経営層の姿勢で差がつくユニファイド コミュニケーション活用効果

株式会社ノークリサーチ代表取締役社長 伊嶋 謙二 国内大手の調査会社を経て、1998年にノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査、コンサルティングを展開。特にSMB(中堅中小)企業のIT導入実態分析やミッドレンジのITシステム市場調査を得意としている。また、日経BP社などの専門誌、日経ITpro、ITmediaなどのWebサイトにおいて、SMB市場について独自のアナリスト視点で、意欲的に執筆活動を行っている。2007年には中堅中小企業のIT担当者向けQ&Aサイト「シス蔵」をテクネット社と立ち上げた。

ユニファイド コミュニケーションがコスト削減(遠隔会議による出張旅費の削減など)や業務効率改善(外出中の営業担当者にも確実に顧客の問い合わせを伝えるなど)に有効であることはご存知の方も多いだろう。

以下のグラフはユニファイド コミュニケーションの活用状況別に年商 5 億円〜 500 億円の中堅・中小企業に対して 2009 年 6 月以降の経常利益の見通しを尋ねた結果である。

ユニファイド コミュニケーション活用状況と経常利益見込みの相関

ユニファイド コミュニケーションを活用している企業の方がより高い経常利益の増加率を見込んでいることがわかる。だが、ユニファイド コミュニケーションを導入すれば自社の業績が必ず改善するというわけではない。ユニファイド コミュニケーションを活用し、自社の業績改善を実現するためには、経営層のリーダーシップとバランス感覚が不可欠なのである。

具体的な例を挙げてみることにしよう。「Web 会議」は Web ブラウザを使って離れた拠点間での映像/音声による会議を手軽に実現できる製品/サービスだ。厳しい経済環境下での即効性のあるコスト削減策として導入する中堅・中小企業が増えている。だが、ディスプレイ越しに相手を確認できるからといって、全ての会議出張を禁止するのは賢明とはいえない。社員同士が直接顔を合わせる機会を一切なくしてしまうと、社員間の人間的な繋がりを疎遠にさせ、拠点間や部門間のシナジー形成を阻んでしまう恐れもある。ユニファイド コミュニケーションを活用して効率化を図るべき部分と、多少アナログ的であっても「ヒト」の持つ本質を踏まえるべき部分の両面を抑えることが大事であり、それを両立させるための旗振り役こそが経営層に求められる役割なのである。

企業と IT との関わりを「誰が主導するか」と「どう取り組むのか」という二つの観点で整理すると以下の図のようになる。

企業とITとの関わりにおける類型分類

「主導者軸」は誰が企業における IT 活用を主導していくか?という観点である。一般的に年商の低い中小企業では経営層がトップダウン的に携わることが多く、企業規模が大きくなるにしたがって IT 部門/担当が IT 活用を主導していくようになる傾向がある。「IT 活用軸」は IT に対する企業の姿勢を示す。「積極的」は自社の業績を押し上げる要素として IT を捉え、攻めの IT 投資を行う企業を指す。一方、「保守的」は IT を主にコスト削減手段とみなし、守りの IT 投資を重視する企業である。この二つの軸を元にすると、上記のように 4 通りの企業類型に分類できるわけである。

現状の中堅・中小企業ではどの類型が最も多いのだろうか?以下のグラフは年商 5 億円〜 500 億円の中堅・中小企業に対して自社の類型を尋ねた結果である。

企業とITとの関わりにおける類型の比率

グラフでは「経営層主導保守型」と「IT 部門/担当主導保守型」をまとめて「保守型」として集計している。また、IT 活用に対して関心を持たない「IT 無関心型」を加えている。全体的には積極型が最も多く、「経営層主導保守型」と「IT 部門/担当主導保守型」がほぼ同じ割合となっている。IT 活用が遅れがちとも言われる中堅・中小企業であるが、実際は積極的な姿勢で IT 活用に取り組んでいる企業が意外と多いといえる。

中堅・中小企業がユニファイド コミュニケーション活用を成功させるためには「経営層主導積極型」であることが理想的だ。以下のグラフはユニファイド コミュニケーションを既に活用している年商 5 億円〜 500 億円未満の中堅・中小企業の経常利益見込みを類型別に比較したものである。

ユニファイド コミュニケーション導入企業における企業類型と経常利益見込みの相関

全般的に保守型よりも積極型の方が経常利益の増加見込みにおいて高い値を示していることがわかる。さらに同じ積極型の中でも「経営層主導積極型」の方が「IT 部門/担当主導積極型」よりも経常利益の増加率が高いことがわかる。このように実際の調査結果においても「経営層主導積極型」が経営と IT との関わりにおいて高い優位性を示していることが確認できる。

しかし、だからといって「経営層は IT について学べ」ということでは決してない。中堅・中小企業に限らず、日本の経営層は「IT のことは自分にはわからない」と言ってあまり口出しをしない傾向がある。だが、大切なのは自分の会社がどうありたいか? どういう方向に歩みを進めたいか? ということを公言し、その思いを社員にぶつけることである。そうやって経営層が示すゴールを達成するための一つの手段として IT が存在するのだ。
 IT 担当の社員は「経営層との距離があり、自分が会社の役に立っているかという点で不安を感じる」ということをしばしば口にする。単にシステムの運用保守を担うだけでは会社に参画しているという実感を得づらい。そうした社員に対して経営層が自身の目指すビジョンを語れば、IT 部門/担当者も奮起して IT の積極的な活用方法について取り組むようになるはずだ。つまり、「経営層主導積極型」の企業とは「経営層が IT のことを良く知っている企業」なのではなく、「経営層が自身のビジョンを明確に語り、それを社員が IT というツールによって具現化している企業」なのである。