LAN-to-LAN IPsec VPN

LAN-to-LAN VPN は、地理的に異なる場所にあるネットワークを接続します。

シスコのピアや、関連するすべての標準に準拠したサードパーティのピアとの LAN-to-LAN IPsec 接続を作成できます。これらのピアは、IPv4 と IPv6 のアドレッシングを使用して、内部アドレスと外部アドレスの任意の組み合わせを持つことができます。

この章では、LAN-to-LAN VPN 接続の構築方法について説明します。

コンフィギュレーションのまとめ

ここでは、この章で説明するサンプルの LAN-to-LAN コンフィギュレーションの概要を説明します。後の項で、手順の詳細を説明します。


hostname(config)# interface ethernet0/0
hostname(config-if)# ip address 10.10.4.100 255.255.0.0
hostname(config-if)# nameif outside
hostname(config-if)# no shutdown
hostname(config)# crypto ikev1 policy 1 
hostname(config-ikev1-policy)# authentication pre-share
hostname(config-ikev1-policy)# encryption aes 
hostname(config-ikev1-policy)# hash sha
hostname(config-ikev1-policy)# group 2
hostname(config-ikev1-policy)# lifetime 43200
hostname(config)# crypto ikev1 enable outside
hostname(config)# crypto ikev2 policy 1
hostname(config-ikev2-policy)# # encryption aes  
hostname(config-ikev2-policy)# group 2
hostname(config-ikev12-policy)# prf sha
hostname(config-ikev2-policy)# lifetime 43200
hostname(config)# crypto ikev2 enable outside
hostname(config)#  crypto ipsec ikev1 transform-set FirstSet esp-aes esp-sha-hmac  
hostname(config)# crypto ipsec ikev2 ipsec-proposal secure
hostname(config-ipsec-proposal)# protocol esp encryption aes  
hostname(config-ipsec-proposal)# protocol esp integrity sha-1
hostname(config)# access-list l2l_list extended permit ip 192.168.0.0 255.255.0.0 150.150.0.0 255.255.0.0
hostname(config)# tunnel-group 10.10.4.108 type ipsec-l2l
hostname(config)# tunnel-group 10.10.4.108 ipsec-attributes
hostname(config-tunnel-ipsec)# ikev1 pre-shared-key 44kkaol59636jnfx
hostname(config)# crypto map abcmap 1 match address l2l_list
hostname(config)# crypto map abcmap 1 set peer 10.10.4.108
hostname(config)# crypto map abcmap 1 set ikev1 transform-set FirstSet
hostname(config)# crypto map abcmap 1 set ikev2 ipsec-proposal secure
hostname(config)# crypto map abcmap interface outside
hostname(config)# write memory

マルチコンテキスト モードでのサイトツーサイト VPN の設定

マルチモードでサイトツーサイト VPN をサポートするには、次の手順を実行します。これらの手順を実行して、リソース割り当てがどのように分解されるのかを確認できます。

手順


ステップ 1

マルチモードの VPN を設定し、リソース クラスを設定し、許可されたリソースの一部として VPN ライセンスを選択します。「Configuring a Class for Resource Management」で、これらの設定手順を説明します。次に設定例を示します。


class ctx1
	limit-resource VPN Burst Other 100
	limit-resource VPN Other 1000
ステップ 2

コンテキストを設定し、VPN ライセンスを許可する設定したクラスのメンバーにします。次に設定例を示します。


context context1
	member ctx1
	allocate-interface GigabitEthernet3/0.2
	allocate-interface GigabitEthernet3/1.2
	allocate-interface Management0/0
	config-url disk0:/sm_s2s_ik1_ip4_no_webvpn.txt
	join-failover-group 1
ステップ 3

接続プロファイル、ポリシー、クリプト マップなどを、サイトツーサイト VPN のシングル コンテキストの VPN 設定と同様に設定します。


インターフェイスの設定

ASA には、少なくとも 2 つのインターフェイスがあり、これらをここでは外部および内部と言います。一般に、外部インターフェイスはパブリック インターネットに接続されます。一方、内部インターフェイスはプライベート ネットワークに接続され、一般のアクセスから保護されます。

