ライセンス要件
Cisco NX-OS ライセンス方式の推奨の詳細と、ライセンスの取得および適用の方法については、『Cisco NX-OS Licensing Guide』を参照してください。
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この章では、Cisco NX-OS のマルチキャスト機能について説明します。
この章は、次の項で構成されています。
Cisco NX-OS ライセンス方式の推奨の詳細と、ライセンスの取得および適用の方法については、『Cisco NX-OS Licensing Guide』を参照してください。
IP マルチキャストは、同一セットの IP パケットをネットワーク上の複数のホストに転送する手法です。IPv4 ネットワークで、マルチキャストを使用して、複数の受信者に効率的にデータを送信できます。
マルチキャストには、グループと呼ばれる IP マルチキャスト アドレスに送信されたマルチキャスト データの送信側と受信側の配信と検出の両方の手法が含まれます。グループと送信元 IP アドレスが入ったマルチキャスト アドレスは、しばしばチャネルと呼ばれます。Internet Assigned Number Authority(IANA)では、IPv4 マルチキャスト アドレスとして、224.0.0.0 ~ 239.255.255.255 を割り当てています。詳細については、http://www.iana.org/assignments/multicast-addresses を参照してください。
(注) |
マルチキャストに関連する RFC の完全なリストについては、「IP マルチキャストに関する IETF RFC」を参照してください。 |
ネットワーク上のルータは、受信者からのアドバタイズメントを検出して、マルチキャスト データの要求対象となるグループを特定します。その後、ルータは送信元からのデータを複製して、対象の受信者へと転送します。グループ宛のマルチキャスト データが送信されるのは、そのデータを要求する受信者を含んだ LAN セグメントだけです。
図 1 に、1 つの送信元から 2 つの受信者へと、マルチキャスト データを送信する場合の例を示します。この図で、中央のホストが属する LAN セグメントにはマルチキャスト データを要求する受信者が存在しないため、このホストは受信者にデータを転送しません。
整合性チェッカーは、ネットワーク システムのソフトウェア状態を、サポートされているモジュールのハードウェア状態と比較します。これにより、後のトラブルシューティングの時間を短縮できます。整合性チェッカーは、基本的なトラブルシューティングを補足するもので、ソフトウェアテーブルとハードウェアテーブル間の不整合な状態がネットワークの問題を引き起こしているシナリオを特定するのに役立ちます。これにより、問題を解決するための平均時間が短縮されます。
次の整合性チェッカー コマンドは、Cisco NX-OS リリース 9.3(3) のレイヤ 2 でサポートされています。
show consistency-checker membership vlan <vlanid> [native-vlan]:ソフトウェアの VLAN メンバーシップがハードウェアにプログラムされているものと同じであることを判別します。
show consistency-checker membership port-channels [interface <ch-id>]:すべてのモジュールのハードウェアのポート チャネル メンバーシップをチェックし、ソフトウェア状態で検証します。
show consistency-checker stp-state vlan <vlan>:ソフトウェアのスパニング ツリーの状態が、ハードウェアでプログラミングされた状態と同じかどうかを判別します。このコマンドは、動作中(アップ)のインターフェイスでのみ実行されます。
show consistency-checker l2 module <modnum>:学習した MAC アドレスがソフトウェアとハードウェア間で一貫していることを確認します。また、ハードウェアに存在するがソフトウェアには存在しない追加エントリと、ハードウェアに存在しないエントリも表示されます。
show consistency-checker link-state module <moduleID>:インターフェイスのリンク状態ステータスについて、ソフトウェアとハードウェア間のプログラミングの一貫性を確認します。
次の整合性チェッカー コマンドは、Cisco NX-OS リリース 9.3(3):のレイヤ 3 でサポートされています。
show consistency-checker l3-interface module <moduleid>:L3 インターフェイスの入力および出力転送テーブルについて、ソフトウェアとハードウェア間のプログラミングの整合性を確認します。
test forwarding ipv4 [ unicast] inconsistency [suppress_transient] [ vrf vrf-name ] [stop] :レイヤ 3 整合性チェックを開始または停止します。
show forwarding ipv4 [unicast] inconsistency [ vrf vrf-name ]:レイヤ 3 整合性チェックの結果を表示します。
