この製品のマニュアルセットは、偏向のない言語を使用するように配慮されています。このマニュアルセットでの偏向のない言語とは、年齢、障害、性別、人種的アイデンティティ、民族的アイデンティティ、性的指向、社会経済的地位、およびインターセクショナリティに基づく差別を意味しない言語として定義されています。製品ソフトウェアのユーザーインターフェイスにハードコードされている言語、RFP のドキュメントに基づいて使用されている言語、または参照されているサードパーティ製品で使用されている言語によりドキュメントに例外が存在する場合があります。シスコのインクルーシブランゲージに対する取り組みの詳細は、こちらをご覧ください。
このドキュメントは、米国シスコ発行ドキュメントの参考和訳です。リンク情報につきましては、日本語版掲載時点で、英語版にアップデートがあり、リンク先のページが移動/変更されている場合がありますことをご了承ください。あくまでも参考和訳となりますので、正式な内容については米国サイトのドキュメントを参照ください。
この章の内容は、次のとおりです。
MST について
(注) | このマニュアルでは、IEEE 802.1w および IEEE 802.1s を指す用語として、「スパニングツリー」を使用します。IEEE 802.1D STP について説明している箇所では、802.1D と明記します。 |
MST は、複数の VLAN を 1 つのスパニングツリー インスタンスにマップします。各インスタンスのスパニングツリー トポロジは、他のスパニングツリー インスタンスの影響を受けません。このアーキテクチャでは、データ トラフィックに対して複数のフォワーディング パスがあり、ロード バランシングが可能です。これによって、非常に多数の VLAN をサポートする際に必要な STP インスタンスの数を削減できます。
MST では、各 MST インスタンスで IEEE 802.1w 規格を採用することによって、明示的なハンドシェイクによる高速コンバージェンスが可能なため、802.1D 転送遅延がなくなり、ルート ブリッジ ポートと指定ポートが迅速にフォワーディング ステートに変わります。
MST の使用中は、MAC アドレスの削減が常にイネーブルに設定されます。この機能はディセーブルにはできません。
MST ではスパニング ツリーの動作が改善され、次の STP バージョンとの下位互換性を維持しています。
元の 802.1D スパニング ツリー
Rapid per-VLAN スパニングツリー(Rapid PVST+)
IEEE 802.1w では RSTP が定義されて、IEEE 802.1D に組み込まれました。
IEEE 802.1s では MST が定義されて、IEEE 802.1Q に組み込まれました。
(注) | MST をイネーブルにする必要があります。Rapid PVST+ は、デフォルトのスパニングツリー モードです。 |
スイッチが MSTI に参加できるようにするには、同一の MST 設定情報でスイッチの設定に整合性を持たせる必要があります。
同じ MST 設定の相互接続スイッチの集まりが MST リージョンです。MST 領域は、同じ MST 設定で MST ブリッジのグループとリンクされます。
MST 設定により、各スイッチが属する MST リージョンが制御されます。この設定には、領域の名前、バージョン番号、MST VLAN とインスタンスの割り当てマップが含まれます。
リージョンには、同一の MST コンフィギュレーションを持った 1 つまたは複数のメンバが必要です。各メンバーには、802.1w Bridge Protocol Data Unit(BPDU:ブリッジ プロトコル データ ユニット)を処理する機能が必要です。ネットワーク内の MST 領域には、数の制限はありません。
各リージョンは、最大 65 の MST インスタンス(MSTI)までサポートします。インスタンスは、1 ~ 4094 の範囲の任意の番号によって識別されます。インスタンス 0 は、特別なインスタンスである IST 用に予約されています。VLAN は、一度に 1 つの MST インスタンスに対してのみ割り当てることができます。
MST 領域は、隣接の MST 領域、他の Rapid PVST+ 領域、802.1D スパニングツリー プロトコルへの単一のブリッジとして表示されます。
(注) | ネットワークを、非常に多数の領域に分けることは推奨しません。 |
1 つの領域に含まれる MST BPDU は 1 つだけで、その BPDU により、領域内の各 MSTI について M レコードが保持されます(次の図を参照)。IST だけが MST 領域の BPDU を送信します。すべての M レコードは、IST が送信する 1 つの BPDU でカプセル化されています。MST BPDU にはすべてのインスタンスに関する情報が保持されるため、MSTI をサポートするために処理する必要がある BPDU の数は、非常に少なくなります。
MST の設定は 1 つの MST リージョン内のすべてのスイッチで同一である必要があり、ユーザが設定します。
MST 設定の次の 3 つのパラメータを設定できます。
名前:32 文字の文字列。MST 領域を指定します。ヌルで埋められ、ヌルで終了します。
リビジョン番号:現在の MST 設定のリビジョンを指定する 16 ビットの符号なし数字。
(注) | MST 設定の一部として必要な場合、リビジョン番号を設定する必要があります。リビジョン番号は、MST 設定がコミットされるごとに自動的には増やされません。 |
