Cisco Exclusive Interview「自分流『検索エンジン』づくりのススメ」荒俣宏

INDEX

  1. この世の不思議に知の体系を与えた「博物学」
  2. 博物学的快楽とITの密接な関係
  3. 自分流「検索エンジン」づくりのススメ
  4. 「罪深きサラリーマン」になりましょう
  5. とことん「源」まで遡りたい

自分流「検索エンジン」づくりのススメ

― 博物学というと、大量に情報を整理していく技術の部分がありますね。現代の情報の洪水の中で、必要な情報を素早く検索するコツはあるんでしょうか?

ボクは、記憶力はかなりいいほうだったんです。教科書は一回読めば、だいたい頭の中に入ってしまった。ずっとそういうものだと思っていたのですが、さすがに年をとるごとにだんだんダメになってきた(笑)。そこで、コンピュータになぞらえれば、情報のファイル場所を、CPU と外部記憶装置 (外付けのハードディスク) とに分けてみることにしたんです。

細かい情報は外部記憶装置に全部入れてしまい、必要なとき以外は全く忘れてしまう。肝心の CPU にはインコアとなる検索エンジンを積んでおく。ここには基本となるキーワードを、だいたい 50~60語くらい登録しておいて、これだけは常に稼働させておくというスタイルです。

のんべんだらりと生きていたら、入ってくる情報なんてバッファに入るだけで全く使いモノになりませんから、やはり自分にとってリアルなキーワードを検索語に選定して、鋭敏に関連語を拾えるようエンジンを鍛えていく必要があります。

たとえば、ボクの場合なら、「ハゲ」という言葉にまつわる、あらゆる情報に敏感なわけですよ (笑)。だから、ハゲというキーワードを頭の中の検索語にしておけば、ハゲを媒介にして、ボクのデータベースはどんどん豊かになっていく。そういう意味で、コンプレックスがあるというのは、かなり有利です。それだけでこだわりが生まれますから。他人にとってはどうでもいいようなことでも、自分にだけは非常に重要な情報、というところがポイントですね。

― このシビアな世の中にあって、すぐれた自前の検索エンジンを持つことで、サバイバルは可能でしょうか?

これからの時代、自分自身について話せるネタがない人には、とてもツライ世の中になると思います。昔なら「○○銀行の頭取」という肩書きだけでどうにかなったんですが、今は「○○銀行の頭取。だけど、ちょっとオチャメ♪」みたいな付加価値を自分でつけてやれないと、誰も話を聞いてくれない世の中になりつつあります。たとえば、ネットの掲示板とか自分のホームページとかのバーチャルな世界で、自分について肩書きしか語ることができない人がいたら、全く相手にされないでしょう。

別にネタなんて、なんでもいんですよ。便秘の人なら、そのせいでいかに苦労したか、実体験を通してリアルに語ることができれば、そこにキャラが生まれる。いわば、素顔の自分の魅力ですね。とにかく、自分のユニークさ、ネタの豊富さみたいなものを積み重ねて、常に使えるような状態にしていないとダメですね。

自分なりの検索エンジンを充実させる必要というのは、そういうことなんです。おじさんたちにはちょっとキツイかもしれませんが、バーチャルなコミュニケーションに慣れている今の若い人たちは、そういう「自分の伝説化」をごくふつうに実行していますからね。

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