Cisco Penn 1:電力分析ソリューションの概要

ダウンロード オプション

  • PDF
    (2.1 MB)
    Adobe Reader を使ってさまざまなデバイスで表示
Updated: 2023 年 12 月 11 日

偏向のない言語

この製品のドキュメントセットは、偏向のない言語を使用するように配慮されています。このドキュメントセットでの偏向のない言語とは、年齢、障害、性別、人種的アイデンティティ、民族的アイデンティティ、性的指向、社会経済的地位、およびインターセクショナリティに基づく差別を意味しない言語として定義されています。製品ソフトウェアのユーザインターフェイスにハードコードされている言語、RFP のドキュメントに基づいて使用されている言語、または参照されているサードパーティ製品で使用されている言語によりドキュメントに例外が存在する場合があります。シスコのインクルーシブ ランゲージの取り組みの詳細は、こちらをご覧ください。

翻訳について

このドキュメントは、米国シスコ発行ドキュメントの参考和訳です。リンク情報につきましては、日本語版掲載時点で、英語版にアップデートがあり、リンク先のページが移動/変更されている場合がありますことをご了承ください。あくまでも参考和訳となりますので、正式な内容については米国サイトのドキュメントを参照ください。

ダウンロード オプション

  • PDF
    (2.1 MB)
    Adobe Reader を使ってさまざまなデバイスで表示
Updated: 2023 年 12 月 11 日

目次

 

 

背景

 

シスコでは 2021 年当時、オフィス Penn 1 の改装前はオフィススペースをリースしており、6 階と 9 階両方のスペースを使用していました。オフィスはコロナ禍の影響により 2020 3 9 日に閉鎖されましたが、改装を経て 2022 4 4 日に再開されました。ハイブリッドワークに適した新設計を採用することでスペースの使用を最適化することに成功し、改装後のオフィススペースは 9 階のみとなり、オフィスの専有面積は 25% 削減されました。

Penn 1 が持続可能性の面で注意を引く要素の 1 つは、スマートビルディングへの改装による電力効率の向上です。以下の節電に関する分析では、シスコが保有している 1 フロアのデータを比較対象としたため、電力データが指しているのは同じ大きさのフロアです。実際にはオフィスの規模縮小により電力効率が向上していますが、この節電効果は分析には含まれていません。

手法

Penn 1 内のシスコオフィスの請求明細は、Vornado Realty Trust Energy Information PortalEIPから入手しました。以下の表 1 に示すように、Vornado 社の月次の明細には電力の合計使用量と料金の詳細に加え、9 階にある 9 ヵ所の電気メーターの内訳も記載されていました。この 9 ヵ所のメーターは、下の図 2 に示すように、Penn 1 の間取り図に示す電気設備室と物理配線で対応付けられていました。どのサービスが各メーターと関係があるのかを判断できる情報はないため、改装前後の電力比較はフロア全体でのみ行っています。

Layout of the 9th floor pre-retrofit

図 1.                           

改装前の 9 階のレイアウト

Related image, diagram or screenshot

図 2.                           

改装後の 9 階のレイアウト

表 1.                    9 階の電気メーターの設置場所

メーター番号

場所

電気設備室(下記 ABCDE が各画像に対応)

想定パネル

0709-0352_6

3455-0626

機械室 901 の横

D

LP-9D

3455-1502

休憩室 G3-8 付近

A

LP-9AUP9-A

3455-1503

休憩室 G3-8 付近

A

LP-9AUP9-A

3455-1507

貨物エリア

B

UP-9B1

3455-1508

BD 9165 の横

C

UP-9CUP-9C1

3676-1088

休憩室 G3-8 付近

A

LP-9AUP9-A

3676-1091

BD 9165 の横

C

UP-9CUP-9C1

3676-1092

機械室 901 の横

D

LP-9D

3676-1093

貨物エリア

B

UP-9B1

2021 年の改装では、オフィス設計の面でいくつかの要素に変化がありました。たとえば、一部の会議室をフロアの境界から中央に変更するという配置の見直しや、ハイブリッドワークに対応するための切り替えに伴う 1 日のオフィスの利用者数が変化したこと、さらには照明や窓の日除け、セキュリティカメラ、PoEPower over Ethernet)を利用した人感センサーなどのスマートテクノロジーが導入されたことです。改装の前と後ではデータが存在せず、各種の変更による電力への影響を分けて検討できるデータがないため、以下の計算では設計変更全体で見た影響を調べています。

Penn 1 の消費電力は、オフィスの利用者数や機器の使用状況、環境制御設定などの建物内のさまざまな変動要素と、季節や屋外の明るさ、太陽熱による温度上昇の高さなどの外部の変動要素によって次第に変化します。Vornado 社の明細には通常 1 ヵ月分の消費電力が記載されていますが、請求期間の日数は同じ月でも年により異なる場合があります。そこで改装前後の消費電力を比較するため、対応する月の 1 日あたりの消費電力を以下の計算に使用しました。また、請求期間によって休日と平日の日数が異なる場合があることで、使用パターンが異なってくる場合もあります。こうした影響を抑えるために、2 つ目の計算では改装前後の可能な限りの最長期間を対象にしました。