MST 設定テーブル:要素が 4096 あるテーブルで、サポート対象の、存在する可能性のある 4094 の各 VLAN を該当のインスタンスにアソシエートします。最初(0)と最後(4095)の要素は 0 に設定されています。要素番号 X の値は、VLAN X がマッピングされるインスタンスを表します。
注意 | VLAN/MSTI マッピングを変更すると、MST は再起動されます。 |
MST BPDU には、これらの 3 つの設定パラメータが含まれています。MST ブリッジは、これら 3 つの設定パラメータが厳密に一致する場合、MST BPDU をそのリージョンに受け入れます。設定属性が 1 つでも異なっていると、MST ブリッジでは、BPDU が別の MST 領域のものであると見なされます。
IST、CIST、CST
すべての STP インスタンスが独立している Rapid PVST+ と異なり、MST は IST、CIST、および CST スパニングツリーを次のように確立して、維持します。
MST は、それぞれの MST 領域内で追加のスパニングツリーを確立して維持します。このスパニングツリーは、Multiple Spanning Tree Instance(MSTI)と呼ばれます。
インスタンス 0 は、IST という、領域の特殊インスタンスです。IST は、すべてのポートに必ず存在します。IST(インスタンス 0)は削除できません。デフォルトでは、すべての VLAN が IST に割り当てられます。その他すべての MSTI には、1 ~ 4094 の番号が付きます。
IST は、BPDU の送受信を行う唯一の STP インスタンスです。他の MSTI 情報はすべて MST レコード(M レコード)に含まれ、MST BPDU 内でカプセル化されます。
同じリージョン内のすべての MSTI は同じプロトコル タイマーを共有しますが、各 MSTI には、ルート ブリッジ ID やルート パス コストなど、それぞれ独自のトポロジ パラメータがあります。
MSTI は、リージョンに対してローカルです。たとえば、リージョン A とリージョン B が相互接続されている場合でも、リージョン A にある MSTI 9 は、リージョン B にある MSTI 9 には依存しません。
CST は、MST 領域と、ネットワーク上で実行されている可能性がある 802.1D および 802.1w STP のインスタンスを相互接続します。CST は、ブリッジ型ネットワーク全体で 1 つ存在する STP インスタンスで、すべての MST 領域、802.1w インスタンスおよび 802.1D インスタンスを含みます。
CIST は、各 MST 領域にある IST の集まりです。CIST は、MST 領域内部の IST や、MST 領域外部の CST と同じです。
MST 領域で計算されるスパニングツリーは、スイッチ ドメイン全体を含んだ CST 内のサブツリーとして認識されます。CIST は、802.1w、802.1s、802.1D の各規格をサポートするスイッチで実行されているスパニングツリー アルゴリズムによって形成されています。MST リージョン内の CIST は、リージョン外の CST と同じです。
IST は、リージョンにあるすべての MST スイッチを接続します。IST が収束すると、IST のルートは CIST リージョナル ルートになります。ネットワークに領域が 1 つしかない場合、CIST リージョナル ルートは CIST ルートにもなります。CIST ルートがリージョン外にある場合、リージョンの境界にある MST スイッチの 1 つが、CIST リージョナル ルートとしてプロトコルにより選択されます。
MST スイッチが初期化されると、スイッチ自体を識別する BPDU が、CIST のルートおよび CIST リージョナル ルートとして送信されます。このとき、CIST ルートと CIST リージョナル ルートへのパス コストは両方ゼロに設定されます。また、スイッチはすべての MSTI を初期化し、これらすべての MSTI のルートであることを示します。現在ポートに格納されている情報よりも上位の MST ルート情報(より小さいスイッチ ID、より小さいパス コストなど)をスイッチが受信すると、CIST リージョナル ルートとしての主張を撤回します。
初期化中に、MST 領域内に独自の CIST リージョナル ルートを持つ多くのサブ リージョンが形成される場合があります。スイッチは、同じリージョンのネイバーから上位の IST 情報を受信すると、元のサブ リージョンを脱退して、真の CIST リージョナル ルートが含まれる新しいサブ リージョンに加入します。このようにして、真の CIST リージョナル ルートが含まれているサブ リージョン以外のサブ領域はすべて縮小します。
MST リージョン内のすべてのスイッチが同じ CIST リージョナル ルートを承認する必要があります。リージョン内にある任意の 2 つのスイッチは、共通 CIST リージョナル ルートに収束する場合、MSTI に対するポート ロールのみを同期します。
ネットワーク内に複数の領域、または 802.1 w や 802.1D STP インスタンスがある場合、MST はネットワーク内のすべての MST 領域、すべての 802.1w と 802.1D STP スイッチを含む CST を確立して、維持します。MSTI は、リージョンの境界で IST と結合して CST になります。
IST は、リージョン内のすべての MST スイッチを接続し、スイッチ ドメイン全体を含んだ CIST 内のサブツリーとして認識されます。サブツリーのルートは CIST リージョナル ルートです。MST リージョンは、隣接する STP スイッチや MST リージョンからは仮想スイッチとして認識されます。
