音声 VLAN の設定

音声 VLAN の前提条件

音声 VLAN の前提条件は、次のとおりです。

  • 音声 VLAN 設定はデバイスのアクセスポートだけでサポートされており、トランクポートではサポートされていません。


    (注)  


    トランク ポートは、標準 VLAN と同様に、任意の数の音声 VLAN を伝送できます。トランク ポートでは、音声 VLAN の設定がサポートされません。


  • 音声 VLAN を有効にする前に、 trust device cisco-phone インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを入力し、デバイス上の QoS を有効にします。Auto QoS 機能を使用すると、これらは自動的に設定されます。

  • Cisco IP Phone にコンフィギュレーションを送信するために、Cisco IP Phone に接続するデバイスポート上で CDP をイネーブルにする必要があります。(デフォルト設定では、CDP がすべてのデバイスインターフェイスでグローバルにイネーブルです。)

音声 VLAN の制約事項

音声 VLAN には、スタティック セキュア MAC アドレスを設定できません。

音声 VLAN に関する情報

ここでは、音声 VLAN について説明します。

音声 VLAN

音声 VLAN 機能を使用すると、アクセス ポートで IP Phone からの IP 音声トラフィックを伝送できます。デバイスを Cisco 7960 IP Phone に接続すると、IP Phone はレイヤ 3 IP 値およびレイヤ 2 サービスクラス(CoS)値を使用して、音声トラフィックを送信します。どちらの値もデフォルトでは 5 に設定されます。データ送信が均質性に欠ける場合、IP Phone の音質が低下することがあります。そのため、このデバイスは IEEE 802.1p CoS に基づく Quality of Service(QoS)をサポートしています。QoS は、分類およびスケジューリングを使用して、デバイスからのネットワークトラフィックを予測可能な方法で送信します。

Cisco 7960 IP Phone は設定可能なデバイスであり、IEEE 802.1p の優先度に基づいてトラフィックを転送するように設定できます。Cisco IP Phone によって割り当てられたトラフィックの優先度を信頼したり、オーバーライドしたりするようにデバイスを設定できます。

Cisco IP Phone の音声トラフィック

Cisco IP Phone と接続するアクセス ポートを、1 つの VLAN は音声トラフィック用に、もう 1 つの VLAN は Cisco IP Phone に接続しているデバイスからのデータ トラフィック用に使用するように設定できます。Cisco Discovery Protocol(CDP)パケットを送信するよう、デバイス上のアクセスポートを設定できます。CDP パケットは、接続する IP Phone に対して、次のいずれかの方法で音声トラフィックをデバイスに送信するよう指示します。

  • レイヤ 2 CoS プライオリティ値のタグ付き音声 VLAN による送信

  • レイヤ 2 CoS プライオリティ値のタグ付きアクセス VLAN による送信

  • タグなし(レイヤ 2 CoS プライオリティ値なし)のアクセス VLAN による送信


(注)  


いずれの設定でも、音声トラフィックはレイヤ 3 IP precedence 値(音声トラフィックはデフォルトで 5、音声制御トラフィックは 3)を伝送します。


Cisco IP Phone のデータ トラフィック

デバイスは、Cisco IP Phone のアクセスポートに接続されたデバイスから送られる、タグ付きデータトラフィック(IEEE 802.1Q または IEEE 802.1p フレームタイプのトラフィック)を処理することもできます。CDP パケットを送信するよう、デバイス上のレイヤ 2 アクセスポートを設定できます。CDP パケットは、接続する IP Phone に対して、次のいずれかのモードで IP Phone アクセスポートを設定するよう指示します。

  • trusted(信頼性がある)モードでは、Cisco IP Phone のアクセス ポート経由で受信したすべてのトラフィックがそのまま IP Phone を通過します。

  • untrusted(信頼性がない)モードでは、Cisco IP Phone のアクセス ポート経由で受信した IEEE 802.1Q および IEEE 802.1p フレームのすべてのトラフィックに、設定されたレイヤ 2 CoS 値を与えます。デフォルトのレイヤ 2 CoS 値は 0 です。信頼できないモードがデフォルト設定です。


(注)  


Cisco IP Phone に接続されたデバイスからのタグなしトラフィックは、IP Phone のアクセス ポートの信頼状態に関係なく、そのまま IP Phone を通過します。


音声 VLAN 設定時の注意事項

  • Cisco 7960 IP Phone は、PC やその他のデバイスとの接続もサポートしているので、デバイスを Cisco IP Phone に接続するポートは、さまざまな種類のトラフィックを伝送できます。ポートを設定することによって、Cisco IP Phone による音声トラフィックおよびデータ トラフィックの伝送方法を決定できます。

