネットワークです。ASA を使用すると、数多くのインターフェイスに対してさまざまなセキュリティ ポリシーが設定できます。このインターフェイスには、多数の内部インターフェイス、多数の DMZ、および必要に応じて多数の外部インターフェイスが含まれるため、ここでは、このインターフェイスの区分は一般的な意味で使用するだけです。

セキュリティ ポリシーの概要

他のネットワークにアクセスするために、ファイアウォールを通過することが許可されるトラフィックがセキュリティ ポリシーによって決められます。デフォルトでは、内部ネットワーク(高セキュリティ レベル)から外部ネットワーク(低セキュリティ レベル)へのトラフィックは、自由に流れることが ASA によって許可されます。トラフィックにアクションを適用してセキュリティ ポリシーをカスタマイズすることができます。

アクセス ルールによるトラフィックの許可または拒否

アクセス ルールを適用することで、内部から外部に向けたトラフィックを制限したり、外部から内部に向けたトラフィックを許可したりできます。ブリッジグループ インターフェイスでは、EtherType アクセス ルールを適用して、非 IP トラフィックを許可できます。

NAT の適用

NAT の利点のいくつかを次に示します。

  • 内部ネットワークでプライベート アドレスを使用できます。プライベート アドレスは、インターネットにルーティングできません。

  • NAT はローカル アドレスを他のネットワークから隠蔽するため、攻撃者はホストの実際のアドレスを取得できません。

  • NAT は、重複 IP アドレスをサポートすることで、IP ルーティングの問題を解決できます。

IP フラグメントからの保護

ASA は、IP グラグメント保護を提供します。この機能は、すべての ICMP エラー メッセージの完全なリアセンブリと、ASA 経由でルーティングされる残りの IP フラグメントの仮想リアセンブリを実行します。セキュリティ チェックに失敗したフラグメントは、ドロップされログに記録されます。仮想リアセンブリはディセーブルにできません。

HTTP、HTTPS、または FTP フィルタリングの適用

アクセス リストを使用して、特定の Web サイトまたは FTP サーバーへの発信アクセスを禁止できますが、このような方法で Web サイトの使用方法を設定し管理することは、インターネットの規模とダイナミックな特性から、実用的とはいえません。

ASA でクラウド Web セキュリティを設定できます。ASA は、Cisco Web セキュリティ アプライアンス(WSA)などの外部製品とともに使用することも可能です。

アプリケーション インスペクションの適用

インスペクション エンジンは、ユーザーのデータ パケット内に IP アドレッシング情報を埋め込むサービスや、ダイナミックに割り当てられるポート上でセカンダリ チャネルを開くサービスに必要です。これらのプロトコルは、ASA によるディープ パケット インスペクションの実行を必要とします。

QoS ポリシーの適用

音声やストリーミング ビデオなどのネットワーク トラフィックでは、長時間の遅延は許容されません。QoS は、この種のトラフィックにプライオリティを設定するネットワーク機能です。QoS とは、選択したネットワーク トラフィックによりよいサービスを提供するネットワークの機能です。

接続制限と TCP 正規化の適用

TCP 接続、UDP 接続、および初期接続を制限することができます。接続と初期接続の数を制限することで、DoS 攻撃(サービス拒絶攻撃)から保護されます。ASA では、初期接続の制限を利用して TCP 代行受信を発生させます。代行受信によって、TCP SYN パケットを使用してインターフェイスをフラッディングする DoS 攻撃から内部システムを保護します。初期接続とは、送信元と宛先の間で必要になるハンドシェイクを完了していない接続要求のことです。

TCP 正規化は、正常に見えないパケットをドロップするように設計された高度な TCP 接続設定で構成される機能です。

脅威検出のイネーブル化

スキャン脅威検出と基本脅威検出、さらに統計情報を使用して脅威を分析する方法を設定できます。

基本脅威検出は、DoS 攻撃などの攻撃に関係している可能性のあるアクティビティを検出し、自動的にシステム ログ メッセージを送信します。

典型的なスキャン攻撃では、あるホストがサブネット内の IP アドレスにアクセスできるかどうかを 1 つずつ試します(サブネット内の複数のホストすべてを順にスキャンするか、1 つのホストまたはサブネットの複数のポートすべてを順にスイープする)。スキャン脅威検出機能は、いつホストがスキャンを実行するかを判別します。トラフィック署名に基づく IPS スキャン検出とは異なり、ASA のスキャニング脅威検出機能は、スキャン アクティビティに関して分析できるホスト統計を含む膨大なデータベースを維持します。

ホスト データベースは、不審なアクティビティを追跡します。このようなアクティビティには、戻りアクティビティのない接続、閉じているサービス ポートへのアクセス、脆弱な TCP 動作(非ランダム IPID など)、およびその他の多くの動作が含まれます。