最初に、ASA の 2 つのインターフェイスを設定し、イネーブルにします。次に、名前、IP アドレス、およびサブネット マスクを割り当てます。オプションで、セキュリティ レベル、速度、およびセキュリティ アプライアンスでの二重操作を設定します。


(注)  

ASA の外部インターフェイス アドレス(IPv4 と IPv6 の両方)は、プライベート側のアドレス空間と重複していてはなりません。


手順


ステップ 1

インターフェイス コンフィギュレーション モードに入るには、グローバル コンフィギュレーション モードで、設定するインターフェイスのデフォルト名を指定して interface コマンドを入力します。次の例で、インターフェイスは ethernet0 です。


hostname(config)# interface ethernet0/0
hostname(config-if)#
ステップ 2

インターフェイスの IP アドレスとサブネット マスクを設定するには、ip address コマンドを入力します。次の例で、IP アドレスは 10.10.4.100、サブネット マスクは 255.255.0.0 です。


hostname(config-if)# ip address 10.10.4.100 255.255.0.0
hostname(config-if)#
ステップ 3

インターフェイスに名前を付けるには、nameif コマンドを入力します。最大 48 文字です。この名前は、設定した後での変更はできません。次の例で、ethernet0 インターフェイスの名前は outside です。


hostname(config-if)# nameif outside
hostname(config-if)##
ステップ 4

インターフェイスをイネーブルにするには、shutdown コマンドの no バージョンを入力します。デフォルトでは、インターフェイスはディセーブルです。


hostname(config-if)# no shutdown
hostname(config-if)#
ステップ 5

変更を保存するには、write memory コマンドを入力します。


hostname(config-if)# write memory
hostname(config-if)#
ステップ 6

同じ手順で、2 番目のインターフェイスを設定します。


ISAKMP ポリシーの設定と外部インターフェイスでの ISAKMP のイネーブル化

ISAKMP は、2 台のホストで IPsec Security Association(SA; セキュリティ アソシエーション)の構築方法を一致させるためのネゴシエーション プロトコルです。これは、SA 属性のフォーマットに合意するための共通のフレームワークを提供します。これには、SA に関するピアとのネゴシエーション、および SA の変更または削除が含まれます。ISAKMP のネゴシエーションは 2 つのフェーズ(フェーズ 1 とフェーズ 2)に分かれています。フェーズ 1 は、以後の ISAKMP ネゴシエーション メッセージを保護する最初のトンネルを作成します。フェーズ 2 では、データを保護するトンネルが作成されます。

IKE は、IPsec を使用するための SA の設定に ISAKMP を使用します。IKE は、ピアの認証に使用される暗号キーを作成します。

ASA は、レガシー Cisco VPN Client から接続するための IKEv1、および AnyConnect VPN クライアントの IKEv2 をサポートしています。

ISAKMP ネゴシエーションの条件を設定するには、IKE ポリシーを作成します。このポリシーには、次のものが含まれます。

  • IKEv1 ピアに要求する認証タイプ。証明書を使用する RSA 署名または事前共有キー(PSK)です。

  • データを保護し、プライバシーを守る暗号化方式。

  • 送信者を特定し、搬送中にメッセージが変更されていないことを保証する Hashed Message Authentication Code(HMAC)方式。

  • 暗号キー決定アルゴリズムの強度を決定するデフィーヘルマン グループ。ASA はこのアルゴリズムを使用して、暗号キーとハッシュ キーを導出します。

  • IKEv2 では、別個の Pseudo-Random Function(PRF; 疑似乱数関数)をアルゴリズムとして使用して、IKEv2 トンネルの暗号化に必要なキー関連情報とハッシュ操作を取得していました。

