RF の基礎
米国では、工業用、科学用、および医療用(ISM)のライセンス不要の用途のために 3 つの主帯域が割り当てられています。
これらの ISM 帯域は、次のように定義されています。
- 900 MHz 帯域:902 ~ 928 MHz
- 2.4 GHz 帯域(IEEE 802.11b/g/n):2.4 ~ 2.4835 GHz
- 5 GHz 帯域(IEEE 802.11a/n/ac):
- 5.150 ~ 5.250 GHz(UNII-1):当初は屋内使用向けのみでしたが、米国では現在、屋内と屋外の両方が許可されています。
– 5.250 ~ 5.350 GHz(UNII-2a)
– 5.350 ~ 5.470 GHz(U-NII-2b):提案されていますが、まだ承認されていません。
– 5.5504 ~ 5.725 GHz(UNII-2c)
– 5.725 ~ 5.875 GHz(UNII-3)
– 5.825 ~ 5.925 GHz(U-NII-4)
900 MHz 帯域は Wi-Fi には使用されません。残りの各帯域には異なる特徴があり、Wi-Fi について言えば、カバレッジとキャパシティに関する目標や、使用する場所ですでに占有されているスペクトルに応じて、適しているかどうかが変わります。詳細については、この章で説明する導入に関する考慮事項を参照してください。
Wi-Fi が今日の LAN 実装と異なる点を理解することが重要です。今日の有線 LAN は、ほとんどの場合、全二重のスイッチド インフラストラクチャです。つまり、トラフィックが同時に送受信され、アクティブ ポート間でスイッチされるため、クライアントは同時に送受信できます。電話による会話は全二重です。 図 3-1 を参照してください。
図 3-1 全二重の会話の例
一方、Wi-Fi は半二重です(図2)。つまり、ユーザは、媒体上のクライアント/アクセスポイント(AP)への送信(Tx)またはそれらからの受信(Rx)のいずれかが可能です。クライアントとネットワークは、交代でその媒体(共有ブロードキャストおよびコリジョン ドメイン)にアクセスします。Wi-Fi は競合ベースです。つまり、媒体へのアクセスを試みるステーションに関するルールが存在し、衝突(複数のステーションが同時に媒体にアクセスすることによる)が公平に解決されるため、すべてのステーションが機会を得ます。
図 3-2 半二重の会話の例
異なる周波数割り当て(チャネル)を使用して、クライアントの物理的なグループが分離されます。特定のチャネルで動作する AP が使用可能な通信時間は有限で、AP に接続している各クライアントは、その AP のチャネルが提供する必要のある通信時間を共有します。AP を頻繁に使用するクライアントが増加するほど、各クライアントが個別に取得する通信時間が減少します。1 つまたは複数のクライアントに対してより高いデータ レートをサポートする(通信時間をより効率的に使用できるようになる)と、すべてのクライアントの使用可能な通信時間が増加し、個々のユーザに割り当てられる潜在的な帯域幅が大きくなります。
特定のチャネル上のすべてのクライアントは、それらが最終的に所属するネットワークとは関係なく、同じチャネル上で動作する他の AP へと広がる共通コリジョン ドメインを共有します。このため、同じチャネルを使用し、相互にヒアリングできる他のクライアントおよび AP と、使用可能な通信時間を共有することになります。チャネルに AP が追加されるたびに、通信時の管理オーバーヘッドが増大します。この追加の管理トラフィックの影響により、各ユーザが使用できる通信時間の合計がさらに減少し、パフォーマンスが低下します。
帯域幅 = 通信時間 X データ レート
単一の AP が提供できるものよりも大きな帯域幅が必要な場合(つまり、狭いエリアに多数のユーザがいる場合)は、複数の AP が必要になります。非オーバーラップ チャネルに実装される各 AP は、そのカバレッジ エリアに通信時間の分離されたチャンクを提供します。同じチャネル上の AP は、互いの範囲に入らない状態を維持する必要があります。シスコの RRM は、これを管理します。出力とチャネルの選択を管理して、複数の AP およびネイバーを調整し、最大限のパフォーマンスを実現します(このドキュメントの無線リソース管理(RRM)を参照)。
ネットワークのチャネル割り当ておよび再使用は、通信時間の効率性、最終的にはクライアントに提供可能な帯域幅を決定する大きな要因です。2 個の AP が同じチャネル上で相互にヒアリングできる場合は、オーバーラップする BSS を注意深く管理しないと、同一チャネル干渉を発生させる可能性があります。同一チャネル干渉が自分自身の AP によるものか、自分の AP とネイバーによるものかは重要ではありません。いずれにしても、AP はチャネルを共有する必要があります。適切な物理設計を行うには、次の 4 点を考慮する必要があります。
- AP の配置
- AP の動作帯域(2.4 GHz または 5 GHz)
- AP のチャネルの選択
- AP の電力レベルの割り当て
優れた設計の目標は、最小限の同一チャネル干渉でクライアント デバイスが使用できる潜在的な帯域幅を最大化する均一のワイヤレス カバレッジ(全体に同様の状態)を生み出すことです。
シスコの無線リソース管理(RRM)は、測定された無線メトリックを使用して、最適なチャネルと電力の組み合わせを計算し、割り当てます。無線の監視には、そのインフラストラクチャ内の Wi-Fiネットワーク動作と、そのスペクトルの既存外部ユーザの Wi-Fi および非 Wi-Fi が含まれます。RRM は同一チャネル割り当てを緩和し、電力を均一化しますが、使用可能なオープン チャネルがない場合または単に AP どうしが近すぎる場合に残る唯一の選択肢は、既存のユーザとのチャネルの共有です。この状態は輻輳環境で発生し、異なる 2 つのネットワークが同じ帯域幅を共有しなけばならない場合があります。どちらかのネットワークがビジー状態でない場合は、もう一方がその帯域幅をすべて使用することがあります。両方のネットワークがビジー状態になると、公平なアクセスを確保するように設計された 802.11 の競合メカニズム(Listen Before Talk 方式)により、帯域幅が半分ずつ共有されます。
規制区域
無認可帯域で動作するデバイスは、エンドユーザによる正式なライセンス プロセスを必要としません。ただし、ISM 帯域において 802.11 で動作するように設計され、作成されたデバイスは、それが使用される地域の政府の規制に準拠する義務があります。「無認可」は「ルールがない」ことを意味しません。シスコのワイヤレス機器は、特定の地域の規制要件に従って動作するように設計され、認定されています。規制に関する表示は、事前プロビジョニング地域の製品番号に含まれています。
エンド ユーザは、正しく実装し、指定された地域向けの正しい機器が使用されていることを確認する責任を負います。各地域のシスコ セールスは、選択に関する案内を提供できます。ユニバーサル AP をプロビジョニングする場合は、AP の GPS 位置を確認するためにスマートフォン アプリケーションを使用して少なくとも 1 個の AP をプロビジョニングする必要があります。これにより、AP がそれをアクティブ化した地域に物理的に位置するようになります。1 個目の UAP のプロビジョニングが完了したら、有効になっている無線インターフェイスを使用して、最初の UAP から他の UAP をプロビジョニングできます。
世界の各規制機関は、それぞれの基準に従って無認可帯域を監視しています。WLAN デバイスは、該当する政府規制機関の規格に従う必要があります。規制要件が IEEE 802.11b/g/n および 802.11a/n/ac 準拠製品の相互運用性に影響することはありませんが、規制機関は製品の実装に関して特定の基準を設定しています。たとえば、無線(Wi-Fi に限らない)が生成したり、近接した場所の他の無線から受信する干渉の量を最小限に抑えるために設計された WLAN の RF エミッション要件があります。該当する規制機関から製品の認証を受けることは、WLAN ベンダーの責任です。また、設置されたものがその要件を超えないことを確認することは、設置者の責任です。シスコでは、規制要件を満たすアンテナと無線の組み合わせの使用を推奨し、認定しています。
シスコでは、規制当局の要件に準拠するほか、各種の Wi-Fi アライアンス(WFA)認定プログラム( www.wi-fi.org )を通じて、他のベンダーとの相互運用性を確認しています。
動作周波数
802.11b/g/n の 2.4 GHz 帯域の規制は、動作時間の点では、比較的変わりがありません。FCC(米国)は 11 チャネル、ETSI(および世界中の他のほとんどの地域)は最大 13 チャネル、そして日本は最大 14 チャネル許可していますが、チャネル 14 で動作するには特別なライセンスと動作モードが必要になります。
802.11a/n/ac の 5.0 GHz 帯域の規制を準拠する国では、それらの国が許可するチャネルやそれらの国での動作に関するルールの多様性が増大しています。一般に、802.11ac の進歩により、大半の国で、5 GHz Wi-Fi に関してより多くのスペクトルを開くことが現在検討されています。また、すべての国で、5 GHz の非オーバーラップ チャネルが、2.4 GHz のいずれの場所で使用可能な非オーバーラップ チャネルよりも多く存在します。
テクノロジーが進化し、規制ルールが変更されるにつれて、これらの周波数帯域と関連プロトコルにも変化の可能性が生まれ、実際に変化しています。シスコのすべての AP は、その規制認定と許可された周波数およびチャネルが、個別のデータとしてドキュメント化されています。
2.4 GHz - 802.11b/g/n
世界の大半の国では、「2.4 GHz 帯域」と通称される周波数帯域は、周波数 2400 ~ 2483 MHz の合計 83 MHz の使用可能スペクトルで構成されます。
現在、3 つのプロトコル仕様が、2.4 GHz 帯域の 802.11 Wi-Fi 動作に関して許可されています。IEEE によって作成された規格である 802.11b、802.11g、および 802.11n は、世界中の個別の規制機関によって承認されています。その他の多数の非 Wi-Fi テクノロジーも、動作のために 2.4 GHz 帯域を使用します。電子レンジ、ベビー モニタ、ゲーム コンソール、Bluetooth デバイス、コードレス電話などは、そのごくわずかな例にすぎません。これらの他の非 Wi-Fi デバイスは「Wi-Fi 信号の干渉」となる典型的な存在です。それは、これらのデバイスが 2.4 GHz 帯域での Wi-Fi 動作に干渉する可能性があり、実際に干渉しているためです。コンシューマ Wi-Fi デバイスも 2.4 GHz 帯域を多く使用します。多数の比較的古い(しかし広く使用されている)コンシューマ アクセス ポイント(ワイヤレス ルータとも呼ばれる)は、2.4 GHz 無線でのみ動作する単一帯域デバイスです。限られた量のスペクトルに結び付けられている 2.4 GHz 帯域にアクセスするさまざまなユーザの集合体により、この帯域では輻輳の問題が拡大しつつあります。
このため、2.4 GHz 帯域で Wi-Fi の導入を成功させることは、有望ではありません。この状況は、明らかに、2.4 GHz 帯域が 5 GHz 帯域よりも早く満杯になり、サポート可能なユーザが少なくなることを意味します。帯域での輻輳はローカルな現象であり、地域によっては問題がない場合もあります。事前現地調査により、用途に応じて、業務に必要なものを確認できます。
802.11b
802.11b プロトコルは 1999 年に、802.11 規格の改訂版として批准されました。このプロトコルは、5.5 および 11 Mbps のデータ レートをサポートし、幅広いユーザの承認とベンダーのサポートを獲得しています。802.11b は、今日の Wi-Fi 通信用に最初に標準化された仕様であったため、何千もの組織で展開されています。これは、現在使用可能なすべてのプロトコルのなかで最も非効率的なプロトコルです。そのため、このプロトコルを使用することにより、比較的少ない通信時間で、使用可能な通信時間がごく短時間で使い尽くされます。また、より少ないユーザしかサポートできません。802.11b は、単一トランスミッタ/レシーバ設計に基づいており、信頼性に影響を与えるマルチパス周波数現象が発生するとともに、設計もより複雑なものになります。一般に、その他の 802.11b 専用クライアントは、多くの場合、物流、小売り、または医療業界で使用される用途別アプライアンス(バーコード スキャナ、プリンタなど)に見られます。802.11b をサポートできる今日の無線機器は、通常、802.11n 用に設計されているすべての無線機器に実装され、それによって信頼性が向上します(MRC レシーバ)。ただし、802.11b 規格の効率性は改善されません。
802.11g
802.11 IEEE の改訂版として 2003 年に批准された 802.11g プロトコルは、802.11b 規格と同じスペクトルで動作し、802.11b 規格との後方互換性を備えています。802.11g 規格は、まったく異なる変調方式(OFDM)を使用し、6、9、12、18、24、36、48、および 54 Mbps のデータ レートをサポートします。後方互換性はありますが、この互換性は、802.11b に必要な通信時間と追加の管理オーバーヘッドという代償をともない、802.11g のみのクライアント環境で運用する場合に 802.11g によって実現される全体的なゲインを減少させます。802.11b と 802.11g の混在環境におけるパフォーマンスは、セルの潜在的なキャパシティの 50 % 程度を犠牲にするものになります。802.11b の設計に似た初期の 802.11g 無線も単一のレシーバとトランスミッタを持ち、実装において同様の信頼性に関する問題が多数発生します。
802.11n
802.11n は、802.11 規格の改訂版として 2009 年に批准されたプロトコルであり、2.4 GHz 帯域または 5 GHz 帯域のいずれかで使用できます。このプロトコルでは、複数の無線による MIMO(Multiple Input Multiple Output)が導入されており、複数の空間ストリームの同時エンコーディングが可能です(理論上、同じ通信時間で最大 4 倍のデータを処理できるが、3 つの空間ストリームが実際の上限)。2.4 GHz 帯域は、最大 216 Mbps までのデータ レートをサポートします(20 MHz のチャネルと 3 つの空間ストリーム トランスミッタを仮定した場合)。また、802.11n では、40 MHz のより広いチャネルの動作が指定されています。この動作は、単一の 40 MHz のチャネルを作成するために 2 つの 20 MHz チャネルを必要とするため、一般に「束ねられたチャネル」と呼ばれます。非オーバーラップ チャネルを 3 つしか使用できないことに関連する干渉の問題のために、シスコでは、2.4 GHz でのチャネルのボンディング(束ねること)をサポートしていません(図 3-3)。3 つの空間ストリームをサポートするデバイスの数は、よりハイエンドのラップトップおよびタブレットとアクセス ポイントに制限されます。2 空間ストリーム デバイスは、より多く存在しますが、やはり、ラップトップとタブレットに制限されます(いくつかの最新のスマートフォンは複数の空間ストリームをサポートするようになっています)。すべての場合において、802.11n 製品には、複数のレシーバ/アンテナに依存して初期の 802.11b および 802.11g/a レシーバに関連する信頼性の問題を軽減する、MRC(最大比合成)と呼ばれるレシーバに関する技術が導入されており、Wi-Fi の全体的な信頼性とパフォーマンスが向上しています。このため、今日の 802.11n ベースの無線通信は、802.11g 規格に基づいて動作する場合に信頼性が改善されます。
2.4 GHz Wi-Fi チャネルの計画
2.4 GHz 帯域のチャネル計画では 14 のオーバーラップ チャネルが識別されますが、次の図では、これらのうちの 3 つのチャネル(1、6、11)の部分が強調されています。他のすべてのチャネルが境界をオーバーラップまたは共有していることに注意してください。米国では、非干渉チャネル動作に 1、6、11 のみを使用できます。
図 3-3 2.4 GHz チャネル(1、6、11 を選択した場合)
(注) 一部の規制区域では、4 チャネル計画が機能することが示唆されています。これは何度となく取り上げ続けられていますが、チャネルの境界の外側で起こることについては、あまり詳しく述べられていません。他はともかく最小密度の環境では、単に、この計画が実用的に機能するためにチャネル間に残されているスペースが不十分です。また、世界の大半の国で 1、6、11 が承認されており、ほとんどの無線がこのチャネル計画にデフォルト設定されていることを考慮してください。このような状況で、1、5、9、13 を選択すると、標準チャネルを使用するどの無線も、少なくとも 1 つのチャネル(ほとんどの場合に 2 つのチャネル)と干渉します。シスコでは、これらの理由で、そのような選択を推奨していません。
図 3-4 2.4 GHz チャネル(1、5、9、13 を選択した場合)
2.4 GHz での輻輳を低減させるための有効な戦略には、次の方法による自己干渉の削減が含まれます。
1. 802.11b データ レートを無効化する:これにより、カバレッジ/干渉エリアが削減されるとともに、最も非効率的なプロトコルが通信から排除されます。
2. 比較的高い最小必須データ レートを選択する:これによっても、有効なカバレッジ/干渉が削減され、12 ~ 18 Mbps のデータ レートが高密度展開で使用されます。
3. どの AP にも 3 ~ 4 つを超える SSID(WLAN)を割り当てない(各 AP は設定済みの各 WLAN をブロードキャストする必要があるため):これにより、物理チャネルに関連する管理オーバーヘッドを大幅に削減できます。
4. 既知の非 Wi-Fi 干渉源を排除する:これらを識別し、評価し、位置を特定するために CleanAir が役立ちます。
ソリューションに含まれない、隣接する Wi-Fi ネットワークからの干渉については、そのすべてにおいて追加のハードウェアが必要になり、設計が複雑化します。2.4 GHz でのクリティカルな動作に関する正当なニーズがある場合は、このレベルの設計経験がある人物を雇用することを推奨します。
5 GHz:802.11a/n/ac
5 GHz 無線帯域の無認可領域で動作する 802.11a/n/ac 無線は、2.4 GHz 帯域で動作する「すべて」のデバイスからの干渉の影響を受けません(コンシューマ デバイスからの非 Wi-Fi 干渉を含む)。Wi-Fi に使用可能な 5 GHz 帯域は、100 MHz から 300 MHz まで世界各国で大きく異なる場合があります。ただし、どの場合も 2.4 GHz スペクトルよりも大きな帯域幅を使用できます。
802.11a/n/ac 規格は別の周波数範囲で動作するため、2.4 GHz 帯域デバイスと 5 GHz 帯域デバイスは同じ物理環境で相互に干渉することなく動作できます。シスコのほとんどの AP は、2.4 GHz と 5 GHz の両方のデュアルバンド動作をサポートします。5 GHz Wi-Fi での使用については、802.11a、802.11n、および 802.11ac の 3 つのプロトコル仕様が批准されています。周波数/チャネルの範囲は、5 GHz の異なる周波数セグメントに分割されます。また、この周波数範囲も時間をかけて増やされました。米国では、次の周波数範囲があります。
- 5.150 ~ 5.250 GHz(UNII-1 - 4 チャネル:36 ~ 48)
- 5.250 ~ 5.350 GHz(UNII-2 ~ 4 チャネル 52 ~ 64)
- 5.470 ~ 5.725 GHz(UNII-2c ~ 12 チャネル 100 ~ 144)
- 5.725 ~ 5.825 GHz(UNII-3 ~ 5 チャネル 140 ~ 165)
- 5.825 ~ 5.925 GHz(U-NII-4 ~ 4 チャネル 169 ~ 181)
3 つのプロトコルはすべて、同一のメカニズムを使用しているため、後方互換性があります。また、共通のエンコーディング テクノロジーを採用しているため、同時に使用した場合にも特に目立つ不利益なしに正常に連携します。主な違いは、通信時間の効率性です。
5 GHz 帯域でのチャネル割り当ては非常に単純です。これは、すべての割り当てが、チャネル間で維持される 5 MHz の最小分離による非オーバーラップ チャネルであるためです。
802.11a
802.11a は、802.11 規格の改訂版として 1999 年に批准されたプロトコルであり、動作する帯域と、802.11b との後方互換性が不要であることを除き、ほとんどの点で 802.11g 規格と同じです。802.11a は、6、9、18、24、36、48、および 54 Mbps の速度をサポートします。これは、2015 年には一般にレガシー プロトコルと見なされており、多数のネイティブ 802.11a デバイスが広く残っていることはないと思われます。無線では依然として 802.11a プロトコルが使用されていることがありますが、ほとんどの場合、このプロトコルは、少なくとも 802.11n ネイティブのデバイスで使用されています。
