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この章では、Cisco CRS キャリア ルーティング システムの 16 スロット ラインカード シャーシのスイッチ ファブリックについて説明します。内容は次のとおりです。
スイッチ ファブリックは Cisco CRS ルーティング システムの中核です。Cisco CRS ルーティング システムはシャーシに搭載された複数の冗長スイッチ ファブリック カード(SFC)によって実装されます。スイッチ ファブリックではセル スイッチされ、バッファされる 3 つのステージの Benes スイッチ ファブリック アーキテクチャを使用します。スイッチ ファブリックはモジュラ サービス カード(MSC)または Forwarding Processing カード(FP)からユーザ データを受信し、適切な出力 MSC または FP に対してデータをルートするために必要なスイッチングを行います。
スイッチ ファブリックは 8 つのプレーン(プレーン 0 からプレーン 7)に分けられ、スイッチ ファブリック全体にトラフィックを均等に配分するために使用されます。各スイッチ ファブリック プレーンは独立しており、相互に同期化しません。各セルは、単一のスイッチ ファブリック プレーンを使用してスイッチ ファブリックを通過します(セルは、スイッチ ファブリックを通過するときはビット スライスされません)。
ラインカード シャーシ(LCC)が単一シェルフ(スタンド アロン)システムとして動作している場合、LCC では CRS-16-FC/S(40G)または CRS-16-FC140/S(140G)の 2 種類のスイッチ ファブリック カードを使用します。各ファブリック カードはスイッチ ファブリックの 3 つのステージを実装しています。CRS-16-FC140/S ファブリックでは、20G、40G、または 140G の MSC と FP 間で相互接続ができるように 40G モードおよび 140G モードの両方での動作が可能です。
ラインカード シャーシがマルチ シェルフ システムの一部として動作する場合、シャーシは CRS-16-FC/M(40G)または CRS-16-FC140/M(140G)SFC を受け入れます。マルチ シェルフ システムでは、LCC に設置されている SFC カードが S1 ステージと S3 ステージ機能を実行しますが、スイッチ ファブリックの S2 ステージはファブリック カード シャーシ(FCC)内の S2 スイッチ ファブリック カードによって提供されます。CRS-16-FC140/S ファブリックのように、CRS-16-FC140/M ファブリックは 40G および 140G モードで動作します。FCC 内の CRS-16-FC140/M S2 ファブリックを使用して、マルチ シェルフ システム内の LCC は 40G ファブリック LCC と 140G ファブリック LCC の組み合わせとすることが可能で、この場合は 140G のサポートが必要な LCC でのみアップグレードが必要になります。スイッチ ファブリックのステージの詳細については、「スイッチ ファブリックの動作」を参照してください。
(注) Cisco CRS 16 スロット LCC は 40G ファブリック(FC/S カード)または 140G ファブリック(FC-140/S カード)のどちらもサポートします。40G および 140G ファブリック カードが混在した LCC は、サポートされる動作モードではありません。このようなモードは 40G ファブリック カードから 140G ファブリック カードへのアップグレード中にのみ一時的に許可されます。
図 4-1に、Cisco CRS-1 ルーティング システムスイッチ ファブリックを介した IP データ パケットの基本パスを示します。図は単一シェルフ システムをし、スイッチ ファブリックの 3 つのステージすべてがラインカード シャーシ内のスイッチ ファブリック カードによって提供されることに注意してください。マルチシェルフ システムでは、スイッチ ファブリックのステージ 2 はファブリック カード シャーシ内の S2 ファブリック カードによって提供されます。
図 4-1 Cisco CRS-1 シリーズ キャリア ルーティング システムの基本的なスイッチ ファブリック
入力データ パケットは PLIM の物理インターフェイスで受信された後関連する MSC に転送され、そこでスイッチ ファブリックのハードウェアで効率的にスイッチングするためにパケットがセルにセグメント化されます。各 MSC は各ファブリック プレーンと複数の接続があり、各ファブリック プレーンにセルを配信するために使用されます。出力では、セルが送信される前に出力 MSC によってデータ パケットに再設定されます。
