さらに、IP 電話システムと PA システムを連携させるアイデアも今回が初の試み、まさに前人未踏の挑戦だった。その苦労を PFU のエンジニアである中谷和洋氏はこう語っている。 「そもそも通常 PA につながれるマイクロフォンや音響機器と、電話機ではインピーダンス (交流抵抗値) が大きく異なります。したがって、どこまで PA のボリュームを上げればいいのか、またその際のノイズやハウリングは……といったデータも存在していなかったのです。それらを実証的に探りながら、チューニングを図る作業を繰り返し、途中にノイズゲートを介在させるなどの工夫とともに最適設定を見いだしていきました」
さらに、多くの来場客を迎えるパビリオンには、サービスの寸断も許されない厳しいミッションクリティカル性が求められる。そこでルータやスイッチの多重化はもちろん、それらをつなぐ LAN もすべて二重化が図られ、より大きな信頼性を確保した冗長構成の徹底が図られた。
一方、非常に短期間で構築を進めなければならなかったことから、システムをできるだけシンプルな構成にして障害の発生を防ぐとともに、万一のトラブル時にもその影響を局所化して抑え込む構造が心がけられたのである。 「セキュリティ面から見ても、シンプルさこそが最大の効果を発揮します。事実、パビリオンはエリアごとにネットワークポリシーなども異なっていたので、それぞれを極力独立的に分割した上で、相互をつなげる思想を貫きました」とシスコの大西は語る。