次の図に、3 つの MST 領域と 802.1D(D)があるネットワークを示します。リージョン 1 の CIST リージョナル ルート(A)は、CIST ルートでもあります。リージョン 2 の CIST リージョナル ルート(B)、およびリージョン 3 の CIST リージョナル ルート(C)は、CIST 内のそれぞれのサブツリーのルートです。
BPDU を送受信するのは CST インスタンスのみです。MSTI は、そのスパニングツリー情報を BPDU に(M レコードとして)追加し、隣接スイッチと相互作用して、最終的なスパニングツリー トポロジを計算します。このため、BPDU の送信に関連するスパニングツリー パラメータ(hello タイム、転送時間、最大エージング タイム、最大ホップ カウントなど)は、CST インスタンスにのみ設定されますが、すべての MSTI に影響します。スパニングツリー トポロジに関連するパラメータ(スイッチ プライオリティ、ポート VLAN コスト、ポート VLAN プライオリティなど)は、CST インスタンスと MSTI の両方に設定できます。
MST スイッチは、802.1D 専用スイッチと通信する場合、バージョン 3 BPDU または 802.1D STP BPDU を使用します。MST スイッチは、MST スイッチと通信する場合、MST BPDU を使用します。
MST の命名規則には、内部パラメータまたはリージョナル パラメータの識別情報が含まれます。これらのパラメータは MST 領域内だけで使用され、ネットワーク全体で使用される外部パラメータと比較されます。CIST だけがネットワーク全体に広がるスパニングツリー インスタンスなので、CIST パラメータだけに外部修飾子が必要になり、修飾子またはリージョン修飾子は不要です。MST 用語を次に示します。
CIST ルートは CIST のルート ブリッジで、ネットワーク全体にまたがる一意のインスタンスです。
CIST 外部ルート パス コストは、CIST ルートまでのコストです。このコストは MST 領域内で変化しません。MST リージョンは、CIST に対する唯一のスイッチのように見えます。CIST 外部ルート パス コストは、これらの仮想スイッチとリージョンに属していないスイッチ間を計算して出したルート パス コストです。
CIST ルートが領域内にある場合、CIST リージョナル ルートは CIST ルートです。または、CIST リージョナル ルートがそのリージョンで CIST ルートに最も近いスイッチになります。CIST リージョナル ルートは、IST のルート ブリッジとして動作します。
CIST 内部ルート パス コストは、領域内の CIST リージョナル ルートまでのコストです。このコストは、IST つまりインスタンス 0 だけに関連します。
MST 領域内の STP トポロジを計算する場合、MST はコンフィギュレーション BPDU のメッセージ有効期間と最大エージング タイムの情報は使用しません。代わりに、ルートへのパス コストと、IP の存続可能時間(TTL)メカニズムに類似したホップ カウント メカニズムを使用します。
spanning-tree mst max-hops グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用すると、領域内の最大ホップ数を設定し、IST およびその領域のすべての MSTI に適用できます。
ホップ カウントは、メッセージ エージ情報と同じ結果になります(再設定を開始)。インスタンスのルート ブリッジは、コストが 0 でホップ カウントが最大値に設定された BPDU(M レコード)を常に送信します。スイッチがこの BPDU を受信すると、受信 BPDU の残存ホップ カウントから 1 だけ差し引いた値を残存ホップ カウントとする BPDU を生成し、これを伝播します。このホップ カウントが 0 になると、スイッチはその BPDU を廃棄し、ポート用に維持されていた情報を期限切れにします。
BPDU の 802.1w 部分に格納されているメッセージ有効期間および最大エージング タイムの情報は、領域全体で同じです(IST の場合のみ)。同じ値が、境界にある領域の指定ポートによって伝播されます。
スイッチがスパニングツリー設定メッセージを受信せずに再設定を試行するまで待機する秒数として最大エージング タイムを設定します。
境界ポートは、ある領域を別の領域に接続するポートです。指定ポートは、STP ブリッジを検出するか、設定が異なる MST ブリッジまたは Rapid PVST+ ブリッジから合意提案を受信すると、境界にあることを認識します。この定義により、領域の内部にある 2 つのポートが、異なる領域に属すポートとセグメントを共有できるため、ポートで内部メッセージと外部メッセージの両方を受信できる可能性があります(次の図を参照)。
境界では、MST ポートのロールは問題ではなく、そのステートは強制的に IST ポート ステートと同じに設定されます。境界フラグがポートに対してオンに設定されている場合、MST ポートのロールの選択処理では、ポートのロールが境界に割り当てられ、同じステートが IST ポートのステートとして割り当てられます。境界にある IST ポートでは、バックアップ ポートのロール以外のすべてのポートのロールを引き継ぐことができます。
現在、この機能は、IEEE MST 規格にはありませんが、規格準拠の実装に含まれています。ソフトウェアは、受信した BPDU でポートのロールおよびステートの一貫性をチェックし、ブリッジング ループの原因となることがある単方向リンク障害を検出します。
