医療

医療情報を安全に守るオンプレミスの AI インフラ

生成 AI サービスを内製開発し医療に専念する環境を実現

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生成 AI を活用した業務変革によって現場主導の病院 DX を推進


春日井市民病院は、医療従事者が本来の医療に専念できる環境を目指し、生成AIを活用した業務変革に挑戦しています。医療情報を安全に扱うためにCisco UCSにNVIDIAのGPUを組み込んだオンプレミスAIインフラを構築。その基盤上で独自に開発した生成AIサービスを運用し、現場主導の病院DXを推進しています。

春日井市民病院

愛知県名古屋市の北東部に位置する約31万人が暮らす春日井市。その中心で地域医療を支えているのが春日井市民病院です。地域の基幹病院として、急性期医療を担っており、特に救急においては「断らない救急」をモットーに掲げ、年間約1万台の救急車を受け入れています。
https://www.hospital.kasugai.aichi.jp/

課題

生成 AI を活用して、医療従事者が多くの時間を費やしている事務作業を効率化したい

  • 医療情報の安全を守るためにはオンプレミスAIインフラが必要
  • 現場の医療従事者が中心となって生成AIサービスを開発したい

解決策

シスコの事前検証のノウハウによって、スムーズに安定したインフラを実現

  • Cisco UCS C240 M7 をサーバーとして採用。GPU の NVIDIA L40S を組み合わせて高性能AIインフラを構築
  • 製品導入だけでなく、生成AIサービスの開発に伴う技術的な課題の解決をシスコが支援

成果

生成 AI の活用

サマリや議事録などを生成できるサービスを内製開発し、全職員が利用可能に

業務効率化

毎月1,000件超の医師などの退院サマリを生成AIによって自動生成することで、大幅な業務効率化を実現

病院 DX の促進

医療従事者が生成AIサービスの開発を主導する現場主導の病院DXが加速

課題
現場の負担を減らし、医療に専念できる環境を目指す

春日井市民病院は、泌尿器科や外科などが用いる手術支援ロボットや整形外科用ロボットなど、先進技術の活用を積極的に進めています。生成AIもまた、同病院が力を入れて取り組んでいる技術の1つです

「医療の質を高めるには、医師やコメディカルたちが医療そのものに集中できる環境が欠かせません。しかし、実際の現場では、情報を記録したり、文書を作成したりといった事務作業が多くあり、それらに多大な時間を費やしています。生成AIによってそうした業務を効率化できれば、医療従事者がいっそう医療に専念できるようになると期待しています」と院長の成瀬 友彦氏は語ります。

生成AI活用をリードしているのは、DX部門の機能も併せ持つ経営戦略室です。その中で、実際にデジタル活用を担っている情報担当チームの最大の特徴は、メンバーが現場を熟知した医療従事者で構成されていることです。「看護師、薬剤師、診療放射線技師、理学療法士などが中心となってデジタル活用をリードしています。現場の職員が自ら課題を見つけ、デジタルの力で解決していけることが強みです」と診療放射線技師の資格を持つ馬場 勇人氏は説明します。
 

生成AIの力を最大限に活かすために、同病院はデータ活用基盤の整備から始めました。「50を超える院内のシステムを連携させ、医療情報はもちろん、人事や経営に関するデータも統合しています。院内のさまざまなシステムにデータを探しに行かずとも、集約されているデータを横断的に参照したり、組み合わせて分析したりできます」と看護師の資格を持つ小木曽 正憲氏は説明します。

さらに、生成AIを業務に活かすためのAIインフラの整備にも着手しました。自然言語処理が得意な生成AIを業務に取り入れることで、文章の要約や議事録作成などの事務処理を効率化できると考えたのです。その際、最も慎重を要したのがセキュリティへの対応です。「医療情報は個人情報の塊であり、クラウド上にそのまま置くことはできません。そのため、オンプレミス環境でデータを安全に扱えるAIインフラを構築する必要がありました」と薬剤師の資格を持つ水草 博希氏は語ります。

ソリューション
検証済み構成と柔軟な支援体制を評価

オンプレミス環境のAIインフラを構築するために、同病院が選択したのがシスコのAIインフラです。具体的には、シスコのサーバー製品であるCisco Unified Computing System(UCS) C240 M7に、GPUとしてNVIDIA L40Sを搭載。高い演算能力と拡張性を備え、大規模言語モデル(LLM)による学習・推論をはじめ、さまざまなAI処理を安定的に実行できる環境を整えました。

現在、シスコはAIインフラの提供に力を入れており、サーバー、ネットワーク、ストレージ、GPUの最適な構成を確立するための事前検証を継続的に行っています。主要パートナーと連携し、学習や推論、分析などの各種AI ワークロードを実環境で実行。それを検証し、最適化を図ることで、AI インフラを迅速に提供し、導入直後から安定したパフォーマンスを発揮させるのです。中でも、AIインフラに欠かせないGPUを提供する NVIDIA とシスコは戦略的なパートナーシップを締結しており、共同でAI基盤の高度化に向けた取り組みを推進しています。