(注) Cisco CRS-1 ルーティング システムスイッチ ファブリックで使用されるセル構造はシスコ固有のセル構造で、非同期転送モード(ATM)セルとは関係ありません。
各スイッチ ファブリック カード上の複数のスイッチ要素コンポーネントがスイッチ ファブリックの 3 つのステージ(S1、S2、および S3)を実装するための機能を実行します。各ステージでは、次の異なった機能を実行します。
• ステージ 1(S1):トラフィックをファブリック プレーンのステージ 2 に配分します。ステージ 1 の要素は、入力 MSC および PLIM(または RP)からセルを受信しファブリック プレーンのステージ 2(S2)にセルを配分します。セルは、ラウンドロビン方式で S2 要素に配分されます。つまり、1 つのセルが最初の S2 要素に行き、次のセルが次の S2 要素に行き、次のセルが 3 番目の S2 要素に行き、というように続き、その後順に最初の S2 に戻ります。
• ステージ 2(S2):スイッチングを行い、セルの 2 倍(2x)の高速化を提供し、マルチキャスト機能の最初のステージを実行します。ステージ 2 の要素はステージ 1 の要素からセルを受信し、次のように適切な出力機器へルートします。
– 出力 MSC および PLIM(単一シェルフ システム)
• ステージ 3(S3):スイッチングを行い、セルの 2 倍(2x)の高速化を提供し、マルチキャスト機能の第 2 レベルを実行します。ステージ 3 の要素はセルをステージ 2 から受信し、各セルを適切な出力 MSC および PLIM にルートするために必要なスイッチングを実行します。
1 つのラインカード シャーシには最大 16 MSC を搭載可能で、それぞれが最大 140 Gbps の帯域幅を持つことができます。各 MSC に 140 Gbps のスイッチング能力を提供するためには、スイッチ ファブリックは実際にはセルのオーバーヘッド、バッファ リング、および輻輳回避メカニズムに対応するための追加の帯域幅を提供する必要があります。
輻輳は複数の入力データ セルが同じ宛先の出力 MSC にスイッチされた場合にスイッチ ファブリック内で発生する可能性があります。通常、スイッチ コンポーネント間の個別のリンクに対する競合はほとんどないため S1 ステージと S2 ステージ間には輻輳はほとんどありません。しかし、複数のセルが S2 ステージおよび S3 ステージから同じ出力 MSC にスイッチされるため、セルが同じ出力リンクに対して競合する可能性があります。
輻輳時にセルが遅延する可能性を減らすには、スイッチ ファブリックは、S2 および S3 出力リンクに対する競合を減らすために 2 倍(2x)の高速化を使用します。スイッチ ファブリックは、S2 と S3 ステージですべての入力リンクに 2 つの出力リンクを提供することによって、2x 高速化を実現します。
スイッチ ファブリックの高速化に対応しない追加輻輳を緩和するためにスイッチ ファブリックの S2 ステージおよび S3 ステージではバッファリングも使用されます。バッファリングによってセルが誤った順序で到着することがないように、パケットに再構成される前に MSC によってセルが並べ替えられます。必要なバッファ量を制限するには、フロー制御にバック プレッシャ メカニズム(輻輳した宛先へのセルの送信を遅らせる)が使用されます。バック プレッシャのメッセージは、ファブリック セル ヘッダーで送信されます。
ルーティング システムは、システムに影響を及ぼすことなくスイッチ ファブリックの単一プレーンの損失に耐えることができます。複数プレーンの損失は徐々にパフォーマンスの低下を招きますが、ルーティング システムの障害に発展しません。
(注) Cisco CRS-1 ルーティング システムが動作するには、スイッチ ファブリックのプレーンのうち、少なくとも 2 つ(偶数プレーンと奇数プレーン)が常にアクティブになっている必要があります。そうでない場合は、スイッチ ファブリックに障害が発生し、システム障害に繋がります。
能力の高いスイッチ ファブリック カードにスイッチ ファブリックをアップグレードできます。トラフィック損失を防ぐには、システムが 7 つのファブリック プレーンを使用して動作を継続できるスイッチ ファブリック プレーンを一度に 1 つアップグレードする必要があります。アップグレード中は、一部のファブリック プレーンは 1 つの構成で実行され、他のファブリック プレーンは異なる設定で実行される可能性があります。