802.11n
802.11n は、802.11 規格の改訂版として 2009 年に批准されたプロトコルであり、2.4 GHz と 5 GHz で動作できます。また、いくつかの機能が拡張されていて、2 倍のチャネル幅による広いチャネル動作(20 ~ 40 MHz)が可能になっており、2 倍のキャパシティまたは速度を期待できます。このプロトコルでは、無線設計に MIMO(Multiple Input Multiple Output)という新しい概念が導入されました。複数の空間ストリームを使用することで、同じ信号内の個別のデータ ストリームを同時にエンコードできます。これにより、一度に送信できるデータの密度が増加し、桁違いの大きさのキャパシティと速度が実現されます。802.11n のデータ レートは、空間ストリームの変化する数(個別の無線設計によって決定される)と、使用されるエンコーディング方式に対応する必要がありました。新しいデータ レート構造では、標準データ レートに代わるものとして MCS(変調および符号化方式)が採用されました。
表 3-1 802.11n の MCS 1 ~ 23 のデータ レート
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|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
0 |
1 |
BPSK |
1/2 |
6.5 |
7.2 |
13.5 |
15 |
1 |
1 |
QPSK |
1/2 |
13 |
14.4 |
27 |
30 |
2 |
1 |
QPSK |
3/4 |
19.5 |
21.7 |
40.5 |
45 |
3 |
1 |
16-QAM |
1/2 |
26 |
28.9 |
54 |
60 |
4 |
1 |
16-QAM |
3/4 |
39 |
43.3 |
81 |
90 |
5 |
1 |
64-QAM |
2/3 |
52 |
57.8 |
108 |
120 |
6 |
1 |
64-QAM |
3/4 |
58.5 |
65 |
121.5 |
135 |
7 |
1 |
64-QAM |
5/6 |
65 |
72.2 |
135 |
150 |
8 |
2 |
BPSK |
1/2 |
13 |
14.4 |
27 |
30 |
9 |
2 |
QPSK |
1/2 |
26 |
28.9 |
54 |
60 |
10 |
2 |
QPSK |
3/4 |
39 |
43.3 |
81 |
90 |
11 |
2 |
16-QAM |
1/2 |
52 |
57.8 |
108 |
120 |
12 |
2 |
16-QAM |
3/4 |
78 |
86.7 |
162 |
180 |
13 |
2 |
64-QAM |
2/3 |
104 |
115.6 |
216 |
240 |
14 |
2 |
64-QAM |
3/4 |
117 |
130 |
243 |
270 |
15 |
2 |
64-QAM |
5/6 |
130 |
144.4 |
270 |
300 |
16 |
3 |
BPSK |
1/2 |
19.5 |
21.7 |
40.5 |
45 |
17 |
3 |
QPSK |
1/2 |
39 |
43.3 |
81 |
90 |
18 |
3 |
QPSK |
3/4 |
58.5 |
65 |
121.5 |
135 |
19 |
3 |
16-QAM |
1/2 |
78 |
86.7 |
162 |
180 |
20 |
3 |
16-QAM |
3/4 |
117 |
130 |
243 |
270 |
21 |
3 |
64-QAM |
2/3 |
156 |
173.3 |
324 |
360 |
22 |
3 |
64-QAM |
3/4 |
175.5 |
195 |
364.5 |
405 |
23 |
3 |
64-QAM |
5/6 |
195 |
216.7 |
405 |
450 |
MIMO(または複数の空間ストリームの使用)では、動作するために個別のトランスミッタとレシーバ(コード化される空間ストリームごとに 1 つずつ)が必要です。無線が増えると、必要な電力およびアンテナも増えます。このため、特定の無線がサポートする空間ストリームの正確な数は、多くの場合、特定のデバイスで使用可能な電力と設備に関連する設計で決定されます。実際には、デバイスが備える電力と空間が多いほど、そのデバイスがサポートできる空間ストリームが増えます。そのため、ほとんどの場合、多数のラップトップやタブレットと同様に、有線接続された電源を持つ AP が複数の空間ストリームをサポートします。限られたバッテリと空間しか持たないスマートフォンは、一般に、単一の空間ストリームをサポートします(例外もあるが多くはない)。また、コストとパフォーマンスに関連するさまざまな機能も備えています。トランスミッタは多くの電力を消費します。SISO(Single Input Single Output)は、複数のトランスミッタ(および複数の空間ストリームをサポートする機能)をサポートしない場合でも、改善が進んでいる複数のレシーバ(および劇的に改善されたレシーバ技術である MRC)をサポートします。802.11n 無線では、通常、「3x3:2」、「2x3:2」、または「1x2:1」という注記が示されます。これは、「(#TX)x(#RX)」(# はサポートされる空間ストリーム)を意味します。
802.11ac
802.11ac は、802.11 規格の修正版として 2013 年に批准されたプロトコルです。
(注) 802.11ac 規格は 1 つしかありませんが、11ac は 2 つの異なる時期に市場に投入されており、市場では一般に「Wave 1」および「Wave 2」と呼ばれています。どちらもこの記事の執筆日時点ですでにリリースされています。
802.11n で得られた多数の教訓に基づいて作成された 802.11ac は、最大 160 MHz のチャネルにより最大 8 つの空間ストリームを許可します。市場に投入された最初の Wave 1 製品では、最大 80 MHz のチャネルと 3 つの空間ストリームがサポートされていました。802.11ac Wave 1 に関して Wi-Fi 認証されたすべてのデバイスは、20、40、および 80 MHz チャネル幅で動作する必要があります。802.11n の仕様では、40 MHz 動作はベンダー オプションであり、クライアント機能とネットワーク設計の不一致が許可されました。すべての 802.11n デバイスが 40 MHz チャネル計画を利用できるわけではなく、チャネル数の削減によるゲインは見られません。
現在市場に投入されている Wave 2 製品は、最大 4 つの空間ストリームと 160 MHz チャネル幅を実装しています。160 MHz チャネル幅は、2 つの 80 MHz チャネルを 1 つのチャネルに束ねる(合計で 4 つの 20 MHz チャネル割り当てを消費する)ことによって形成されています。ここでも、4 つの空間ストリームは 4 つのトランスミッタとレシーバ(およびアンテナ)を意味します。このため、単一帯域無線の 8 つの Tx/Rx チェーンによる設備の問題がただちに生じます。
(注) 最大 4 つの空間ストリームをサポートする 802.11n とまったく同様に、4 つ目の空間ストリームからのゲインが非常に小さいため、実際の制限は 3 つの空間ストリームでした。802.11ac の 8 つの空間ストリームは、単一の 5 GHz 無線では実現しそうにありません。一部のメーカーが 2.4 GHz の 4 つの空間ストリームと 5 GHz の 4 つの空間ストリームを 8 つの空間ストリームとして売り込んでいることには注意が必要です。これらは、まったく同じものというわけではありません。空間ストリームの詳細については、Rob Lloyd が「Fundamentals of Spatial Streams」で行っている優れた概説を参照してください。
Wi-Fi に対する Wave 2 の他の大きな貢献として、MU-MIMO(Multi User MIMO)があります。802.11acの MU-MIMO により、個別の空間ストリーム上の複数のクライアントに同時に対応することが可能になります。802.11ac の詳細については、『 802.11ac: The Fifth Generation of Wi-Fi Technical White Paper』を参照してください。
米国の 5 GHz の新しい FCC –B ドメイン
- 8.2MR1 の後の新しいソフトウェア リリースでは、–B ドメインがサポートされるようになりました。
- 2016 年 6 月現在、シスコは –A SKU を制限しており、米国で提供していません。
- 米国では、新しい連邦通信委員会(FCC)指令 14 ~ 30 により、–A SKU の実装内容が変更され、その結果として -B が導入されました。変更内容は次のとおりです。
– U-NII-1 帯域(5150 ~ 5250 MHz)が屋外で使用できるようになりました。
– U-NII-1 の送信電力が 1 W に増加しました。ただし、水平方向 30 度を超える等価等方輻射電力/Equivalent Isotropically Radiated Power(EIRP)を屋外で使用する場合には追加の制限があります。
– Terminal Doppler Weather Radar(TWDR)帯域(チャネル 120、124、および 128)を動的周波数選択(DFS)の新しいテスト要件で使用できるようになりました。
– U-NII-3(5.725 ~ 5.85 MHz)の新しい電力スペクトル密度および上下帯域境界エミッション要件が導入されました。
米国の 5 GHz チャネル計画
- これまでにない大きさのチャネル(20/40/80/160 MHz)を消費可能なプロトコルの作成は、今日の既存チャネルに対する多大な圧力をともないます。規制による制限のために、2 つの異なる周波数範囲のチャネルをいつでも束ねることができるわけではありません(11ac の 80+80 モードでこれが実現されるとしても)。また、今日の定義されているチャネルの間にはギャップがあるため、実際上の制限も存在します。米国では、より多くのスペクトルがすでに許可されており(チャネル 120、124、128 の復帰)、2 つの 160 MHz チャネルの可能性を利用することが容易になっています。範囲のギャップを埋める追加のスペクトルがすでに要求されています。また、さらに多くのことを可能にする追加のスペクトルも現在検討されています。世界各地のその他の規制機関も注目しています。
- 20、40、80、および 160 MHz チャネルに関する米国でのチャネルおよび帯域割り当てを次の図に示します。この図には、要求されている将来の割り当ても示されています。
図 3-5 現在の米国の 5 GHz 802.11 Wi-Fi チャネル計画
802.11ac に関するデータ レートは、より多くの空間ストリーム(1 ~ 8)、より広いチャネル(20/40/80/160 MHz)、またはエンコーディング レートの拡張の 3 つの形式で増加しています。802.11n は、2 チャネル幅および 4 つの空間ストリーム(実際には 3 つのみ)に制限されていました。そのため、速度を定義するために MCS 1 ~ 23が使用されました。0 ~ 7 で 1 つの空間ストリームのデータ レートが定義され、以降、8 ~ 15、16 ~ 23 と繰り返して、まず 2 つの空間ストリーム、次に 3 つの空間ストリームが定義されました。シスコでは、現在、8 つの空間ストリームを使用しています。このために必要な措置がありました。より単純な方法もあるかもしれませんが、現在、MCS 0 ~ 9 によって変調と符号化レートのみが定義されています。追加の空間ストリームまたは追加のチャネル幅の影響を計算するために乗数が使用されます。次の表に、最大 2 つの空間ストリームとすべてのチャネル幅を示します。これは、あまり簡単なものではありませんが、課題と取り組んできた長期的な視野で見れば比較的簡単です。表の後の乗数ルールに注意してください。
表 3-2 802.11ac の MCS データ レート
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|
|
|
|
|
|
0 |
BPSK |
1/2 |
1 |
7.2 |
15.12 |
32.4 |
64.8 |
0 |
BPSK |
1/2 |
1 |
14.4 |
30.24 |
64.8 |
129.6 |
1 |
QPSK |
1/2 |
1 |
14.4 |
30.24 |
64.8 |
129.6 |
1 |
QPSK |
1/2 |
1 |
28.8 |
60.48 |
129.6 |
259.2 |
2 |
QPSK |
3/4 |
1 |
21.7 |
45.57 |
97.65 |
195.3 |
2 |
QPSK |
3/4 |
1 |
43.4 |
91.14 |
195.3 |
390.6 |
3 |
16-QAM |
1/2 |
1 |
28.9 |
60.69 |
130.05 |
260.1 |
3 |
16-QAM |
1/2 |
1 |
57.8 |
121.38 |
260.1 |
520.2 |
4 |
16-QAM |
3/4 |
2 |
43.3 |
90.93 |
194.85 |
389.7 |
4 |
16-QAM |
3/4 |
2 |
86.6 |
181.86 |
389.7 |
779.4 |
5 |
64-QAM |
2/3 |
2 |
57.8 |
121.38 |
260.1 |
520.2 |
5 |
64-QAM |
2/3 |
2 |
115.6 |
242.76 |
520.2 |
1040.4 |
6 |
64-QAM |
3/4 |
2 |
65 |
136.5 |
292.5 |
585 |
6 |
64-QAM |
3/4 |
2 |
130 |
273 |
585 |
1170 |
7 |
64-QAM |
5/6 |
2 |
72.2 |
151.62 |
324.9 |
649.8 |
7 |
64-QAM |
5/6 |
2 |
144.4 |
303.24 |
649.8 |
1299.6 |
8 |
256-QAM |
3/4 |
3 |
86.7 |
182.07 |
390.15 |
780.3 |
8 |
256-QAM |
3/4 |
3 |
173.4 |
364.14 |
780.3 |
1560.6 |
9 |
256-QAM |
5/6 |
3 |
96.3 |
202.23 |
433.35 |
866.7 |
9 |
256-QAM |
5/6 |
3 |
192.6 |
404.46 |
866.7 |
1733.4 |
1. MCS 9 の 20 MHz は、空間ストリーム 1、2、4、5、7、8 の仕様によれば正当ではありません。
2. 各空間ストリームによる追加分は 100 % です。たとえば、MCS 0 では 1 つの空間ストリームの場合はデータレートが 7.2、2 つ空間ストリームの場合はその 2 倍、3 つの空間ストリームの場合はその 3 倍になります。
3. チャネル幅乗数は、20 MHz 速度に対して 40 MHz は 2.1 倍、80 MHz は 4.5 倍、160 MHz は 9 倍です。たとえば、MCS 0 の 20 MHz の場合は 1 つの空間ストリームで 7.2 Mbps、40 MHz の場合はその 2.1 倍の 15.2 Mbps になります。
802.11ac では、Wi-Fi に関する効率性が大幅に向上しています。デバイスのサポートに関して言えば、空間ストリームの数が増えることは、電力とアンテナが増えることを意味します。無線設計は改善され続けており、すでに、より小さなデバイスへのより多くの空間ストリームの実装が見られるようになっています。現在、多数のクライアントが 1 ~ 2 つの空間ストリームに制限されていますが、すべての 802.11ac クライアントは、認定を得るために最大 80 MHz のチャネル動作をサポートする必要があります。160 MHz チャネルは米国での現在のスペクトル割り当てにおいて窮地に陥っており、一部の規制区域では不可能にいたっています。ちなみに、現在 80 MHz で動作する 3 空間ストリームの Wave 1 クライアントは 1.3 Gbps のデータ レートを達成できます。シスコも、将来的にはより高い速度をサポートする予定です。
802.11ad
802.11ad は、2.4 GHz または 5 GHz を使用しないという点で 802.11a/b/g/n/ac とは異なります。当初 WiGig と呼ばれたこの規格は、60 GHz 帯域の周波数を利用します。ミリ波周波数範囲が非常に高いため、範囲は一般に非常に近距離のデバイスに制限されます。周波数が高いほど伝達に要するエネルギーが多くなります。範囲は小さくても、潜在的スループットが高い(最大 7 Gbps)このテクノロジーは、パーソナル エリア ネットワークやワイヤレス USB/ビデオ アプリケーションに最適であると指摘されています。
IEEE 802.11 規格について
IEEE 802.11 は、米国電気電子技術者協会(IEEE)内で作業しているグループで、OSI モデルの物理レイヤおよびリンク レイヤ(レイヤ 1 とレイヤ 2)の無線 LAN 規格を担当しています。これに対して、インターネット技術特別調査委員会(IETF)はネットワーク レイヤ(レイヤ 3)プロトコルを担当しています。802.11 作業グループには、802.11 WLAN 規格の要素を担当する多数のタスク グループがあります。次の表 3-3 は、タスク グループ イニシアチブの一部の要約を示しています。
これらの作業グループの詳細については、 http://www.ieee802.org/11/ を参照してください。
表 3-3 IEEE タスク グループの活動
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MAC |
物理レイヤ エンティティ(PHY)タスク グループとともに、WLAN のための 1 つの共通の MAC を開発する。 |
PHY |
赤外線、2.4 GHz FHSS、2.4 GHz DSSS という 3 つの WLAN PHY を開発する。 |
a |
5 GHz UNII 帯域のための PHY を開発する。 |
b |
2.4 GHz 帯域で高レートの PHY を開発する。 |
c |
802.11 MAC でのブリッジ動作を扱う(スパニングツリー)。 |
d |
その他の規制区域(国)の 802.11 動作のための物理レイヤ要件を定義する。 |
e |
QoS のために 802.11 MAC を強化する(第 5 章を参照)。 |
f |
マルチベンダー使用のためにアクセス ポイント間通信プロトコル(IAPP)の推奨案を作成する。 |
g |
802.11b に対して高速な PHY 拡張を開発する(54 Mbps)。 |
h |
802.11 MAC と 802.11a/n/ac の PHY 動的周波数選択(DFS)、送信電力制御(TPC)を強化する。 |
i |
802.11 MAC のセキュリティおよび認証メカニズムを強化する。 |
j |
802.11 の規格を強化し、日本における 4.9 GHz および 5 GHz のチャネル選択の追加に向けて修正する。 |
k |
ローミングを容易にするために、AP に関連付けられた 802.11k 対応クライアントは、適切なネイバー AP のリストを要求する。802.11k 対応 AP は、同じ WLAN にあるネイバー AP の、現在の Wi-Fi チャネル番号が付いたリストを使用して応答する。 |
m |
802.11 系列の仕様の文書に関する、編集上の管理、修正、改訂、明確化、および翻訳を行う。 |
n |
2.4 GHz、5 GHz 帯域における高スループット拡張(MAC SAP で 100 Mbps 以上)を重点的に扱う。 |
o |
Voice over WLAN での高速なハンドオフ(目標は 50 ms あたり)を提供する。 |
p |
料金徴収、車両安全サービス、車を使用したコマース トランザクションなど、車両を対象とした車両用通信プロトコルを中心に扱う。 |
r |
802.11r では、クライアントが現在の AP から離れる前でも新しい AP との最初のハンドシェイクが実行される、ローミングの新しい概念が導入されている。これは、高速移行(FT)と呼ばれる。 |
s |
完全に網羅するように向上されたメッシュ ネットワークの MAC および PHY を定義する。 |
t |
製造業者、テスト ラボ、サービス プロバイダー、ユーザが 802.11 WLAN デバイスおよびネットワークのパフォーマンスをコンポーネントおよびアプリケーション レベルで測定できるようにするパフォーマンス測定指標、測定方法論、テスト条件を提供する。 |
u |
IEEE 802.11 アクセス ネットワーク(ホットスポット)と外部ネットワークの間に機能およびインターフェイスを提供する。 |
v |
ステーション(STA)に対してネットワーク管理を提供する 802.11 MAC/PHY への拡張を提供する。 |
w |
アクション管理フレーム、認証解除フレーム、アソシエーション解除フレームなどの、選択した IEEE 802.11 管理フレームのデータの整合性、データ発信元の信頼性、応答の保護、データの機密保持を実現するメカニズムを提供する。 |
ac |