攻撃者に関するシステム ログ メッセージを送信するように ASA を設定できます。または、自動的にホストを排除できます。

ファイアウォール モードの概要

ASA は、次の 2 つのファイアウォール モードで動作します。

  • ルーテッド

  • Transparent

ルーテッド モードでは、ASA は、ネットワークのルータ ホップと見なされます。

トランスペアレント モードでは、ASA は「Bump In The Wire」または「ステルス ファイアウォール」のように動作し、ルータ ホップとは見なされません。ASA は「ブリッジグループ」の内部および外部インターフェイスと同じネットワークに接続します。

トランスペアレント ファイアウォールは、ネットワーク コンフィギュレーションを簡単にするために使用できます。トランスペアレント モードは、攻撃者からファイアウォールが見えないようにする場合にも有効です。トランスペアレント ファイアウォールは、他の場合にはルーテッド モードでブロックされるトラフィックにも使用できます。たとえば、トランスペアレント ファイアウォールでは、EtherType アクセス リストを使用するマルチキャスト ストリームが許可されます。

ルーテッド モードでブリッジ グループの設定、およびブリッジ グループと通常インターフェイスの間のルートの設定を行えるように、ルーテッド モードでは Integrated Routing and Bridging をサポートしてます。ルーテッド モードでは、トランスペアレント モードの機能を複製できます。マルチ コンテキスト モードまたはクラスタリングが必要ではない場合、代わりにルーテッド モードを使用することを検討してください。

ステートフル インスペクションの概要

ASA を通過するトラフィックはすべて、アダプティブ セキュリティ アルゴリズムを使用して検査され、通過が許可されるか、またはドロップされます。単純なパケット フィルタは、送信元アドレス、宛先アドレス、およびポートが正しいかどうかはチェックできますが、パケット シーケンスまたはフラグが正しいかどうかはチェックしません。また、フィルタはすべてのパケットをフィルタと照合してチェックするため、処理が低速になる場合があります。


(注)  


TCP ステート バイパス機能を使用すると、パケット フローをカスタマイズできます。


ただし、ASA のようなステートフル ファイアウォールは、パケットの次のようなステートについて検討します。

  • 新規の接続かどうか。

    新規の接続の場合、ASA は、パケットをアクセス リストと照合してチェックする必要があり、これ以外の各種のタスクを実行してパケットの許可または拒否を決定する必要があります。このチェックを行うために、セッションの最初のパケットは「セッション管理パス」を通過しますが、トラフィックのタイプに応じて、「コントロール プレーン パス」も通過する場合があります。

    セッション管理パスで行われるタスクは次のとおりです。

    • アクセス リストとの照合チェック

    • ルート ルックアップ

    • NAT 変換(xlates)の割り当て

    • 「ファスト パス」でのセッションの確立

    ASA は、TCP トラフィックのファスト パスに転送フローとリバース フローを作成します。ASA は、高速パスも使用できるように、UDP、ICMP(ICMP インスペクションがイネーブルの場合)などのコネクションレス型プロトコルの接続状態の情報も作成するので、これらのプロトコルもファスト パスを使用できます。


    (注)  


    SCTP などの他の IP プロトコルの場合、ASA はリバース パス フローを作成しません。そのため、これらの接続を参照する ICMP エラー パケットはドロップされます。


    レイヤ 7 インスペクションが必要なパケット(パケットのペイロードの検査または変更が必要)は、コントロール プレーン パスに渡されます。レイヤ 7 インスペクション エンジンは、2 つ以上のチャネルを持つプロトコルで必要です。2 つ以上のチャネルの 1 つは周知のポート番号を使用するデータ チャネルで、その他はセッションごとに異なるポート番号を使用するコントロール チャネルです。このようなプロトコルには、FTP、H.323、および SNMP があります。

  • 確立済みの接続かどうか。

    接続がすでに確立されている場合は、ASA でパケットの再チェックを行う必要はありません。一致するパケットの大部分は、両方向で「ファースト」パスを通過できます。高速パスで行われるタスクは次のとおりです。

    • IP チェックサム検証

    • セッション ルックアップ

    • TCP シーケンス番号のチェック

    • 既存セッションに基づく NAT 変換

    • レイヤ 3 ヘッダー調整およびレイヤ 4 ヘッダー調整

    レイヤ 7 インスペクションを必要とするプロトコルに合致するデータ パケットも高速パスを通過できます。

    確立済みセッション パケットの中には、セッション管理パスまたはコントロール プレーン パスを引き続き通過しなければならないものがあります。セッション管理パスを通過するパケットには、インスペクションまたはコンテンツ フィルタリングを必要とする HTTP パケットが含まれます。コントロール プレーン パスを通過するパケットには、レイヤ 7 インスペクションを必要とするプロトコルのコントロール パケットが含まれます。

