― DeNA では「ビッダーズ」だけでなく「おいくら」「モバオク」など、次々に独自のサービスをオンライン市場で展開中ですが、オンラインマーケットならではのメリットと可能性についてはどのようにお考えですか。
快楽で循環する“善”があってもいいと思うんですよ。たとえば「おいくら」というのは、売りたい中古品のプライスをリサイクルショップに見積もってもらえるというシステムです。日常では接点を見つけにくい売り手と買い手をつなぎ、余剰品をリサイクルすることによってゴミ削減にも寄与できるという、お財布にも地球環境にもたいへん優しいサービスです。
また、「モバオク」は携帯電話専用のオークションサイト、「ポケットビッダーズ」は携帯電話向けのショッピングサイトですが、どちらも“いつでもどこでも楽しんで買い物ができる”と若い女性を中心に大変な伸びを見せています。
“気軽に買い物を楽しみたい”“ちょっとトクをしたい”、きっかけはそんな「欲」や「気分」でいいと思うんです。その結果として、オシャレ感覚でリユース、リサイクル、エコロジーが成立してしまう。 ネット市場にはこうしたことの垣根を非常に低くするパワーがあるんですね。
また、「ビッダーズ」での出品を通してビジネスを拡大できたと喜んでくださるパートナーさんも多く、売り手と買い手の双方にとってハッピーな「場」を提供できていると思います。やっぱりネットワークってすごい、オンライン市場には大きな可能性があるなと、実感できる部分ですね。
― 最後に、「ビッダーズ」やその他のサイトあるいは DeNA という企業を通じて、南場さんが実現したいことを教えてください。
大きな意味で「人の役に立つことをしたい」と思っています。今の私の立場でいえば、投資してくださった株主への恩返し、そしてユーザーへのよりよいサービスの提供ということになりますね。
現代というのは、人々の嗜好や行動が硬直化していて個性が出しにくい状況にあると思います。オンライン上で「場」を提供している私たちが人間関係を多様にリンクさせていくことで、一人ひとりがもっともっと豊かに個性を表現できる世界に近づけられたらいいなと思うんです。もう少し具体的にいえば、情報の洪水の中で、安心できる情報や価値ある情報を私たちが適切に編集し提供することで、量→質へのシフトチェンジをサポートできるのではないかと考えているのですが……。
とにかく、人間、「陰」に入ってはいけないと思います。根が明るいかどうかとはまた別に、明るく楽しく自然体で行かないと。人生は長丁場ですからキバってたらとても持ちません。
本当に大変なことに手をつけてしまった、「やっちまった」とは常々思っているのですが、「ビッダーズ」をはじめとするオンラインマーケット事業を通じて、世の中に何らかの寄与をしたい、宇宙の雄大な歴史の中に何らかのひっかき傷を残せたらと願っています。