  • ASA が暗号キーを使用する時間の制限。この時間が経過すると暗号キーを置き換えます。

IKEv1 ポリシーを使用して、パラメータごとに 1 つの値を設定します。IKEv2 では、単一のポリシーに対して、複数の暗号化タイプと認証タイプ、および複数の整合性アルゴリズムを設定できます。ASA は、設定をセキュア度が最も高いものから最も低いものに並べ替え、その順序を使用してピアとのネゴシエーションを行います。これによって、IKEv1 と同様に、許可される各組み合わせを送信することなく、許可されるすべてのトランスフォームを伝送するために単一のプロポーザルを送信できます。

ここでは、IKEv1 および IKEv2 ポリシーを作成して、インターフェイスでイネーブルにする手順について説明します。

IKEv1 接続の ISAKMP ポリシーの設定

IKEv1 接続の ISAKMP ポリシーを設定するには、crypto ikev1 policy priority コマンドを使用して IKEv1 ポリシー コンフィギュレーション モードを開始します。ここでは IKEv1 のパラメータを設定できます。

手順


ステップ 1

IPSec IKEv1 ポリシー コンフィギュレーション モードを開始します。次に例を示します。


hostname(config)# crypto ikev1 policy 1
hostname(config-ikev1-policy)#

ステップ 2

認証方式を設定します。次の例では、事前共有キーを設定します。


hostname(config-ikev1-policy)# authentication pre-share
hostname(config-ikev1-policy)#

ステップ 3

暗号方式を設定します。次に、 を設定する例を示します。


hostname(config-ikev1-policy)# encryption aes
hostname(config-ikev1-policy)#

ステップ 4

HMAC 方式を設定します。次の例では、SHA-1 に設定します。


hostname(config-ikev1-policy)# hash sha
hostname(config-ikev1-policy)#

ステップ 5

Diffie-Hellman グループを設定します。次に、グループ 14 を設定する例を示します。


hostname(config-ikev1-policy)# group 14
hostname(config-ikev1-policy)#

ステップ 6

暗号キーのライフタイムを設定します。次の例では、43,200 秒(12 時間)に設定します。


hostname(config-ikev1-policy)# lifetime 43200
hostname(config-ikev1-policy)#

ステップ 7

シングル コンテキスト モードまたはマルチ コンテキスト モードで、outside というインターフェイス上の IKEv1 をイネーブルにします。


hostname(config)# crypto ikev1 enable outside
hostname(config)#

ステップ 8

変更を保存するには、write memory コマンドを入力します。


hostname(config)# write memory
hostname(config)#


IKEv2 接続の ISAKMP ポリシーの設定

IKEv2 接続の ISAKMP ポリシーを設定するには、crypto ikev2 policy priority コマンドを使用して IKEv2 ポリシー コンフィギュレーション モードを開始します。ここでは IKEv2 のパラメータを設定できます。

手順


ステップ 1

IPsec IKEv2 ポリシー コンフィギュレーション モードを開始します。次に例を示します。

hostname(config)# crypto ikev2 policy 1
hostname(config-ikev2-policy)#

ステップ 2

暗号方式を設定します。次に、AES を設定する例を示します。

hostname(config-ikev2-policy)# encryption aes
hostname(config-ikev2-policy)#

ステップ 3

Diffie-Hellman グループを設定します。次に、グループ 15 を設定する例を示します。

hostname(config-ikev2-policy)# group 15
hostname(config-ikev2-policy)#

ステップ 4

アルゴリズムとして使用する疑似乱数関数(PRF)を設定し、IKEv2 トンネルの暗号化に必要なキー関連情報とハッシュ操作を取得します。次の例では、SHA-1(HMAC バリアント)を設定します。

hostname(config-ikev12-policy)# prf sha
hostname(config-ikev2-policy)#

ステップ 5

暗号キーのライフタイムを設定します。次の例では、43,200 秒(12 時間)に設定します。

hostname(config-ikev2-policy)# lifetime seconds 43200
hostname(config-ikev2-policy)#

