OSPF 手動隣接関係(アジャセンシー)SID

OSPF 手動隣接関係(アジャセンシー)SID 機能は、OSPFv2 によるセグメントルーティングの静的隣接関係 SID の設定をサポートしています。

OSPF 手動隣接関係(アジャセンシー)SID に関する機能情報

次の表に、このモジュールで説明した機能に関するリリース情報を示します。この表は、ソフトウェア リリース トレインで各機能のサポートが導入されたときのソフトウェア リリースだけを示しています。その機能は、特に断りがない限り、それ以降の一連のソフトウェア リリースでもサポートされます。

プラットフォームのサポートおよびシスコ ソフトウェアイメージのサポートに関する情報を検索するには、Cisco Feature Navigator を使用します。Cisco Feature Navigator にアクセスするには、https://cfnng.cisco.com/に進みます。Cisco.com のアカウントは必要ありません。
表 1. OSPF 手動隣接関係(アジャセンシー)SID に関する機能情報

機能名

リリース

機能情報

OSPF 手動隣接関係(アジャセンシー)SID

Cisco IOS XE Amsterdam 17.3.2

OSPF 手動隣接関係(アジャセンシー)SID 機能は、OSPFv2 によるセグメントルーティングの静的隣接関係 SID の設定をサポートしています。

この機能により、次のコマンドが導入されました。

adjacency-sid index [protected]

OSPF 手動隣接関係(アジャセンシー)SID に関する情報

セグメントルーティング(SR)ネットワークでは、多くの場合、ネットワーク上で特定のトラフィックが通過するパスに影響を与えるために SR トラフィック エンジニアリング(SR-TE)を使用します。SR-TE トンネルはトンネルヘッドエンドで手動でプロビジョニングできます。そうしない場合は、中央コントローラによって計算およびプロビジョニングされます。

トラフィック エンジニアリングの場合、ネットワークのオペレータは、トラフィックが特定のノードやリンクを経由するよう強制できる必要があります。トラフィックに SR ネットワーク上の特定のノードを経由させるために、オペレータはノードによってアドバタイズされるプレフィックス SID を使用できます。エニーキャスト プレフィックス SID は、複数のノードが同じプレフィックス SID をアドバタイズする場合に、トラフィックを特定のノードにルーティングするために使用できます。

トラフィックに特定のリンクを経由させるために、オペレータはリンクの隣接関係(アジャセンシー) SID を使用できます。手動で設定する隣接関係 SID がサポートされていない場合、隣接関係 SID は動的に割り当てられます。動的に割り当てられた SID には、トラフィック エンジニアリングに関して次のような欠点があります。

  • 動的な値は、リロードやプロセスの再起動を行うと維持されない。

  • 動的な値は事前にわからないため、コントローラは(ネイティブにまたは BGP-LS を介して)IGP がフラッディングした情報にアクセスできない場合、これを使用できない。

  • 各リンクには、一意の隣接 SID 値が割り当てられる。そのような割り当てでは、同じ隣接関係(アジャセンシー)SID を複数のリンクに割り当てることができない。

OSPF 手動隣接関係 SID 機能は、手動で設定する隣接関係 SID のサポートを導入します。手動で設定された静的隣接関係 SID では、

  • プロビジョニングされた隣接関係 SID が、リロードや再起動を行っても維持されます。

  • 1 つの隣接関係に対して複数の隣接関係 SID を設定できます。

OSPF 手動隣接関係(アジャセンシー)SID の前提条件

  • セグメントルーティングはグローバルに設定する必要があります。

  • セグメントルーティングは、OSPF インスタンスに対して設定する必要があります。

OSPF 手動隣接関係(アジャセンシー)SID に関する制約事項

  • 静的隣接関係(アジャセンシー) SID は、ポイントツーポイントのリンクにのみ設定でき、ブロードキャストリンクには設定できません。

  • 複数のリンクに同じ隣接関係 SID を割り当てないでください。グループ隣接関係 SID はサポートされていません。

  • 複数の IGP または IGP インスタンスで同じ静的隣接関係 SID を設定しないでください。そのような設定はサポートされておらず、シナリオの競合処理メカニズムはまだ導入されていません。

  • 静的隣接関係 SID をセグメント ルーティング ローカル ブロック(SRLB)のインデックスとして指定します。静的隣接関係 SID は、SRLB のラベルの絶対値として指定できません。

手動隣接関係(アジャセンシー)SID

静的隣接関係(アジャセンシー) SID は、OSPFv2 でポイントツーポイントのリンクに設定できます。

手動隣接関係 SID は、SRLB から割り当てる必要があります。デフォルトの SRLB ラベルの範囲は 15000 ~ 15999 です。local-block range-start range-end コマンドを使用して SRLB 範囲を変更できます。