  • IP Phone で音声 VLAN 通信が適切に行われるには、デバイス上に音声 VLAN が存在し、アクティブになっている必要があります。VLAN が存在しているかどうかを確認するには、show vlan 特権 EXEC コマンドを使用します(リストで表示されます)。VLAN がリストされていない場合は、音声 VLAN を作成します。

  • Power Over Ethernet(PoE)デバイスは、シスコ先行標準の受電デバイスまたは IEEE 802.3af 準拠の受電デバイスが AC 電源から電力を供給されていない場合に、それらの受電デバイスに自動的に電力を供給できます。

  • 音声 VLAN を設定すると、PortFast 機能が自動的にイネーブルになります。音声 VLAN をディセーブルにしても、PortFast 機能は自動的にディセーブルになりません。

  • Cisco IP Phone とその IP Phone に接続されたデバイスが同じ VLAN 上にある場合、両方とも同じ IP サブネットに属していなければなりません。次の条件が満たされている場合は、同じ VLAN 上にあります。

    • 両方とも IEEE 802.1p またはタグなしフレームを使用する。

    • Cisco IP Phone が IEEE 802.1p フレームを使用し、デバイスがタグなしフレームを使用する。

    • Cisco IP Phone がタグなしフレームを使用し、デバイスが IEEE 802.1p フレームを使用する。

    • Cisco IP Phone が IEEE 802.1Q フレームを使用し、音声 VLAN がアクセス VLAN と同じである。

  • Cisco IP Phone と IP Phone に接続されたデバイスは、同一 VLAN、同一サブネット上にあっても、使用するフレーム タイプが異なる場合は通信できません。トラフィックは同一サブネット上でルーティングされないからです(ルーティングによってフレーム タイプの相違が排除されます)。

  • 音声 VLAN ポートには次のポート タイプがあります。

    • ダイナミック アクセス ポート。

    • IEEE 802.1x 認証ポート。


      (注)  


      音声 VLAN が設定され Cisco IP Phone が接続されているアクセスポートで IEEE 802.1x を有効にした場合、その IP Phone からデバイスへの接続が最大 30 秒間失われます。


    • 保護ポート。

    • SPAN または RSPAN セッションの送信元ポートまたは宛先ポート。

    • セキュア ポート。


      (注)  


      音声 VLAN も設定しているインターフェイス上でポート セキュリティをイネーブルにする場合、ポートで許容されるセキュア アドレスの最大数を、アクセス VLAN におけるセキュア アドレスの最大数に 2 を足した数に設定する必要があります。ポートを Cisco IP Phone に接続している場合、IP Phone に最大で 2 つの MAC アドレスが必要になります。IP Phone のアドレスは、音声 VLAN で学習され、アクセス VLAN でも学習される場合があります。PC を IP Phone に接続する場合、追加の MAC アドレスが必要になります。


音声 VLAN の設定方法

ここでは、音声 VLAN の設定について説明します。

Cisco IP Phone の音声トラフィックの設定

Cisco IP Phone に CDP パケットを送信して IP Phone による音声トラフィックの送信方法を設定するように、IP Phone に接続するポートを設定できます。IP Phone は指定された音声 VLAN に、レイヤ 2 CoS 値を使用して、IEEE 802.1Q フレームの音声トラフィックを伝送できます。IEEE 802.1p のプライオリティ タグを使用すると、音声トラフィックにさらに高いプライオリティを与え、すべての音声トラフィックをネイティブ(アクセス)VLAN 経由で転送できます。Cisco IP Phone はタグなしの音声トラフィックを送信する、または独自の設定を使用してアクセス VLAN で音声トラフィックを送信することもできます。いずれの設定でも、音声トラフィックはレイヤ 3 IP precedence 値(デフォルトは 5)を伝送します。

手順の概要

  1. configure terminal
  2. interface interface-id
  3. trust device cisco-phone
  4. switchport voice vlan {vlan-id | dot1p | none | untagged}
  5. end
  6. 次のいずれかを使用します。
    • show interfaces interface-id switchport
    • show running-config interface interface-id
  7. copy running-config startup-config

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

configure terminal

例:


Device# configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 2

interface interface-id

例:


Device(config)# interface gigabitethernet1/0/1

IP Phone に接続するインターフェイスを指定し、インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

trust device cisco-phone

例:

Device(config-if)# trust device cisco-phone

Cisco IP Phone の着信トラフィック パケットを信頼するようにインターフェイスを設定します。

ステップ 4

switchport voice vlan {vlan-id | dot1p | none | untagged}

例:


Device(config-if)# switchport voice vlan dot1p

音声 VLAN を設定します。

  • vlan-id :すべての音声トラフィックが特定の VLAN を経由して転送されるように IP Phone を設定します。デフォルトでは、Cisco IP Phone は IEEE 802.1p プライオリティ 5 を使用して音声トラフィックを転送します。指定できる VLAN ID の範囲は 1 ~ 4094 です。