ステップ 6

outside というインターフェイス上の IKEv2 をイネーブルにします。

hostname(config)# crypto ikev2 enable outside
hostname(config)#

ステップ 7

変更を保存するには、write memory コマンドを入力します。

hostname(config)# write memory
hostname(config)#


IKEv1 トランスフォーム セットの作成

IKEv1 トランスフォーム セットは、暗号化方式と認証方式を組み合わせたものです。特定のデータ フローを保護する場合、ピアは、ISAKMP との IPsec セキュリティ アソシエーションのネゴシエート中に、特定のトランスフォーム セットを使用することに同意します。トランスフォーム セットは、両方のピアで同じである必要があります。

トランスフォーム セットにより、関連付けられたクリプト マップ エントリで指定された ACL のデータ フローが保護されます。ASA 設定でトランスフォーム セットを作成して、クリプト マップまたはダイナミック クリプト マップ エントリでトランスフォーム セットの最大数 11 を指定できます。

次の表に、有効な暗号化方式と認証方式を示します。

表 1. 有効な暗号化方式と認証方式

有効な暗号化方式

有効な認証方式

esp-sha-hmac(デフォルト)

esp-aes(128 ビット暗号化)(デフォルト)

esp-aes-192

esp-aes-256

esp-null

パブリック インターネットなどの非信頼ネットワークを介して接続された 2 つの ASA 間で IPsec を実装する通常の方法は、トンネル モードです。トンネル モードはデフォルトであり、設定は必要ありません。

トランスフォーム セットを設定するには、シングル コンテキスト モードまたはマルチ コンテキスト モードで次のサイト間タスクを実行します。

手順


ステップ 1

グローバル コンフィギュレーション モードで、crypto ipsec ikev1 transform-set コマンドを入力します。次の例では、名前が FirstSet で、暗号化と認証に esp-aesesp-sha-hmac を使用するトランスフォームセットを設定しています。構文は次のようになります。

esp-sha-hmac(デフォルト)

crypto ipsec ikev1 transform-set transform-set-nameencryption-method authentication-method

hostname(config)# 
crypto ipsec transform-set FirstSet esp-aes esp-sha-hmac
hostname(config)#

ステップ 2

変更を保存します。

hostname(config)# write memory
hostname(config)#


IKEv2 プロポーザルの作成

IKEv2 では、単一のポリシーに対して、複数の暗号化タイプと認証タイプ、および複数の整合性アルゴリズムを設定できます。ASA は、設定をセキュア度が最も高いものから最も低いものに並べ替え、その順序を使用してピアとのネゴシエーションを行います。これによって、IKEv1 と同様に、許可される各組み合わせを送信することなく、許可されるすべてのトランスフォームを伝送するために単一のプロポーザルを送信できます。

次の表に、有効な IKEv2 暗号化方式と認証方式を示します。

表 2. 有効な IKEv2 暗号化方式と整合性方式

有効な暗号化方式

有効な整合性方式

sha(デフォルト)

aes (デフォルト):128 ビットキーを使用した AES

aes-192

aes-256

IKEv2 プロポーザルを設定するには、シングル コンテキスト モードまたはマルチ コンテキスト モードで次のタスクを実行します。

手順


ステップ 1

グローバル コンフィギュレーション モードで crypto ipsec ikev2 ipsec-proposal コマンドを使用して、プロポーザルの複数の暗号化および整合性タイプを指定できる IPSec プロポーザル コンフィギュレーション モードを開始します。この例では、secure がプロポーザルの名前です。

hostname(config)# crypto ipsec ikev2 ipsec-proposal secure
hostname(config-ipsec-proposal)#

ステップ 2

次に、プロトコルおよび暗号化タイプを入力します。サポートされている唯一のプロトコルは ESP です。次に例を示します。

hostname(config-ipsec-proposal)# protocol esp encryption aes

hostname(config-ipsec-proposal)#

ステップ 3

整合性タイプを入力します。次に例を示します。

hostname(config-ipsec-proposal)# protocol esp integrity sha-1
hostname(config-ipsec-proposal)#