静的隣接関係 SID をインデックスとして SRLB に割り当てることができます。割り当てられたインデックスに基づいて、隣接関係 SID のラベルは、ラベル = SRLB_range_start + index_value として計算されます。

デフォルトでは、静的隣接関係 SID は保護されないため、設定時に静的隣接関係 SID を保護する必要があるかどうかを指定できます。

手動隣接関係(アジャセンシー)SID のアドバタイズメント

静的隣接関係(アジャセンシー) SID は、「セグメントルーティングの OSPF 拡張機能」で定義されているように、拡張リンク LSA の既存の Adj-SID Sub-TLV を使用してアドバタイズされます。

静的隣接関係 SID では、P フラグ(永続フラグ)が Adj-SID Sub-TLV に設定されます。

静的隣接関係 SID が保護されている場合、B フラグは Adj-SID Sub-TLV に設定されます。

静的隣接関係 SID は常にラベルとしてアドバタイズされます。静的隣接関係 SID がインデックスとして設定されている場合、ラベルの絶対値が計算され、ラベル値がアドバタイズされます。

手動隣接関係(アジャセンシー) SID の転送

静的隣接関係(アジャセンシー) SID がポイントツーポイント インターフェイスに設定されている場合、OSPFv2 は手動で割り当てられた隣接関係 SID の転送エントリをインストールします。隣接関係 SID のプライマリパスは、隣接関係 SID が割り当てられているポイントツーポイント インターフェイス上の POP 操作です。

手動で割り当てられた隣接関係 SID がバックアップの対象で、バックアップパスが利用できる場合、OSPFv2 はバックアップパスもプログラムします。手動で割り当てられた隣接関係 SID のバックアップパスは、ネイバールータに対して計算されるバックアップパスです。

OSPF 手動隣接関係(アジャセンシー)SID の設定方法

セグメント ルーティング ローカル ブロック範囲の変更

Device#configure terminal
Device(config)#segment-routing mpls 
Device(config-srmpls)#local-block range-start range-end  

range-startrange-start は、セグメント ルーティング ローカル ブロック(SRLB)の変更された範囲境界を示します。

OSPF は、ルータ情報(RI)Opaque LSA の SR ローカルブロック TLV で SRLB をアドバタイズします。

SRLB では 1 つの範囲のみがサポートされます。SR ローカル ブロック TLV に複数の範囲がある場合、受信側ルータは TLV を無視します。

Device#configure terminal
Device(config)#segment-routing mpls 
Device(config-srmpls)#local-block 7000 7999

OSPF 手動隣接関係(アジャセンシー)SID の設定

Device#configure terminal 
Device(config)#interface <interface>
Device(config-if)#ip ospf adjacency-sid index <sid_value> [protected]

<sid_value> は SRLB に対するインデックスである必要があります。絶対ラベル値としての隣接関係(アジャセンシー) SID の設定はまだサポートされていません。

[protected](オプション):このキーワードは、手動隣接関係 SID を保護するために使用されます。デフォルトでは、手動隣接関係 SID は保護されません。

OSPF 手動隣接関係(アジャセンシー)SID の確認

コマンド show ip ospf segment-routing adjacency-sid および show ip ospf segment-routing adjacency-sid detail を使用して、隣接関係(アジャセンシー)に割り当てられた SID と、SID が静的か動的かを確認できます。いずれかのコマンドの出力には、隣接関係(アジャセンシー)を介してリンクされているネイバー、隣接関係が保護されているかどうか、保護されている隣接関係のバックアップネクストホップとインターフェイスなどの追加情報も表示されます。

  • router#show ip ospf segment-routing adjacency-sid
    
                OSPF Router with ID (10.2.0.0) (Process ID 1)
        Flags: S - Static, D - Dynamic,  P - Protected, U - Unprotected, G - Group, L - Adjacency Lost
    
    Adj-Sid  Neighbor ID     Interface          Neighbor Addr   Flags   Backup Nexthop  Backup Interface
    -------- --------------- ------------------ --------------- ------- --------------- ------------------
    16       10.3.0.0         Et0/2.3            10.3.3.3         D U
    17       10.3.0.0         Et0/2.1            10.3.1.3         D U
    24       10.3.0.0         Et0/2.1            10.3.1.3         D P     10.3.2.3         Et0/2.2
    25       10.1.0.0         Et0/0              10.2.0.1         D U
    26       10.1.0.0         Et0/0              10.2.0.1         D P     10.3.1.3         Et0/2.1
    27       10.3.0.0         Et0/2.2            10.3.2.3         D U
    28       10.3.0.0         Et0/2              10.3.0.3         D U
    29       10.3.0.0         Et0/2              10.3.0.3         D P     10.4.0.4         Et0/1
    30       10.4.0.0         Et0/1              10.4.0.4         D U
    34       10.4.0.0         Et0/1              10.4.0.4         D P     10.3.1.3         Et0/2.1
    15010    10.1.0.0         Et0/0              10.2.0.1         S P     10.3.1.3         Et0/2.1
    15210    10.1.0.0         Et0/0              10.2.0.1         S U
    15230    10.3.0.0         Et0/2              10.3.0.3         S P     10.4.0.4         Et0/1
    15240    10.4.0.0         Et0/1              10.4.0.4         S U
    15800    10.3.0.0         Et0/2.1            10.3.1.3         S U
    15801    10.3.0.0         Et0/2.2            10.3.2.3         S U
    15802    10.3.0.0         Et0/2.3            10.3.3.3         S U
    15810    10.3.0.0         Et0/2.1            10.3.1.3         S P     10.3.2.3         Et0/2.2
  • router#show ip ospf segment-routing adjacency-sid detail
    