指定ポートは、矛盾を検出すると、そのロールを維持しますが、廃棄ステートに戻ります。一貫性がない場合は、接続を中断した方がブリッジング ループを解決できるからです。
次の図に、ブリッジング ループの一般的な原因となる単一方向リンク障害を示します。スイッチ A はルート ブリッジであり、スイッチ B へのリンクで BPDU は失われます。Rapid PVST+ (802.1w) および MST BPDU には、送信側ポートの役割と状態が含まれます。この情報により、スイッチ B は送信される上位 BPDU に対して反応せず、スイッチ B はルート ポートではなく指定ポートであることが、スイッチ A によって検出できます。この結果、スイッチ A は、そのポートをブロックし(またはブロックし続け)、ブリッジング ループが防止されます。ブロックは、STP の矛盾として示されます。
スパニングツリーはポート コストを使用して、指定ポートを決定します。値が低いほど、ポート コストは小さくなります。スパニングツリーでは、最小のコスト パスが選択されます。デフォルト ポート コストは、次のように、インターフェイス帯域幅から取得されます。
ポート コストを設定すると、選択されるポートが影響を受けます。
(注) | MST では常にロング パスコスト計算方式が使用されるため、有効値は 1 ~ 200,000,000 です。 |
コストが同じポートを差別化するために、ポート プライオリティが使用されます。値が小さいほど、プライオリティが高いことを示します。デフォルトのポートのプライオリティは 128 です。プライオリティは、0 ~ 224 の間の値に、32 ずつ増やして設定できます。
MST が実行されるスイッチでは、802.1D STP スイッチとの相互運用を可能にする、内蔵プロトコル移行機能がサポートされます。このスイッチで、802.1D コンフィギュレーション BPDU(プロトコル バージョンが 0 に設定されている BPDU)を受信する場合、そのポート上の 802.1D BPDU のみが送信されます。さらに、MST スイッチでは、802.1D BPDU、異なるリージョンに関連付けられている MST BPDU(バージョン 3)、または 802.1w BPDU(バージョン 2)を受信するときに、ポートがリージョンの境界にあることを検出できます。
ただし、スイッチは、802.1D BPDU を受信しなくなった場合でも、自動的には MSTP モードには戻りません。これは、802.1D スイッチが指定スイッチではない場合、802.1D スイッチがリンクから削除されたかどうかを検出できないためです。さらにスイッチは、接続先スイッチがリージョンに加入した場合であっても、引き続きポートに境界の役割を指定する可能性があります。
プロトコル移行プロセスを再開する(強制的に隣接スイッチと再ネゴシエーションさせる)には、clear spanning-tree detected-protocols コマンドを入力します。
リンク上にあるすべての Rapid PVST+ スイッチ(およびすべての 8021.D STP スイッチ)では、MST BPDU を 802.1w BPDU の場合と同様に処理できます。MST スイッチでは、境界ポート上にある、バージョン 0 コンフィギュレーションおよびトポロジ変更通知(TCN)BPDU、またはバージョン 3 MST BPDU のいずれかを送信できます。境界ポートは LAN に接続され、その指定スイッチは、単一スパニングツリー スイッチか、MST 設定が異なるスイッチのいずれかです。
(注) | MST は、MST ポート上で先行標準 MSTP を受信するたびに、シスコの先行標準マルチ スパニングツリー プロトコル(MSTP)と相互に動作します。明示的な設定は必要ありません。 |
MST は、ユーザが設定しなくても、Rapid PVST+ と相互運用できます。PVST シミュレーション機能により、このシームレスな相互運用が可能になっています。
(注) | PVST シミュレーションは、デフォルトでイネーブルになっています。つまり、スイッチ上のすべてのインターフェイスは、デフォルトで、MST と Rapid PVST+ との間で相互動作します。 |
ただし、MST と Rapid PVST+ との接続を制御し、MST 対応ポートを Rapid PVST+ 対応ポートに誤って接続するのを防止することが必要な場合もあります。Rapid PVST+ はデフォルト STP モードのため、Rapid PVST+ がイネーブルな多数の接続が検出されることがあります。
ポートごと、またはスイッチ全体にグローバルに、Rapid PVST+ シミュレーションをディセーブルにできますが、これを実行することにより、MST がイネーブルなポートが Rapid PVST+ がイネーブルなポートに接続されていることが検出されると、MST がイネーブルなポートはブロッキング ステートになります。このポートは、Rapid PVST+/SSTP BPDU の受信が停止されるまで不整合のステートのままになります。そしてポートは、通常の STP 送信プロセスに戻ります。
MST の設定
MST を設定する場合は、次の注意事項に従ってください。
MST はイネーブルにする必要があります。デフォルトは Rapid PVST+ です。
注意 | スパニング ツリー モードを変更すると、変更前のモードのスパニング ツリー インスタンスがすべて停止されて新しいモードで起動されるため、トラフィックが中断されます。また、仮想 PortChannel(vPC)ピア スイッチで 2 つの異なるスパニング ツリー モードを使用している場合、この操作は障害になります。 |
1. switch# configure terminal
2.