ステップ 4

変更を保存します。


ACL の設定

ASA は、アクセス コントロール リストを使用してネットワーク アクセスをコントロールします。デフォルトでは、適応型セキュリティ アプライアンスはすべてのトラフィックを拒否します。トラフィックを許可する ACL を設定する必要があります。詳細については、一般的操作用コンフィギュレーション ガイドの「Information About Access Control Lists」を参照してください。

この LAN-to-LAN VPN 制御接続で設定する ACL は、送信元 IP アドレスと変換された宛先 IP アドレス、および任意指定のポートに基づいています。接続の両側に、互いにミラーリングする ACL を設定します。

VPN トラフィック用の ACL は、変換アドレスを使用します。


(注)  

VPN フィルタを使用した ACL の設定方法の詳細については、リモート アクセスの VLAN の指定またはグループ ポリシーへの統合アクセス コントロール ルールの適用を参照してください。


手順


ステップ 1

access-list extended コマンドを入力します。

access-list listname extended permit ip source-ipaddress source-netmask destination-ipaddress destination-netmask

次の例では、192.168.0.0 のネットワーク内にある IP アドレスから 150.150.0.0 のネットワークにトラフィックを送信する、l2l_list という名前の ACL を設定します。


hostname(config)# access-list l2l_list extended permit ip 192.168.0.0 255.255.0.0 150.150.0.0 255.255.0.0
hostname(config)#
ステップ 2

ACL をミラーリングする接続のもう一方の側の ASA に、ACL を設定します。

1 つのクリプトマップの ACL で定義されたサブネット、または同じクリプトマップに接続された 2 つの異なる暗号 ACLで定義されたサブネットは重複できません。

次の例では、該当ピアのプロンプトは hostname2 です。


hostname2(config)# access-list l2l_list extended permit ip 150.150.0.0 255.255.0.0 192.168.0.0 255.255.0.0
hostname(config)#

トンネル グループの定義

トンネル グループは、トンネル接続ポリシーを格納したレコードのセットです。AAA サーバーを識別するトンネル グループを設定し、接続パラメータを指定し、デフォルトのグループ ポリシーを定義します。ASA は、トンネル グループを内部的に保存します。

ASA には、2 つのデフォルト トンネル グループがあります。1 つはデフォルトの IPsec リモート アクセス トンネル グループである DefaultRAGroup で、もう 1 つはデフォルトの IPsec LAN-to-LAN トンネル グループである DefaultL2Lgroup です。これらは変更可能ですが、削除はできません。

IKE バージョン 1 および 2 の主な相違点は、使用できる認証方式にあります。IKEv1 では、両方の VPN エンドで 1 つのタイプの認証のみが許可されます(つまり、事前共有キーまたは証明書)。しかし、IKEv2 では、別のローカルおよびリモート認証 CLI を使用して非対称認証方式を設定できます(つまり、送信元に対しては事前共有キー認証を設定し、応答側に対しては証明書認証を設定できます)。したがって、IKEv2 を使用すると、両方の側がそれぞれ異なるクレデンシャルで認証する非対称認証を使用できます(事前共有キーまたは証明書)。

また、環境に合った新しいトンネル グループを 1 つ以上作成することもできます。トンネル ネゴシエーションで識別された特定のトンネル グループがない場合は、ASA は、これらのグループを使用して、リモート アクセスおよび LAN-to-LAN トンネル グループのデフォルト トンネル パラメータを設定します。

基本的な LAN-to-LAN 接続を確立するには、次のように 2 つの属性をトンネル グループに設定する必要があります。

  • 接続タイプを IPsec LAN-to-LAN に設定します。

  • IP アドレスの認証方式(つまり、IKEv1 と IKEv2 用の事前共有キー)を設定します。

手順


ステップ 1

接続タイプを IPsec LAN-to-LAN に設定するには、 tunnel-group コマンドを入力します。

構文は、tunnel-group nametype type です。ここで、name はトンネル グループに割り当てる名前であり、type はトンネルのタイプです。CLI で入力するトンネル タイプは次のとおりです。

