Cisco Exclusive Interview「ハートにブレーキをかけるな! ~赤信号を渡れない人間に未来はない」片山右京

INDEX

  1. たかが F1、ボクにはもっと大切なことがある
  2. 対決! 黒右京 vs 白右京
  3. チャレンジとは、本来の自分を取り戻す行為
  4. まずは小さなことから不良してみませんか?
  5. その人の限界は、自分の予測を遥かに超えたところにある

対決! 黒右京 vs 白右京

― 死すらも恐れず、右京さんを過酷なチャレンジに駆り立てている「核」とは何ですか?

ボクはもともと負けん気が強くて、なんでも一番になりたいほうなんです。ボクのアイデンティティの 9割は、オセロゲームだろうがジャンケンだろうが、とにかく勝ちたい、頂点に立ちたいという、本当にそれだけ (笑) 。いわば、ピークハンターってやつですね。

ボクの中には、権力やお金が大好きで、辛いこと、面倒なことの大嫌いな「もう一人の自分自身」がいます。精神年齢でいえば小学校 3年生くらいのコイツがおそらく素のまんまの自分。そのダメな自分をボクは密かに「黒右京」と呼んでいるんですが (笑) 、この黒右京の存在から決して目をそらさず、意識的にその弱点を鍛えることで、自らを駆り立てているような部分があるんです。アンチとしての黒右京がいるから、それをどうにか超えようと頑張るというのかな…いわば、自分自身との闘いですね。

ちなみに、頑張ってるボクのほうは「白右京」。そっちには天使の羽がはえています (笑) 。駅のホームに落ちた子供を見たら、自分の危険など顧みず、パッと助けにいく、そんな心やさしきソルジャーのような男。ボクは本気でそういう男になりたいんです。

― そういうふうに考えるようになったのは、最近のことですか? それとも、右京さんの中には初めからそういう部分があったのでしょうか。

いやいや、F1 時代は「オレさまが No.1」の黒右京全開でしたから (笑) 。おそらくそういう時代への懺悔のようなものもあって、自分の感情を殺してでも正しいと思うこと、世の中のためになることを取りたいと思う部分が出てきたんじゃないかと思います。

具体的なきっかけは、もう 8年くらい前になるかなあ、ある団体の仲立ちで白血病の少年と出会ったことなんです。ごく軽い気持ちで会いに行ったんですが、その子に対してボクが言ってあげられるのは「頑張れ」という言葉くらい。その情けなさといったらありませんでしたね。自分がもっともっと頑張らなければ、恥ずかしくて「頑張れ」という言葉を彼に言うことなんてできない、と思いました。人を助けるにしても励ますにしても、それに見合うだけの自分にならないと伝わらないし、やさしくありたいなら、それを支える強さが必要なんだということを、そのとき初めて実感したんです。

ボクはマザーテレサにはなれないし、宗教家にも政治家にも絶対になれない。だけど、黒右京とか白右京とか、そういう矛盾だらけの自分を統一したいという、めちゃめちゃ強い欲求もあるんです。まあ、とりあえず今のところは、愛と懺悔の日々というところでしょうか (笑) 。

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