switch# configure terminal
3.
switch(config)# spanning-tree mode mst
4.
(任意) switch(config)# no spanning-tree mode mst
コマンドまたはアクション | 目的 |
---|
次の例は、スイッチで MST をイネーブルにする方法を示しています。
switch# configure terminal
switch(config)# spanning-tree mode mst
(注) | STP はデフォルトでイネーブルのため、設定結果を参照するために show running-config コマンドを入力しても、STP をイネーブルにするために入力したコマンドは表示されません。 |
スイッチ上で、MST の名前、VLAN からインスタンスへのマッピング、MST リビジョン番号を設定するには、MST コンフィギュレーション モードを開始します。
同じ MST リージョンにある複数のスイッチには、同じ MST の名前、VLAN からインスタンスへのマッピング、MST リビジョン番号を設定しておく必要があります。
(注) | 各コマンド参照行により、MST コンフィギュレーション モードで保留中の領域設定が作成されます。さらに、保留中の領域設定により、現在の領域設定が開始されます。 |
MST コンフィギュレーション モードで作業している場合、exit コマンドと abort コマンドとの違いに注意してください。
1. switch# configure terminal
2.
switch(config)# spanning-tree mst configuration
3. switch(config-mst)# exit or switch(config-mst)# abort
4.
(任意) switch(config)# no spanning-tree mst configuration
リージョン名は、ブリッジ上に設定します。同じ MST リージョンにある複数のブリッジには、同じ MST の名前、VLAN からインスタンスへのマッピング、MST リビジョン番号を設定しておく必要があります。
1. switch# configure terminal
2.
switch(config)# spanning-tree mst configuration
3.
switch(config-mst)# name name
コマンドまたはアクション | 目的 |
---|
次の例は、MST 領域の名前の設定方法を示しています。
switch# configure terminal
switch(config)# spanning-tree mst configuration
switch(config-mst)# name accounting
リビジョン番号は、ブリッジ上に設定します。同じ MST リージョンにある複数のブリッジには、同じ MST の名前、VLAN からインスタンスへのマッピング、MST リビジョン番号を設定しておく必要があります。
1.
switch# configure
terminal
2.
switch(config)# spanning-tree mst configuration
3.
switch(config-mst)# revision version
コマンドまたはアクション | 目的 |
---|
次の例は、MSTI リージョンのリビジョン番号を 5 に設定する方法を示しています。
switch# configure terminal
switch(config)# spanning-tree mst configuration
switch(config-mst)# revision 5
2 台以上のスイッチを同一 MST リージョン内に存在させるには、同じ VLAN からインスタンスへのマッピング、同じ構成リビジョン番号、および同じ MST の名前が設定されている必要があります。
領域には、同じ MST 設定の 1 つのメンバまたは複数のメンバを存在させることができます。各メンバでは、IEEE 802.1w RSTP BPDU を処理できる必要があります。ネットワーク内の MST 領域には、数の制限はありませんが、各リージョンでは、最大 65 までのインスタンスをサポートできます。VLAN は、一度に 1 つの MST インスタンスに対してのみ割り当てることができます。
1. switch# configure terminal
2.
switch(config)# spanning-tree mst configuration
3.
switch(config-mst)# instance instance-idvlan vlan-range
4.
switch(config-mst)# name
name
5.