show consistency-checker forwarding single-route ipv4 <ip-prefix> vrf <vrf-name>:単独ルートの整合性チェックの結果を表示します。
clear forwarding [ipv4 | ip] [unicast] inconsistency:IP 転送の不整合を解消します。
show consistency-checker gwmacdb :ルータ MAC の一貫性チェックの結果を表示します。
次の整合性チェッカー コマンドは、Cisco NX-OS リリース 9.3(3) からのマルチキャストでサポートされています。
show consistency-checker l2 multicast group <grp-address> source <src-address> vlan <vlan-id> [dump-debug-logs]:ソフトウェアとハードウェア間の L2 IGMP エントリのレイヤ 2 マルチキャストの整合性を確認します。
show consistency-checker l3 multicast group <grp-address> source <src-address> vrf <vrf-string> [dump-debug-logs]:ソフトウェアおよびハードウェア間 L3 マルチキャスト ルート エントリのレイヤ 3 マルチキャストの整合性を確認します。
マルチキャスト配信ツリーとは、送信元と受信者を中継するルータ間の、マルチキャスト データの伝送パスを表します。マルチキャスト ソフトウェアはサポートするマルチキャスト方式に応じて、タイプの異なるツリーを構築します。
送信元ツリーは、送信元からネットワーク経由でマルチキャスト トラフィックを伝送する場合の最短パスです。特定のマルチキャスト グループへと送信されたマルチキャスト トラフィックが、同じグループのトラフィックを要求する受信者へと転送されます。送信元ツリーは、最短パスとしての特性から、最短パス ツリー(SPT)と呼ばれることがあります。図 2 では、ホスト A を起点とし、ホスト B および C に接続されているグループ 224.1.1.1 の送信元ツリーを示しています。
表記(S、G)は、グループ G の任意の送信元 S からのマルチキャスト トラフィックを表します。図 2 の SPT は、(192.1.1.1, 224.1.1.1)と記述されます。同じグループの複数の送信元からトラフィックを送信できます。
共有ツリーとは、共有ルート、つまりランデブー ポイント(RP)から各受信者に、ネットワーク経由でマルチキャスト トラフィックを伝送する共有配信パスを表します(RP は各ソースへの SPT を作成します)。共有ツリーは、RP ツリー (RPT)とも呼ばれます。図 3 では、ルータ D に RP を持つ、グループ 224.1.1.1 の共有ツリーを示しています。データは送信元ホスト A およびホスト D からルータ D(RP)に送信され、そこから受信者ホスト B およびホスト C にトラフィックが転送されます。
表記(*、G)は、グループ G の任意の送信元からのマルチキャスト トラフィックを表します。図 3 の共有ツリーは、(*、224.2.2.2)と記述されます。
マルチキャスト トラフィックは任意のホストを含むグループ宛に送信されるため、ルータはリバース パス フォワーディング(RPF)を使用して、グループのアクティブな受信者にデータをルーティングします。受信者がグループに加入すると、送信元方向へ向かうパス(SSM モードの場合)、または RP 方向へ向かうパス(ASM モードの場合)が形成されます。送信元から受信者へのパスは、受信者がグループに加入したときに作成されたパスと逆方向になります。
マルチキャスト パケットが着信するたびに、ルータは RPF チェックを実行します。パケットが送信元につながるインターフェイスに到着すると、パケットはグループの発信インターフェイス(OIF)リスト内の各インターフェイスから転送されます。それ以外の場合、パケットはドロップされます。
図 4 では、異なるインターフェイスから受信するパケットの RPF チェックの例を示します。E0 に着信したパケットは、RPF チェックに失敗します。これは、ユニキャスト テーブルで、対象の送信元ネットワークがインターフェイス E1 に関連付けられているためです。E1 に着信したパケットは、RPF チェックに合格します。これは、ユニキャスト ルート テーブルで、対象の送信元ネットワークがインターフェイス E1 に関連付けられているためです。
Cisco NX-OS は Protocol Independent Multicast(PIM)スパース モードを使用したマルチキャストをサポートしています。PIM は IP ルーティング プロトコルに依存せず、使用されているすべてのユニキャスト ルーティング プロトコルが提供するユニキャスト ルーティング テーブルを利用できます。PIM スパース モードでは、ネットワーク上の要求元だけにマルチキャスト トラフィックが伝送されます。PIM デンス モードは Cisco NX-OS ではサポートされていません。
(注) |
このマニュアルで、「PIM」という用語は PIM スパース モード バージョン 2 を表します。 |