  • remote-access (IPsec、SSL、およびクライアントレス SSL リモート アクセス)

  • ipsec-l2l (IPsec LAN-to-LAN)

次の例では、トンネル グループの名前は、LAN-to-LAN ピアの IP アドレスである 10.10.4.108 です。


hostname(config)# tunnel-group 10.10.4.108 type ipsec-l2l
hostname(config)#
(注)   

IP アドレス以外の名前が付いている LAN-to-LAN トンネル グループは、トンネル認証方式がデジタル証明書である、またはピアが Aggressive モードを使用するように設定されている(あるいはその両方の)場合に限り使用できます。

ステップ 2

事前共有キーを使用するように認証方式を設定するには、ipsec 属性モードに入り、ikev1pre-shared-key コマンドを入力して事前共有キーを作成します。この LAN-to-LAN 接続の両方の ASA で、同じ事前共有キーを使用する必要があります。

キーは、1 ~ 128 文字の英数字文字列です。

次の例で、IKEv1 事前共有キーは 44kkaol59636jnfx です。


hostname(config)# tunnel-group 10.10.4.108 ipsec-attributes
hostname(config-tunnel-ipsec)# ikev1-pre-shared-key 44kkaol59636jnfx

ステップ 3

変更を保存します。


hostname(config)# write memory
hostname(config)#


トンネルが稼働中であることを確認するには、show vpn-sessiondb summaryshow vpn-sessiondb detail l2l、または show crypto ipsec sa コマンドを使用します。


クリプト マップの作成とインターフェイスへの適用

クリプト マップ エントリは、IPsec セキュリティ アソシエーションの次のような各種要素をまとめたものです。

  • IPsec で保護する必要のあるトラフィック(ACL で定義)

  • IPsec で保護されたトラフィックの送信先(ピアで指定)

  • トラフィックに適用される IPsec セキュリティ(トランスフォーム セットで指定)

  • IPsec トラフィックのローカル アドレス(インターフェイスにクリプト マップを適用して指定)

IPsec が成功するためには、両方のピアに互換性のあるコンフィギュレーションを持つクリプト マップ エントリが存在する必要があります。2 つのクリプト マップ エントリが互換性を持つためには、両者が少なくとも次の基準を満たす必要があります。

  • クリプト マップ エントリに、互換性を持つ暗号 ACL(たとえば、ミラー イメージ ACL)が含まれている。応答するピアがダイナミック クリプト マップを使用している場合は、ASA の暗号 ACL のエントリがピアの暗号 ACL によって「許可」されている必要があります。

  • 各クリプト マップ エントリが他のピアを識別する(応答するピアがダイナミック クリプト マップを使用していない場合)。

  • クリプト マップ エントリに、共通のトランスフォーム セットが少なくとも 1 つ存在する。

所定のインターフェイスに対して複数のクリプト マップ エントリを作成する場合は、各エントリのシーケンス番号(seq-num)を使用して、エントリにランクを付けます。seq-num が小さいほど、プライオリティが高くなります。クリプト マップ セットを持つインターフェイスでは、ASA はまずトラフィックをプライオリティの高いマップ エントリと照合して評価します。

リバース ルート インジェクション(RRI)がクリプト マップに適用されている場合、そのマップは ASA 上のインターフェイスごとに一意である必要があります。つまり、同じクリプト マップは複数のインターフェイスに適用できないということです。複数のクリプト マップを複数のインターフェイスに適用すると、ルートが正しくクリーンアップされないことがあります。複数のインターフェイスに 1 つのクリプト マップが必要な場合は、一意に定義したマップを各ルートで使用する必要があります。