ファブリック プレーンをアップグレードするには、まずファブリック プレーンをシャット ダウンし、そのプレーンを実装するファブリック カードを外します。次に、元のファブリック カードを新しいファブリック カードに置き換え、次のプレーンをアップグレードする前にそのファブリック プレーンにサービスを復元します。
単一シャーシ システムでのスイッチ ファブリック カードの活性挿抜(OIR)の実行方法の詳細については、 『 Cisco CRS Carrier Routing System Getting Started Guide 』 を参照してください。単一シェルフ システムからマルチシェルフ システムへのアップグレード方法の詳細については、 『 Cisco CRS Carrier Routing System Single-Shelf to Multishelf Upgrade Guide 』 を参照してください。
Cisco CRS 16 スロット ラインカード シャーシ(単一シャーシ)は CRS-16-FC/S または CRS-16-FC140/S スイッチ ファブリック カードをサポートします。
単一シャーシでは、スイッチ ファブリック カード(CRS-16-FC/S または CRS-16-FC140/S)は 3 ステージ Benes スイッチ ファブリックの 3 つのステージすべてを実装します。また、各カードは 8 プレーン スイッチ ファブリックの 1 つのプレーンを実装します。図 4-2に CRS-16-FC/S スイッチ ファブリック カードを示します。CRS-16-FC140/S はこれに似ています。
図 4-2 CRS-16-FC/S スイッチ ファブリック カード
スイッチ ファブリック カードには、次の主要コンポーネントがあります。
• S1 スイッチ要素:スイッチ ファブリックのステージ 1 を実装します。セルを MSC や RP から受信し、それらをステージ 2 に配分します。S1 スイッチの各要素は、S2 スイッチの各要素に接続されています。
• S2 スイッチ要素:スイッチ ファブリックのステージ 2 を実装します。セルをステージ 1 から受信し、2x 高速化を実施し、適切な出力 S3 要素に対してセルをルートします。S2 スイッチの各要素は、S3 スイッチの各要素に接続されています。
• S3 スイッチ要素:スイッチ ファブリックのステージ 3 を実装します。セルをステージ 2 から受信し、スイッチングおよび 2x 高速化を実行します。S2 および S3 スイッチ要素は、セルをバッファリングするための中央メモリおよび優先度の高いトラフィックと優先度の低いトラフィックを区別するためのキューイング機能を備える純粋な出力バッファ化されたスイッチ要素です。
• サービス プロセッサ:ファブリック カードの動作を制御し、システム コントロール プレーンへのインターフェイスを提供します。サービス プロセッサはカードの電源投入および電源停止の実行、処理のリンク アップおよびリンク ダウン、スイッチ要素コンポーネントの設定、マルチキャスト トラフィックのファブリック グループ ID(FGID)の更新、およびセル設定の管理を行います。
• 電源モジュール:ミッドプレーンから - 48 VDC の入力電力を取得し、スイッチ ファブリック カードのコンポーネントで必要な電圧に変換します。
図 4-3は、スイッチ ファブリック カードの主なコンポーネントを示します。
(注) 3 ステージ Benes スイッチ ファブリックの各ステージは同じスイッチ要素コンポーネントで実装されます。ただし、システムの起動時にコンポーネントはスイッチ ファブリックでの機能に従って Cisco IOS XR ソフトウェアによって S1、S2、または S3 モードで動作するようにプログラムされます。各スイッチ ファブリック カードには 2 つの S1、2 つの S2、および 4 つの S3 コンポーネントがあります。
図 4-4に、CRS-16-FC/S スイッチ ファブリック カードの前面パネルを示します。CRS-16-FC140/S の前面パネルもこれに似ています。
図 4-4 CRS-16-FC/S スイッチ ファブリック カードの前面パネル
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スイッチ ファブリック カードの前面パネルには、次のものがあります。
• ステータス LED:ファブリック カードの状態を示します。
• 英数字ディスプレイ:スイッチ ファブリック カードのメッセージを表示します。