ADSLの概要
ADSLインターフェイス カードには、ADSL over POTS(WIC-1ADSL)、ADSL over POTS + Dying Gaspサポート(WIC-1ADSL-DG)、およびADSL over ISDN + Dying Gaspサポート(WIC-1ADSL-I-DG)の3種類があります。ADSL over POTSインターフェイス カードは、通常の電話回線上でADSLサービスを提供する場合に使用するのが一般的です。ADSL over ISDNインターフェイス カードは、大規模なISDNバックボーンがすでに整備されている地域でADSLサービスを提供する場合に使用します。
G.SHDSLの概要
Multirate Symmetrical High-Speed Digital Subscriber Line(G.SHDSL)カード(WIC-1SHDSL)も、1ポート インターフェイス カードです。G.SHDSLは、1組または2組の銅線ペアを介して対称的なデータ レートを実現するラストマイル アクセス テクノロジーです。
G.SHDSLインターフェイス カードは、Cisco 6015、Cisco 6130、Cisco 6160、またはCisco 6260 Digital Subscriber Line Access Multiplexer(DSLAM;デジタル加入者線アクセス マルチプレクサ)のCisco G.SHDSLライン カードと互換性があります。
WIC-1SHDSL-V2インターフェイス カードは、すべてのG.SHDSL機能をサポートしているのに加え、4線式のG.SHDSLを実現する2組のツイストペア線を備えています。4線式のG.SHDSLをイネーブルにすると、COへの電源障害のメッセージ(Dying Gasp)の送信や、防食電流がサポートされます。また、2線式G.SHDSLよりも上りおよび下り帯域幅のバランスに優れ、信号の伝達距離も長くなります。
(注) Dying Gaspという用語は、ITU-T規格G.991.2のセクション7.1.2.5.3で定義されている電源の状態を指します。
表6-1 WIC-1SHDSL-V2インターフェイス カードの互換性リスト
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2線式ATM |
• Cisco 1721 • Cisco 1751 • Cisco 1760 • Cisco 26 xx XM • Cisco 2691 • Cisco 37 xx • Cisco 3631 |
バックツーバック構成の2線式T1/E1 |
• Cisco 1721 • Cisco 1751 • Cisco 1760 • Cisco 26 xx XM |
4線式ATM |
• Cisco 1721 • Cisco 1751 • Cisco 1760 • Cisco 26 xx XM • Cisco 2691 • Cisco 37 xx • Cisco 3631 |
DSLインターフェイス カードのネットワーク接続
この接続には、RJ-11ストレート ケーブルを使用します。
表6-2 に、ADSL WICのピン割り当てを示します。
表6-2 ADSL WICのピン割り当て
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3 |
Tip |
4 |
Ring |
(注) DSLペアが2番ピンおよび5番ピンに配線されているRJ-11壁面ジャックにADSLインターフェイス カードを接続する場合は、RJ-11クロス ケーブル(紫にブルーのストライプ)を使用する必要があります。RJ-11クロス ケーブルは、スペアとして別途発注できます。
表6-3 WIC-1SHDSLのピン割り当て
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Tip |
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Ring |
表6-4 WIC-1SHDSL-V2 RJ-14Cのピン割り当て
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3および4 |
3 = Tip、4 = Ring |
0 |
2および5 |
2 = Tip、5 = Ring |
1 |
表6-5 WIC-1SHDSL-V2 RJ-11のピン割り当て
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2および3 |
2 = Tip、3 = Ring |
0 |
1および4 |
1 = Tip、4 = Ring |
1 |
WANにDSLインターフェイス カードを接続する手順は、次のとおりです。
ステップ 1 ルータの電源がオフになっていることを確認します。
ステップ 2 RJ-11ストレート ケーブルの片側をカードのADSLポートまたはG.SHDSLポートに接続します。
ステップ 3 もう一方の側を設置場所の壁面ジャック(RJ-11)に接続します(図6-1を参照)。
図6-1 ADSLカードの壁面ジャックへの接続
図6-2 G.SHDSLカードのパッチ パネルへの接続
(注) ケーブルの仕様については、「ケーブル」(p.6-7)を参照してください。
ステップ 4 ルータの電源を入れます。
ステップ 5 カードをネットワークに接続するには、ルータに搭載されたDSLインターフェイス カードをno shutdownステートに設定する必要があります。ルータ コンフィギュレーションに no shut コマンドを入力してください。CD LEDが点灯していることを確認します。このLEDが点灯していれば、インターフェイス カードはネットワークに接続されています。
(注) ステップ5はWIC-1SHDSL-V2には該当しません。
(注) WIC-1SHDSL-V2インターフェイス カードは、ATMモードまたはT1/E1モードのいずれかに設定できます。このインターフェイス カードの設定の詳細については、『Two-Wire Mode over SHDSL』および『Four-Wire Mode for SHDSL』を参照してください。