switch(config-mst)# revision
version
デフォルトに戻すには、次のように操作します。
デフォルトの MST リージョン設定に戻すには、no spanning-tree mst configuration コンフィギュレーション コマンドを入力します。
VLAN インスタンス マッピングをデフォルトの設定に戻すには、no instance instance-idvlan vlan-range MST コンフィギュレーション コマンドを使用します。
デフォルトの名前に戻すには、no name MST コンフィギュレーション コマンドを入力します。
デフォルトのリビジョン番号に戻すには、no revision MST コンフィギュレーション コマンドを入力します。
Rapid PVST+ を再度イネーブルにするには、no spanning-tree mode または spanning-tree mode rapid-pvst グローバル コンフィギュレーション コマンドを入力します。
次の例は、MST コンフィギュレーション モードを開始し、VLAN 10 ~ 20 を MSTI 1 にマッピングし、領域に region1 という名前を付けて、設定リビジョンを 1 に設定し、保留中の設定を表示し、変更を適用してグローバル コンフィギュレーション モードに戻る方法を示しています。
switch(config)# spanning-tree mst configuration
switch(config-mst)# instance 1 vlan 10-20
switch(config-mst)# name region1
switch(config-mst)# revision 1
switch(config-mst)# show pending
Pending MST configuration
Name [region1]
Revision 1
Instances configured 2
Instance Vlans Mapped
-------- ---------------------
0 1-9,21-4094
1 10-20
-------------------------------
注意 | VLAN/MSTI マッピングを変更すると、MST は再起動されます。 |
(注) | MSTI はディセーブルにできません。 |
同じ MST リージョンにある複数のブリッジには、同じ MST の名前、VLAN からインスタンスへのマッピング、MST リビジョン番号を設定しておく必要があります。
1. switch# configure terminal
2.
switch(config)# spanning-tree mst configuration
3.
switch(config-mst)# instance
instance-id vlan
vlan-range
4.
switch(config-mst)# no instance instance-idvlan vlan-range
次の例は、VLAN 200 を MSTI 3 にマッピングする方法を示しています。
switch# configure terminal
switch(config)# spanning-tree mst configuration
switch(config-mst)# instance 3 vlan 200
システム上のプライベート VLAN を操作するときに、すべてのセカンダリ VLAN は、同じ MSTI とそれがアソシエートされているプライマリ VLAN に存在させておく必要があります。
1. switch# configure terminal
2.
switch(config)# spanning-tree mst configuration
3.
switch(config-mst)# private-vlan synchronize
コマンドまたはアクション | 目的 |
---|
次の例は、すべてのプライベート VLAN のすべてのセカンダリ VLAN を、それぞれ関連するプライマリ VLAN と同じ MSTI に自動的にマッピングする方法を示しています。
switch# configure terminal
switch(config)# spanning-tree mst configuration
switch(config-mst)# private-vlan synchronize
スイッチは、ルート ブリッジになるよう設定できます。
(注) | 各 MSTI のルート ブリッジは、バックボーン スイッチまたはディストリビューション スイッチである必要があります。アクセス スイッチは、スパニングツリーのプライマリ ルート ブリッジとして設定しないでください。 |
MSTI 0(または IST)でのみ使用可能な diameter キーワードを入力し、ネットワーク直径(ネットワーク内の任意の 2 つのエンド ステーション間での最大ホップ数)を指定します。ネットワークの直径を指定すると、その直径のネットワークに最適な hello タイム、転送遅延時間、および最大エージング タイムをスイッチが自動的に設定するので、コンバージェンスの所要時間を大幅に短縮できます。hello キーワードを入力すると、自動的に計算された hello タイムを上書きできます。
(注) | ルート ブリッジとして設定されているスイッチでは、hello タイム、転送遅延時間、最大エージング タイムは手動で設定(spanning-tree mst hello-time、spanning-tree mst forward-time、spanning-tree mst max-age の各グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用)しないでください。 |
1. switch# configure terminal
2.
switch(config)# spanning-tree mst instance-idroot {primary | secondary} [diameter dia [hello-time hello-time]]
3.
(任意) switch(config)# no spanning-tree mst instance-idroot
次の例は、MSTI 5 のルート スイッチとしてスイッチを設定する方法を示しています。
switch# configure terminal
switch(config)# spanning-tree mst 5 root primary
このコマンドは、複数のスイッチに対して実行し、複数のバックアップ ルート ブリッジを設定できます。spanning-tree mst root primary コンフィギュレーション コマンドでプライマリ ルート ブリッジを設定したときに使用したのと同じネットワーク直径と hello タイムの値を入力します。
1.
switch# configure
terminal
2.
switch(config)# spanning-tree mst instance-idroot {primary | secondary} [diameter dia [hello-time hello-time]]
3.