マルチキャスト コマンドにアクセスするには、PIM 機能をイネーブルにする必要があります。ドメイン内の各ルータのインターフェイス上で、PIM をイネーブルにしないかぎり、マルチキャスト機能はイネーブルになりません。PIM は IPv4 ネットワーク用に設定できます。デフォルトでは、IGMP がシステムで実行されています。
マルチキャスト対応ルータ間で使用される PIM は、マルチキャスト配信ツリーを構築して、ルーティング ドメイン内にグループ メンバーシップをアドバタイズします。PIM は、複数の送信元からのパケットが転送される共有配信ツリーと、単一の送信元からのパケットが転送される送信元配信ツリーを構築します。
配信ツリーは、リンク障害またはルータ障害のためにトポロジが変更されると、トポロジを反映して自動的に変更されます。PIM は、マルチキャスト対応の送信元と受信者の両方を動的に追跡します。
ルータはユニキャスト ルーティング テーブルおよび RPF ルートを使用して、マルチキャスト ルーティング情報を生成します。
(注) |
このマニュアルでは、「IPv4 用の PIM」という表現は、Cisco NX-OS における PIM スパース モードの導入を表します。PIM ドメインには、IPv4 ネットワークを含めることができます。 |
図 5 では、IPv4 ネットワークで 2 つの PIM ドメインを示します。
図 5 では、PIM の次の要素を示します。
矢印の付いた直線は、ネットワークで伝送されるマルチキャスト データのパスを表します。マルチキャスト データは送信元ホストの A および D から発信されます。
点線でつながれているルータ B および Fは、Multicast Source Discovery Protocol(MSDP)ピアです。MSDP を使用すると、他の PIM ドメイン内にあるマルチキャスト送信元を検出できます。
ホスト B およびホスト C ではマルチキャスト データを受信するため、インターネット グループ管理プロトコル(IGMP)プロトコルを使用して、マルチキャスト グループへの加入要求をアドバタイズします。
ルータ A、C、および D は指定ルータ(DR)です。LAN セグメントに複数のルータが接続されている場合は(C や E など)、PIM ソフトウェアによって DR となるルータが 1 つ選択されます。これにより、マルチキャスト データの窓口として、1 つのルータだけが使用されます。
ルータ B とルータ F は、それぞれ異なる PIM ドメインのランデブー ポイント(RP)です。RP は、複数の送信元と受信者を接続するため、PIM ドメイン内の共通ポイントとして機能します。
PIM は送信元と受信者間の接続に関して、2 つのマルチキャスト モードをサポートしています。
Any Source Multicast(ASM)
Source Specific Multicast(SSM)
Cisco NX-OS では上記モードを組み合わせて、さまざまな範囲のマルチキャスト グループに対応することができます。マルチキャスト用の RPF ルートを定義することもできます。
Any Source Multicast(ASM)は PIM ツリー構築モードの 1 つです。新しい送信元および受信者を検出する場合には共有ツリーを、受信者から送信元への最短パスを形成する場合は送信元ツリーを使用します。共有ツリーでは、ランデブー ポイント(RP)と呼ばれるネットワーク ノードをルートとして使用します。送信元ツリーは第 1 ホップ ルータをルートとし、アクティブな発信元である各送信元に直接接続されています。ASM モードでは、グループ範囲に対応する RP が必要です。RP は静的に設定することもできれば、Auto-RP プロトコルまたはブートストラップ ルータ(BSR)プロトコルを使用して、グループと RP 間の関連付けを動的に検出することもできます。
RP を設定する場合、デフォルト モードは ASM モードです。
ASM の構成に関する詳細は、「ASM または Bidir の構成」セクションを参照してください。
送信元固有マルチキャスト(SSM)は、マルチキャスト送信元への加入要求を受信する LAN セグメント上の代表ルータを起点として、送信元ツリーを構築する PIM モードです。送信元ツリーは、PIM 加入メッセージを送信元方向に送信することで構築されます。SSM モードでは、RP を設定する必要がありません。
SSM モードの場合、PIM ドメインの外部にある送信元と受信者を接続できます。
SSM の構成に関する詳細は、「SSM の構成」セクションを参照してください。
静的マルチキャスト RPF ルートを設定すると、ユニキャスト ルーティング テーブルの定義内容を無効にすることができます。この機能は、マルチキャスト トポロジとユニキャスト トポロジが異なる場合に使用されます。
マルチキャストの RPF ルートの構成に関する詳細は、「マルチキャストの RPF ルートの構成」セクションを参照してください。
デフォルトでは、PIM のインターネット グループ管理プロトコル(IGMP)が、システムで実行されています。
IGMP プロトコルは、マルチキャスト グループのメンバーシップを要求するため、マルチキャスト データを受信する必要があるホストで使用されます。グループ メンバーシップが確立されると、対象のグループのマルチキャスト データが要求元ホストの LAN セグメントに転送されます。