DSLインターフェイス カードのLED
ADSLおよびG.SHDSLインターフェイス カードにはLEDが3つあります。各LEDの位置を図6-3に、意味を 表6-6 に示します。
図6-3 ADSLおよびG.SHDSL WICの前面パネル
表6-6 ADSLおよびG.SHDSL WICのLED
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CD LED |
グリーン |
装置がネットワークに接続されて正常に動作しているときに点灯します。このLEDは、ADSLインターフェイス カードの場合のみ、DSLAMとのトレーニング中に点滅します。 WIC-1SHDSL-V2インターフェイス カードには該当しません。 |
LP LED |
イエロー |
DSLインターフェイスがループバック モードです。 |
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消灯 |
正常に動作しています。 |
OK LED |
グリーン |
ルータがカードを認識すると点灯します。 |
LINK(CD)LED |
グリーンおよび イエロー |
セルまたはフレームがホストとDSLAMの間を通過中にグリーンになります。T1E1フレーマーがアラームを検出するとイエローになります。WIC-1SHDSL-V2のみに該当します。 |
ケーブル
CPEのために、ツイストペア ストレート ケーブルが付属しています。CO用のY字ケーブルおよび4線パッチ パネル アプリケーションは付属していません。
(注) Y字ケーブルでは、ピン3とピン4のほか、ピン2とピン5もより合わせてあることが必要です。これらのペアは同一ワイヤ内にあります。
ADSL over POTSインターフェイス カード(WIC-1ADSL)でのPOTSスプリッタおよびマイクロフィルタの使用
POTSスプリッタおよびマイクロフィルタを利用できるのは、ADSL over POTSインターフェイス カードだけです。これらは、音声コールおよびデータ コールの品質を確保するために、電話回線で使用します。POTSスプリッタは、ルータおよび電話を同じ電話回線上で使用した場合に、最高のデータおよび音声パフォーマンスを発揮します。
POTSスプリッタ
POTSスプリッタ(単に スプリッタ ともいいます)は、データ(高周波数)装置および音声(低周波数)装置の両方に接続されている電話回線上に設置します。スプリッタは、電話回線上の高周波数および低周波数の信号を適切な装置にルーティングします。ルータへの信号が音声コールを妨げたり、音声コール用の信号がルータの動作に影響を与えたりする可能性があります。
スプリッタは通常、電話会社側で設置しますが、一部のスプリッタはお客様側で取り付け可能です。使用すべきスプリッタのタイプが不明の場合は、サービス プロバイダーにお問い合わせください。
図6-4は、お客様自身がお客様の施設内に設置するタイプのPOTSスプリッタの一例です。他のタイプのPOTSスプリッタは、お客様の施設の外壁に電話会社が取り付けます。
図6-4 POTSスプリッタ
マイクロフィルタ
マイクロフィルタは、音声装置とデータ装置が同じ電話回線(ツイストペア)を使用する場合、音声コールの品質を向上させるために電話に取り付けます。マイクロフィルタは、次の2つの条件が揃った場合に限って使用します。
• ルータとともに使っている電話のマニュアルに、電話と同時にマイクロフィルタを使用する必要があると記載されている。
• 通話品質不良を、電話回線にマイクロフィルタを取り付けることによって解消できる。
図6-5に、マイクロフィルタの一例を示します。
図6-5 マイクロフィルタ
一般的なスプリッタおよびマイクロフィルタの構成
ここでは、スプリッタおよびマイクロフィルタを使用する場合の代表的な構成を示します。最も一般的な構成から、あまり一般的ではない構成の順に説明します。
電話会社が設置するスプリッタ
図6-6の構成は、次のとおりです。
• 電話会社からは電話(POTS)サービスおよびDSLインターフェイス カードを搭載したルータの両方で使用する1本の銅線ペアが提供されるので、POTSスプリッタを取り付ける必要があります。
• スプリッタは、お客様の施設に電話会社が設置します。このタイプのスプリッタは、 Network Interface Device ( NID ;ネットワーク インターフェイス デバイス)とも呼ばれます。
• ルータと電話は、スプリッタまで別々の回線(ツイストペア)上にあります。
• 電話会社までは、ルータと電話が同じ電話回線(ツイストペア)を共用します。
図6-6 電話会社が設置するスプリッタ
お客様が設置するスプリッタ
図6-7の構成は、次のとおりです。
• 電話会社からは電話(POTS)サービスおよびDSLインターフェイス カードを搭載したルータの両方で使用する1本の銅線ペアが提供されるので、POTSスプリッタを取り付ける必要があります。
• スプリッタは、お客様の施設にお客様が設置します。
• ルータと電話をスプリッタに直接接続し、スプリッタを電話回線に接続します。
• 電話会社までは、ルータと電話が同じ電話回線(ツイストペア)を共用します。
• スプリッタを介してオプションの電話を接続する場合、マイクロフィルタはオプションです。通話品質が向上する場合に限り取り付けてください。
• 電話回線に直接接続された電話には、マイクロフィルタが必須です。
図6-7 お客様が設置するスプリッタ
ルータおよび電話で別々の電話回線を使用する場合
図6-8の構成は、次のとおりです。
• 電話会社からはDSLインターフェイス カードを搭載したルータ専用の銅線ペア1本と、電話(POTS)サービス専用の別の銅線ペアが提供されるので、POTSスプリッタもマイクロフィルタも不要です。
• マイクロフィルタの使用はオプションです。通話品質が向上する場合に限定して設置します。
図6-8 スプリッタなし、オプションのマイクロフィルタあり