ワイヤレス LAN の音声トラフィックは、データ トラフィックの場合と同様に、遅延、ジッタ、およびパケット損失の影響を受けます。 これらの問題はデータのエンド ユーザに影響を与えることはありませんが、音声コールには重大な影響を及ぼします。 音声トラフィックが、遅延やジッタの少ない、適時の信頼できる処理を確実に受けられるようにするには、Quality of Service(QoS)を使用して、音声とデータを個別の仮想 LAN(VLAN)を使用する必要があります。 音声トラフィックを別の VLAN に分離することにより、QoS を使用して、音声パケットがネットワーク上を移動するときに優先度の高い処理を提供することができます。 また、データ トラフィックの場合は、通常すべてのネットワーク デバイスが使用するデフォルト ネイティブ VLAN ではなく、個別の VLAN を使用してください。
一般的に、WLAN での音声接続をサポートするネットワーク スイッチと AP に、最低 3 つの VLAN を構成する必要があります。 これらの VLAN は次のとおりです。
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ボイス VLAN
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ワイヤレス IP Phone との間で送受信される音声トラフィック
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データ VLAN
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ワイヤレス PC との間で送受信されるデータ トラフィック
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ネイティブ VLAN
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その他のワイヤレス インフラストラクチャ デバイスとの間で送受信されるデータ トラフィック
SSID を音声 VLAN に割り当て、異なる SSID をデータ VLAN に割り当てます。 WLAN で別の管理 VLAN を構成する場合は、SSID を管理 VLAN に関連付けしないでください。
電話機をボイス VLAN に分離し、より高い QoS を音声パケットに割り当てることで、音声トラフィックがデータ トラフィックよりもプライオリティの高い処理を確実に受けるようにできます。その結果、パケットの遅延や損失パケットを低下させることができます。
専用帯域幅を持つ有線ネットワークとは異なり、ワイヤレス LAN では、QoA の実装時にトラフィックの方向を考慮します。 次の図に示すように、トラフィックは AP からみて、アップストリームかダウンストリームに分類されます。
図 2. ワイヤレス ネットワークでの音声トラフィック
Cisco IOS release 12.2(11)JA 以降、Cisco Aironet AP は Enhanced Distributed Coordination Function(EDCF)と呼ばれるコンテンションベースのチャネル アクセス メカニズムをサポートしています。 EDCF タイプの QoS には、ダウンストリーム(802.11b/g クライアント方向)QoS 用に最大 8 つのキューがあります。 キューは次のオプションに基づいて割り当てることができます。
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パケットの DiffServ コード ポイント(DSCP)設定
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レイヤ 2 またはレイヤ 3 アクセス リスト
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特定のトラフィックの VLAN
プライオリティ キューごとに、異なるトラフィック タイプが送信されます。 キューは次のとおりです。
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ベスト エフォート(BE)= 0、3
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バックグラウンド(BK)= 1、2
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ビデオ(VI)= 4、5
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ビデオ(VO)= 6、7
コール制御(SCCP)は UP4(VI)、音声は UP6(VO)として送信されます。
802.11b/g EDCF では音声トラフィックがデータ トラフィックから保護される保証はありませんが、このキューイング モデルを使用することで、統計的に最高の結果が得られます。
(注) |
Cisco Unified Wireless IP Phone は、コール制御パケットに DSCP 値 24、音声パケットに DSCP 値 46 をマークします。
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非決定性環境での音声伝達の信頼性を改善するため、
Cisco Unified Wireless IP Phone は IEEE 802.11e 業界規格をサポートし、Wi-Fi Multimedia(WMM)に対応しています。 WMM は、音声、ビデオ、ベストエフォート データ、およびその他のトラフィックの差別化サービスを可能にします。 ただし、これらの差別化サービスが音声パケットに十分な QoS を提供するために、一度に 1 つのチャネルで一定量の音声帯域幅だけが使用可能または許可されています。 ネットワークが予約済み帯域幅で処理可能なボイスコールが「N」個で、音声トラフィックの量がこの制限を超えた(N+1 個のコール)場合、すべてのコールの品質が低下します。
VoIP の安定性とローミングの問題に対処するには、初期コール アドミッション制御(CAC)方式が必要です。 CAC は、アクティブな音声コールが AP に設定された制限を超過しないように保証することで、ネットワークが過負荷の場合でも QoS を維持します。
Cisco Unified Wireless IP Phone は、レイヤ 2 TSpec アドミッション コントロールとレイヤ 3 Cisco Unified Communications Manager アドミッション コントロール(RSVP)を統合できます。 ネットワークが輻輳している間、発信側と着信側は、ネットワーク ビジー メッセージを受け取ります。 システムは、AP がフル キャパシティの場合でも、ワイヤレス電話クライアントが隣接 AP へローミングできる程度の帯域幅の予約を維持します。 AP が音声帯域幅制限に達すると、次のコールは、チャネル上の既存のコールの品質に影響を与えずに、隣接 AP にロード バランシングされます。
良好な音声品質を維持するために、接続されたイーサネット スイッチに QoS を実装することを推奨します。
Cisco Unified Wireless IP Phone が設定した COS および DSCP 値を変更する必要はありません。 AP で QoS を正しく設定するには、『Cisco Unified Wireless IP Phone 7925 and 7926 Series Deployment Guide』を参照してください。