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第4回 シスコ データセンター フォーラム 「プライベートクラウドは企業 IT を変革するか」

プライベート クラウドをテーマに、2日間に渡って開催

去る 2010 年 4 月 16 日、20 日の 両日、第 4 回シスコ データセンター フォーラムが開催されました。今年のテーマは「プライベート クラウドは企業 IT を変革するか」。一日目は「ビジネス デー」としてビジネスメリットを理解するための集客イベントを行い、二日目は「テクノロジー デー」としてオンラインで技術セッションを提供しました。

第4回 シスコ データセンター フォーラム −プライベートクラウドは企業ITを変革するか−

ネットワークの高速化、仮想化技術の進展、提供サービスの充実により、企業 IT システムにおけるクラウド サービスは本格的な導入フェーズに入りつつあります。リソースの集中化、利用した分だけの料金を支払えばよいという「Pay for Use」によって得られるコスト優位性、プロビジョニングの迅速さはもちろん、柔軟性の向上がもたらす事業利益への貢献など、クラウドは多くのメリットをもたらします。

最初に注目されたパブリック クラウドは、インターネットを通じてクラウド内のサービスにアクセスするものです。これに対し、企業内、あるいは特定のサービス事業者が提供する閉域ネットワーク上に構築するのが、今注目されているプライベート クラウドです。

プライベート クラウドの場合、企業が独自に要件を決定できるため、セキュリティ、インフラ制御、サービス レベル管理、コンプライアンスなどの面で、エンタープライズ クラスの機能を実装することが可能となります。しかし、すべての IT リソースへの仮想化とプロビジョニング技術の採用やベストプラクティスの不足などにより、注目を集めながらも、導入には至っていない企業が多くなっています。

本フォーラム一日目、東京ミッドタウンホール A にて開催された「ビジネス デー」では、サービスの導入を支援するコンサルティング、技術基盤を提供するベンダー、選定・導入・利用した経験を持つユーザ、それぞれの立場から、プライベート クラウドの現状、そして展望を掘り下げたセッションが展開されました。

クラウドの持つ「光」と「影」、それを解決するマネージド クラウド

アクセンチュア株式会社 森 泰成 氏のセッションでは、コンサルティングの視点から、企業 IT におけるクラウド サービスの活用について、これまでの傾向、現状と今後の見通しを説明いただきました。特に今後の展望については、クラウドの持つ「光」と「影」に焦点を当て、多くの示唆に富んだ見解が示されました。

アクセンチュア株式会社 インフラストラクチャコンサルティング統括パートナー 森 泰成 氏

アクセンチュア株式会社
インフラストラクチャコンサルティング統括パートナー
森 泰成 氏

多極化した世界経済では変動要素が多く、市場は常に伸縮を繰り返すと予測されます。そのため、企業 ITにも、伸縮自在(エラスティック)なスケーラビリティが求められています。

これを実現するのがクラウド サービスです。ビジネスの変化に応じた迅速な対応が可能であり、システムを利用した分のサービス料を支払えばよいため、投資リスクを軽減し、伸縮自在なシステムを実現できます。

クラウド サービスでは「使われないと儲からない」ため、利用者主導型とならざるを得ません。企画力と革新性が重視されるようになり、新たなパラダイム シフトを引き起こします。

いまでは、BPaaS(Business Process as a Service)、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service) など、さまざまな機能がサービスとして提供されています。こうした考えの延長上で、クラウドへの注目度は高まりを見せています。

事実、国内におけるクラウド コンピューティング市場は近年右肩上がりの成長を続け、2013 年には国内で約 1.1 兆円規模に達すると予測されています。企業の IT 資産のうち、実に 25% 〜 50% がファイアウォールの外側に存在するようになることが予想されるのです。

このように、「光」に満ちたクラウドですが、一方で「影」も併せ持っています。ユーザ主体での利用となるため、ガバナンスが必要となるほか、特定ベンダーへの依存度の高さ、既存システムとの連携における運用性の低さ、特有業務や法規制への対応の難しさなど、導入の障壁となる要素も存在します。