この改訂版は、5 GHz 帯域で非常に高いスループット(500 ~ 1000 Mbps)をサポートするための 802.11 MAC および PHY に対する機能拡張を指定する。 |
2.4 GHz または 5 GHz のどちらに対応した設計にするか
Wi-Fi は今日では比較的成熟した技術です。依然として Wi-Fi が存在しない場所もありますが、現在では、何らかの信号カバレッジを持たない人や場所の存在を見つけることは困難です。このことは、独立した隣人が増加するほど Wi-Fi 干渉が増大するか増大する可能性があることにもよく表れています。これは、多くの場合、さまざまな企業の多数のオフィスが単一のビルおよびスペクトルを共有する複合施設で最悪の状況を生み出します。
Wi-Fi は、壁や床を通過するとともに、他の Wi-Fi および 非 Wi-Fi デバイスからも同様にすべての干渉を受け入れつつ動作する必要があるため、この点は非常に重要です。このことは、ネットワーク デバイスが他のネットワークからの信号を受信可能なレベルまで、それらのデバイスがそれらの他のネットワークと、使用可能な通信時間を共有することを意味します。自分と隣人がともにヘビー ユーザである場合、ネットワークがオーバーラップするエリアでは、どちらのユーザも期待される接続速度を下回る帯域幅しか使用できません。どちらのネットワークも、他のネットワークによるチャネルへのアクセスを待つことで時間を浪費します(そして、通信における時間の浪費はスループットを低下させます)。
密集した大都市、複合施設、またはショッピング モールで 2.4 GHz を使用することは、最高の状態でも不安定にしか成功せず、最悪の場合には頻繁に使用できなくなる可能性があります。世界の大半の地域では、ベスト プラクティスとして、3 つの非オーバーラップ チャネルを使用することが推奨されます。複数の異なるネットワーク オーナーが存在する高密度展開環境では、一部のオーナーが、過剰に混み合ったスペクトルにおいて何らかのメリットを得ることを期待して、常に、他の 8 ~ 10 チャネルの使用を試み続けます。多くの場合、そのようなメリットは得られません。実際には、他のネットワークとオーバーラップするチャネルを選択することにより、どのネットワークにとっても状況は悪化します。
2 個の AP が同じチャネル上にある場合、各 AP の競合メカニズムが、それらの間のチャネルへの公平なアクセスを可能にします。異なるもののオーバーラップしているチャネル上の AP は、オーバーラップする周波数上の 802.11 パケットを復調できず、それらのパケットはノイズとしてのみ認識されます。802.11 MAC レイヤがない場合、2 個の AP 間での調整は不可能です。両方の AP のセルに関して、エラーと衝突が増え、使用率が膨らむとともに貴重な通信時間が浪費されます。4 チャネル計画が可能(1、5、9、13)な地域にいる場合は、多数のクライアント ドライバがデフォルトでチャネル 12 および 14 を有効にしないことに注意してください。また、ほとんどのコンシューマと多数の AP システムは、デフォルトでチャネル 1、6、11 を使用します。このような状況では、チャネル 6 がチャネル 5 および 9 の両方と干渉し、チャネル 11 が チャネル 9 および13 と干渉します(その逆の干渉もあります)。隣人がチャネル 1、6、11 を使用している場合は、自分もそれらを使用する必要があります。それにより、パフォーマンスが向上します。
事業運営に不可欠な用途の場合は、5 GHz の使用を計画します。以前は、5 GHz デバイスがあまり普及していなかったため、この計画は今よりも困難でした。今日では、ほとんどのメーカーが製品の規格として 802.11ac に焦点を合わせており、802.11ac は 5 GHz でのみ動作するため、状況が異なっています。
どうしても 2.4 GHz 上に重要な機能を展開する必要がある場合は、その要件が保持される理由と要因(具体的にはデバイス)を理解し、それらを最新のハードウェアによって置き換えることを検討します。非常に多くの 2.4 GHz 無線を相互に接近させて配置することしかできず、チャネルがいっぱいになると、それらもいっぱいになります。
Wi-Fi Alliance の認定データベース( Wi-Fi Alliance の認定製品検索 )で調べると、今日のデバイスには 5 GHz をサポートするものが多く含まれていることを確認できます。最新の検索結果を参照し、これらの状況を検討に加えてください。
- 2015 年 8 月現在、5 GHz の 802.11n 動作について、2,409 機種のスマートフォン/タブレットが認定されています。
– そのうちの 477 機種は、2013 年に認定済み。
– 2014/15 年に認定された 591 機種は、すべて 802.11ac。
– 同じ期間に Wi-Fi Alliance が認定した 2.4 GHz 専用デバイスは合計 3,167 機種で、これは現在の市場の 24 %(6 ヵ月前の 32 % から減少)。
– これらの大半はローエンドのコンシューマ デバイス。
表 3-4 2.4 GHz と 5 GHzのメリットおよびデメリット
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2.4 GHz |
範囲が広い。周波数が増えるほど伝達距離が短くなるため(送信電力が等しい場合)。 |
相互干渉と少ないキャパシティのために、同じ物理スペースに設定できる AP が少ない。 |
オブジェクトの貫通性が高く、屋内の範囲に優れている。 |
相互干渉と少ないキャパシティのために、同じ物理スペースに設定できる AP が少ない。 |
スペクトル/チャネルが少ない。 |
輻輳が増加する。 |
|
不適切な不正実装による干渉のリスクが増大する。 |
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非 Wi-Fi デバイスに関して任意の帯域が使用されることにより、一般に、干渉が増加する。 |
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束ねられたチャネルを使用し、スループットを向上させるために使用できるチャネル数が不十分なため、干渉が増加する。 |
5 GHz |
範囲が狭く、自己干渉が少ないため、より多くの AP を使用し、より多くのユーザをサポートできる。 |
範囲が狭いと、一般に、より多くの AP が必要になる(UNII_3 の高い電力レベルは一般に AP 側でのみサポートされる)。 |
より多くのチャネル、帯域幅、キャパシティを利用できる。 |
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使用できるコンシューマ Wi-Fi デバイスおよび非 Wi-Fi デバイスが少ない。輻輳が少ない。 |
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802.11ac は 5 GHz でのみ動作する。 |
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範囲が狭いため、低密度ホットスポット カバレッジ モデルに適さない。 |
図 3-6 に、2.4 GHz 帯域(左)と 5 GHz 信号(右)の両方について、同じ Tx 電力設定での使用可能な信号の相違を示します。UNII-3 帯域では、電力を 23 dBm まで増加でき、5 GHz のカバレッジが 2.4 GHz よりも広くなりますが、これはこの帯域のみです。各 AP に関して使用可能な固定帯域幅を共有するユーザの人数は、セルの到達範囲に含まれるユーザの人数です。
図 3-6 2.4 GHz および 5 GHz の伝達距離
どのプロトコルを有効にする必要があるか
802.11 規格で使用可能な複数のプロトコル規格が存在します。実際に、Wi-Fi Alliance 認定を得るには依然として 1999 年以降に批准されたすべての規格が必要であり、それらの規格は、802.11 規格が属している帯域をサポートするすべてのハードウェアに含まれています。ただし、このことは、それを使用する必要があることを意味しません。ユーザによる、サポートする(またサポートしない)プロトコルの選択は、ネットワークの効率性に大きな影響を与える可能性があります。
この「効率性」は、通信時間の使用を意味します。ステーションによる通信の開始または終了がより迅速になれば、他のステーションが使用できる通信時間が増えます。前述のように、802.11b は、2.4 GHz で実装された最初のプロトコルの一つです。今日では、802.11b が、他のすべての Wi-Fi プロトコルのなかで唯一の例となっています。これは、802.11b が、コーディングと変調の両方の方式に関して、以降に批准された他のすべてのプロトコルとまったく異なるためです。
802.11b、a、および g は、グループとして、すべてが 800 ミリ秒の広いガード インターバルを使用していました。ガード インターバルとは、送信される無線記号(文字)が通信時に衝突することを防ぐための、それらの記号間の時間間隔です。802.11n および 802.11ac にはオプションのショート ガード インターバルがありますが、実際には、すべての製品がこのオプションを実装しています。802.11n のデータ レートの表(表 3-1:802.11n の MCS 1 ~ 23 のデータ レート)で、ショート ガード インターバルによって提供されるメリットを確認できます。これらは非常に重要です。
802.11n および 802.11ac は、ブロック ACK(ブロック確認応答)も提供します。これは、パケットの大きなブロックをすべて一度に確認応答することを可能にして、効率性を大きく向上させます。レガシー プロトコルはすべて、パケットの送信と応答の取得を 1 つずつ行います。これは、現在の規格ではほぼ不要になった信頼性のために、非常に多くのフレームをトランザクションに追加します。
たとえるならば、ゴルフ カートには自動車と同じように 4 つの車輪と 1 つのハンドルがありますが、それでは F1 レースに出場できないようなものです。この例の結論は明らかですが、制限なしの Wi-Fi ネットワークでは同様の状況が発生します。
次の図 3-7 では、無線で異なるサイズのパケットを使用する異なるプロトコル規格およびデータ レートの通信時間要件を比較しています。この図は、集約によるメリットが実現される前の、パケットごとに消費される通信時間(マイクロ秒単位)を示します。802.11n または ac の控えめの速度でも、802.11b が 1024 バイト パケットを 1 つ転送する前に 20 の 1024 バイト パケットを転送できることが、容易に見て取れます。
(注) より低いデータ レートでは、特定のパケット サイズに必要な通信時間が長くなります。このため、毎秒の対応可能なデータの総量が減少します。結果として、使用可能な帯域幅が減少します。
図 3-7 速度およびサイズごとのパケットの通信時間
ネットワーク設計者の関心事項は、すべてのユーザが使用できるサービスを提供することです。幸いにも、今日では、全般的に見て、ネイティブ 802.11b またはレガシー プロトコルに関する「実際の」要件が存在する環境はほとんどありません。
Cisco WLC には、大半の一般的な速度および必要な速度の実装に使用できるいくつかのオプションがあります。適切に調整されたネットワークを一から実装するために必要なものを確実に理解できるように、さまざまなネットワーク タイプと決定上のポイントについて後で詳しく説明します。
DFS チャネルとは何か、またそれを使用する必要はあるか
5 GHz で使用できるチャネルの多くは、DFS チャネルと呼ばれます。DFS とは Dynamic Frequency Selection(動的周波数選択)の略で、TPC(送信電力制御)とともに、UNII-2 および UNII-2e 帯域(チャネル 52 ~ 144)での動作時のレーダーの共存緩和(すなわち、検出と回避)を定義します。これらのメカニズムは、802.11 規格の改訂版で詳しく規定されています。
802.11h 規格は、5 GHz 帯域を合法的に使用するプライマリ ユーザでもあるサテライトおよびレーダーへの干渉などの問題を解決するために策定されました。プライマリ ユーザは、UNII-2 および UNII-2e の周波数範囲よりも優先されます。これは、この周波数の使用条件としてプライマリ ユーザに干渉しないための Wi-Fi の役割です。この規格は主に欧州の規制に対処するために導入されましたが、今日では世界の他の多くの地域でも、Wi-Fi で使用可能な 5 GHz スペクトルを増やすという同じ目標を達成するために使用されています。
2004 年に、米国は、802.11h 認定を必要とするルールによって UNII-2e(「e」は「拡張」を表す)帯域にチャネル 100 ~ 140 を追加しました。これにより、この範囲の 5 GHz 周波数のプライマリ ライセンス ユーザと問題なく共存することが可能になりました。欧州では、これらのチャネルは、現在使用可能な5 GHz スペクトルのほとんどに当たります。欧州では、ルールとメカニズムの問題が解決される前は、5 GHzの 4 つのチャネルのみに制限されていました。同じ頃、米国には合計 13 のチャネルを使用できる UNII-1、2、および 3 がありました。
ライセンス付与された帯域のユーザに干渉しないための要件は、次のように非常に単純です。
1. Wi-Fi 機器は、レーダーおよびサテライトのエミッションを検出できる必要がある。
2. この範囲内のチャネルを使用する前に、「チャネル マスター」(インフラストラクチャ AP)は、まず 60 秒間リッスンし、チャネルがレーダーによって使用されていないことを確認する必要がある。
3. レーダーの信号が検出された場合、Wi-Fi チャネル マスターとそれに関連付けられたすべてのクライアントは、チャネルをすぐに放棄する必要があり、30 分間(レーダー エミッションが検出されない場合に Wi-Fi を使用するためにチャネルが再び未使用状態になるための時間)は戻ることができない。
2004 年前半、UNII-2e チャネルは米国のネットワーク管理者たちの間で不評を買いました。当初、クライアントでの新しいルールの採用が遅れました。そのため、これらのチャネルをインフラストラクチャで使用すると、一部のクライアントが使用できないチャネルを誤って設定してしまう可能性がありました(一部のユーザは実際に誤って設定しました)。これにより、それらのクライアント タイプに対するカバレッジホールが生まれました。また、実稼働ネットワークでの DFS 動作(スキャンの必要性とそれに要する時間)に関する過度の懸念もありました。その懸念とは、DFS がレーダーを検出した場合、チャネルが変更され、その 1 分後に送信が再開されますが、これが中断状態のように見えることでした。しかし、RRM によって AP が最初は非 DFS チャネルに配置されるため、この動作は中断を伴うものではありません。チャネルは 30 分間ブロックされ、必要なリスニング時間をクリアするバックグラウンド スキャンにより、再び RRM で使用できるようになります。チャネルが使用可能になれば、ユーザはそれを使用するか、現在のチャネルにとどまるかを、そのどちらがクライアントに適しているかを基準に選択できます。
これらのチャネルおよび 802.11h ロジックが追加されてから 10 年が経過しました。欧州では、DFS によって 5 GHz の Wi-Fi の可能性が引き出され、その可能性は現在も伸ばされており、大きく開花しようとさえしています。さまざまなクライアント ベンダーが存在しますが、その大半が、クライアントに必要な追加のロジックがないことから DFS チャネルを明確にサポートしています。
空港や積み出し港から 5 マイル(約 8 km)以内の場所にいて、懸念がある場合は、シスコの AP によるチャネル範囲のモニタリングによって評価してください。シスコは、DFS の動作と柔軟性のための認定ハードウェア モデルおよび機能で業界をリードしています。チャネルのモニタリングにより、干渉の可能性を認識し、影響を受けるチャネルを特定することができます。
サイトの調査
サイト調査は重要なツールです。これにより、周囲の運用者を確認できます。また、さらに重要なこととして、目的のカバレッジ ゾーンに干渉する場所とその度合いを確認できます。設置場所、既存のケーブル設備、インフラストラクチャ要件、アーキテクチャ上の不審点などを特定し、特定のアプリケーションに必要なカバレッジを得るための計画を策定することもできます。RF は周囲の物理環境と相互に作用し、すべての建物およびオフィスは異なっているため、各ネットワークもある程度異なったものになります。残念ながら、Wi-Fi に関しては、あるサイズですべてに対応できるということはありません。ただし、導入タイプごとの推奨事項があり、発生する可能性のある事態を一般化することは可能です。サイト調査をしばらくの間実行していない場合は、調査しないことを決める前に、次の点について、最後に調査した後に変化した内容に留意してください。
1. プロトコルおよび無線技術
2. ユーザのネットワーク使用方法(あらゆる人が、ほとんどあらゆることに使用すると考えられる)
3. ネットワークがサポートするクライアントの数(今日のユーザは少なくとも 2 台、多くの場合はそれ以上の数のデバイスを所持するため、ユーザ数よりもはるかに多いと考えられる)
4. ネットワークの主要な使用目的(初期計画および導入時から変化している可能性が非常に高い)
初期の WLAN 設計では、あらゆる場所の数人の一時ユーザの信号を取得するためにカバレッジが重視されていましたが、今日の WLAN 設計では、ユーザ数が増えているためにキャパシティがより重視されており、ネットワークに要求されるものが飛躍的に増加しています。キャパシティ設計では、セルの帯域幅を共有している多数のユーザを管理するために、より近接した位置により多くの AP が必要とされます。高まる配置密度も計画に入れる必要があります。
ユーザが独自に調査と計画を行う場合は、ツールが重要です。オンラインでまたはダウンロードして使用できる複数の無料ツールが存在します。ただし、専門的な結果が必要な場合は、専門的なツールを使用する必要があります。
無料ツールは、より小規模の、あまり複雑ではないプロジェクト向きのシンプルなソリューションを提供します。しかし、複数のフロア/複数の建物敷地でユビキタスなマルチメディア カバレッジを提供する必要がある場合は、成功させるために必要な要因のバランスを取ることができる優れたツールが必要になります。計画ツールは、今日使用されている無線技術およびアプリケーションとともに進化しました。設計要素およびアプリケーションに関する知識は、優れた計画を生み出すために必要です。
Cisco Prime Infrastructure には計画ツールが組み込まれており、CPI と多数の主要な調査および計画アプリケーション(Ekahau ESS、Airmagnet Pro Planner、Survey など)の間でマップと計画をインポートおよびエクスポートできます。
サイト調査の詳細については、『 Site Survey Guidelines for WLAN Deployment』を参照してください。
今、802.11ac に関するサイト調査を完了すれば、ネットワークの拡大と継続的な進化につれて繰り返し使用できる優れた情報を得ることができます。これを部分的にまたは全体として委託すべきかどうかは、プロジェクトの規模と Wi-Fi に関して持っている知識のレベルによって決まります。
RF 導入の計画
WLAN カバレッジのさまざまな導入の種類
ワイヤレス ネットワークの設計で設定する WLAN カバレッジの規模は、主として、必要なクライアントの使用状況および密度によって決まります。一部の例外を除き、すべての設計は再送信とデータ レートの変化を最小限に抑えつつ、優れたクライアント ローミングおよびスループットをサポートするように展開する必要があります。ワイヤレス ネットワークは、データ専用、音声、ビデオ、およびロケーション認識型サービス、または、今日ではより一般的になっているこれらの組み合わせに対して導入できます。優れた堅牢なキャパシティベース カバレッジをそれぞれ大規模に記述するという要件のために、現在では、これらのアプリケーション タイプ間の相違は非常に小さくなっています。ロケーション認識型サービスでは、優れたロケーションの三角測量と Hyper-Location 技術に関するガイドラインのために、いくつかの AP 配置基準が追加されます。リアルタイム マルチメディア(音声およびビデオ)アプリケーションには、双方向ライブ実装に関する異なる遅延要件があります。ただし、全般的には、すぺてのアプリケーションが、特定のエリアで期待されるユーザ数に関してアプリケーションを実行可能にするために必要な最小限のカバレッジ レベルを記述します。
キャンパスや企業での配備の大半については、カバレッジとキャパシティが主な関心事項であり、容易に達成できます。ショッピング モールやアパートなどの高密度クライアント実装または高干渉ロケーションの場合は、外部アンテナなどの追加機器を適切に導入して拡張する必要がある場合があります。アプリケーション固有のガイドライン、推奨事項、および設定の詳細については、次のガイドに記載されている詳細な情報を参照してください。
カバレッジ要件