同病院のオンプレミスAIインフラ構築においても、シスコは、こうした取り組みで培った知見を余すことなく発揮。個別要件に対応しながら、高性能かつ安定的なAIインフラを短期間で稼働させました。

また、同病院はAIインフラにおける実績や技術力だけでなく、シスコのサポート体制も高く評価しています。

「ネットワーク機器をはじめ、長年にわたってシスコ製品を利用しています。その中で、製品の信頼性の高さはもちろん、医療現場のことを理解し、私たちに寄り添ってサポートしてくれる姿勢を高く評価していました。AIインフラの構築においても、単に製品を提供するだけでなく、私たちに伴走して、課題解決まで導いてくれるようなきめ細かなサポートをしてくれるはず。そう期待して、シスコを選定しました」と馬場氏は語ります。

結果~今後
退院サマリの作成業務などで大きな成果

Cisco UCSとNVIDIAのGPUを組み合わせたAIインフラは、すでに運用を開始しています。サーバーOSにはUbuntuを選択し、運用コストを抑えつつ柔軟な環境構築を実現。また、LLMは、複数のオープンソースLLMを採用し、議事録の作成や医師などのサマリ作成には長文処理が得意なLLM、チャット応対など即時性を求める業務には軽量で応答速度の速いLLMなど、用途に応じて最適なモデルを使い分けています。

このAIインフラを活かして、同病院は独自の生成AIサービスを次々に展開。電子カルテのメニューから簡単に起動でき、全職員が日常業務の中で自由に利用できる環境を整えています。

現在、稼働している主なサービスには、次のようなものがあります。

  • 医師などのサマリ作成
  • 音声文字起こしや議事録作成
  • チャット
  • 紹介状やお薬手帳などの文字起こし
  • 薬剤の画像認識

これらのサービスによって、さまざまな業務が大きく効率化されました。特にその効果が大きかったのが退院サマリの作成です。退院サマリとは、入院患者の治療内容や経過をまとめた文書のことです。退院時に作成され、転院や紹介の際には、次の医療機関に情報を引き継ぐ重要な役割も担います。「サマリには、医師が治療経過を、看護師が看護記録を、理学療法士がリハビリの内容をそれぞれ記入します。毎月1,000件以上のサマリ作成業務が発生しますが、これまではすべて職員が自分で文章を書いていました。生成AIによって一次要約が自動生成され、職員は内容を確認・修正するという体制になったことで、作成にかかる時間を大幅に削減することができました」と馬場氏は語ります。

また、サマリ作成サービスは、内製した病棟全体の入院患者の状況を可視化する病床管理システムとも連携しています。生成AIで作成された直近1週間の医師記録、看護記録を患者ごとに表示可能にし、入退院管理やカンファレンス準備にも活用しているのです。

生成AIの活用はそれだけにとどまりません。文書管理システムにスキャン保存された紹介状の文字起こしや、会議音声の文字起こしに加え、議事録自動作成などにも幅広く利用されています。現在は、さらなる新サービスの開発にも継続的に取り組んでおり、例えば、薬剤分野では、新しい薬を採用する際に、現行の採用薬と見た目が似ていないかをAIで判定する仕組みを企画しています。形状や色などが似ていると、調剤や投薬の現場で取り違いのリスクが高まるからです。

これら生成AIサービスの設計や開発は、経営戦略室のメンバーが行っていますが、開発の過程では、シスコの手厚いサポートが大きな支えになったと言います。「ITの専門家ではない私たちが中心となって開発を進めていることもあり、構築段階ではさまざまな課題がありました。そのたびにシスコのエンジニアが迅速に対応してくれました」と水草氏は語ります。

AIエージェントの実現に挑戦

同病院は、次の生成AI活用としてAIエージェントへの挑戦を見据えています。これまでは要約や文字起こしといった単一業務の自動化であったのに対し、次のステップでは、複数の業務プロセスをつなぎ合わせ、AIが自律的に業務を実行する仕組みを目指します。「例えば、問い合わせを受けたらAIが自動でデータを検索し、グラフ化して報告書を生成する──。AIの力を借りて人が効率的に行うのではなく、業務そのものをAIに任せられるようになれば、医療従事者はさらに医療に専念できるようになります。どの業務を人が行うべきか、どの業務がAIに向いているのかを見極めながら、前向きに取り組んでいきたいと考えています」と小木曽氏は語ります。

また、運用面の強化も大きなテーマです。シスコからは、サーバーや生成AIワークロードの状態をクラウド経由で可視化し、遠隔から効率的に管理できるCisco Intersightを提案しています。

「医療の質の向上を目指す取り組みには、さまざまな側面がありますが、生成AI活用は大きな期待を寄せている施策の1つ。業務の効率化だけでなく、災害対応など、さまざまな活用方法も考えられます。積極的に取り組みを進めていきます」と最後に成瀬氏は強調しました。

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