また、ファイアウォールの外側に機密データを置くことに対するセキュリティ懸念、パフォーマンスの問題、ユーザの増加や利用期間が長くなることで発生するコスト肥大なども、解決すべき課題といえるでしょう。

クラウドのこうした「光」の実現と「影」の解決はトレード オフの関係にあります。メリットの享受と課題の解決を両立させるためには、パブリックなクラウドだけでなく、プライベート クラウドを併用する「マネージド クラウド」の利用が必要だと考えられます。

パブリック クラウド上の IT リソースをサービスとして利用する一方で、それだけでは満たせない個別要件をパブリック クラウドとして実現すれば、全ステーク ホルダーを有機的に連結し、クラウドが創出するメリットを最大化することが可能となります。

アクセンチュアでは、ユーザが求める品質とクラウドが提供する品質のギャップを埋めるさまざまなスキームを用意しています。マネージド クラウド サービス プロバイダとして、各企業内にとどまらない、業界内もしくは業界横断でサービス機能を利用できる、クラウドの世界を創造していきたいと考えています。

競争力をもたらす「エンタープライズ クラウド」の実現

続いて、シスコの石本のセッションでは、クラウドを通じて企業 IT の課題を解決するにあたり、基盤を提供するベンダーとしてのシスコの役割が紹介されました。
> 講演資料と講演 VoD はこちら

シスコシステムズ合同会社 専務執行役員 アーキテクチャ&テクノロジー事業統括  石本 龍太郎

シスコシステムズ合同会社
専務執行役員
アーキテクチャ&テクノロジー事業統括
石本 龍太郎

現在、わたしたちが置かれているビジネスの環境は、コストの削減、そして競合優位性の強化という、相反する 2 つの課題を抱えています。ICT においても、増大するコストを抑える一方で先進的な技術を持ったデータセンターや競争優位を生むシステムを構築しなければいけないという、大きなプレッシャーを抱えています。

その解決方法のひとつが仮想化、そして、仮想化をさらに進めたクラウド サービスです。さまざまなアプリケーションを、複数ユーザが利用するマルチ テナント環境において、既存のインフラを通じて、目的に応じて「オンデマンド」、かつ「適切なスケール」の IT リソースや、サービスを提供できます。

現在は、従来のスタンドアローンなデータセンターから、プライベートあるいはパブリック クラウドへ移行する黎明期にあるといえます。今後クラウドの形態は、プライベート/パブリック クラウド、両者の「いいとこ取り」であるハイブリット クラウド、そしてクラウド同士を連携するインター クラウドへと進化してゆくことでしょう。

シスコは、2010 年 4 月に、次世代データセンター構想「Cisco Data Center 3.0」の一環として、プライベート クラウドを推進する第 2 世代の Unified Computing System(UCS)を発表しました。UCS は発売以来、事例のビデオをご覧いただいた TASER 社をはじめ、すでに多くの企業にご導入いただいています。その UCS に、Intel の新しプロセッサを搭載した新しいモデルが登場しました。この新しいモデルでは、さまざまな業界標準のベンチマーク結果を塗り替えています。

休憩中、ロビーに展示された Vblock には多くの参加者が集まり、シスコの担当者の説明に熱心に耳を傾けていた

休憩中、ロビーに展示された Vblock には多くの参加者が集まり、シスコの担当者の説明に熱心に耳を傾けていた

また、シスコでは、EMC、ヴイエムウェアと合同による VCE 連合を通して、プライベート クラウドの導入を容易にする Vblock インフラストラクチャ パッケージを提供しています。Vblock の組み合わせで、プライベート クラウドを柔軟に構築してゆくことが可能です。

データセンター間をつなぐ Overlay Transport Virtualization 技術など、引き続き、プライベート クラウドを支える IT 基盤の提供ベンダーとして、将来を見据えたインフラストラクチャ サービスを開発、提供することを目指しています。