インターフェイスには IGMPv2 または IGMPv3 を設定できます。SSM モードをサポートする場合は、IGMPv3 を使用するのが一般的です。デフォルトでは IGMPv2 がイネーブルになっています。
IGMP の構成に関する詳細は、「IGMP の設定 」を参照してください。
IGMP スヌーピングは、VLAN で既知の受信者に接続された一部のポートだけにマルチキャスト トラフィックを転送する機能です。対象ホストからの IGMP メンバーシップ レポート メッセージを調べる(スヌーピングする)ことにより、マルチキャスト トラフィックは対象ホストが接続された VLAN ポートだけに送信されます。システムでは、IGMP スヌーピングがデフォルトで稼働しています。
IGMP スヌーピングの構成に関する詳細は、「 IGMP スヌーピングの設定」を参照してください。
Cisco NX-OS では、PIM ドメイン間でマルチキャスト トラフィック送信を実行するための方法が提供されます。
PIM ソフトウェアは SSM を使用して、受信者の指定ルータから既知の送信元 IP アドレスへの最短パス ツリーを構築します。この場合、送信元は別の PIM ドメイン内にあってもかまいません。ASM モードの場合、別の PIM ドメインから送信元にアクセスするには、別のプロトコルを使用する必要があります。
ネットワークで PIM をイネーブルにすると、SSM を使用し、受信者の指定ルータが IP アドレスを把握している任意のマルチキャスト送信元への接続パスを確立できます。
SSM の構成に関する詳細は、「SSM の構成」セクションを参照してください。
Multicast Source Discovery Protocol(MSDP)は、PIM と組み合わせて使用することで、異なる PIM ドメイン内にあるマルチキャスト送信元を検出できるようにするマルチキャスト ルーティング プロトコルです。
(注) |
Cisco NX-OS では、MSDP 設定が不要な PIM Anycast-RP をサポートしています。PIM Anycast-RP の詳細については、「PIM Anycast-RP セットの構成」セクションを参照してください。 |
MSDP の設定については、「」を参照してくださいMSDP の設定。
Cisco NX-OS IPv4 Multicast Routing Information Base(MRIB)は、PIM や IGMP などのマルチキャスト プロトコルで生成されるルート情報を格納するためのリポジトリです。MRIB はルート情報自体には影響を及ぼしません。MRIB は、各仮想ルーティングおよびフォワーディング(VRF)インスタンスの独立したルート情報を維持しています。
図 6 に、Cisco NX-OS マルチキャスト ソフトウェア アーキテクチャの主要コンポーネントを示します。
マルチキャスト FIB(MFIB)配信(MFDM)API は、MRIB を含むマルチキャスト レイヤ 2 およびレイヤ 3 コントロール プレーン モジュールと、プラットフォーム フォワーディング プレーン間のインターフェイスを定義します。コントロール プレーン モジュールは、MFDM API を使用してレイヤ 3 ルート アップデートおよびレイヤ 2 ルックアップ情報を送信します。
マルチキャスト FIB 配信プロセスは、マルチキャスト更新メッセージをスイッチに配信します。
レイヤ 2 マルチキャスト クライアント プロセス:レイヤ 2 マルチキャスト ハードウェア転送パスを構築します。
ユニキャストおよびマルチキャスト FIB プロセス:レイヤ 3 ハードウェア転送パスを管理します。
症状
このセクションでは、アクティブなフローで MRIB に表示されるが、MFIB でプログラムされていない *、G、または S,G エントリに関連した症状、考えられる原因、および推奨されるアクションについて説明します。
考えられる原因
この問題は、ハードウェアの容量を超えて多数のアクティブ フローを受信した場合に発生します。これにより、空きハードウェア インデックスがなくなって、一部のエントリがハードウェアでプログラムされなくなります。
ハードウェア リソースを解放するためにアクティブなフローの数が大幅に削減された場合、ハードウェア テーブルがいっぱいであったときに以前影響されていたフローについては、エントリ、タイムアウト、再入力が生じ、プログラミングがトリガーされるまで、MRIB と MFIB の間で不整合が見られることがあります。
現在、ハードウェア リソースが解放された後に、MRIB テーブルを調べて、ハードウェアで欠落しているエントリを再プログラムするメカニズムはありません。
改善処置
エントリを確実に再プログラミングするには、clear ip mroute * コマンドを使用します。
マルチキャストの実装に関する詳細情報については、次の項目を参照してください。
関連項目 |
マニュアル タイトル |
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CLI コマンド |
説明 |
リンク |
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