Cisco Exclusive Interview「勝ち抜きたいなら、実現する夢を見よう ~宇宙の歴史の中に小さなひっかき傷を残したい」南場智子 (株)ディー・エヌ・エー代表取締役社長

INDEX

  1. 駆け出し時代の大きな転機
  2. 「花より団子」の社長業
  3. 「ビッダーズ」が拓いた新たな流通コード
  4. 「やっちまった」ことへの責任感で突っ走る
  5. 個のパワーとITネットワークの幸福な関係とは

「花より団子」の社長業

― マッキンゼーのパートナーというポジションを捨ててまで、IT ワールドでの起業を実行された最大の理由は何ですか。

マッキンゼーでの日々があまりにもうまく行きすぎていたというのもあるかもしれませんね。それまでは役割の変化や責任の拡大など、クリアすべき目標が次々に出てきて楽しかったんですが、パートナーにまで昇進したら、もう目指すべき上がない。ああ、ここで見るものはもう見たな、という気持ちでした。

もう一つは、コンサルタントの仕事はどんなに一生懸命頑張っても、そのプロジェクトの最後までかかわることはできないんですね。私にはそれがすごくつまらなかった。大きなお金が動く仕事をしているわりに、まるで実体も実感もないわけですから。どうせやるなら最後までちゃんと見届けたい。そういう気持ちが少しずつ積み重なっていったように思います。

起業するにあたって、ネットオークションというジャンルを選んだのは、マッキンゼーでの最後の3年間です。マルチメディア系の新規事業への提案が多く、先端のモデルをよく知っていたこと、これならイケるんじゃないかとの直感が働いたからです。

まあ、机上で戦略をああだこうだとこねくり回すのではなく、とにかくチャリンとお金の音がする「商い」をやりたかったんですね。動機が動機ですから、自分の目の届く範囲でこぢんまりやりたい気持ちもありましたが、大きくやらないと勝てない市場ですし、多くの人も巻き込むことになるので、やはりそれなりの覚悟は必要でした。

― 大きな組織に属するコンサルタントと、企業の代表。その最も大きな違いはどんな部分でしょうか。

これは、もう 1分 1秒の時間の使い方からメンタリティーまで、何もかも違うと思います。たとえば、コンサルタント時代、企業のトップの方々に、正しい答え、伝え方、アウトプットの仕方など、いろいろなアドバイスをしてきましたが、そんな小さなことには何の意味もなかったと、自分が社長になって実感しました。

とにかく、すべての結果に責任が伴う立場ですから、本当に「実」の部分が大事なんです。戦略と実行などとよくいいますが、実際に自分で商売を始めてみたら、戦略の部分なんてたかだか 10% 程度のことでしたね。また、正しい方法というのは一つだけじゃなくて、結果として成果さえ出ればそれでいいわけですから。やろうと思っていることをちゃんと実現する、それが社長業の 90% を占めるといっていいと思います。

しかし、何かを実現しようとすると、もう毎日のように次から次へと細かい壁にぶち当たるんです (笑) 。それを突き破って前進するパワー、胆力のようなものが社長業には必要なのかもしれません。

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