ほとんどのアプリケーション固有カバレッジ ガイドラインでは、設計上の推奨事項として、適切な動作に必要なセル エッジでの信号レベルまたはカバレッジが示されています。これは、通常、-67 dBm などの負の RSSI 値です。この数値は -92 dBm のノイズ フロアで 25 dB の優れた信号対雑音比を前提としていることを理解することが重要です。ノイズ フロアが -92 dBm を超える場合、-67 dBm では、アプリケーションの機能を実行するために必要な最小データ レートをサポートするために信号が十分ではない可能性があります。
ロケーション認識型サービスの場合は -67 dBm の仕様に従ってネットワークを展開することで問題ありませんが、ロケーション認識型アプリケーションにとって重要なことは、クライアントがネットワークをどのようにヒアリングするかではなく、ネットワークがクライアントをどのようにヒアリングするかです。ロケーション認識型の場合、クライアントを計算に含めるには、3 個以上の AP において -75 dBm 以上のレベルでクライアントをヒアリングする必要があります(- 72 が推奨設計の最小値)。
クライアントは、カバレッジを計画する際の重要な考慮事項です。今日のクライアントは、あらゆる形とサイズで提供されており、結果として、特定の RF 信号に関するそれらのオピニオンに基づいて個々の実装が大きく異なる可能性があり、実際に異なっています。たとえば、セル エッジで調査に使用しているラップトップには -67 dBm と表示され、タブレットには -68 dBm と表示され、スマートフォンには -70 dBm と表示される可能性があります。これらはすべて非常に異なるオピニオンであり、各個人が使用するローミングおよびデータ レートに影響を与えます。このさまざまなオピニオンに対応するためのオーバービルディングにより、問題の発生しない設置が保証されます。測定する際は、アプリケーションをサポートするデバイスを使用することが最善のアプローチです。使用しているスマートフォンでは調査ツールよりも一般に 5 dB 低くなることを理解すると、設計のための優れたルール(調査ツールによる測定値がどのようなものであっても 5 dB 加算または減算するなど)を策定できます。その後、結果としての実装をテストし、調整します。
高密度クライアントのカバレッジ要件
ネットワークの成功を大きく左右する要因の一つは、高クライアント密度エリアです。前述のように、AP のセル境界に含まれるすべてのクライアントは、そのセルの潜在的な帯域幅(通信時間)を共有します。これを示す単純な計算式により、この概念をわかりやすく示すために「555」のルールを使用します。5 GHz で 1 Gbps を 200 の同時クライアントが均等に共有する場合、各クライアントは 5 ミリ秒の通信時間を要し、5 Mbps を受信します。
1000 Mbps/200 = 5 Mbps
1 秒/200 = 5 ミリ秒
実際には、セル全体にわたるさまざまな条件のために、より多くのクライアントでより多くのオーバーヘッド、衝突、およびエラーが発生します。そのため、一部のクライアントは 5 Mbps 超を得ることができますが、一部のクライアントではそれ以下になります。これは、セルのみの平均的な状況です。同様の条件下での優れた平均セル スループットは、得られるマイレッジの正確な予測を提供します。
より多くの帯域幅を提供することは、計算式を変更することと同じくらい単純であり、2 ~ 5 Mbps で 100 のクライアントをサポートする必要がある場合は、クライアント間で共有するより多くの帯域幅を提供するために、異なるチャネルの別の AP が必要になります。異なるチャネルを使用する限り、AP を追加して追加のキャパシティを得ることができます。チャネルの最初の再使用が、そのチャネルを使用して別の AP によってヒアリングされない限り、既存のチャネルを再使用して、より大きな規模でこれを達成することができます。
同じチャネル上の 2 個の AP が相互にヒアリングできる場合、それらはチャネルを均等に共有します(それぞれ均等にビジー状態であると仮定)。802.11 規格では、これを保証するために、競合メカニズムが仕様に組み込まれています。ただし、両方のセルがチャネルを共有(それぞれ 50 % の通信時間を取得)しているため、実際にはこれらのユーザのために帯域幅を増やしておらず、管理トラフィックを実質的に倍増させる 2 個の AP があるため、使用可能な通信時間がさらに減少します。
使用可能なチャネルが 3 つしかない 2.4 GHz では、選択できるチャネルが多い 5 GHz よりもはるかに早く、チャネルの再使用が問題になります。伝達特性も関係します。2.4 GHz では 5 GHz よりも遠くからヒアリングされるため、2.4 GHz オプションを使用したより狭い物理エリアで、再使用の数がさらに制限されます。
5 GHz では複数のチャネル幅を検討できます。チャネル幅の選択肢が広いほど、全体的なチャネルの数を減らすことができます(ただし、引き換えに、セルあたりのキャパシティが大きくなります)。
より大きなセルはより多くのユーザをカバーします。特定の物理エリアで帯域幅を増やすために、より小さなセルは、より大きなキャパシティを生み出すことになります。次の図では、各座席区画に 167 の座席があり(図 3-8 では座席が PAX として表されています)、1 個の AP で区画全体をカバーできます。または、より小さなセルを設計することにより、同じエリアで使用できる 4 個の AP を配置し、使用可能な帯域幅を 4 倍に増やすことができます。
図 3-8 ユーザとセル密度
ほとんどの企業の配備では、全方向性の内部アンテナ AP を使用して、より高密度の会議室などを適切に処理しています。シスコの RRM は、これを機能させるために必要なチャネルと電力を処理します。過度に多い AP が 過度に近接している特定のポイントでは、RRM は、可能な最適効率を実現するために設定しますが、使用可能なスペクトルが存在する必要があり、それがない場合は何もできません。AP の電力のみを大幅に削減することができ、その場合、全方向性アンテナ パターンが他の隣接 AP をヒアリングすることで、ユーザ エクスペリエンスが影響を受けます。AP あたり 2500 平方フィート以上でのカバレッジ レベルは、20/40 MHz チャネルを使用する場合 5 GHz で良好です。2500 平方フィートを下回る 2.4 GHz のセル密度に関する要件の場合は、AP の送受信パターンを物理的に制限し、有用なより小さいセルを得るために、指向性アンテナが必要になると考えられます。
高密度クライアント/AP 環境を管理および設定するために特別に開発された多数の機能が存在します。これらは、HDX(高密度エクスペリエンス)と呼ばれる機能グループに含まれます。各機能の詳細については、次の HDX 導入ガイドを参照してください。
『高密度エクスペリエンス(HDX)導入ガイド』
ローミングおよび音声のカバレッジ要件
クライアント ローミングにより、クライアントは、サービス/カバレッジの中断を最小限に抑えながら、ある AP のカバレッジ ゾーンから別の AP のカバレッジ ゾーンに移動できます。これは、モビリティの非常に重要な部分です。これを有効にするには、考慮すべき要素が多数あります。たとえば、クライアントがそのアソシエーションおよび認証を AP 間で移行させる方法や、それにかかる時間を考慮する必要があります。頻繁に見落とされる点は、ネットワーク設計自体です。クライアントがローミングするには、ローミング先となるものが存在する必要があります。クライアントが 1 つのセルのカバレッジから正常に離れ、遅延なしに別のセルのカバレッジ内でアソシエーションを確立するには、セルが適切なカバレッジによってオーバーラップしている必要があります。オーバーラップが小さすぎると、「スティッキ」クライアントを助長することになります。つまり、クライアントが、別の AP のカバレッジ エリアに移動した後も元の AP を保持し続けます。
ネットワーク カバレッジを設計する場合は、必要な信号範囲で取得しているオーバーラップの総量を考慮してください。オーバーラップは、カバレッジ エリア全体の 10 ~ 15 %(音声の場合は 15 ~ 20 %)である必要があります。会話はリアルタイムで行われるため、音声には特に影響があります。カバレッジが切れると、音声が途切れ、場合によっては通話が中断されます。オーバーラップを計算する簡単な方法は、-67 dBm に到達する AP からの距離を測定し、その距離を 1.4 倍(15 ~ 20 % の場合)または 1.3 倍(10 ~ 15 % の場合)にして、それが次の AP までの距離であるかどうかを確認します。
データ レートも重要です。使用可能なセル サイズは、データ レートが低くなると増加し、データ レートが高くなると減少します。より高いデータ レートは、より高い SNR を必要とします。また、ノイズ フロアは論理的に一定であるため、クライアントが信号(AP)に近づくほど、SNR が高くなり、結果としてデータ レートが高くなります。設定で最小データ レートを適用できます。その場合、クライアントが特定のデータ レートをサポートできなくなると、そのクライアントは移動する必要があります。
図 3-9 は、セルのオーバーラップと、データ レートがセル サイズに与える影響を示しています。
図 3-9 セル密度と異なるデータ レートでのオーバーラップ
適切な物理設計により、物理レイヤでのローミングが可能になり、サポートされます。クライアントのみがローミングするタイミングを決定します。また、この決定はクライアントによるネットワークの監視に基づいて行われます。クライアントがネットワーク インフラストラクチャの監視に基づいてより適切な決定を行うために特に役立つように、802.11 仕様に複数の改訂版が追加されました。ローミングと優れたローミング移行を実現するシスコのハードウェア/ソフトウェアの設定の詳細については、次のガイドを参照してください。シスコでは、802.11r、802.11k、および 802.11v をサポートしています。これらは、クライアントが適切な決定を行う機能を支援するとともに、設計目標を実現するためにインフラストラクチャからのいくつかの制御を可能にします。
ロケーション認識型のカバレッジ要件
ロケーション認識型展開は、他のタイプと少し異なります。この展開の目的は、クライアント、タグ、および IOT センサーが特定のマップ上に存在する文脈において、それらの適切なロケーション解決を提供することです。この情報は、複数の AP によって取得される最も基本的な形式のクライアント RSSI 測定値から得ます(クライアントの位置を三角測量するために少なくとも 3 個の AP が必要です)。AP を展開するために選択するパターンは、クライアントの「位置」を正確に特定するネットワークの機能には大きな影響をおよぼす可能性があります。
適切なロケーション解決のために、AP は、境界や角を定義する AP とともに互い違いのパターンでレイアウトされます。両方のセクションの中央に引いた直線上の AP を使用してカバレッジを取得できます。ただし、これでは、すべてのロケーションのクライアントをヒアリングし、三角測量するために十分な AP が提供されません(3 個の AP が必要であることを思い出してください)。このフロアに関するカバレッジおよびキャパシティ要件では、最初から多数の AP が必要です。このため、非常に高い確率で、「適切なロケーション計算を行うために必要なものをすでに持っている」というカバレッジ要件が存在します。
図 3-10 2.4 GHz の単一フロア ロケーション AP 配置の例
「Best Practices—Location-Aware WLAN Design Considerations」 は必読の章です。また、設計の物理要件は変化していないため、依然として非常に大きな関連性があります。『 Wi-Fi Location Based Services 4.1 Design Guide 』は、その全体が理論の優れた参考書となっています。特に、最初の章である「Location Tracking Approaches」によって技術をよく理解できます。
フレキシブル ラジオ アーキテクチャ(FRA)無線とカバレッジ要件
シスコの最新のイノベーションであるフレキシブル ラジオ AP モデル 2800/3800 は、従来のデュアルバンド無線のいくつかの課題を解決するように設計されています。上記の各カバレッジ シナリオでこれらの無線を使用すると、ソリューションが向上します。
高密度は、単一のアクセス ポイントから 2 つの独立した 5 GHz チャネルを可能にする 2800/3800 のデュアル 5 GHz の能力に影響されます。
- 内蔵アンテナ モデルは、マクロ/マイクロ セルまたはセル内のセルとして実装されます。FRA RRM ロジック(「RRM」の項で詳しく説明します)は、2 つのセル間でクライアントをバランスさせるロジックも提供します。これにより、セル境界内の帯域幅が倍増します。2800/3800 I モデルのセル境界は、古い 2700/3700 および 2600/3600 モデルとほぼ同じサイズです。
- E モデルまたは外部アンテナ モデルは、2 つの 5 GHz マクロ セルを提供できます。これにより、同じイーサネット ケーブル/スイッチ ポートを使用して 2 つの 5 GHz セルを獲得する実装が可能になります。2 番目のアンテナとそれに取り付ける Dart コネクタが必要ですが、両方合わせても追加のアクセス ポイントとスイッチ ポート(さらにアンテナが必要になります)よりはるかに安く上がります。これは特に既存の高密度エリアを更新する場合に便利です。ほとんどの場合、AP 以外のすべてを再利用でき、5 GHz のキャパシティを劇的に増やせるからです。
音声カバレッジ :AP2800/3800 はどちらも RRM の FRA(フレキシブル ラジオ アサインメント)アルゴリズムに参加します。FRA は、2.4 GHz と 5 GHz の正しいバランスを計算し、2.4 GHz 無線の過剰利用を防止します。一般に、音声は 5 GHz でのみ実装する必要があります。FRA を使用すると、5 GHz の高密度と 2.4 GHz 無線の適切なサイズと密度を同時に達成できるため、この実装に大いに役立ちます。FRA には、フレキシブル インターフェイスをモニタリング ロール(両方の帯域)に配置できるようにすることによって 5 GHz の過剰密度を防止する機能が組み込まれています。これにより、RF メトリック(RRM 観測、ロケーション情報)の分解能が高まります。
ロケーション サービス カバレッジに関する考慮事項 :AP3800/2800 モデルはどれもロケーション解決を大幅に向上させます。I/E/P モデルでは、フレキシブル ラジオをモニタ ロールに変換することで両方の帯域での滞留時間を大幅に増やし、ロケーション アルゴリズムの入力をより多く生成します。これも FRA アルゴリズムによって管理されます。FRA は、2.4 GHz を正しいサイズに設定し、冗長無線をモニタ モードにする機能を使ってロケーション解決を実際に向上させます。
(注) 非フレキシブル AP では、過度の 2.4 GHz 無線に対する唯一の解決策は無線を完全に無効にすることです。これを行うと、2.4 GHz の可視性とロケーション解決が低下します。2800/3800 H モデルは、AoA 計算をサポートするアンテナを備えた専用の AP で、ロケーション解決と精度を大幅に向上させることができます。H モデルはまた、独自の BlueTooth 無線とアンテナをホストして BLE アプリケーションをサポートします。このため、あらゆるロケーション ユース ケースに対応できるクラス最高の無線です。お使いのアプリケーションが非常に精度の高いロケーション結果を必要としている場合は、ぜひこの無線を検討してください。
電力レベルとアンテナの選択
電力レベルおよびアンテナ設計の選択は、AP の配置/カバレッジの結果を決めるうえで密接に関連しています。これらの 2 つの内容によって、環境内の所定の場所のどこでどれくらい電波が強いのかが決まります。必要なカバレッジ エリアを作り出すのに適切なアンテナを選択することに加え、電力レベルを制御し、最適なチャネルおよび電力計画を提供する RRM の使用を推奨します。詳細については、本書の RRM に関する項を参照してください。
アンテナは、無線システムに対して、以下の 3 つの基本的な特性を示します。
- ゲイン:アンテナが放射する電力の密度を、すべての方向に均等に RF エネルギーを放射する理論上(等方性)のアンテナと比較して示すための尺度。ゲインは受信信号にも影響を与えます。レシーバに提供される信号を増大させることにより、より弱いクライアント デバイスを補助することができます。
– 前後比(FTB):ゲインの反対は信号の拒否です。アンテナのゲインの反対方向はアンテナの焦点よりも感度が低くなります。この特性を利用して、たとえば、アンテナの背後の不要な信号からセルを隔離することができます。
- 指向性:アンテナ伝送パターンの形状。アンテナの種類によって、放射パターンも異なり、ゲインの方向や大きさも変わってきます。高い指向性を持つアンテナは、非常に厳格なビーム パターンを生成します。焦点のエリア外では信号が急速に減衰します。これにより、より多くのセルを同じ物理スペースに、干渉なしに配置できます。
- 偏波:電界の方向を示します。RF 信号は電界と磁界の両方を持ちます。電界が垂直である場合、電波は垂直に偏波されます。
アンテナによく似た例に、懐中電灯の反射器があります。反射器が光線を特定の方向に集め、強めるのは、無線システムの RF ソースに対して皿型のパラボラ アンテナが行っていることとよく似ています。ただし、アンテナは AP の耳と口の両方であるため、特定のアンテナの特性は送受信の両方に作用します。異なる目的に使用できるように、多数の異なるアンテナ設計が存在します。比較的よく知られている設計の一部を、次の図 11 に示します。
図 3-11 アンテナ設計のタイプ
ゲインおよび指向性によって、範囲、速度、および信頼性が決まります。偏波は信頼性とノイズの分離に影響します。
アンテナの選択の詳細については、『 Cisco Aironet Antennas and Accessories Reference Guide』を参照してください。
全方向性アンテナ
全方向性アンテナは、等方性アンテナと比較すると、放射パターンが異なっています。等方性アンテナは理論上のもので、物理的なアンテナはすべて等方性アンテナとは異なります。等方性アンテナの放射パターンの形におけるいかなる変化もゲインとして発生し、方向性が増大します。全方向性のダイポール アンテナは、水平面では 360 度、垂直面では 75 度のほとんど対称的な放射パターンを持ちます(ダイポール アンテナが垂直に立てられていることを前提としています)。全方向性アンテナの放射パターンは、通常、ドーナツのような形をしています。このため、方向性を持ちます。特定の全方向性アンテナの定格ゲイン(dBi 単位)が大きいほど、エネルギーが集中化し(通常、垂直面において)、それが方向性になります。次の図 12 に示されている等方性と全方向性のダイポール アンテナの比較を参照してください。側面からの図であることに注意してください。
図 3-12 等方性アンテナと全方向性アンテナ
AP 1140 以降の最新の内部アンテナ AP モデルは、複数のトランスミッタとレシーバを備えた内部アンテナ スタブを使用します。単純なダイポール アンテナとは異なり、これは、改善されたドーナツ形のパターンを生成します。次のアンテナのプロットでは、仰角平面と、エネルギーが主に図 13 の下方に集中している様子に注意してください。
図 3-13 Cisco AP 2600i の 2.4 GHz と 5 GHz の放射パターン
これにより、AP の背後(ほとんどの設置で天井に向けられている部分)が最も感度が低くなります。
全方向性アンテナは、ある程度は、よく機能し、導入も簡単です。増大するキャパシティ要件に対応するために AP の密度が高まっている場合は、自己干渉によるチャネル使用率の増加が見られます。これは、最大カバレッジに合わせてアンテナ パターンが設計されているために発生します。AP あたり 3000 ~ 6000 平方フィート(約 280 ~ 560 平方メートル)のカバレッジを内部アンテナで管理でき、カバレッジ要件が非常に小さいかこれより高密度である場合は、指向性アンテナを考慮する必要があります。
指向性アンテナ
指向性アンテナは全方向性アンテナとは異なり、エネルギーを特定の方法で集中させ、異なるカバレッジの目標を達成します。一般に、指向性アンテナは、特にゲインのため(電力を増大させるため)に使用されると想定されています。このアンテナはその目的でも使用され、より大きな距離を実現しますが、より多くの場合に、Wi-Fi において送受信セルのサイズ(と形)を制御するために使用されます。
現在のシスコの屋内 AP(3600e、2600e、3700e、2700e)では、アンテナの選択肢はすべて、異なるカバレッジ距離用に設計されたデュアルバンド(各アンテナが 2.4 GHz と 5 GHz をカバー)のパッチ タイプ アンテナです。最も一般的なものは次の 3 つです。
図 3-14 シスコの高密度用途向けの指向性アンテナ
各アンテナは特定の目的を念頭に置いて設計されています。アンテナの選択に関して考慮すべき項目の 1 つは、ビーム幅です。ビーム幅はアンテナのカバレッジ エリアを記述します。ただし、そのカバレッジのエッジがどれほどハードまたはソフトかは記述しません。このため、プロットのアンテナのパターンを確認する必要があります。