次の条件のいずれかに当てはまる場合は、所定のインターフェイスに対して複数のクリプト マップ エントリを作成します。

  • 複数のピアで異なるデータ フローを処理する場合。

  • 異なるタイプのトラフィック(同一または個別のピアへの)に異なる IPsec セキュリティを適用する場合。たとえば、あるサブネット セット間のトラフィックは認証し、別のサブネット セット間のトラフィックは認証および暗号化するような場合です。この場合は、異なるタイプのトラフィックを 2 つの個別の ACL で定義し、各 暗号 ACL に対して個別にクリプト マップ エントリを作成します。


(注)  


クリプト マップを作成してグローバル コンフィギュレーション モードで外部インターフェイスに適用するには、シングル コンテキスト モードまたはマルチ コンテキスト モードで次の手順を実行します。

手順


ステップ 1

ACL をクリプト マップ エントリに割り当てるには、crypto map match address コマンドを入力します。

構文は、crypto map map-name seq-num match address aclname です。次の例では、マップ名は abcmap、シーケンス番号は 1、ACL 名は l2l_list です。

hostname(config)# crypto map abcmap 1 match address l2l_list
hostname(config)#

ステップ 2

IPsec 接続用のピアを指定するには、crypto map set peer コマンドを入力します。

構文は、crypto map map-name seq-num set peer { ip_address1 | hostname1}[... ip_address10 | hostname10] です。次の例では、ピア名は 10.10.4.108 です。

hostname(config)# crypto map abcmap 1 set peer 10.10.4.108
hostname(config)#

ステップ 3

クリプト マップ エントリに IKEv1 トランスフォーム セットを指定するには、 crypto map ikev1 set transform-set コマンドを入力します。

構文は、crypto map map-name seq-num ikev1 set transform-set transform-set-name です。
次の例では、トランスフォームセット名は FirstSet です。

hostname(config)# crypto map abcmap 1 set transform-set FirstSet
hostname(config)#

ステップ 4

クリプト マップ エントリに IKEv2 プロポーザルを指定するには、crypto map ikev2 set ipsec-proposal コマンドを入力します。

構文は、crypto map map-name seq-num set ikev2 ipsec-proposal proposal-name です。
次の例では、プロポーザル名は secure です。

crypto map コマンドでは、1 つのマップ インデックスに複数の IPsec プロポーザルを指定できます。この場合、複数のプロポーザルがネゴシエーションの一部として IKEv2 ピアに送信され、プロポーザルの順序はクリプト マップ エントリの順序付け時に管理者が決定します。

(注)   

連結モード(AES-GCM/GMAC)および通常モード(その他すべて)のアルゴリズムが IPsec プロポーザルにある場合、ピアに単一のプロポーザルを送信できません。この場合、2 つのプロポーザルが必要となります(連結モードのアルゴリズムに 1 つ、通常モードのアルゴリズムに 1 つ)。

hostname(config)# crypto map abcmap 1 set ikev2 ipsec-proposal secure
hostname(config)#


クリプト マップのインターフェイスへの適用

クリプト マップ セットは、IPsec トラフィックが通過する各インターフェイスに適用する必要があります。ASA は、すべてのインターフェイスで IPsec をサポートします。クリプト マップ セットをインターフェイスに適用すると、ASA はすべてのインターフェイス トラフィックをクリプト マップ セットと照合して評価し、接続時やセキュリティ アソシエーションのネゴシエート時に、指定されたポリシーを使用します。

また、クリプト マップをインターフェイスにバインドすると、セキュリティ アソシエーション データベースやセキュリティ ポリシー データベースなどのランタイム データ構造も初期化されます。クリプト マップを後から変更すると、ASA は自動的にその変更を実行コンフィギュレーションに適用します。既存の接続はすべてドロップされ、新しいクリプト マップの適用後に再確立されます。

設定済みのクリプト マップを外部インターフェイスに適用するには、次の手順を実行します。

手順


ステップ 1

crypto map interface コマンドを入力します。構文は、crypto map map-name interface interface-name です。


hostname(config)# crypto map abcmap interface outside
hostname(config)#
ステップ 2

変更を保存します。


hostname(config)# write memory
hostname(config)#