プライベート クラウド型サービス導入事例 - シスコの取り組みと成果

シスコの廣崎からは、日本法人の社内情報システムの統括という立場より、プライベート クラウド サービスを導入したユーザ企業の IT 部門の視点に立って、シスコの取り組みが紹介されました。
> 講演資料と講演 VoD はこちら

シスコシステムズ合同会社 情報システム本部長 廣崎 淳一

シスコシステムズ合同会社
情報システム本部長
廣崎 淳一

シスコは現在、全世界に 51 箇所ものデータセンターを抱えています。25年間で 140 の M&A を行うことでビジネス成長を進めてきたシスコにとって、全世界に分散する、各事業に関連するデータセンターの統合は必須の課題でした。

一方で、データセンター内部にも多くの課題がありました。一番大きかったのはサイロ化の問題。部門ごとのサービスを、部門ごとの予算で構築していたため、リソースが余剰/不足した場合に部門間で使い回しができません。この硬直した状況を打開するためには、IT アーキテクチャはもちろん、社内組織もリソースのシェアが可能な形に変革する必要がありました。

シスコの情報システム部門は、自社のこうした課題に対して、データセンターの統合化、仮想化、自動化という 3 つの柱を打ち出して解決に当たりました。

まず、世界中に分散したデータセンターの「統合化」を進め、その過程で浮上したサイロ化の問題にメスを入れるため、「仮想化」のステップへ移行しました。さらに効率と俊敏性の向上に向け、新規サービスの迅速な立ち上げはもちろん、もっとも費用のかかる保守・運用フェーズをスムーズに整理するために、現在、「自動化」に着手したところです。同時に、こうした作業の中で得た「気付き」を活かし、IT インフラの組織のあり方も変更してきています。

現在、シスコの日本法人では CITEIS と呼ばれるプライベート クラウド サービスを提供しています。Cisco IT Elastic Infrastructure Services、つまり、シスコの IT が提供する、伸縮可能で柔軟なサービス、という意味になります。サービスの立案から撤収までの一連の流れをプライベート クラウド上で実現し、自動化することで、コストの削減と迅速なサービス提供を可能にする仕組みです。

この仕組みにより、シスコでは現在、利用者(社員)はサービスカタログでサービスを選択すると、15 分以内に利用を開始できるようになっています。サービス利用に伴う課金について、上司からの承認を取るワークフローも連動させているため、迅速にサービスを利用できるようになっているのです。

コストの面でも、仮想化とプライベート クラウドの導入により、シスコは大きなメリットを得ています。シスコでは、サーバのうちの 54% が仮想化された状態で TCO を 39% 削減することができていましたが、さらに Cisco Unified Computing Serviceの導入により、さらに 32% の TCO 削減を実現しました。

こうして抑えたコストで、新たなサービス提供への取り組みを進めることができます。わたしたち情報システム部門にとっても、CITEIS はビジネスへのポジショニングを変える、大きな意味合いを持ったプロジェクトになったといえます。

仮想化、そしてプライベート クラウドを支える技術が成熟したいま、機は十分に熟しています。自社内から寄せられるコスト削減や迅速なサービス提供などの要求に直面している IT 部門のお客様には、ぜひクラウドを利用して課題の解決に取り組んでいただきたい。シスコ自身の経験から、そう思います。

パネル ディスカッション 「プライベート クラウドは企業 IT を変革するか」

「プライベート クラウドは企業 IT を変革するか」をテーマに、ファシリテータが提示する質問に対して各パネリストが自身の立場や経験を交えた意見を述べる形で、活発なディスカッションが行われました。
> VoD を観る

日経コンピュータ 編集プロデューサ 星野 友彦 氏

日経コンピュータ
編集プロデューサ
星野 友彦 氏

ファシリテータ

日経コンピュータ 星野 友彦 氏

国内 IT 企業の社長に「今年のテーマ」を訊ねる日経コンピュータ実施のアンケートでも、今年はほぼ 100% の企業の社長から「クラウドに力を入れる」との回答があったことを明かした星野氏。一方で、「クラウドに寄せられている期待は過剰なのでは?」「ベンダーが製品を販売するために『クラウド』を担いでいるだけなのでは?」「クラウドさえ導入すれば本当にすべての課題が解決されるのか?」など、記者ならではのするどい切り口で質問を投げかけ、パネリストそれぞれの発言を引き出していただきました。