次のプロットは、AIR-ANT2566D4M-R アンテナの 1 つのアンテナのものです。このアンテナは、一般的なエリアに優れたカバレッジを提供するように設計されています。2.4 GHz でのこのアンテナのビーム幅は 105o X 70o であり、アンテナのピーク ゲインが 3 dB まで下降するポイントを記述します。指向性アンテナで重要なことは、この 3 dB の後に起こることです。次のアンテナ プロットでは、定格ビーム幅で青色の印が付いていることに注意してください。ゲインは、定格ビーム幅の後に鋭角に下降しています。これは、より大きなキャパシティを得るために、より多くの AP を相互により近接させて配置する場合に、何が起こる必要があるかを正確に示しています。
図 3-15 AIR-ANT2566D4M-R アンテナのアンテナ プロット
アンテナがヒアリングできない場合、AP に干渉しない可能性があります。2.4 GHz には 3 つのチャネルしかないため、高密度展開でのチャネルの再使用にはすでに問題があります。適切なアンテナを使用すると、セル サイズを縮小し、より多くの無線を相互により近接させ、2.4 GHz ユーザ向けの設計で適切なキャパシティを提供できます。5 GHz にはより多くのチャネルがあります。ただし、20/40/80 MHz のチャネル幅では、より早くチャネルを使用し尽くしてしまい、セルの分離でも問題が多くなります。
指向性アンテナを使用して解決できるその他の問題には、ショッピング モールなどの高干渉環境が含まれます。ショッピング モール内の大半の店舗は何らかの種類の Wi-Fi を設置しており、これが Wi-Fi の干渉を発生させます。指向性アンテナを使用し、AP の耳の焦点を内側に合わせて、アンテナの背後の受信感度を低下させることにより、近隣の店舗から自分の店舗を分離することができます。これは、アンテナの前後比によって発生する現象です。ちょうど、手をカップの形で耳に当てて遠くの音を聞くことと似ています。この動作により、音響エネルギーの焦点が耳の中になりますが、耳への周囲のノイズを遮断することにもなります。このため、信号対雑音比が改善され、音が明瞭に聞こえるようになります。AP に指向性アンテナを配置すると、その耳が焦点を持ち、同じように「ノイズの少ない明瞭な音が聞こえる」ようになります。
新しいアンテナ設計
- 2800/3800 E シリーズの外部アンテナ コネクタは、以前のアクセス ポイントのアンテナ コネクタと同じです。アクセス ポイントをデュアル バンド(2.4 および 5 GHz)動作(デフォルト モード)で使用する場合、動作に違いはありません。RF 範囲とセル サイズは以前の AP 2700 and 3700 シリーズに似ているため、新しいサイト調査を実施する必要はありません。
- 以前の外部アンテナ バージョンとは異なり、新しい 2800 および 3800 シリーズ アクセス ポイントは、デュアル 5-GHz 動作の機能をサポートします。このモードでは、外部アンテナ モデルでスマート アンテナ コネクタを使用する必要があります。なぜなら、追加の 5-GHz 無線は、プライマリ 5-GHz 無線によって使用されるアクセス ポイントで同じ上部アンテナを使用できないからです。
- スマート アンテナ コネクタを取り付けると、XOR 無線(ソフトウェアで無線 0 として定義されている無線)は、その RF をスマート アンテナ コネクタに切り替えます。
- スマート アンテナ コネクタは、使用されているアンテナのタイプを検出でき、16 本のデジタル回線と 4 本のアナログ RF 回線を備えています。
スマート アンテナ コネクタを示す図
スマート アンテナが取り付けられていない場合、ユニットの上のアンテナは Dual Radiating Element(DRE)モードになります。スマート アンテナが取り付けられている場合、XOR(モードに応じて 2.4 または 5 GHz)はスマート コネクタから発信されます。このモードでは、XOR 無線(モニタ モードでない限り)は、1 帯域の 2.4 GHz またはその他の帯域の 5 GH に設定することしかできません。これは Single Radiating Element(SRE)モードです。
アンテナ制御(デフォルトで、スマート アンテナ コネクタが使用されている場合)
スマート コネクタと一緒に設計されている新しいアンテナに加え、RP-TNC コネクタを使用する従来のアンテナもスマート コネクタを使用して 2800/3800e シリーズに取り付けることができます。
シスコ スマート アンテナ コネクタ P/N AIR-CAB002-DART-R
このトピックの詳細については、次の URL にある AP-3800 導入ガイドを参照してください。
https://www.cisco.com/c/en/us/td/docs/wireless/controller/technotes/8-3/b_cisco_aironet_series_2800_3800_access_point_deployment_guide.pdf
Hyperlocation モジュールを備えた 3600/3700 シリーズを使用したスマート コネクタ
3700 シリーズのスマート アンテナ コネクタは少し動作が異なります。Hyperlocation モジュールが 3600 または 3700 シリーズ アクセス ポイントに取り付けられている場合は、特別なアンテナ アレイを使用してロケーション精度を高めることができます。Hyperlocation アレイは、2800 および 3800 シリーズと互換性がありません。
無線リソース管理(RRM)
シスコの RRM(無線リソース管理)は、すでに長い歴史を持ちます。一般にはほとんど知られていないことですが、RRM の一連のアルゴリズムは、4.1 以降、コードのリリースのたびに更新されています。これらのアルゴリズムの変更頻度には正当な理由があります。質問が変化し続けるため、回答も変化し続ける必要があるのです。技術は、単一の 20 MHz チャネルでの単純なカバレッジに基づく Wi-Fiネットワーク動作のバランスを取ることから、同じスペクトルですべてが相互動作する、20 MHz、40 MHz、80 MHz、そして近い将来、160 MHz のチャネルおよび電力ソリューションに対応することに移行しました。また、ほとんどの場合、後方互換性とプロトコルの混在も考慮する必要があります。組織が標準化されていても、ほぼ確実に、標準化されていないネイバーと内部リソースが存在します。
RRM の機能
RRM は、4 つのアルゴリズムで構成されます。
1. RF グループ化
2. DCA(動的チャネル割り当て)
3. TPC(送信電力制御)
4. CHDM(カバレッジ ホールの検出および軽減)
5. FRA(フレキシブル ラジオ アサインメント)(AP 2800/3800 などの FRA ハードウェアを管理します)
RRM は大きなテーマですが、ユーザの介入をほとんどまたはまったく必要とせずに RF 環境を動的な方法で管理するために設計されました。アルゴリズムの簡単な説明は、設定作業を理解するために役立ちます。RRM のデフォルト設定は、一般に、初期設定としては最適です。新しいコントローラでは、0 日目セットアップ ウィザードを使用して、作業中の展開タイプを選択することにより、多くの設定を最適化できます。高度な設定も手動で行うことができます。
RF グループ化
RF グループ化アルゴリズムは、選出または指定されたリーダーのもとでの識別およびグループ化を担います。同じネットワークに属しているすべてのリソースを(WLC も AP も同様に)識別およびグループ化します。これは RF グループを形成し、論理設定ドメインになります。ネットワーク リソースは、コントローラの初期設定で入力された RF グループ名によって識別されます。グループ名は、同じネットワーク上のすべての WLC によって共有されます。コントローラに接続されている AP は、コントローラからグループ名を学習した後、無線により、それを他の AP がヒアリングできる NDP メッセージでブロードキャストし、RF ネイバーがどのような状態かをコントローラに報告します。ノイズ、干渉、チャネル使用率、そのネイバーが特定の AP から見てどの程度近く(遠く)にあるかが報告され、RRM を構成するアルゴリズムによる後続のアクションのために保存されます。
(注) RRM 設定はすべて RF グループ リーダーでのみ実行され、メンバー コントローラで行われた設定は実行中の RRM アルゴリズムに影響せず、そのコントローラ/帯域がネットワークの RF グループ リーダーになった場合にのみ有効になります。
自動 RF グループ化
RF グループ化は、デフォルトでは自動的に実行されます。また、複数コントローラ構成では、同じ RF グループに属しているどのコントローラも、1 つ以上の WLC を RF グループ リーダーとして指定する選出プロセスに参加します。2.4 GHz(802.11b、g、n)帯域および 5 GHz(802.11a、n、ac)帯域にはそれぞれ独自の RF グループ リーダーが必要です。両方の RF グループ リーダーは同じ物理コントローラ上に存在できます。ただし、両方の RF グループ リーダーは必ずしも同じ物理コントローラ上に存在していません。また、FRA が導入されるまでは、両方の RF グループ リーダーが同じ物理コントローラ上に存在する必要があるという要件は実際にはありませんでした。FRA では、両方の帯域が RF グループ リーダーとして指定された同じ物理 WLC 上に存在する必要があります。今後のベスト プラクティスは、静的 RF グループ化手法を使用して大規模展開を制御できるようにすることです。展開がコントローラの単一 HA ペアを基盤としている場合は、すでに両方の帯域が同じ物理 WLC 上に存在します。そうでない場合は、静的 RF グループ化を使用してください。
自動 RF グループ化を効果的に機能させるには、同じ RF グループに含める各コントローラにアクティブ AP が接続されていて、それらの AP が少なくとも 1 つの別のコントローラの AP をヒアリングできる必要があります。最初に、グループとして形成するコントローラに AP を接続する必要があります。そうしないと、各コントローラは、それ自体が RF グループ リーダーであると想定します。サイトごとに単一のコントローラを組み込むようにし、それらのサイトが地理的に離れている場合、一方のサイトの AP がもう一方の地理的に離れたサイトの AP をヒアリングしないため、各コントローラは各サイトの両方の帯域でそれ自体のグループ リーダーになります。
静的 RF グループ化
静的 RF グループ化により、ユーザは RF グループ リーダーを選択し、グループ メンバーを手動で割り当てることができます。すべての WLC は、相互に有線ネットワーク パスを持つ必要があります。無線コンポーネントが存在しないため、アクティブ AP は静的グループを形成する必要はありませんが、コントローラ間の有線接続は必須です。RF グループが作成されると、RRM は無線メトリックを使用して同様に動作します。
(注) 静的 RF グループ化を使用することはベスト プラクティスというわけではありませんが、使用することを強く推奨します。常に RF グループ リーダー上でアクティブな状態を維持することは混乱を招く場合があるからです。この混乱は、グループ内の WLC が増えるにつれて大きくなります。
RF グループ リーダーの WLC 階層
多数のコントローラ モデルが存在しますが、一部のモデルは他のモデルよりも高機能です。自動モードと静的モードの両方で、2500 シリーズ コントローラが 8520 コントローラを差し置いてグループ リーダーになることを防止する階層が適用されます。最も高機能なコントローラが、RF グループ リーダーとして選択される必要があります。
RF グループ リーダーには、RF グループと RRM を管理するために使用されるすべての測定、設定、および計算が送信され、保存されます。RF グループ リーダー上の WLC の RRM 設定は、RRM が RF グループに対して使用する設定です。すべてのコントローラ上の RRM 設定を同期化することが重要です。自動 RF グループ化モードでは、いくつかの理由から RF グループ リーダーが変更される可能性があります。設定が異なる場合、リーダーが変更されると、RF グループの動作が変化します。
RF グループ リーダー レベルでの設定は、RF グループ全体に影響を与えるため、グローバルと見なされます。RRM では RF プロファイルを使用できます。これを作成して、個別の AP グループ(AP の機能または物理属性別のサブ グループ)に適用すると、複数のコントローラに伝達され、グローバル設定が上書きされるため、異なる RF 環境またはロールのローカリゼーションが可能になります。高クライアント密度モデル設計とカバレッジ モデル設計では、正常に機能するために、少なくとも異なるデータ レートと TPC しきい値が必要です。RF プロファイルは AP グループ(たとえば、異なるカバレッジ モデルの一連の AP)に適用でき、それぞれに個別の設定を適用できます。
RRM の RF グループ化アルゴリズムの仕様の詳細については、『 Radio Resource Management White Paper RF Grouping Algorithm 』を参照してください。このドキュメントには、グループ化のメカニズムや無線測定のアクティビティおよび間隔に関する説明が記載されています。
RF グループ化の設定
WLC GUI で、[Wireless]、[802.11a/n/ac] または [802.11b/g/n]、[RRM]、[RF Grouping] の順に移動します。
(注) 設定に関する情報が例として提供されており、設定を開始するのに役立ちます。RF グループ化に関する情報は、新しい製品や機能の導入とともに必然的に変化します。そのため、特定のニーズに関する詳細な分析については、『Radio Resource Management White Paper - RF Grouping Algorithm』にある本書の最新バージョンを参照することを強く推奨します。
図 3-16 RRM RF グループ化 UI の設定
1. Group Mode:RF グループ化アルゴリズムのデフォルト モードは [AUTO] です。これは、ほとんどの配備に適しています。共有 RF ドメインで動作する多数のコントローラがある場合は、リーダーを選択し、メンバー WLC を追加することによって、[Static] モードを使用します。[Static] を選択する場合は、RF グループ内で設定できる AP の数に実際の制限があります。5500 シリーズまでのすべてのコントローラの場合、この制限はライセンス付与されている AP の数の 2 倍です。75xx および 85xx の場合の制限は 6000 個の AP です。同様の空間およびビルディングの場合は、AP とコントローラのグループをともに保持するように RF グループ化を設計します。RF グループにとって重要なことは、相互にヒアリングでき、一緒に設定する必要のある AP が、同じ RF グループに含まれ、同じ RF グループ リーダーによって管理される必要があるということです。地理的に離れた施設については、新しい RF グループを作成します。
2. Restart:モードを変更し、変更内容を適用したら、[Restart] ボタンを使用してグループ化アルゴリズムを「再起動」します。
3. 情報欄:表示されているコントローラのステータス(現在のモード、現在の RF グループ リーダー、プロトコル バージョン、アルゴリズムの間隔、現在の AP、およびメンバー コントローラ数)をユーザに通知します。プロトコル バージョンは、すべてのバージョンを同時に使用できるわけではないため重要です(『 Cisco Wireless Solutions Software Compatibility Matrix 』の「IRCM」の項を参照)。
4. RF Group Members:メンバー コントローラを静的リーダーに追加するために使用されます。
5. 現在のメンバーとステータスの一覧:メンバー ステータス メッセージの完全な一覧については、『 Radio Resource Management White paper RF Grouping Algorithm』を参照してください。
DCA(動的チャネル割り当て)
動的チャネル割り当ては、スペクトルのモニタリングと、AP を配置する最適なチャネル計画の選択を担当します。干渉は最も大きな関心事項です。干渉が減ると、使用できる帯域幅(通信時間)が増えるからです。これを実行するために、DCA は、次の 4 つのパラメータをモニタします。
- 信号:使用しているネットワーク/RF グループによって作成されるすべての Wi-Fi 信号。
- ノイズ:Wi-Fi として識別されないすべての RF 信号。これには、弱いために復調できない衝突およびパケットも含まれます。
- 干渉:不正なデバイスまたは使用している RF グループに含まれないデバイスからのすべての Wi-Fi 信号。
- 負荷:RF グループ内の AP の相対的なチャネル使用率。
ユーザは、DCA 設定の上記のメトリックに優先順位を付ける方法を制御できます。4 つのパラメータはすべて常に使用されますが、計算時のウェイトを調整できます。DCA は、AP ごとに観察される上記の 4 要素に基づいて各チャネルを採点し、その AP がその環境で動作するために最適なチャネルを決定します。
DCA の選択には、802.11n および 802.11ac AP の場合にチャネル帯域幅が含まれます。これにより、設定される動作チャネル幅が選択されます。20/40/80 MHz の選択が行われる場合もあります。動作環境と設計に自信がない場合、ほとんどの企業ロケーションでの現在のベスト プラクティスは、40 MHz(2 つの 20 MHz チャネル)動作です。80 MHz チャネルを使用すると、チャネルごとに 4 つの 20 MHz チャネルが消費され、インフラストラクチャで不要な干渉が発生する可能性があります(これに関する特別な設計を行っていない場合)。
DCA は、接続されている各 AP の規制を認識し、ローカル ルールに違反する恐れなく、複数の国およびドメインを管理できます。また、DCA は、レーダーに関して、すべての DFS チャネルをモニタします。これにより、使用可能なチャネルが管理され、レーダーが検出された場合に代替チャネルが選択されます。RF グループ内のすべての AP に関する決定は、RF グループ リーダー レベルで行われ、関連 AP を設定するためにローカル コントローラに返送されます。
チャネルの変更により、アクティブなネットワークが中断される場合があります。このため、DCA には次の 2 つの主要な動作モードがあります。
通常の動作時には、起動後に正常な初期チャネル計画が実行されていることが想定されています(詳細については、本書の「起動モード」を参照)。その後、DCA は安定動作状態のヒステリシスを適用することにより、チャネルの変更を多少抑制します。このヒステリシスは、AP があるチャネルに切り替わることを許可する前に、そのチャネルがどの程度優れている必要があるかを決定します。ヒステリシスは、ユーザが選択できます。デフォルトは中程度で、一般にはこれが適しています。Wi-Fi には、その性質上、バースト性があるため、ほとんどが短時間ですが RF の状態が頻繁に変化する可能性があり、実際に変化します。短時間のバーストに基づくチャネル変更により、頻繁に中断をともなうチャネル変更が発生します。DCA は、傾向に基づいてネットワーク全体のチャネル計画を管理します。ネットワーク全体にわたる変更を、分離されたまたは短時間のピーク イベントに基づけることにより、クライアントに関する問題が発生する傾向があります。RRM は、重大な問題に対する高い感度を維持し、緊急用の非常に迅速な変更を管理できます。このルールの注目すべき例外については、この後の、DCA 設定の EDRRM に関する説明を参照してください。
起動モードでは、ヒステリシスがないことが想定されています。これは、初期チャネル計画の積極的な選択と、選択したスペクトルでの無線カバレッジの拡大を目的としています。
ネットワークに次のような変更を加える場合には、これを覚えておくことが重要です。
- 追加の無線を追加する。
- チャネル幅の割り当てを変更する(802.11n または 802.11ac 無線を追加する)。
- サービスから無線を削除する。
これらのことはすべて、動作環境の大きな変更を意味します。起動モードを呼び出すと、新しい疑問に対する最適なソリューションが確保されます。RRM は通常の状況でこれらに関する調整を行いますが、適用されたヒステリシスによってそれを実行します。そのため、新しい動作環境の場合は、最適な回答にならない場合があります。
DCA のデフォルト設定は非常に適切です。今日のネットワークの大半がこれらの設定で動作しています。デフォルトの変更は、問題を解決するためにのみ理解し、実行する必要があります。
DCA の設定
DCA のデフォルト設定は次のとおりです。デフォルト設定は、ほとんどの配備に適しています。例外については、後で説明します。DCA の設定画面を次に示します。ここでは、例として、5 GHz の画面が示されています。2.4 GHz の画面との大きな違いは、次のチャネル幅の選択(4)です。2.4 GHz では、束ねられたチャネルはサポートされません。複数 AP 環境では、これを実際に使用するための十分なチャネルまたはスペクトルがないためです。
