Accelerating Customer Service -顧客サービスのアクセルを踏む

INDEX

  1. Accelerating Customer Service
  2. チャンスをつかむ
  3. コミュニケーションが一新
  4. 顧客にもっと近づく
  5. 生産性も向上する

Accelerating Customer Service

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Atlanta Classic Cars の社長キャシー・エリス氏は、「顧客エクスペリエンスの改善が最優先です」と言う。

Atlanta Classic Cars (ACC) は、米国南東部で最大級の店舗規模を誇り、最も成功しているメルセデスベンツ販売代理店の 1つである。同社の大きな店舗を訪れるとちょっと変わった体験ができる。ゴルフ好きなら、迷わず敷地内のゴルフ練習設備を試してみたい。バンカー付きのグリーンがあり、様々な角度からバンカーショットを研究することができる。集中力が必要なロングパッティングを練習するためのヤードもある。

ネットのブラウジングやメールチェックをするなら、ブロードバンドに接続されたPC が用意されている。女性ならミニネイルサロンで爪の手入れをしてもらってもいいし、疲れているならマッサージのサービスを頼むとよい。

典型的なカーディーラーであれば、殺風景な待合室で、「お車の準備ができました」と声がかかるのをじっと待っていなければならない。しかし、ここではその必要はない。

ACC の創業は 1975年。年間売上 1億 3,000万ドル、従業員 200名の企業規模。経営者のキャシー・エリス氏は次のように言う。「『メルセデスを買うなら ACC しかない』と考えていただけるように、顧客エクスペリエンスの向上を図っています。一般に、カーディーラーに行くのは、歯医者に行くのと同様『仕方がないこと』と考えられています。こうした先入観を払拭するために、私たちはあらゆるチャンスを活用しています」

ACC は創業時から、独自の顧客エクスペリエンスを実現しようと努めてきた。2年前、店舗を拡充すべく 8ヘクタールの広大な敷地を取得し、「1ランク上の顧客サービス実現」するための取り組みを始めた。同社は、顧客サービスを向上させつつ、従業員の生産性向上も実現する新しいテクノロジーの導入を決めた。

IT 担当マネージャーのバディー・コナー氏が経緯を説明してくれた。エリス社長の「1ランク上へのビジョン」は大変に明快であり、彼女は、顧客サービス関連の技術を含めた、あらゆるものを「最先端」にすることを望んだという。

ACC には昔から、顧客サービスにおいて業界をリードするという理念がある。移転の際に課題となったのは、まず店舗を物理的に新しい場所に移した上で、その理念に沿うべく、最先端の IT を導入し、いかに顧客サービスを強化するかということだった。それと同時に、従業員の生産性を向上し、企業価値の増大も実現しなければならない。

この課題に対する解答は、ネットワークを使って音声などのコミュニケーション環境を形づくる「IP コミュニケーション」であることが自ずと明らかになった。

ACC の CFO であるキム・シューマッハ氏も、エリス社長、コナー氏とともに、IP コミュニケーションは管理負担が軽いこと、導入済みのアプリケーションとの統合もたやすいこと (セールス担当とメンテナンスサービス担当が、単一のシステムを使って充実した顧客データにアクセスできる) を確認し、その導入が正しい解答であることを理解した。

「検討すればするほど、IP による音声とデータの統合が『カーディーラー業界の将来そのものである』という確信が強まってきました」とシューマッハ氏は言う。

シスコのゴールド認定パートナー ADP 社のディーラーサービス部門の協力を得て、ACC は IP コミュニケーションが展開できるネットワークインフラ (統合化ネットワーク) を構築した。ADP は ACC の要望を確認しながら、そこへ、以前から稼働しているディーラー管理システム (DMS) と CRM アプリケーションを組み込む手はずを整えた。カーディーラーの DMS は一般企業における ERP に相当し、ビジネスのより統合的な管理に役立つ。

移転作業のなかで ADP は、ACC が PBX ベースの電話システムから、柔軟性に優れた IP フォン基盤へ移行するのを支援した。DMS および CRM プラットフォームと、音声システムを統合させるための中核コールプロセッシング技術として「Cisco CallManager」も導入された。

エリス氏によると、高級車ビジネスにおいては、他社に対する際立った競争優位点を持つことは贅沢なことでも何でもなく、むしろ必須なのだという。「今日では、顧客サービスの充実なしにディーラーは成長できません。『お客様が欲しているのは車だけ』と考えるべきではありません。車の所有につきまとう一切の面倒を引き受けてくれるディーラーが求められているのです」

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「音声とデータの統合システムがディーラー業界の将来を担うはず」キム・シューマッハ氏はそう断言する。
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