アクセンチュア株式会社 インフラストラクチャコンサルティング統括パートナー 森 泰成 氏

アクセンチュア株式会社
インフラストラクチャコンサルティング統括パートナー
森 泰成 氏

パネリスト

アクセンチュア株式会社 森 泰成 氏

ビジネス成長を支える合理的なインフラ作りを支援するコンサルティングの立場から、今後、企業 IT にとってのクラウドの重要性はますます増大するだろうとの見解を示された森氏。パブリック クラウドを「広く利用できる共通プラットフォーム」と位置づけ、パブリック クラウドの課題を取り上げた講演に引き続き、プライベート クラウド導入時に企業が克服するべきコスト面をはじめとした経営課題、そしてパブリック クラウドとプライベート クラウドの併用のメリットについても言及いただきました。その上で、クラウド化はすでに現時点での経営課題として浮上していると指摘、さまざまな社内機能を「サービス」として捉えてゆくことが重要であると結論づけられました。

ヴイエムウェア株式会社 システムズエンジニアリング部長 巨勢 泰宏 様

ヴイエムウェア株式会社
システムズエンジニアリング部長
巨勢 泰宏 様

ヴイエムウェア株式会社 巨勢 泰宏 氏

巨勢氏は、コスト削減とビジネスの俊敏性の両立のための最適解として、クラウドへの注目の高まりは妥当であるとの認識を示されました。実際のフィールド ユーザやサービス事業者に対して仮想化に関する技術支援を行っている立場から、仮想化技術とプライベート クラウドの密接な結び付きに関しても発言いただき、「パラダイムシフトなくしてクラウドの成功なし」との見解、仮想化基盤でのコスト削減のために自動化が果たす役割にも言及。まずはクラウド、仮想化の技術を実際に使用してみることが重要であると結ばれました。

シスコシステムズ合同会社 専務執行役員 アーキテクチャ&テクノロジー事業統括  石本 龍太郎

シスコシステムズ合同会社
専務執行役員
アーキテクチャ&テクノロジー事業統括
石本 龍太郎

シスコシステムズ合同会社 石本 龍太郎

パブリック クラウドとプライベート クラウドの相違点として、想定される利用者とコスト意識、それに伴うサービスレベルが異なる点を指摘した石本。仮想化による可用性など、クラウドは従来の企業アプリケーションになかったメリットを提供するものであるという、ベンダー サイドからのメッセージを繰り返し主張しました。同時に、シスコ自身の経験より、クラウドの導入に際して IT 部門だけでなく、ユーザ部門の改革も必要との意見を提示。クラウドの導入を検討するに当たり、自社に足りないものを分析することが重要であるため、Cisco WebEx などの SaaSを実感、体感した上で検討を進めてはどうかと提案しました。

多岐にわたる技術セミナーをオンラインで実施 「テクノロジー デー」

プライベート クラウド導入の鍵となるテクノロジー、ソリューションを個別に解説した「テクノロジー デー」。時間をかけて会場に出向かなくても参加できるオンライン セミナーとしたことで、各地より多くの技術者の方に参加いただきました。

また、Cisco WebEx を利用したセミナーだったため、遠隔地にいる参加者からの自由な質問を受け付けることができ、充実した質疑応答も実現されました。

> 各セミナーの資料と録画はこちら

Product & Technology Track/プロダクト&テクノロジートラック
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Cisco UCS入門編
PT2 ユニファイド・ファブリックへの道
〜 クラウド型データセンターに必須のネットワーク仮想化技術とは? 〜
PT3 サーバ仮想化で生じるネットワークの課題と
VN-Link による解決
PT4 Cisco Nexus シリーズ
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