(注) 次の設定に関する説明は、DCA の機能のサブセットです。詳細な説明については、『Radio Resource management White Paper - DCA』を参照してください。この文書には、機能とバージョンに関する最新のコンテンツが記載されています。
図 3-17 5 GHz での DCA の設定
DCA の設定要素
1. Channel Assignment Method:DCA を実行するかどうか、およびその実行方法を制御します。デフォルト設定は [Automatic] です。
- Automatic:DCAは 10 分(600 秒)ごとに実行されます。
– DCA の間隔は、10 分~ 24 時間の範囲で変更できます。また、アンカー時間を選択できます。選択されるアンカー時間は 0 ~ 23(24 時制の時間を表す)です。アンカー時間を [3](午前 3 時)に設定し、間隔を [4] に設定すると、午前 3 時から 4 時間ごとに DCA が実行されます。
- Freeze:DCA の実行が完了した後に、チャネル計画が凍結され、DCA は継続して実行されますが変更は加えられません。[Invoke Channel Update Once] ボタンを押すと、チャネルが 1 回更新され、チャネルの変更と「次回に」スケジュール設定されている DCA の実行が組み合わせて実行されます。これは、オンデマンドで [Freeze] に優先されます。ただし、1 サイクルのみで、そのサイクルについてのみチャネルの変更が許可されます。
- OFF:DCA 機能をオフにします(非推奨、以下を参照)。
2. これらの選択により、DCA が何をどのように決定するかを調整できます。
- Avoid Foreign AP interference:デフォルトでは有効になっています。これは、ネイバーの不正 AP をカウントし、DCA のそれらへの対処を促します。輻輳エリアにいる場合は、この機能を無効にする方が適切である場合があります。輻輳ネイバー環境では、これにより、チャネル変更が何度も開始される可能性があります。ただし、最初はデフォルトを試みてください。
- Avoid Cisco AP load:デフォルトでは無効になっています。これは、使用している(シスコの)AP 上のみの負荷を測定します。この機能により、DCA は条件の影響を受けやすくなり、「より多くの」チャネル変更が促されます。実際には、一時的な負荷ピークの間のクライアント エクスペリエンスが改善されます。
- Avoid non-802.11 noise:デフォルトでは有効になっています。これにより、802.11 として復調できない信号と定義されるノイズの寄与に優先順位が付けられます。これには、衝突のために理解不能な 802.11 となっていたり、単に弱いために適切に復調できない多数のノイズが含まれます。これは常に有効にする必要があります。
- Avoid Persistent Non-WiFi Interference:デフォルトでは無効になっています。CleanAir AP がある場合にこれを有効にすると、非 Wi-Fi の永続的信号(電子レンジ、アウトドア ブリッジング、ビデオ監視カメラなど)の寄与が可能になるため、有効にすることを推奨します。CleanAir がそのようなデバイスを検出すると、そのデバイスがそのときにアクティブでなくても、AP を検出するために影響を受けるチャネルにバイアスを追加できるようになり、より適切なチャネル選択が促されます。電子レンジは昼休みに頻繁に使用され、午後の遅い時間にも再び頻繁に使用されます。これにより、RRM は、365 日 24 時間干渉をヒアリングする可能性のあるデバイス上の影響を受けるチャネルを記憶し、それらのチャネルを避けるようになり、その時間に他の検索が行われなかった場合は期限切れになります。
3. Channel Assignment Leader:この帯域のグループ リーダーの MAC アドレスと IP アドレスを識別します。[Last Auto Channel Assignment] には、DCA が実行されてから経過した時間が秒単位で示されます。
4. DCA Channel Sensitivity:デフォルトは [Medium] です。この設定により、チャネルの変更を決定するために使用されるヒステリシスが決定されます。DCA は、現在のチャネルの得点を、使用可能な他のすべてのチャネルと比較します。このメトリックを満たすか超えるチャネルがある場合は、その優れたチャネルに変更します。[Medium] は、2.4 GHz では 10 dB、5 GHz では 15 dB 優れていることを指定します。どちらの帯域についても、[Low] は 5 dB(より積極的)、[High] は 20 dB(より消極的)です。これにより、チャネルを変更する場合にそのチャネルがどれだけ優れている必要があるかが決定されます。
5. Channel Width:デフォルトは [20 MHz]です。これにより、グローバル チャネル幅が選択されます。この選択は、RF プロファイルや個別の無線レベルで上書きされる可能性もあります。これは、802.11n および 802.11ac 対応 AP にのみ影響を与えます。[80 MHz] を選択することにより、802.11n 無線は 40 MHz に設定されます。
6. Avoid check for non-DFS channels:デフォルトでは無効になっています。DFS では、DCA チャネル一覧内に少なくとも 1 つの使用可能な 非 DFS チャネルが存在する必要があります。ETSI 規制のもとで屋外 AP を配備する場合は、屋外で使用可能な非 DFS チャネルが存在しないため、これを選択することにより、必要な 非 DFS チャネルの適用が防止されます。
7. DCA Channel List:上側には、現在設定されているチャネルが示されます。このリストにより、チャネルを選択および選択解除できます。チャネルを追加または削除するには、変更を加える前に帯域(2.4 GHz または 5 GHz)を無効にする必要があります。
8. Extended UNII-2 channels:デフォルトでは無効になっています。有効にすると、チャネル 100 ~ 144 が DCA チャネル一覧に自動的に追加されます。これは現在のベスト プラクティスです(特に 802.11n/802.11ac 40/80 MHz チャネルを選択する場合)。
9. Event Driven RRM:EDRRM はデフォルトで有効になっています。有効にすることがベスト プラクティスです。EDRRM により、RRM は CleanAir 電波品質(AQ)で機能できるようになり、分類された深刻な干渉が発生した CleanAir AP が、チャネルを変更して干渉を緩和することが可能になります。「深刻な」とは、非 Wi-Fi の干渉源が 100 % のデューティ サイクルでブロードキャストされることによって、その AP のチャネルが完全にブロックされ、クライアントまたは AP のどちらもが送信できない(通信の前にリッスンするが、リッスンのたびにエネルギーをヒアリングするため)状況を意味します。決定は、DCA とは無関係に AP で行われます(30 秒以内に行われます)。RRM は、この変更を認識し、1 時間にわたって AP の元に戻る変更を防止します。4 つの感度のしきい値があります。
表 3-5 ED-RRM AQ イベントしきい値のマッピング
Low |
AQ=35 |
Medium |
AQ=50(デフォルト) |
大きい |
AQ=60 |
Custom |
ユーザしきい値(注意が必要) |
1. 新規配備の場合:コントローラの再起動または DCA のリセット開始の前に、すべての AP が設置され、コントローラに関連付けられていることを確認します。
- DCA は、コマンド ラインで config 802.11a/b channel global restart コマンドを実行することによって再起動し、初期化することができます。動作を確認するには、GUI の DCA 設定ページで [wireless]、[802.11a/b]、[RRM]、[DCA] の順に選択すると、[Startup] が表示されます。
図 3-18 DCA
2. チャネル計画の要件に大きな変更があった場合はいつでも DCA を再初期化します。
- チャネル帯域幅の変更(20/40/80)
- 追加の AP の追加
- DCA チャネルの変更(たとえば、UNII2e チャネルの追加または削除)
3. デフォルト オプションは最適ですが、配備場所に多数の不正なネイバーが存在し、そのためにチャネル変更が毎日発生する場合に無効にできる [Avoid Foreign AP interference] は例外です。
TPC(送信電力制御)
Wi-Fi で重要なその他のコンポーネントは、AP の無線の送信電力です。TPC は、無線メッセージを使用して、RF グループ内のすべての AP をヒアリングし、測定します。各 AP が他の AP をどのようにヒアリングしているか、および他の AP がユーザ自身の AP をどのようにヒアリングしているかを継続的に追跡することにより、電力を動的に調整して、ネイバーへの干渉を発生させることなく、最適なカバレッジ(セル サイズ)を提供できます。TPC の計算では、規制要件(最大電力など)が継続的に追跡されます。これは、ほとんどの規制地域で、使用しているチャネルおよび帯域に応じて計算が変わるためです。現在、TPC の計算には TPCv1 と TPCv2 の 2 つの異なる方式があります。TPCv1 はデフォルトであり、TPCv2 は高密度展開カバレッジ用の代替方式です。
TPC は、最適な電力レベルを計算するために AP 間の無線による測定に依存しているため、実際には、フロア レベルのクライアントがそれをどのようにヒアリングしているかを認識していません。そのため、環境を調整するためにアルゴリズム内で選択できるものよりも広い範囲のカバレッジ レベルが存在します。その値は、設定しているセルのエッジに必要な dBm 値 であり、さまざまな AP の配置と設置ソリューションに合わせて調整が可能です。たとえば、天井が高い環境で AP が 60 フィート(18 m)間隔で配置され、フロアが 25 フィート(8 m)下に存在する場合があります。この場合、デフォルト値の -70 ではフロアで十分な電力とカバレッジを実現するには不適切であり、-60 という値が適切である可能性があります。
TPC には、RF プロファイルを使用して、または WLC 全体に関してグローバル レベルで適用できる上書き機能があります。これによって、管理者は、AP が超えない最小および最大電力レベルを指定できます。この機能は高クライアント密度環境での調整に役立ち、不十分な AP 配置オプションを修正することもできます。
以下のベスト プラクティスで、最適なカバレッジを実現するために TPC を調整する方法を詳しく説明します。
TPC の設定
TPC のデフォルトの選択は、通常の企業オフィス環境に適しています。デフォルトの TPC ユーザしきい値は、10 フィート(3 m)の天井の高さを想定しています。TPC の機能と設定のベスト プラクティスの詳細については、『 RRM White Paper – Transmit Power Control』を参照してください。
図 3-19 TPC 設定 UI
1. TPC のバージョンの選択:デフォルトでは TPC v1 が選択されています。TPCv2 は高密度設計に使用できます。また、AP が相互に近接しており、電力が比較的低下しない場合に、チャネル モードと組み合わせて優れたキャパシティを生み出すことができます。広いオープンなエリアで AP セル サイズが 3000 平方フィート(約 280 平方メートル)以下の配備の場合は、これを考慮する必要があります(コマンド ライン引数の「channel mode」と組み合わせて使用)。これにより、TPCv2 機能が同じチャネルのネイバーのモニタのみに制限されます。これは RF グループ全体に影響を与えるグローバル コマンドであるため、1 つのバージョンのみを選択できます。これがメンバー コントローラで選択される場合は、そのコントローラがグループ リーダーにならない限り、RF グループには影響しません。
2. Power Level Assignment Algorithm
- Automatic:デフォルトであり、600 秒(10 分)間隔で実行されます。
- On Demand:[Invoke Power Update Once] が押されている場合に、次回にスケジュール設定された間隔(600 秒)でのみ実行されます。電力レベルは呼び出しコマンドが受信されない限り凍結されますが、TPC はバックグラウンドで動作し続けます。
- Fixed:電力レベルを手動ですべての AP に割り当てることができます。これは、いくつかの理由から推奨されません。
– すべての AP は、電力レベルが選択済みであることが示されますが、5 GHz チャネルの割り当てによっては、dBm 単位の非常に異なる電源出力を持つ場合があります。アクセス ポイントの リファレンス ガイド を参照してください。また、ドキュメントで、使用しているモデルのチャネルと最大電力を参照してください。
– これは、TPC アルゴリズムからすべての AP を除外します。
3. Min/Maximum Power Level Assignment:デフォルトは [Disabled] です(-10 dBm および 30 dBm の値はシスコの「どの」APでもサポートされないことに注意してください)。これは、コントローラごとに上書きされます。また、そのコントローラに接続された「すべて」の AP で許可される最小および最大電力レベルの設定が可能です。TPC がローカル コントローラの最小/最大値よりも大きい(または小さい)設定を適用しようとすると、その設定は、この設定によって上書きされます。エントリは dBm 単位であり、適用される AP で実際に許可されている電力に最も近い最大電力または最小電力が生成されるため、チャネルおよび最大電力について、上記を参照してください。この設定は、RF プロファイルで行い、一部の AP グループに適用することもできます。これは、複数のカバレッジおよびキャパシティ ゾーンを含む大規模な展開の場合に推奨されます。
4. Power Assignment Leader:帯域のアクティブな RF グループ リーダーを識別します。Last Power Level Assignment:最後の割り当て以降の時間を秒単位で示します。
5. Power Threshold (-80 to -50 dBm):これは、TPC アルゴリズムに、セル エッジに関して必要な値を示します。TPC は、これを計算でネイバーのしきい値として使用して、AP の最適な電力レベルを決定します。
- TPCv1:デフォルトは -70 dBm です。10 フィート(約 3 m)の天井を持つ通常のオフィス スペースを想定しています。用途に 15 ~ 20 フィート超(約 4.5 ~ 6m 超)の高い天井が含まれる場合は、このしきい値を増やして調整し、フロアで適切な電力を得られるようにする必要がある可能性があります。測定は AP 間の NDP パケットを使用して行われます。すべての AP が通路に配置されている場合、これは、通路の左右どちらかの部屋のカバレッジに悪影響を与える可能性があります。測定を行う必要があり、緩和のために AP の配置を変更する必要がある場合があります。
- [TPCv2]:デフォルトは -65 dBm です。
6. [TPCv1 Channel Aware]:これはバージョン 8.5 で追加された新しい機能です。この機能を有効にすると、TPCv1 が計算の際に同一チャネル ネイバーを考慮できるようになります。これにより、TPC によるより積極的な割り当てが可能になるとともに、同一チャネル干渉が増加しないことが保証されます。これは通常、以前の TPCv1 アルゴリズム単体よりも 2 ~ 3dB 多い電力を悪影響なしで提供します。
CHDM(カバレッジ ホールの検出および軽減)
CHD はクライアントを測定します。CHD はこれをコントローラごとに行い、他の RRM アルゴリズムとは異なり、RF グループ リーダーで設定されて RF グループ全体に適用されるものではありません。CHD は、各 AP に関連付けられたクライアントをモニタし、クライアント RSSI の AP の測定に基づいて、クライアントが適切なカバレッジを得ているかどうかを判断します。これは、より近くより適切な(RF ワイス)AP が使用可能な場合にクライアントが意図的に AP への接続を保持しないことを想定しています。(スティッキー クライアントと呼ばれる状態)。クライアントはローミングのタイミングを単独で決定し、一部のクライアントは不適切な決定を下します。CHD は、アソシエート先の AP のネイバーを調べ、その他の近隣 AP がクライアントをどの程度ヒアリングできるかを判断することによってスティッキー クライアントを排除します。クライアントがより適切な AP 上に存在する必要があり、また存在できる場合、それは誤検出イベントとしてマークされ、アクションは実行されません。クライアントがスティッキーではない場合、その RSSI がカバレッジのしきい値を下回ると、クライアントのロケーションとそれに関連付けられていた AP に関するアラートとレポートが生成されます。
CHD は、アソシエート先の AP の電力出力を増やしてカバレッジの問題の軽減を試みることを、ローカルに(RRM TPC アルゴリズムの外部で)決定できる軽減コンポーネントも備えています。この機能は今でもアルゴリズムに含まれていますが、デフォルトの動作では、カバレッジ ホールが深刻であること(ネイバー AP が失われ、複数のクライアントが影響を受けているなど)を確認することに大きな重点が置かれています。
シスコは、スティッキー クライアントについて、最適化ローミング」と呼ばれる機能を使用したより直接的なアプローチを取っています。この機能は、CHD が生成したメトリックから方向を合わせて、関連付け解除を送信してクライアントがより適切な AP にローミングするよう促すことによってアクティブに介入します。(本文書で後述する「最適化ローミング」を参照してください)
カバレッジ ホールの検出および軽減(CHDM)設定
カバレッジ ホールの検出および軽減は、コントローラごとのアルゴリズムであり、RF グループ全体の管理のみを目的に RF グループ リーダーで設定されることはありません。モニタするコントローラで個別に設定する必要があります。ただし、カバレッジ ホールの軽減と特定の AP の電力レベルを上げるアクションは RF グループ レベルで連携し、その周囲の他の AP で電力レベルを強制的に変更します。
カバレッジ ホールの検出では、関連する AP 上のクライアント RSSI をモニタします。詳細については、『 RRM White Paper 』の「CHDM」の章を参照してください。
図 3-20 カバレッジ ホールの検出の設定 UI
1. カバレッジ ホールの検出の有効化/無効化:デフォルトでは有効になっています。これは、個別の WLAN で、または RF プロファイルで上書きできます。
2. データ RSSI しきい値:デフォルトは -80 dBm です。
(注) データ RSSI のエントリは、ローミングの最適化がグローバル レベルで有効になっている場合に、ローミングの最適化のしきい値にも使用されます。有効にする前に「ローミングの最適化」を参照してください。
3. 音声 RSSI しきい値:デフォルトは -80 dBm です。
4. AP あたりの最小障害クライアント数:デフォルトは 3 です。この設定により、いくつのクライアントが上記の音声しきい値またはデータしきい値を超えるとカバレッジ ホールのアラートが生成されるかが決定されます。これは、下記のカバレッジ例外レベルと組み合わせて使用することもできます。
5. AP あたりのカバレッジ例外レベル:この設定により、特定の AP 上のすべてのクライアントのうち何 % がしきい値を超えるとカバレッジ ホールが宣言されるかが決定されます。これは、上記の最小障害クライアント数と組み合わせて使用することができます。
カバレッジ ホールの検出および緩和は、しきい値の例外によって高度に調整できますが、一般にはデフォルト設定で十分です。最小クライアント数とカバレッジ例外は連動します。たとえば、デフォルトのクライアント数 3 とカバレッジ例外 25 % の場合、3 つのクライアントがしきい値を下回っても、機能するには、現在関連付けられているクライアントが 12 存在する必要があります(12 の 25 % が 3)。CHDM も、障害が発生したクライアントが実際にカバレッジ ホールに含まれているかどうか、またはそのクライアントが単にローミングしていないかどうかを判断するために、各 AP 上のクライアントをリッスンします。ある AP からクライアントをヒアリングする方が、同じく現在そのクライアントに関連付けられている別の AP からヒアリングするよりも優れている場合、これは誤検出としてカウントされ、カバレッジ ホール イベントにはカウントされません。両方の条件が満たされる場合、カバレッジ ホールの軽減は、1 電力レベルずつ AP の電力を増やして、カバレッジの修正を試みることができます。その後、RRM は、次回の DCA および TPC の実行時にカバレッジ要件を再評価します。