(任意) switch(config)# no
spanning-tree mst instance-idroot
次の例は、MSTI 5 のセカンダリ ルート スイッチとしてスイッチを設定する方法を示しています。
switch# configure terminal
switch(config)# spanning-tree mst 5 root secondary
ループが発生する場合、MST は、フォワーディング ステートにするインターフェイスを選択するとき、ポート プライオリティを使用します。最初に選択させるインターフェイスには低いプライオリティの値を割り当て、最後に選択させるインターフェイスには高いプライオリティの値を割り当てることができます。すべてのインターフェイスのプライオリティ値が同一である場合、MST はインターフェイス番号が最も低いインターフェイスをフォワーディング ステートにして、その他のインターフェイスをブロックします。
1.
switch# configure
terminal
2.
switch(config)# interface {{type slot/port} | {port-channel number}}
3.
switch(config-if)# spanning-tree mst instance-idport-priority priority
次の例は、イーサネット ポート 3/1 で MSTI 3 の MST インターフェイス ポート プライオリティを 64 に設定する方法を示しています。
switch# configure terminal
switch(config)# interface ethernet 3/1
switch(config-if)# spanning-tree mst 3 port-priority 64
このコマンドを使用できるのは、物理イーサネット インターフェイスに対してだけです。
MST パス コストのデフォルト値は、インターフェイスのメディア速度から算出されます。ループが発生した場合、MST は、コストを使用して、フォワーディング ステートにするインターフェイスを選択します。最初に選択させるインターフェイスには小さいコストの値を割り当て、最後に選択させるインターフェイスの値には大きいコストを割り当てることができます。すべてのインターフェイスのコスト値が同一である場合、MST はインターフェイス番号が最も低いインターフェイスをフォワーディング ステートにして、その他のインターフェイスをブロックします。
(注) | MST はロング パスコスト計算方式を使用します。 |
1. switch# configure terminal
2.
switch(config)# interface {{type slot/port} | {port-channel number}}
3.
switch(config-if)# spanning-tree mst instance-idcost [cost | auto]
次の例は、イーサネット ポート 3/1 で MSTI 4 の MST インターフェイス ポート コストを設定する方法を示しています。
switch# configure terminal
switch(config)# interface ethernet 3/1
switch(config-if)# spanning-tree mst 4 cost 17031970
MST インスタンスのスイッチのプライオリティは、指定されたポートがルート ブリッジとして選択されるように設定できます。
(注) | このコマンドの使用には注意してください。ほとんどの場合、スイッチのプライオリティを変更するには、spanning-tree mst root primary および spanning-tree mst root secondary のグローバル コンフィギュレーション コマンドの使用を推奨します。 |
1.
switch# configure
terminal
2.
switch(config)# spanning-tree mst instance-idpriority priority-value
次の例は、MSTI 5 のブリッジのプライオリティを 4096 に設定する方法を示しています。
switch# configure terminal
switch(config)# spanning-tree mst 5 priority 4096
hello タイムを変更することによって、スイッチ上のすべてのインスタンスについて、ルート ブリッジにより設定メッセージを生成する間隔を設定できます。
(注) | このコマンドの使用には注意してください。ほとんどの状況において、hello タイムを変更するには、spanning-tree mst instance-idroot primary および spanning-tree mst instance-idroot secondary コンフィギュレーション コマンドを使用するよう推奨します。 |
1.
switch# configure
terminal
2.
switch(config)# spanning-tree mst hello-time seconds
コマンドまたはアクション | 目的 |
---|
次の例は、スイッチの hello タイムを 1 秒に設定する方法を示しています。
switch# configure terminal
switch(config)# spanning-tree mst hello-time 1
スイッチ上のすべての MST インスタンスには、1 つのコマンドで転送遅延タイマーを設定できます。
1.
switch# configure
terminal
2.
switch(config)# spanning-tree mst forward-time seconds
コマンドまたはアクション | 目的 |
---|
次の例は、スイッチの転送遅延時間を 10 秒に設定する方法を示しています。
switch# configure terminal
switch(config)# spanning-tree mst forward-time 10
最大経過時間タイマーは、スイッチが、再設定を試行する前に、スパニングツリー設定メッセージの受信を待つ秒数です。
スイッチ上のすべての MST インスタンスには、1 つのコマンドで最大経過時間タイマーを設定できます(最大経過時間は IST にのみ適用されます)。
1.
switch# configure
terminal
2.
switch(config)# spanning-tree mst max-age seconds
コマンドまたはアクション | 目的 |
---|
次の例は、スイッチの最大エージング タイマーを 40 秒に設定する方法を示しています。
switch# configure terminal
switch(config)# spanning-tree mst max-age 40
MST では、IST リージョナル ルートへのパス コストと、IP の存続可能時間(TTL)メカニズムに類似したホップ カウント メカニズムが、使用されます。リージョン内の最大ホップを設定し、それを、そのリージョンにある IST とすべての MST インスタンスに適用できます。ホップ カウントは、メッセージ エージ情報と同じ結果になります(再設定を開始)。
1. switch# configure terminal
2.