この計算では、改装前(2019 7 月から 2020 2 月まで)と改装後(2022 7 月から 2023 2 月まで)の 8 ヵ月間における 1 日平均を比較することができました。2019 7 月より前の消費電力は相対的に高くなっていますが、理由は定かではありません。2020 2 月より後に消費電力が下がったのは、コロナ禍に伴って 2020 3 9 日にオフィスが閉鎖されたためです。そのため 2019 7 月から 2020 2 月までの限定された 8 ヵ月間が、改装前後の電力を比較できる最長期間と判断されました。

結果

下の図 3 は、2019 5 月から 2023 2 月までの 1 日あたりの平均消費電力データをグラフにしたものです。グラフの日付は、各請求期間の開始月を表しています。

Related image, diagram or screenshot

図 3.                           

Penn 1 1 日あたりの消費電力(2019 5 2023 2 月)

上のグラフと下の表 2 のデータは未加工の状態です。このグラフは改装前、コロナ禍に伴う閉鎖、工事中、改装後の期間別に色分けされています。緑色の期間が、電力を比較するにあたって注目した 8 ヵ月間を表しています。2019 5 月および 6 月は、2019 7 月から 2020 2 月よりも比較的消費量が多く、差が出た理由が不明であったため、灰色の期間は除外しました。改装前に比べて改装後の方が、消費電力の月ごとの偏りが大きいように見えます。2020 3 月はコロナ禍でオフィスが閉鎖されたこともあり、消費電力が大幅に減少しています。改装前の期間とコロナ禍の閉鎖期間の後半には、消費電力がやや減少しています。減少した理由は不明ですが、工事に備えてラボやオフィススペースから機器を撤去したこと、コロナ禍の最中にビデオ機器を病院や在宅で勤務する従業員に寄贈したことが理由として考えられます。

表 2.                    Penn 1 の請求明細に基づく消費電力

開始日

終了日

日数

合計使用量/kWh

1 日平均/kWh

2019 5 15

2019 6 14

30

72,564

2,418.80

2019 6 14

2019 7 16

32

79,609

2,487.78

2019 7 16

2019 8 14

29

62,959

2,171.00

2019 8 14

2019 9 13

30

63,693

2,123.10

2019 9 13

2019 10 15

32

68,689

2,146.53

2019 10 15

2019 11 13

29

61,172

2,109.38

2019 11 13

2019 12 16

33

64,563

1,956.45

2019 12 16

2020 1 15

30

59,706

1,990.20

2020 1 15

2020 2 14

30

61,786

2,059.53

2020 2 14

2020 3 17

32

62,628

1,957.13

2020 3 17

2020 4 15

29

45,883

1,582.17

2020 4 15

2020 5 14

29

44,437

1,532.31

2020 5 14

2020 6 15

32

50,067

1,564.59

2020 6 15

2020 7 15

30

47,995

1,599.83

2020 7 15

2020 8 13

29

44,456

1,532.97

2020 8 13

2020 9 14

32

44,440

1,388.75

2020 9 14

2020 10 14

30

39,530

1,317.67

2020 10 14

2020 11 12

29

40,319

1,390.31

2020 11 12

2020 12 15

33

43,588

1,320.85

2020 12 15

2021 1 15

31

41,960

1,353.55

2021 1 15

2021 2 17

33

38,178

1,156.91

2021 2 17

2021 3 18

29

11,388

392.69

2021 3 18

2021 4 16

29

9,554

329.45

2021 4 16

2021 5 14

28

7,420

265

2021 5 14

2021 6 14

31

8,389

270.61

2021 6 14

2021 7 15

31

4,801

154.87

2021 7 15

2021 8 13

29

6,014

207.38

2021 8 13

2021 9 14

32

11,538

360.56

2021 9 14

2021 10 14

30

19,268

642.27

2021 10 14

2021 11 14

29

21,602

744.9

2021 11 12

2021 12 15

33

34,394

1,042.24

2021 12 15

2022 1 14

30

30,587

1,019.57

2022 1 14

2022 2 15

32

34,057

1,064.28

2022 2 15

2022 3 17

30

34,834

1,161.13

2022 3 17

2022 4 15

29

35,613

1,228.03

2022 4 15

2022 5 16

31

39,565

1,276.29

2022 5 16

2022 6 15

30

42,884

1,429.47

2022 6 15

2022 7 15

30

41,736

1,391.20

2022 7 15

2022 8 15

31

40,966

1,321.48

2022 8 15

2022 9 14

30

41,791

1,393.03

2022 9 14

2022 10 14

30

36,250

1,208.33

2022 10 14

2022 11 14

31

45,114

1,455.29

2022 11 14

2022 12 15

31

45,060

1,453.55

2022 12 15

2023 1 17

33

36,496

1,105.94

2023 1 17

2023 2 15

29

37,251

1,284.52

2023 2 15

2023 3 17

30

42,424

1,414.13

以下の表 3 は、改装前後の消費電力を月別に比較したものです。前述のように、類似の請求対象月との日数の違いを考慮して、以下の表の 1 日あたりの使用量を比較しています。なお、勤務日数や消費電力が休日と勤務日とで異なる可能性があることは考慮していません。