ローミングの最適化
ローミングの最適化は、スティッキー クライアントの問題の解決に役立つツールです。スティッキー クライアントとは、より堅牢な接続が使用可能であるにもかかわらず、そこにローミングせずに特定のアクセス ポイントへのアソシエーションを保持し続けるクライアントのことです。クライアントはローミングするタイミングとローミング先を単独で決定します。そしてすべてのクライアントが同等に作られているとは限りません。ローミングの最適化機能は、この章で先に詳しく説明したカバレッジ ホール アルゴリズムと同様に、AP から収集されたリッチなデータを使用します。ローミングの最適化は、AP で測定されたクライアントのデータ RSSI を調べ、カバレッジ ホール設定ダイアログで設定されたデータ RSSI しきい値と比較します。クライアントがこのしきい値を下回る場合は、アソシエーション解除メッセージ(理由 4:タイムアウト)がクライアントに送信されます。デフォルト設定では、ローミングの最適化は無効になっており、カバレッジ ホールのデータ RSSI は CH 計算に使用されます。ローミングの最適化には、オプションのメトリックであるデータ レートもあります。これはデフォルトでは無効になっており、受信データ パケットの RSSI しきい値とデータ レートに基づいて二重ゲートを形成するために使用できます。データ レートも使用する場合、アソシエーション解除イベントをトリガーするには、両方を true にする必要があります。
特定のクライアントに対してトリガーされたローミングの最適化は、クライアントの RSSI がしきい値を下回る場合には、そのクライアントの再アソシエーションも防止します。クライアントがその AP に再アソシエートするには、再アソシエーションしきい値を 6 dB 上回る必要があります。あまり知られていない低 RSSI チェック機能を併用することが推奨されないのはこのためです。2 つのしきい値は相互に連携して動作せず、セルのアクセスを誤ってロックアウトしてしまう可能性があります。
ローミングの最適化の設定
ローミングの最適化は、遠くのアクセス ポイントへのアソシエーションを保持し続けるスティッキー クライアントの問題を解決します。この機能は、クライアント データ パケットの RSSI と AP によって測定されたデータ レートに基づいてクライアントをアソシエーション解除します。この機能は、この文書で先に詳しく説明したカバレッジ ホール アルゴリズムによって生成されたデータを使用します。
クライアントは、RSSI アラーム条件が満たされ、現在のデータ レートがローミングの最適化データ レートのしきい値を下回っている場合にアソシエート解除されます。データ レート オプションを無効にして、RSSI のみをクライアントのアソシエート解除に使用するようにできます。
- ローミングの最適化は、次のシナリオで実装されます。
– エンタープライズ環境でプロアクティブにクライアントを切断することで厄介なスティッキー クライアントの問題を解決する。
– 管理用のスタンドアロン Wi-Fi ホットスポットを実装する。
– RSSI が設定されたしきい値より低い場合にクライアントをアソシエーション解除する。
この機能の仕組みとその適切な導入方法の詳細については、HDX(高密度エクスペリエンス)設計ガイドバージョン 8.0 および 8.1、またはワイヤレス LAN コントローラの技術リファレンス ページの最新情報を参照してください。
最適化ローミングは、RF グループ リーダー レベルではなく、コントローラごとに設定できます。決定は、コントローラ全体とそれに関連付けられているすべての AP に適用されます。個々の AP グループは、AP グループの RF プロファイルを使用して別に(グローバル CH しきい値レベル以外で)管理できます。これにより、必要に応じて SSID/AP グループ レベルできめ細かく管理できます。
有効/無効 - デフォルトで無効です。
最適ローミング間隔 – デフォルトは 90 秒です。この間隔を小さくすると、AP とコントローラに不必要な負荷がかかるため、TAC またはその他適切なテクニカル サポートによって指示されない限り、この間隔は変更しないことを強くお勧めします。その場合は、変更するネットワーク(帯域が 2.4 GHz または 5 GHz)を無効にする必要もあります。
1. 有効/無効 - デフォルトで無効です。
2. 最適ローミング間隔 – デフォルトは 90 秒です。この間隔を小さくすると、AP とコントローラに不必要な負荷がかかるため、TAC またはその他適切なテクニカル サポートによって指示されない限り、この間隔は変更しないことを強くお勧めします。その場合は、変更するネットワーク(帯域が 2.4 GHz または 5 GHz)を無効にする必要もあります。
3. データ レートしきい値:許容可能な最低データ レートを設定します。データ RSSI しきい値と組み合わせて使用します。これはトリガー決定を下すために使用される追加の条件であり、アソシエーション解除が送信されるためには、RSSI とデータ レートの両方の条件が満たされる必要があることに注意してください。
フレキシブル ラジオ アサインメント(FRA)アルゴリズム
フレキシブル ラジオ アサインメント アルゴリズムは、AP 2800/3800 シリーズ アクセス ポイントに含まれているフレキシブル ラジオ アーキテクチャ ハードウェアを管理するために、WLC バージョン 8.2.100.0 で導入されました。
FRA は、RF グループによって提供されるリッチな情報を使用してカバレッジを評価し、より有益なロールに再割り当てできる冗長 2.4 GHz(適切なカバレッジに不要)無線を特定します。これは次の 2 つのことを行います。
- 2.4 GHz インターフェイスの過飽和による破壊的な自己干渉を排除すると同時に、2.4 GHz を適切にカバーして使用可能なセルを提供します。
- 追加のハードウェア、ケーブル、またはスイッチポートを必要とせずに、デュアルバンド冗長無線を複数の有益なロールに転用できます。
過飽和は実際には簡単に生じます。2.4 GHz または 5 GHz の設計については、上記の「導入に関する考慮事項」の説明を参照してください。5 GHz の設計を行う場合(必須)、狭い帯域幅と 3 チャネルが使用可能であれば、非常に多くの 2.4 GHz 無線が生成されます。FRA の導入以前は、これを解決するには、通常、訓練を受けた専門家が導入前後に詳細な分析を実施し、カバレッジの問題を整理して、いくつかの 2.4 GHz 無線を無効にする必要がありました。この分析は、AP のネイバー関係について行われました。FRA は現在これと同じデータを使用します。
- AP 2800/3800 と RRM FRA アルゴリズムを組み合わせると、次の機能を備えたシンプルなソリューションを提供できます。
– 効果的なカバレッジを測定する
– ネイバー カバレッジでカバーできる AP のセルを分析する
– それらのセルを冗長セルと認定する
- この分析の結果は RRM に戻されます。RRM は、顧客の選好と DCA に基づいて、現在不要なインターフェイスが最も役立つロールを特定します。
– 2 番目の 5 GHz インターフェイス(5 GHz 容量を 98 % 増加させる)
– モニタ:専用のセンサーによる 2.4 および 5 GHz のモニタリング(各チャネルの分解能を、クライアントにサービスを提供する無線の 24 倍に増やす)
– DNA-c ワイヤレス保証センサー(アクティブ クライアント モードを提供し、DNA アーキテクチャのサービス保証の指示に従って周辺の AP でテストを実行する)
FRA は、RRM のネイバー(NDP)データベースを使用して次のことを行います。
- 隣接する 2.4 GHz AP 間の相対位置を特定する
- 各 AP が -67 dBm でカバーする必要があるエリアを計算する*
- 各 AP のカバレッジの結果を分析し、隣接する AP のカバレッジ オーバーラップをターゲット セルの合計カバレッジのパーセンテージとして評価する
* DNA-c ワイヤレス保証センサー ロールの場合、カバレッジは必ずしも -67 とは限らず、2.4 GHz カバレッジ要件よりも多くのセンサーを選択できるように信号レベルを引き下げることができます。
無線は、COF(カバレッジ オーバーラップ係数)が設定可能な必要なカバレッジしきい値を超えると冗長とマークされます。カバレッジ オーバーラップ係数は、特定の AP(AP-1)のセルが最大 3 つのネイバー AP によって -67 dBm で有効にカバーされる割合を表す 0 ~ 100 % の数値です。この数値が 100 % の場合、有効なクライアント カバレッジに悪影響を与えることなく、AP 1 を効果的に無効にできます。この無線を無効にするのではなく、上記の複数のロールのいずれかに再割り当てします。FRA は無線と冗長とマークします。これにより、そのインターフェイスを再利用して追加の価値/インテリジェンスをネットワークに提供できます。
FRA の詳細とそのカバレッジの計算方法については、『RRM White Paper – Flexible Radio Assignment』を参照してください。
(注) FRA が機能するには、2.4 GHz RF グループ リーダーと 5 GHz RF グループ リーダーの両方が同じ物理 WLC 上に存在する必要があります。自動 RF グループ化を使用すると、ほとんどの場合、どちらも同じ物理 WLC 上に配置されますが、必ずしもそうなるとは限りません。複数の WISM または 5508 コントローラを運用している環境で FRA を有効にする場合は、静的 RF グループ設定を使用することを強く推奨します。
FRA は 3 つのモードで動作します。これらのモードは、グローバル FRA 設定ダイアログの [Service Priority] で選択できます。
- カバレッジ:カバレッジの推定が -67 dBm で保持され、DCA によるロールの選択が 5 GHz(優先)またはモニタ ロール(5 GHz がすでに飽和している場合)のいずれかである従来の設定です。
- クライアント認識型:8.5 で新しく導入されたモードで、カバレッジと同じ決定しきい値に従いますが、プライマリ 5 GHz チャネルが非常にビジーになった場合にモニタ ロールの割り当てを 2 番目の 5 GHz インターフェイスとしてサービスに組み入れることができます。
サービス保証:このモードでは、FRA 感度しきい値を満たすために必要な COF と FRA の積極性を変更するためのターゲット カバレッジ RSSI の両方が調整されます。出力には、カバーされるネットワークのパーセンテージも表示されます。積極性は、[Sensor Threshold] 選択ダイアログで調整できます。以下を参照してください。
FRA の詳細については、『 Radio Resource Management White Paper』を参照してください。
FRA の設定
FRA の設定では、RF グループ リーダー(グローバル)と AP(無線インターフェイスは FRA の自動モードか手動モードのいずれか)でアルゴリズムを実行します。RF グループ全体のためにグローバルまたは WLC レベルが実装されています。これを使用する場合、両方の RF グループ リーダー(2.4 GHz および 5 GHz)が同じ物理コントローラ上に存在する必要があります。8.2 ~ 8.5 リリースの WLC では、FRA アルゴリズムはデフォルトで無効になっています。
(注) FRA は、8.6 ではおそらくデフォルトで有効になります。デフォルト値は新しく設置されたコントローラにのみ適用されます。新しいバージョンへのアップグレードでは、現在の設定が保持され、変更は加えられません。この機能が存在しないコード バージョンへのアップグレードの場合、デフォルト値は新しく追加された機能に適用されます。
設定の他の部分では、グローバル FRA アルゴリズムで制御する無線インターフェイスを指定します。無線設定レベルでは、デュアルバンド無線はすべてデフォルトで自動 FRA です。これにより、FRA をグローバル レベルで有効にするとすぐに、FRA はそれらの無線を制御できるようになります。無線のもう 1 つのオプションは手動モードです。手動モードでは、FRA による新しいロールの割り当てが防止されますが、アルゴリズムで COF を計算したり、それらの無線を出力に含めることを考慮してアルゴリズムを実行したりできます。ただし、変更は要求されません。
グローバル FRA 設定ダイアログ
1. [Enable] または [Disable]:リリース 8.5 まではデフォルトで無効です。
2. [Sensitivity]:[Low](100 %)、[Medium](95 %)、[High](90 %)はCOF(より有益なロールへの再割り当てのために無線を冗長とマークするために必要なカバレッジ オーバーラップ係数)を示します。
3. [Interval]:最小 1 時間、最大 24 時間です。どの場合でも、DCA の実行間隔より大きくする必要があります。
4. [Service Priority]:(8.5 の新機能)FRA の実行モードを変更し、冗長無線を割り当てるロールに優先順位を付けられるようにします。
[Coverage]:これは 8.5 より前のバージョンで使用できる唯一の優先順位です。FRA のセル カバレッジ ターゲットが -67 dBm に設定され、選択した感度しきい値(低、中、高)が保持されます。DCA による冗長無線の優先順位は次のとおりです。
1. 2 番目の 5 GHz インターフェイス:DCA はまず、同一チャネル干渉に基づいて既存の 5 GHz チャネル計画にインターフェイスを追加しようとします。この計算は、チャネル幅(20/40/80/160)とネットワークの密度(既存の AP の密集度)によって大きく影響されます。インターフェイスを追加できない場合、DCA は冗長無線をモニタ ロールに配置します。
2. モニタ ロール:冗長デュアルバンド無線は、2.4 GHz と 5 GHz の両方の帯域に対するフル タイム スキャン モードに配置されます。8.4 より前のバージョンでは、関与するいずれかの無線(セルをカバーしている無線)がカバレッジ ホールを示していない限り、これは有効期間の割り当てでした。カバレッジ ホールの場合、無線は即座に 2.4 GHz でのサービスに戻ります。8.4 では、最初の割り当てが 30 秒以上モニタ ロールになった後に DCA が 5 GHz 割り当てを再評価できるようにするロジックが追加されました。DCA は、実行されるたびに無線が 5 GHz ロールに割り当て可能かどうかを確認し続けます。
[Client Aware]:バージョン 8.5 の新機能です。クライアント認識型では、カバレッジ サービス優先順位と同じ値(ターゲット -67 dBm およびしきい値)を使用して冗長性に関する決定を行います。ただし、無線のロールがモニタ ロールに配置されている場合、FRA は専用の 5 GHz インターフェイスに対する負荷をモニタし、DCA にこのインターフェイスを 5 GHz に追加するように強く働きかけることで、クライアント密度を高めることができます。これはオン デマンドの超高密度と考えてください。
1. [Client Aware]:サービス優先順位モード。
2. [Client Select]:デフォルト値は 50 % です。つまり、専用の 5 GHz インターフェイスのチャネル使用率が 50 % に達すると、モニタ ロール デュアルバンド インターフェイスの 5 GHz クライアント サービス ロールへの移行がトリガーされます。
3. [Client Reset]:AP が 5 GHz AP として AP が動作し始めると、この設定により、デュアルバンド無線をモニタ ロールにリセットするために必要な、無線の合計チャネル使用率が減少します。
例:
1. [Client Aware] を選択した場合、会議室が多数の人でいっぱいになると、会議室にサービスを提供している単一の AP のフレキシブル ラジオがモニタ モードになります。
2. ユーザが専用の 5 GHz 無線にローミングするにつれて、この無線のチャネル使用率が上昇し始めます。チャネル使用率が [Client Select] トリガーしきい値を超えると、DCA は、同一チャネル干渉の許容可能なより低いしきい値を使って冗長インターフェイスを再評価し、それに応じて冗長無線を 5 GHz クライアント サービス ロールに移行します。
3. 両方の無線が 5 GHz になると、システムは両方の無線の合計チャネル使用率をモニタします。デュアル 5 GHz モードで無線 1 の CU が 30 %、無線 2 の CU が 30 % になると、両無線の合計 CU は 60 % になります。デフォルトでは、合計 CU が 5 % 低下すると(この例では 60 % - 5 % で 55 %)、無線は元のモニタ ロールに「リセット」されます。
通常は、緊急コールを発信して無線をモニタ ロールに戻すタイミングを判断するのに 5 % 以上のリセット トリガー バッファが必要になります。クライアントのパフォーマンスの問題を防止することが目的であれば、ロールの変更をトリガーする値は 50 % でおそらく十分です。これらの値は設定可能であるため、個別の要件に合わせてこの機能を調整できます。
[Service Assurance]:8.5 で追加された新しいサービス優先順位です。保証パッケージが追加された DNA-c の指示の下で冗長比をセンサーとして使用できます。FRA の場合、これはターゲット RSSI と設定済みの COF の両方を、[Service Assurance] 設定ダイアログで選択したセンサーしきい値に従って変更できることを意味します。
1. [Service Assurance] を有効にします。
2. [Sensor Coverage]:この値は FRA の設定と計算の積です。[Service Assurance] 優先順位を選択した FRA を初めて実行すると、前の FRA 計算時にセンサーが有効になっているという条件の下で、DNA が到達できる既知のネットワークのパーセンテージがこの値で示されます。この値は、FRA を設定して以下の残りの値に対して実行した後にのみ生成されます。
3. [Sensor Threshold]:5 つの積極性設定のうちの 1 つを選択できます。安全な値を優先するクライアント接続(カバレッジ サービス優先順位と同じ値)から始まり、漸進的にクライアントのカバレッジが減少し、センサーのカバレッジが積極的になります。
4. [Target RSSI]:計算に使用される RSSI で、カバレッジの積極性を徐々に高くするにつれて変化します。
(注) [Sensor Threshold] 積極性を増やすことで、2.4 GHz のカバレッジを必要なカバレッジよりも小さくすることができます。これが意味することの詳細については、以下を参照してください。
表 3-6
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|
クライアントの優先順位 |
100 |
-67 |
優先されるクライアント |
100 |
-70 |
Balanced |
100 |
-73 |
優先されるセンサー |
95 |
-76 |
センサーの優先順位 |
90 |
-79 |
ターゲット RSSI が減少すると許容可能なセル サイズが増加し(大きくなり)、冗長とマークする無線の数を増やすためにセル全体にわたって低い電力レベルを許容できるようになります。[Swlwcting the Sensor Priority Sensor Threshold]:他の AP によって -79 dBm 以上の信号強度でセル エリアの 90 % がカバーされているインターフェイスを FRA が冗長とマークできるようにします。これにより、[Client Priority] よりもずっと多くのセンサーがカバレッジ オーバーラップ係数 100 % と -67 dBm 以上の信号強度を持つことが可能になります。
[Service Priority] が [Service Assurance] である場合に冗長とマークされた無線は、引き続き DCA に渡され、上記のとおり 5 GHz またはモニタ ロールを割り当てられます。ただし、DNA Center が保証テストを実行するためにインターフェイスをアクティブ クライアントに変える必要があると判断した場合、無線は呼び出されたときにアクティブ クライアントに変わります。テストが完了すると、無線は前のロールでのサービスに戻ります。
FRA の詳細については、『 Radio Resource Management White Paper』を参照してください。
RF プロファイル
グローバル レベルの RRM は、RF グループに関連付けられたすべての AP に適用される設定パラメータを設定します。以前のように、ワイヤレス LAN コントローラの AP の最大数が比較的少なかったとき(100 程度)であれば、それでも問題はありませんでした。しかし、状況は変化し、AP の上限が飛躍的に高くなっただけでなく、ユーザによるネットワーク リソースの消費量も大幅に増えました。高クライアント密度またキャパシティ モデルやカバレッジ モデルなどの異なる使用例により、異なる最適化によって効率性を向上させるとともに設計目標を満たすことが必要になっています。高密度モデルの場合は、最小限の間隔で配置された多数の AP に近づく場合のユーザ エクスペリエンスを最適化する必要があります。カバレッジ モデルの場合は、薄いカバレッジ内の AP からの距離での最大セル カバレッジと信頼性の高い接続を最適化する必要があります。