switch(config)# spanning-tree mst max-hops hop-count
コマンドまたはアクション | 目的 |
---|
次の例は、最大ホップ カウントを 40 に設定する方法を示しています。
switch# configure terminal
switch(config)# spanning-tree mst max-hops 40
この自動機能は、グローバルまたはポートごとにブロックできます。グローバル コマンドを入力すると、インターフェイス コマンド モードの実行中に、スイッチ全体の PVST シミュレーション設定を変更できます。
1. switch# configure terminal
2.
switch(config)# no spanning-tree mst simulate pvst global
コマンドまたはアクション | 目的 |
---|
次の例は、Rapid PVST+ を実行している接続スイッチと自動的に相互運用することを防止するようにスイッチを設定する方法を示しています。
switch# configure terminal
switch(config)# no spanning-tree mst simulate pvst global
MST は、Rapid PVST+ とシームレスに相互動作します。ただし、デフォルト STP モードとして MST が実行されていないスイッチへの誤った接続を防ぐため、この自動機能をディセーブルにする必要が生じる場合があります。Rapid PVST+ シミュレーションをディセーブルにした場合、MST がイネーブルなポートが Rapid PVST+ がイネーブルなポートに接続されていることが検出されると、MST がイネーブルなポートは、ブロッキング ステートに移行します。このポートは、BPDU の受信が停止されるまで、一貫性のないステートのままになり、それから、ポートは、通常の STP 送信プロセスに戻ります。
この自動機能は、グローバルまたはポートごとにブロックできます。
1. switch# configure terminal
2.
switch(config)# interface {{type slot/port} | {port-channel number}}
3.
switch(config-if)# spanning-tree mst simulate pvst disable
4.
switch(config-if)# spanning-tree mst simulate pvst
5.
switch(config-if)# no spanning-tree mst simulate pvst
次の例は、MST を実行していない接続スイッチと自動的に相互運用することを防止するように指定インターフェイスを設定する方法を示しています。
switch# configure terminal
switch(config)# interface ethernet 1/4
switch(config-if)# spanning-tree mst simulate pvst disable
Rapid の接続性(802.1w 規格)は、ポイントツーポイントのリンク上でのみ確立されます。リンク タイプは、デフォルトでは、インターフェイスのデュプレックス モードから制御されます。全二重ポートはポイントツーポイント接続であると見なされ、半二重ポートは共有接続であると見なされます。
リモート スイッチの 1 つのポートに、ポイントツーポイントで物理的に接続されている半二重リンクがある場合、リンク タイプのデフォルト設定を上書きし、高速移行をイネーブルにできます。
リンクを共有に設定すると、STP は 802.1D に戻されます。
1.
switch# configure terminal
2.
switch(config)# interface type slot/port
3.
switch(config-if)# spanning-tree link-type {auto | point-to-point | shared}
次の例は、リンク タイプをポイントツーポイントとして設定する方法を示しています。
switch# configure terminal
switch (config)# interface ethernet 1/4
switch(config-if)# spanning-tree link-type point-to-point
MST ブリッジでは、レガシー BPDU または異なるリージョンに関連付けられている MST BPDU を受信するときに、ポートがリージョンの境界にあることを検出できます。ただし、STP プロトコルの移行では、レガシー スイッチが指定スイッチではない場合、IEEE 802.1D のみが実行されているレガシー スイッチが、リンクから削除されたかどうかを認識できません。スイッチ全体または指定したインターフェイスでプロトコル ネゴシエーションを再開する(強制的に隣接スイッチと再ネゴシエーションさせる)には、このコマンドを入力します。
1.
switch# clear spanning-tree detected-protocol [interface interface [interface-num | port-channel]]
コマンドまたはアクション | 目的 |
---|
次の例は、スロット 2、ポート 8 のイーサネット インターフェイスで MST を再起動する方法を示しています。
switch# clear spanning-tree detected-protocol interface ethernet 2/8
MST の設定情報を表示するには、次のコマンドを使用します。
コマンド |
目的 |
---|---|
show running-config spanning-tree [all] |
現在のスパニングツリー設定を表示します。 |
show spanning-tree mst [options] |
現在の MST 設定の詳細情報を表示します。 |
次に、現在の MST 設定を表示する方法を示します。
switch# show spanning-tree mst configuration
% Switch is not in mst mode
Name [mist-attempt]
Revision 1 Instances configured 2
Instance Vlans mapped
-------- ---------------------------------------------------------------------
0 1-12,14-41,43-4094
1 13,42