IP イベント減衰の設定

IP イベント減衰

IP イベント減衰機能は、設定可能な指数関数的減少メカニズムを導入し、過剰なインターフェイス フラッピング イベントによるネットワーク内のルーティング プロトコルおよびルーティング テーブルに対する影響を抑制します。ネットワーク オペレータはこの機能を使用し、フラップが発生しているローカル インターフェイスをルータが自動的に特定して、選択的に減衰するように設定できます。

注意事項と制約事項

IP イベント ダンプニング機能を設定する前に、次の注意事項と制約事項を参照してください。
  • netstack-IP コンポーネントの変更により、すべての IP クライアントはダンプニングまたはインターフェイスの影響を観察します。

  • インターフェイスのフラップごとに、一定のペナルティが追加されます。パラメータが設定されているペナルティは指数関数的に減衰します。

  • ペナルティが特定の高レベルを超えると、インターフェイスは減衰されます。ペナルティが低レベルを下回っている間は、抑制されません。

  • インターフェイスがダンプニングされると、IP アドレスとスタティック ルートがインターフェイスから削除されます。IP のすべてのクライアントが IP 削除通知を受信します。

  • インターフェイスの抑制が解除されると、IP アドレスと関連するルートが再び追加されます。IP のすべてのクライアントは、インターフェイスのすべての IP アドレスの IP アドレス追加通知を取得します。

  • イーサネット インターフェイスに設定されたすべてのレイヤ 3 インターフェイス、ポートの変更、および SVI がこの機能をサポートしています。

IP イベント減衰の概要

インターフェイス状態変化は、インターフェイスが管理上アップまたはダウンした場合や、インターフェイスで状態が変化した場合に発生します。インターフェイスで状態が変化したりフラップが発生すると、状態の変化に影響されるルートの状態がルーティング プロトコルに通知されます。インターフェイスの状態が変化するたびに、ネットワーク内のすべての影響を受けるデバイスで、最良パスを再計算し、ルーティング テーブルでルートをインストールまたは削除し、有効なルートをピア ルータにアドバタイズする必要があります。過剰なフラップが発生する不安定なインターフェイスは、ネットワークの他のデバイスに大量のシステム処理リソースを消費させ、ルーティング プロトコルでフラップが発生しているインターフェイスとの同期が失われる原因になる可能性があります。

IP イベント減衰機能は、設定可能な指数関数的減少メカニズムを導入し、過剰なインターフェイス フラッピング イベントによるネットワーク内のルーティング プロトコルおよびルーティング テーブルに対する影響を抑制します。ネットワーク オペレータはこの機能を使用し、フラップが発生しているローカル インターフェイスをルータが自動的に特定して、選択的に減衰するように設定できます。インターフェイスの減衰により、インターフェイスでフラップが発生せず安定するまで、ネットワークからインターフェイスが除外されます。IP イベント減衰機能を設定すると、悪影響が広がらないように障害を分離することで、コンバージェンス時間とネットワーク全体の安定性を向上します。これにより、ネットワークの他のデバイスのシステム処理リソースの使用率が減少し、ネットワーク全体の安定性が向上します。

インターフェイス状態変化イベント

この項では、IP イベント減衰機能のインターフェイス状態変化イベントについて説明します。この機能は、過剰なインターフェイスのフラップや状態変化の影響を抑制するために使用される、設定可能な指数関数的減少メカニズムを採用しています。IP イベント減衰機能がイネーブルになっている場合、過剰なルート更新情報をフィルタリングすることによって、フラップが発生しているインターフェイスは、ルーティング プロトコルの観点から減衰されます。フラップが発生しているインターフェイスが特定され、ペナルティを割り当てられ、必要応じて抑制され、インターフェイスが安定すればネットワークで利用可能になります。図 1 は、ルーティング プロトコルによってインターフェイス状態イベントが認識された場合を示しています。

抑制しきい値

抑制しきい値は、フラップが発生しているインターフェイスをルータが減衰するトリガーとなる、累積ペナルティの値です。フラップが発生しているインターフェイスはルータによって特定され、アップおよびダウン状態変化ごとにペナルティを割り当てられますが、インターフェイスは自動的には減衰されません。ルータは、フラップが発生しているインターフェイスの累積ペナルティをトラッキングします。累積ペナルティがデフォルトまたは設定済みの抑制しきい値に到達すると、インターフェイスが減衰状態になります。

半減期

半減期は、累積ペナルティの指数関数的な減少の速さを指定します。インターフェイスが減衰状態になると、ルータは、インターフェイスの以後のアップおよびダウン状態変化をモニタします。インターフェイスでペナルティの累積が続き、抑制しきい値の範囲内に留まっている間は、インターフェイスは減衰されたままです。インターフェイスが安定しフラップが発生しなくなると、半減期が終了するごとに、ペナルティが半分に減らされます。ペナルティが再使用しきい値に低下するまで、累積ペナルティが減らされていきます。半減期タイマーの設定可能な範囲は 1 ~ 30 秒です。デフォルトの半減期タイマーは 5 秒です。