                OSPF Router with ID (10.2.0.0) (Process ID 1)
    Label 16, Paths 1, Dynamic
       Nbr id 10.3.0.0, via 10.3.3.3 on Et0/2.3, Unprotected
    Label 17, Paths 1, Dynamic
       Nbr id 10.3.0.0, via 10.3.1.3 on Et0/2.1, Unprotected
    Label 24, Paths 1, Dynamic
       Nbr id 10.3.0.0, via 10.3.1.3 on Et0/2.1, Protected, Nbr Prefix 10.33.33.33
          Primary path: via 10.3.1.3 on Et0/2.1, out-label 3
          Repair path: via 10.3.2.3 on Et0/2.2, out-label 3, cost 31, labels 0
    Label 25, Paths 1, Dynamic
       Nbr id 10.1.0.0, via 10.2.0.1 on Et0/0, Unprotected
    Label 26, Paths 1, Dynamic
       Nbr id 10.1.0.0, via 10.2.0.1 on Et0/0, Protected, Nbr Prefix 10.1.1.1
          Primary path: via 10.2.0.1 on Et0/0, out-label 3
          Repair path: via 10.3.1.3 on Et0/2.1, out-label 16001, cost 31, labels 0
    Label 27, Paths 1, Dynamic
       Nbr id 10.3.0.0, via 10.3.2.3 on Et0/2.2, Unprotected
    Label 28, Paths 1, Dynamic
       Nbr id 10.3.0.0, via 10.3.0.3 on Et0/2, Unprotected
    Label 29, Paths 1, Dynamic
       Nbr id 10.3.0.0, via 10.3.0.3 on Et0/2, Protected, Nbr Prefix 10.3.3.3
          Primary path: via 10.3.0.3 on Et0/2, out-label 3
          Repair path: via 10.4.0.4 on Et0/1, out-label 16003, cost 21, labels 0
    Label 30, Paths 1, Dynamic
       Nbr id 10.4.0.0, via 10.4.0.4 on Et0/1, Unprotected
    Label 34, Paths 1, Dynamic
       Nbr id 10.4.0.0, via 10.4.0.4 on Et0/1, Protected, Nbr Prefix 10.4.4.4
          Primary path: via 2.4.0.4 on Et0/1, out-label 3
          Repair path: via 10.3.1.3 on Et0/2.1, out-label 16004, cost 31, labels 0
    Label 15010, Paths 1, Static
       Nbr id 10.1.0.0, via 10.2.0.1 on Et0/0, Protected, Nbr Prefix 10.1.1.1
          Primary path: via 10.2.0.1 on Et0/0, out-label 3
          Repair path: via 10.3.1.3 on Et0/2.1, out-label 16001, cost 31, labels 0
    Label 15210, Paths 1, Static
       Nbr id 10.1.0.0, via 10.2.0.1 on Et0/0, Unprotected
    Label 15230, Paths 1, Static
       Nbr id 10.3.0.0, via 10.3.0.3 on Et0/2, Protected, Nbr Prefix 10.3.3.3
          Primary path: via 10.3.0.3 on Et0/2, out-label 3
          Repair path: via 10.4.0.4 on Et0/1, out-label 16003, cost 21, labels 0
    Label 15240, Paths 1, Static
       Nbr id 10.4.0.0, via 10.4.0.4 on Et0/1, Unprotected
    Label 15800, Paths 1, Static
       Nbr id 10.3.0.0, via 10.3.1.3 on Et0/2.1, Unprotected
    Label 15801, Paths 1, Static
       Nbr id 10.3.0.0, via 10.3.2.3 on Et0/2.2, Unprotected
    Label 15802, Paths 1, Static
       Nbr id 10.3.0.0, via 10.3.3.3 on Et0/2.3, Unprotected
    Label 15810, Paths 1, Static
       Nbr id 10.3.0.0, via 10.3.1.3 on Et0/2.1, Protected, Nbr Prefix 10.33.33.33
          Primary path: via 10.3.1.3 on Et0/2.1, out-label 3
          Repair path: via 10.3.2.3 on Et0/2.2, out-label 3, cost 31, labels 0