Cisco Exclusive Interview「勝ち抜きたいなら、実現する夢を見よう ~宇宙の歴史の中に小さなひっかき傷を残したい」南場智子 (株)ディー・エヌ・エー代表取締役社長

INDEX

  1. 駆け出し時代の大きな転機
  2. 「花より団子」の社長業
  3. 「ビッダーズ」が拓いた新たな流通コード
  4. 「やっちまった」ことへの責任感で突っ走る
  5. 個のパワーとITネットワークの幸福な関係とは

「ビッダーズ」が拓いた新たな流通コード

― インターネットのオークションサイト「ビッダーズ」を立ち上げて 5年強、「ビッダーズ」ならではの強みとは何でしょう。

非常にお恥ずかしい話なのですが、「ビッダーズ」の立ち上げ当初、システム構築の重要な部分も含め、外部スタッフの戦力に依存しすぎたために、本格的なサービスの始動が半年も遅れてしまったんです。お客様にご迷惑をおかけするという、最もあってはならない失敗を最初にしでかしてしまったわけで、これは私たちにとって非常に重い教訓になりました。

その手痛い経験を踏まえ、我が社では 100% 内制主義を原則に掲げています。もちろん、アウトソーシングを行っている部分もありますが、そうする前に自分たちですべてできるようにしておき、その上で必要かつ適応であれば外部に委託するという考え方です。そうしなければ正しい評価も監督もできませんし、同じ失敗を繰り返すのはイヤですからね。何か失敗をしたら、精神的なストレスを上乗せした分も含めて、プラスに転じていかないと割に合わないというのが私の考え方です。

また、3年目の 2001年末にようやく「ビッダーズ」が黒字計上になったのですが、このときの安堵感というのは言葉で言い尽くせないものがありました。赤字の時代が長く、投資家の方々にご迷惑をおかけしてきましたから。

こういうさまざまな苦労を共有してきたせいか、スタッフ間には、穴があれば皆でふさぐ体質というか、そういう土壌がしっかりできています。それもまた私たちの強み、特徴といえるかもしれません。

― 「ビッダーズ」は他のオークションサイトとは異なる独自の視点で成功しているように思うのですが、特に“ココが違う”というポイントはありますか。

差異化ということについては、いつも考えています。最近でいえば、犬猫などのペット、熱帯魚、昆虫など、生き物をネットオークションに導入したことでしょうか。当初は「生き物をそんなふうに扱うなんて」という情緒的な反発もあったんですが、実際に始めてみたら極めて合理的なシステムであると確信できるようになりました。

オンライン市場を媒介にして、ペットをブリーダーから直接飼い主の下に送り届けるということは、ペットショップでの展示を通さずに済み、動物にかかるストレスや経費を最小限に抑えることができるということです。また、生みの親であるブリーダーと育ての親であるユーザーが直接コミュニケーションを持てるというのもメリットの一つでしょう。非常にナローなジャンルではありますが、この試みは「ビッダーズ」が新しい流通コードを提案できたよい例ではないかと自負しています。

そうそう、「ビッダーズ貧乏」と噂されるほど、よく「ビッダーズ」を利用する私ですが、実は我が家の愛犬「さくら」も、「ビッダーズ」のオークションで購入した柴犬なんですよ (笑) 。

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