RF プロファイルにより、同じ AP グループに含まれる AP の一部のグループに変更を適用することができます。AP 上の無線ごとに RF プロファイルを設定し、AP グループあたり 2 つの RF プロファイルを適用することができます。これの典型的な使用例は、高クライアント密度を管理するために大容量設計が必要な講堂や大劇場です。ただし、この劇場は通路やオープン エリアに囲まれており、それらの場所のカバレッジが大きな懸念事項となります。これらの AP のすべてに関する単一のグローバル RRM 設定は、いずれの環境向けにも最適化されていないと考えられる設定になります。劇場内部の AP は 1 つの AP グループ(おそらく、他の高クライアント密度ロケーションの AP によってグループ化される)に配置され、通路やオープン エリアなどのカバレッジ エリアの AP は別の AP グループに配置されます。現在では、目的の設計に必要な設定を最適化する RF プロファイルを設定できます。
RF プロファイルにより、RRM アルゴリズムを超える多数の機能を制御できます。HDX 機能の多くも、特定のグループ向けにカスタマイズできます。コントローラの [Wireless] メニューから、[Wireless]、[Advanced]、[RF Profiles] の順に選択します。
図 3-21 事前設定された RF プロファイル
1. 事前構築されたサンプル RF プロファイル。
2. New:カスタム RF プロファイルを作成します。
3. Enable Out Of Box:任意の新しい AP を、無線が無効になっている Out of Box AP グループに配置します。コントローラを再起動した後も Out of Box(OOB)を有効のままにする場合は、[Enable Persistence] を有効にします。
まず、RF プロファイルに含まれる設定オプションについて説明します。次に、サンプル プロファイルの使用目的と設定について説明します。新しい RF プロファイルを作成するには、[ワイヤレス(Wireless)] > [RF プロファイル(RF Profiles)] の順に移動し、「新規….」(図 19 の「2」)を選択して新規 RF プロファイルのダイアログを開きます。
図 3-22 新規 RF プロファイルのダイアログ
まず、RF プロファイルに含まれる設定オプションについて説明します。次に、サンプル プロファイルの使用目的と設定について説明します。新しい RF プロファイルを作成するには、[ワイヤレス(Wireless)] > [RF プロファイル(RF Profiles)] の順に移動し、「新規….」(図 19の「2」)を選択して新規 RF プロファイルのダイアログを開きます。
RF プロファイル:[General]
図 3-23 RF プロファイルの [General] タブ
[General] タブでは、このプロファイルの使用に関する簡単な説明を入力できます(最大 64 文字)。[General] タブでは、作成されるプロファイルの対象帯域と RF プロファイル名が特定されます。これらはいずれも作成後に編集できません。作成時に名前を間違えた場合は、プロファイルを削除し、正しい名前で再作成する必要があります。
RF プロファイル:[802.11]
[802.11] タブでは、グローバルではなく、コントローラ固有のネットワーク設定を制御できます。RF プロファイルのこれらの設定は、それが適用される AP グループに関するコントローラのグローバル設定を上書きします。
図 3-24 RF プロファイルの [802.11] タブ
[802.11] タブでは、データ レートとそれらのモードを選択できます。シスコの AP では、データ レートは、次の 3 つの状態のいずれかになります。
1. Disabled:AP によって許可されません。
2. Supported:AP によって許可されますが、必須ではありません。
3. Mandatory:クライアントはこのデータ レートをサポートする必要があります。
最小(最も低い)の [Mandatory] データ レート(上記の例では 9 Mbps)によって、ビーコンおよびその他のすべての後続ブロードキャスト メッセージの送信速度が決定されます。最小の [Mandatory] データ レートとして 9 Mbps を使用してクライアントを AP に関連付けるには、クライアントが 9 Mbps 以上の速度で関連付けを完了できる必要があります。完了できない場合、クライアントの AP への参加が許可されません。これにより、AP のセル サイズが、9 Mbps をサポートするために十分近いクライアントに効果的に制限されます。これは、平均的な配備に関しては適切なデフォルト値です。高クライアント密度では値を 12 Mbps にするか、セル サイズが最小になる極端な高クライアント密度設計では、設計要件に応じて 18、24、または 36 Mbps を選択することもできます。
自動マルチキャストが設定されていない場合(デフォルトでは設定されている)、最大の [Mandatory] データ レート(上記の例では 2 つ目の [Mandatory] データ レート、24 Mbps)がデフォルトのマルチキャスト速度になります。
[Supported] としてマークされているデータ レートは、クライアントが使用でき、AP はそれに従います。
[Disabled] としてマークされたデータ レートには AP は従いません。
MCS データ レートは、有効または無効にすることだけができます。これらのレートを無効にすると、AP はそれらを使用できなくなります。すべてのデータ レートと選択内容は、ビーコン フレームの潜在的クライアントにブロードキャストされ、ここで変更がビーコン メッセージに反映されます。
RF プロファイル:[RRM]
図 3-25 RF プロファイルの [RRM] タブ
RF プロファイル内の [RRM] タブでは、RF グループ レベルで設定されているグローバル パラメータを上書きできます。
1. TPC:AP グループ全体に関してカスタム最小/最大電力レベルを割り当てることができ、TPCv1 または TPCv2 のいずれかに関してカスタム TPC しきい値を割り当てることもできます。注:TPC バージョンの選択はグローバル選択のみです。該当する場合は、TPCv1 または TPCv2 しきい値のいずれかが使用されます。
2. DCA:DCA のすべての機能が RF プロファイル レベルで含まれているわけではありませんが、外部 AP 干渉の回避などの最も重要な機能は十分実行できるため、不正なリッチ環境では無効にすることを推奨します。DCA チャネル リストのコピーを使用してカスタム チャネル計画を設定することもできます。RF プロファイル内でチャネルを使用可能にするには、そのチャネルをグローバル DCA チャネル リストで選択する必要があります。
3. [Coverage Hole Detection]:カバレッジ ホールの検出は完全に複製され、AP グループに割り当てられているすべての WLAN に適用されます。個々の WLAN では、コントローラごとのグローバル設定でカバレッジ ホールが有効または無効になっている場合があります。
(注) データ RSSI のエントリは、最適化ローミングがグローバル レベルで有効になっている場合には、最適化ローミングしきい値にも使用されます。有効にする前に「最適化ローミング」を参照してください。
4. [Profile Threshold For Traps]:RF プロファイル内の他のしきい値を設定できます。たとえば、高クライアント密度エリアでは、むしろすべての設定が通常のものになります。これにより、他の方法では過剰に低く設定される AP グループに役立つトラップ アラート メッセージを作成できます。
RF プロファイル:[High Density]
[High Density] タブでは、AP グループに関して、特定の HDX 機能を RF プロファイル レベルで最適化できます。
図 3-26 RF プロファイルの [High Density] タブ
- High Density Parameters:無線インターフェイスで許可されるクライアントの最大数を選択できます。この選択により、選択された数を上回るクライアント数へのアクセスは単純に拒否されます。デフォルト値は 200 です。この設定はデフォルト値のままにすることを推奨します。
- Rx Sop:RX Start Of Packet Sensitivity しきい値を選択できます。選択できるのは、[High]、[Medium]、[Low]、[Auto] です。デフォルトは [Auto] です。RX-SOP とその仕組みおよび設定を十分に理解することを強く推奨します。RX-SOP は、Wi-Fi として受信されるために論理パケットが満たす必要のあるしきい値 RSSI を設定することにより、受信感度を変更します。RX-SOP の設定の詳細については、『 High Density Experience Features Release 8.0 』を参照してください。
- Multicast Parameters:デフォルトは [auto] です。また、すべてのマルチキャスト パケットが使用する単一の専用データ レートを選択できます。
RF プロファイル:[Client Distribution]
[Client Distribution] タブでは、[Load Balancing] および [Band Select] オプションを制御できます。
図 3-27 RF プロファイルの [Client Distribution] タブ
- Load Balancing:追加のクライアントがステータス コード 17 で拒否される AP に関するしきい値を設定できます。ステータス コード 17 は、AP 上のクライアントが多すぎるために現在 AP がこのリクエストを処理できないことを示します。0 ~ 20 のクライアント数と、アドミッションが付与される前に送信される拒否の数を選択できます。クライアント デバイスはステータス コード 17 を一般にサポートしているわけではないため、この設定は重要です。ロード バランシングは、適切なデータ レートと優れたネットワーク設計の選択により、より確実に実行されるようにすることができます。
- Band Select:802.11b/2.4 GHz プロファイルのみです。[Probe Response] チェックボックスを選択すると、RF プロファイル レベルでの帯域選択設定が有効になり、グローバル レベルでの設定が上書きされます。これにより、選択された AP グループでのみ、より積極的な帯域選択動作が可能になります。
WLAN Express
Release 8.0 で、新しい 0/1 日目起動ダイアログが導入されました。このダイアログは、ワイヤレス LAN コントローラの導入に関するベスト プラクティスを目標とした質問を通じて、ユーザを案内します。この設定ダイアログおよびオプションは、 シスコ ワイヤレス LAN コントローラの設定のベスト プラクティス をサポートするように設計されています。このダイアログは、低、中、および高クライアント/AP 密度に適した RF 設定のアプリケーションをサポートし、データ レートに適した選択と、高密度環境をサポートするために設計された機能を適用します。どのビルディングまたは配備も同じではありませんが、アクセス ポイントの展開と意図するクライアント数に基づいて標準化を適用できます。
起動ダイアログに加えて、コントローラに含まれ、参照したり、そのまま適用したりすることができる、3 つの事前設定 RF プロファイルがあります。これらの設定は次のとおりです。
表 3-7 事前設定された RF プロファイル
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TPC しきい値 |
帯域ごとのグローバル 帯域ごとの固有 RF プロファイル |
デフォルト |
-65 dBm(5 GHz) -70 dBm(2.4 GHz) |
-60 dBm(5 GHz) -65 dBm(2.4 GHz) |
デフォルト |
TPC 最小 |
帯域ごとのグローバル 帯域ごとの固有 RF プロファイル |
デフォルト |
7 dBm |
デフォルト |
デフォルト |
TPC 最大 |
帯域ごとのグローバル 帯域ごとの固有 RF プロファイル |
デフォルト |
デフォルト |
デフォルト |
デフォルト |
Rx 感度(rxsop) |
帯域ごとのグローバル(高度な Rx Sop) RF プロファイル |
デフォルト |
Medium |
low |
デフォルト |
カバレッジ RSSI しきい値 |
帯域ごとのグローバル データおよび音声 RSSI(カバレッジ) RF プロファイル |
デフォルト |
デフォルト |
高い |
デフォルト |
CCA しきい値 |
帯域ごとにグローバル 802.11a のみ(非表示) RF プロファイル |
デフォルト |
デフォルト |
デフォルト |
デフォルト |
カバレッジ クライアント 数 |
帯域ごとのグローバル(カバレッジ例外) RF プロファイル(カバレッジ ホールの検出) |
デフォルト |
デフォルト |
Lower (1 ~ 3) |
デフォルト |
データ レート |
帯域ごとにグローバル(ネットワーク) RF プロファイル |
12 Mbps 必須 9 をサポート 1、2、5.5、6、11 Mbps 無効 |
12 Mbps 必須 9 をサポート 1、2、5.5、6、11 Mbps 無効 |
CCK レート 有効 1、2、5.5、6、9、11、12 Mbps 有効 |
デフォルト |
帯域選択 |
WLAN 単位 |
有効 |
有効 |
無効 |
有効 |
SI ED-RRM PDA |
帯域ごとのグローバル(CleanAir) 帯域ごとのグローバル(DCA) 帯域ごとのグローバル (802.11a/802.11b チャネル…) |
Enable 無効 有効 |
有効 無効 有効 |
有効 無効 有効 |
有効 無効 有効 |
ロード バランシング |
WLAN 単位 |
無効 |
有効 |
無効 |
無効 |
DCA 感度 |
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デフォルト |
大きい |
大きい |
デフォルト |
チャネル |
帯域ごとのグローバル(DCA) RF プロファイル |
デフォルト |
デフォルト |
デフォルト |
デフォルト |
高密度
この文脈における「高密度」とは、平均セル サイズが 3000 ~ 2000 平方フィート(280 ~ 185 平方メートル)で、キャパシティ上の理由から複数の AP が展開されている任意のエリアと考えてください。通常のクライアント数は、セルあたり 50 ~ 100 クライアントです。
AP の距離間隔が約 60 フィート(18 m)の場合、3000 平方フィートのセル サイズになります。
AP の距離間隔が約 50 フィート(15 m)の場合、2000 平方フィートのセル サイズになります。
特定の劇場または講堂を設計している場合、平方メートルあたり 1 ユーザの密度を処理するためにキャパシティを増やすときは、最小データ レートおよび電力レベルに関する設計上の推奨事項に従ってください。
一般的な密度
一般的な密度は、企業での導入の他のほとんどすべてのエリアと、アクティブなクライアントが少し分散しているが連続的なカバレッジが提供されている共通エリアおよび立方体に適用されます。平均セル サイズは 3000 ~ 5000 平方フィート(280 ~ 460 平方メートル)で、セルあたりの平均ユーザ数は 10 ~ 30 人です。
AP の距離間隔が 60 フィート(18 m)の場合、3000 平方フィートのセル サイズになります。
AP の距離間隔が 80 フィート(24 m)の場合、5000 平方フィートのセル サイズになります。
低密度
低密度しきい値は、5000 平方フィート以上の非常に大きなセルに関して提供されます。このプロファイルでは、すべてのデータ レートが有効になっており、TPC しきい値を介して電力レベルが増やされ、セル エッジの最大距離に対応するカバレッジが提供されます。データ レートが低いほど、ユーザあたりの通信時間使用率が高くなります。そのため、この設定ではキャパシティが通信時間によって制限されます。これは、個別のホット スポット アプリケーションまたはオープン フィールドの屋外カバレッジに適した設定です。また、これは、いかなる選択も行わない場合、デフォルトの AP 設定に非常に近いものになります。
RF 電力の用語
dB、dBi、dBr、dBm などの各用語は、システムのポイントで測定したとき、無線で感知したとき、または基準電力レベルと比較したときの電力の変化量を表すために使用されます。この項では、これらの用語の違いを説明し、使用に関する一般的なルールについて説明します。実効等方放射電力(EIRP)についても説明します。
dB
dB(デシベル)という用語は、信号レベルの減衰または増幅に主に使用されます。dB は、別の標準化された値に対する信号の対数比です。これは、dB それ自体は測定単位ではないことを意味します。たとえば、dBm の場合は 1 ミリワットの電力に対して信号レベル値が比較され、dBW の場合は 1 ワットの電力に対して値が比較されます。
計算式は次のとおりです。
電力(dB 単位)= 10 X log10(信号/基準)
適切な数字を当てはめると(たとえば、信号に 100 mW、基準に 1 mW)、dB の値として 20(100 = 10 の 2 乗、つまり指数が 2 となり 10 を掛けることで 20 となる)が算出されます。
これは対数(線形ではなく指数としての増減を意味する)であり、ある基準に対する値の比率であることを覚えておいてください。また、10 dB 増加するたびに 10 倍になることも覚えておいてください(たとえば、0 dBm = 1 mw、10 dBm = 10 mw、20 dBm = 100 mW、30 dBm = 1000 mW(1W))。
対数である場合、いくつかの一般的なルールがあります。3 dB の増減は、それぞれ、信号(電力)が 2 倍または 1/2 になったことを意味します。10 dB の増減は、信号が元の値の 10 倍になったか、1/10 になったことを意味します。
屋内および屋外の WLAN 展開は両方とも、RF 展開において異なる課題があり、これらは分けて分析する必要があります。ただし、屋内使用に関しては、一般的なルールがあります。9 dB 増加するたびに、屋内のカバレッジ エリアが 2 倍になります。9 dB 減少するたびに、屋内のカバレッジ エリアが 2 分の 1 になります。
dBm
dBm(dB ミリワット)という用語は、dB の項で説明したものと同じ計算を使用しますが、基準値は 1 ミリワット(0.001 W)です。Wi-Fi での電力は、常に 1 mW 未満です。
したがって、dB の項で示した例で考えると、無線で電力が 1 mW から 100 mW に変化した場合、電力レベルは 0 dBm から 20 dBm へ変化します。
dBm は送信電力を表すだけでなく、レシーバの感度も表します。Wi-Fi では比較的低い送信電力が使用されるため(受信される信号は常に 1 mW 未満)、レシーバの感度は、マイナス dBm(-dBm)で表されます。感度は、信号を理解不能と見なす前にレシーバが効果的に受信可能な最小電力を示します。
dBi
dBi(等方性 dB)という用語は、架空の等方性アンテナと比較される実際のアンテナの電力ゲインを表すために使用されます。等方性アンテナ(理論上または架空のアンテナ)は、同じ電力密度を完全に全方向に送信するアンテナです。
アンテナはこの理想の測定値と比較され、すべての FCC 計算でこの単位(dBi)が使用されます。たとえば、シスコの全方向性 AIR-ANT4941 アンテナのゲインは 2.2 dBi です。これは、アンテナの最大エネルギー密度が等方性アンテナよりも 2.2 dB 多いことを意味しています。
実効等方放射電力(EIRP)
無線の設定に基づいて送信される電力は、dBm またはミリワットで表されますが、システム全体のアンテナから受ける最大エネルギー密度は、EIRP として測定されます。これは、さまざまなコンポーネントの dB 値を合計したものです。EIRP は、FCC や ETSI などの規制当局が電力制限を決定および測定するために使用する値で、放射しているアンテナの第 1 フレネル内の最大エネルギー密度を表します。EIRP は、送信電力(dBm 単位)をアンテナ ゲイン(dBi 単位)に加算し、ケーブル損失(dB 単位)を差し引くことで算出されます。たとえば、Cisco Aironet ブリッジを、50 フィートの長さの同軸ケーブルで、固定されたパラボラ アンテナに接続している場合、数字を当てはめると次のようになります。
- ブリッジ:20 dBm
- 50 フィートのケーブル:-3.3 dBm(ケーブル損失のため、負の値)
- パラボラ アンテナ:21 dBi
- EIRP:37.7 dBm
詳細および基礎数学については、シスコのテクニカル ノート『 RF Power Values』を参照してください。