再使用しきい値

累積ペナルティが減らされて再使用しきい値まで低下すると、ルートの抑制がなくなり、ネットワーク上の他のデバイスに対して使用可能になります。再使用値の範囲は 1 ~ 20000 ペナルティです。デフォルト値は 1000 ペナルティです。

最大抑制時間

最大抑制時間は、インターフェイスにペナルティが割り当てられている場合に、インターフェイスの抑制状態を維持できる時間の上限を表します。最大抑制時間は 1 ~ 255 秒で設定できます。最大ペナルティは、最大 20000 単位に切り捨てられます。累積ペナルティの最大値は、最大抑制時間、再使用しきい値、および半減期に基づいて算出されます。

関連コンポーネント

インターフェイスで減衰が設定されていない場合や、減衰が設定されていても抑制されていない場合、インターフェイス状態が移行しても IP イベント減衰機能によってルーティング プロトコルの動作が変更されることはありません。ただし、インターフェイスが抑制されている場合、インターフェイスの抑制がなくなるまで、ルーティング プロトコルとルーティング テーブルは、インターフェイスの状態移行の以降の影響を受けません。

ルート タイプ

次のインターフェイスは、この機能の設定の影響を受けます。

  • 接続ルート:
    • 減衰されたインターフェイスの接続ルートは、ルーティング テーブルにインストールされません。
    • 減衰されたインターフェイスの抑制がなくなり、インターフェイスがアップしていれば、接続ルートはルーティング テーブルにインストールされます。
  • スタティック ルート:
    • 減衰されたインターフェイスに割り当てられているスタティック ルートは、ルーティング テーブルにインストールされません。
    • 減衰されたインターフェイスの抑制がなくなり、インターフェイスがアップしていれば、スタティック ルートはルーティング テーブルにインストールされます。

(注)  


この機能を設定できるのはプライマリ インターフェイスのみです。また、すべてのサブインターフェイスには、プライマリ インターフェイスと同じ減衰設定が適用されます。IP イベント減衰は、インターフェイス上の個々のサブインターフェイスのフラップはトラッキングしません。


サポートされているプロトコル

使用されるすべてのプロトコルは、IP イベント減衰機能の影響を受けます。IP イベント減衰機能は、Border Gateway Protocol(BGP)、Enhanced Interior Gateway Routing Protocol(EIGRP)、Hot Standby Routing Protocol(HSRP)、Open Shortest Path First(OSPF)、Routing Information Protocol(RIP)、および VRRP をサポートします。該当するインターフェイス IP アドレスへの ping および SSH は機能しません。


(注)  


IP イベント減衰機能がイネーブルになっていない場合や、インターフェイスが減衰されていない場合は、ルーティング プロトコルへの影響はありません。


IP イベント減衰の設定方法

IP イベント減衰のイネーブル化

IP イベント減衰機能をイネーブルにするには、インターフェイス設定モードで dampening コマンドを入力します。すでに減衰が設定されているインターフェイスに対してこのコマンドを適用すると、減衰状態はすべてリセットされ、累積ペナルティが 0 に設定されます。インターフェイスが減衰されている場合、累積ペナルティは再使用しきい値まで低下し、減衰しているインターフェイスはネットワークに対して使用可能になります。ただし、フラップ カウントは保持されます。

手順の概要

  1. configure terminal
  2. interface type number
  3. dampening [half-life-period reuse-threshold] [suppress-threshold max-suppress [restart-penalty]]
  4. end

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 2

interface type number

インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始し、特定のインターフェイスを設定します。

ステップ 3

dampening [half-life-period reuse-threshold] [suppress-threshold max-suppress [restart-penalty]]

インターフェイス減衰をイネーブル化します。

  • 引数なしで dampening コマンドを入力すると、デフォルトの設定パラメータでインターフェイス減衰がイネーブルになります。

  • 手動で restart-penalty 引数のタイマーを設定する場合、すべての引数に対して手動で値を入力する必要があります。

ステップ 4

end

インターフェイス コンフィギュレーション モードを終了します。

IP イベント減衰の確認

show dampening interface または show interface dampening コマンドを使用して、IP イベント衰退機能の設定を確認します。

手順の概要

  1. show dampening interface
  2. show interface dampening

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

show dampening interface

減衰されたインターフェイスを表示します。

ステップ 2

show interface dampening

減衰されたローカル ルータ上のインターフェイスを表示します。