  • dot1p :VLAN ID 0(ネイティブ VLAN)のタグが付けられた音声およびデータ IEEE 802.1p プライオリティフレームを受け入れるよう、デバイスを設定します。デフォルトでは、デバイスは VLAN 0 のタグが付いたすべての音声およびデータトラフィックをドロップします。802.1p に対応するよう設定されると、Cisco IP Phone は IEEE 802.1p プライオリティ 5 を使用してトラフィックを転送します。

  • none :IP Phone が独自の設定を使用してタグなしの音声トラフィックを送信するようにします。

  • untagged :タグなしの音声トラフィックを送信するように電話を設定します。

ステップ 5

end

例:


Device(config-if)# end

特権 EXEC モードに戻ります。

ステップ 6

次のいずれかを使用します。

  • show interfaces interface-id switchport
  • show running-config interface interface-id

例:


Device# show interfaces gigabitethernet1/0/1 switchport

または


Device# show running-config interface gigabitethernet1/0/1

音声 VLAN の設定、または QoS および音声 VLAN の設定を確認します。

ステップ 7

copy running-config startup-config

例:


Device# copy running-config startup-config

(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。

着信データ フレームのプライオリティ設定

PC またはその他のデータ デバイスを Cisco IP Phone ポートに接続できます。タグ付きデータトラフィック(IEEE 802.1Q または IEEE 802.1p フレーム)を処理するために、CDP パケットを送信するようデバイスを設定できます。CDP パケットは Cisco IP Phone に対して、IP Phone 上のアクセスポートに接続されたデバイスからのデータパケット送信方法を指示します。PC は、CoS 値が割り当てられたパケットを生成できます。接続デバイスから IP Phone のポートに届いたフレームのプライオリティを変更しない(信頼する)または変更する(信頼しない)ように、IP Phone を設定できます。

Cisco IP Phone で非音声ポートから受信するデータ トラフィックのプライオリティを設定するには、次の手順に従います。

手順の概要

  1. enable
  2. configure terminal
  3. interface interface-id
  4. switchport priority extend { cos value | trust}
  5. end
  6. show interfaces interface-id switchport
  7. copy running-config startup-config

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

enable

例:


Device> enable

特権 EXEC モードを有効にします。

パスワードを入力します(要求された場合)。

ステップ 2

configure terminal

例:


Device# configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

interface interface-id

例:


Device(config)# interface gigabitethernet1/0/1

Cisco IP Phone に接続するインターフェイスを指定し、インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 4

switchport priority extend { cos value | trust}

例:


Device(config-if)# switchport priority extend trust

Cisco IP Phone のアクセス ポートから受信したデータ トラフィックのプライオリティを次のように設定します。

  • cos value :PC または接続しているデバイスから受信したプライオリティを、指定の CoS 値にオーバーライドするよう、IP Phone を設定します。値は 0 ~ 7 です。7 が最高のプライオリティです。デフォルトのプライオリティは、cos 0 です。

  • trust :PC または接続しているデバイスから受信したプライオリティを信頼するよう IP Phone アクセス ポートを設定します。

ステップ 5

end

例:


Device(config-if)# end

特権 EXEC モードに戻ります。

ステップ 6

show interfaces interface-id switchport

例:


Device# show interfaces gigabitethernet1/0/1 switchport

入力を確認します。

ステップ 7

copy running-config startup-config

例:


Device# copy running-config startup-config

(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。

音声 VLAN のモニタリング

インターフェイスの音声 VLAN 設定を表示するには、show interfaces interface-id switchport 特権 EXEC コマンドを使用します。

次の作業

音声 VLAN を設定した後は、次の設定を行うことができます。

  • VLAN

  • VLAN トランキング

  • VTP

音声 VLAN の機能履歴

次の表に、このモジュールで説明する機能のリリースおよび関連情報を示します。

これらの機能は、特に明記されていない限り、導入されたリリース以降のすべてのリリースで使用できます。

リリース

機能

機能情報

Cisco IOS XE Fuji 16.9.1

Voice VLAN

音声 VLAN 機能を使用すると、アクセス ポートで IP Phone からの IP 音声トラフィックを伝送できます。Cisco IP Phone に CDP パケットを送信して IP Phone による音声トラフィックの送信方法を設定するように、IP Phone に接続するポートを設定できます。IP Phone は指定された音声 VLAN に、レイヤ 2 CoS 値を使用して、IEEE 802.1Q フレームの音声トラフィックを伝送できます。

Cisco Feature Navigator を使用すると、プラットフォームおよびソフトウェアイメージのサポート情報を検索できます。Cisco Feature Navigator にアクセスするには、https://cfnng.cisco.com/ に進みます。