VPN 機能の概要

VPN は、TCP/IP ネットワーク(インターネットなど)上のセキュアな接続で、プライベートな接続として表示されます。このセキュアな接続はトンネルと呼ばれます。ASA は、トンネリング プロトコルを使用して、セキュリティ パラメータのネゴシエート、トンネルの作成および管理、パケットのカプセル化、トンネルを通したパケットの送信または受信、パケットのカプセル化の解除を行います。ASA は、双方向トンネルのエンドポイントとして機能します。たとえば、プレーン パケットを受信してカプセル化し、それをトンネルのもう一方のエンドポイントに送信することができます。そのエンドポイントで、パケットはカプセル化を解除され、最終的な宛先に送信されます。また、セキュリティ アプライアンスは、カプセル化されたパケットを受信してカプセル化を解除し、それを最終的な宛先に送信することもできます。ASA は、これらの機能を実行するためにさまざまな標準プロトコルを起動します。

ASA は、次の機能を実行します。

  • トンネルの確立

  • トンネル パラメータのネゴシエーション

  • ユーザーの認証

  • ユーザー アドレスの割り当て

  • データの暗号化と復号化

  • セキュリティ キーの管理

  • トンネルを通したデータ転送の管理

  • トンネル エンドポイントまたはルータとしての着信と発信のデータ転送の管理

ASA は、これらの機能を実行するためにさまざまな標準プロトコルを起動します。

セキュリティ コンテキストの概要

単一の ASA は、セキュリティ コンテキストと呼ばれる複数の仮想デバイスにパーティション化できます。各コンテキストは、独自のセキュリティ ポリシー、インターフェイス、および管理者を持つ独立したデバイスです。マルチ コンテキストは、複数のスタンドアロン デバイスを使用することに似ています。マルチ コンテキスト モードでは、ルーティング テーブル、ファイアウォール機能、IPS、管理など、さまざまな機能がサポートされています。ただし、サポートされていない機能もあります。詳細については、機能に関する各章を参照してください。

マルチ コンテキスト モードの場合、ASA には、セキュリティ ポリシー、インターフェイス、およびスタンドアロン デバイスで設定できるほとんどのオプションを識別するコンテキストごとのコンフィギュレーションが含まれます。システム管理者がコンテキストを追加および管理するには、コンテキストをシステム コンフィギュレーションに設定します。これが、シングル モード設定と同じく、スタートアップ コンフィギュレーションとなります。システム コンフィギュレーションは、ASA の基本設定を識別します。システム コンフィギュレーションには、ネットワーク インターフェイスやネットワーク設定は含まれません。その代わりに、ネットワーク リソースにアクセスする必要が生じたときに(サーバーからコンテキストをダウンロードするなど)、システムは管理コンテキストとして指定されているコンテキストのいずれかを使用します。

管理コンテキストは、他のコンテキストとまったく同じです。ただし、ユーザーが管理コンテキストにログインすると、システム管理者権限を持つので、システム コンテキストおよび他のすべてのコンテキストにアクセス可能になる点が異なります。

ASA クラスタリングの概要

ASA クラスタリングを利用すると、複数の ASA をグループ化して、1 つの論理デバイスにすることができます。クラスタは、単一デバイスのすべての利便性(管理、ネットワークへの統合)を備える一方で、複数デバイスによって高いスループットおよび冗長性を達成します。

すべてのコンフィギュレーション作業(ブートストラップ コンフィギュレーションを除く)は、制御ユニット上でのみ実行します。コンフィギュレーションは、メンバーユニットに複製されます。

特殊なサービス非推奨のサービスおよびレガシー サービス

一部のサービスのマニュアルは、主要な設定ガイドおよびオンライン ヘルプとは別の場所にあります。

特殊なサービスに関するガイド

特殊なサービスを利用して、たとえば、電話サービス(Unified Communications)用のセキュリティ プロキシを提供したり、ボットネット トラフィック フィルタリングを Cisco アップデート サーバーのダイナミック データベースと組み合わせて提供したり、Cisco Web セキュリティ アプライアンス用の WCCP サービスを提供したりすることにより、ASA と他のシスコ製品の相互運用が可能になります。これらの特殊なサービスの一部については、別のガイドで説明されています。

非推奨のサービス

非推奨の機能については、ASA バージョンの設定ガイドを参照してください。同様に、設計の見直しが行われた機能(NAT(バージョン 8.2 と 8.3 の間に見直しを実施)、トランスペアレント モードのインターフェイス(バージョン 8.3 と 8.4 の間に見直しを実施)など)については、各バージョンの設定ガイドを参照してください。ASDM は以前の ASA リリースとの後方互換性を備えていますが、設定ガイドおよびオンライン ヘルプでは最新のリリースの内容しか説明されていません。

レガシー サービス ガイド

レガシー サービスは現在も ASA でサポートされていますが、より高度なサービスを代わりに使用できる場合があります。レガシー サービスについては別のガイドで説明されています。

『Cisco ASA Legacy Feature Guide』

このマニュアルの構成は、次のとおりです。

  • RIP の設定

  • ネットワーク アクセスの AAA 規則

  • IP スプーフィングの防止などの保護ツールの使用(ip verify reverse-path)、フラグメント サイズの設定(fragment)、不要な接続のブロック(shun)、TCP オプションの設定(ASDM 用)、および基本 IPS をサポートする IP 監査の設定(ip audit)。

  • フィルタリング サービスの設定