表 3.                    改装前後での月別の消費電力の比較

改装前

改装後

 

開始日

終了日

日数

合計使用量/
kWh

1 日平均/
kWh

開始日

終了日

日数

合計使用量/
kWh

1 日平均/
kWh

変化(%

2019
7
16

2019
8
14

29

62,959

2,171.00

2022 7 15

2022
8
15

31

40,966

1,321.48

39.1%

2019
8
14

2019
9
13

30

63,693

2,123.10

2022 8 15

2022
9
14

30

41,791

1,393.03

34.4%

2019
9
13

2019
10
15

32

68,689

2,146.53

2022 9 14

2022
10
14

30

36,250

1,208.33

43.7%

2019
10
15

2019
11
13

29

61,172

2,109.38

2022
10
14

2022
11
14

31

45,114

1,455.29

31.0%

2019
11
13

2019
12
16

33

64,563

1,956.45

2022
11
14

2022
12
15

31

45,060

1,453.55

25.7%

2019
12
16

2020
1
15

30

59,706

1,990.20

2022
12
15

2023
1
17

33

36,496

1,105.94

44.4%

2020
1
15

2020
2
14

30

61,786

2,059.53

2023 1 17

2023
2
15

29

37,251

1,284.52

37.6%

2020
2
14

2022
3
17

32

62,628

1,957.13

2023 2 15

2023
3
17

30

42,424

1,414.13

27.7%

 

範囲

25.7% 44.4%

 

平均

35.50%

 

上記の表 3 では、8 ヵ月間の月別の電力削減率は 25.7% 44.4%(平均 35.5%)となっています。2019 8 月から 2020 8 月にかけての 39% 削減という数値は、新設計を取り入れたことによる消費電力の変化として、公式の声明やプレゼンテーションの中で使用しています。この数値は、比較的長期にわたるデータのサンプルが得られる前に算出したものです。

下記の表 4 は、8 ヵ月間全体にわたる変化に注目したものです。この期間で見ると、日数と勤務日数の違いはより少なくなっています。このケースでは、改装前後で平均 35.6% の変化が見られました。

表 4.                    階層前後の 8 ヵ月全体での消費電力の比較

改装前

改装後

 

開始日

終了日

日数

合計使用量/kWh

1 日平均/
kWh

開始日

終了日

日数

合計使用量/kWh

1 日平均/
kWh

変化(%

2019
7
16

2020
3
17

245

505,196

2,062.02

2022
7
15

2023
3
17

245

325,352

1,327.97

35.6%

 

8 ヵ月の平均

35.60%

 

新設計の Penn 1 での消費電力についてより詳しい分析情報を得るために、Raritan 社のスマート PDU(配電ユニット)を IT OT PoE インフラストラクチャに導入しました。データは、データセンターの電力管理および電力監視用ソフトウェアとして使用される Power IQ を使用して取得したものです。PDU から得られたデータを以下のグラフに示します。Penn 1 OT 用電力には照明、日除け、HVAC(冷暖房空調)、VAV(可変風量方式)、および 4 つのデスクが含まれます。IT 用電力には、Meraki セキュリティカメラとワイヤレス AP(アクセスポイント)が含まれます。OT の消費電力はオフィスの利用者数によって変化するため週末は少なくなりますが、IT の消費電力は一定です。取得した最新のデータを使用すれば、各 Catalyst 9300 スイッチのスタックや UCS Hyperflex クラスタの電力を分けて把握することもできます。

Related image, diagram or screenshot

図 4.                           

POE による IT および OT 用電力の日次データ


まとめ

Penn 1 はハイブリッドワークに対応するために新しいスマートビルディングの設計を取り入れた、シスコ初となる建物でした。革新的な省電力機能が多数導入された設計であり、実際に改装前後を比べると消費電力が大幅に削減されていることがわかります。改装期間に多くの要素が変更されましたが、より詳しい電力を測定する方法がないため、一つひとつの変更の影響を定量化することは困難です。それでも改装前後の 8 ヵ月の請求期間を比較して、設計を変えたことで約 36% のコスト削減が実現したと考えるのは無理のない結論と言えます。この数値は利用できるサンプルデータが少なかったときに達成した、39% という当初発表した削減率と概ね同じです。冒頭で述べたように、この節減の成果はひとえに 9 階の設計変更によるものであり、全体の床面積を減らし 6 階を空けたことで得られた節電効果については考慮していません。ハイブリッドワークに向けてオフィスを最適化するための設計の一環として、床面積の縮小も行いました。実際、床面積の縮小とスマート ビルディング テクノロジーへの投資は「Divest to Invest」プログラムの重要な要素であり、シスコのオフィススペースをハイブリッドワーク用に最適化する取り組みが、シスコの不動産チームの主導で進められています。

 

 

 

Learn more