IPv6 ユニキャスト ルーティングの設定について
この章では、スイッチに IPv6 ユニキャスト ルーティングを設定する方法について説明します。
Note |
この章のすべての IPv6 機能を使用するには、スイッチまたはアクティブスイッチが Network Advantage ライセンスを実行している必要があります。Network Essentials ライセンスを実行しているスイッチは、IPv6 スタティック ルーティングと IPv6 用の RIP をサポートしています。Network Advantage ライセンスを実行しているスイッチは、IPv6 に対し OSPF、EIGRP および BGP をサポートしています。 |
IPv6 の概要
IPv4 ユーザーは IPv6 に移行することができ、エンドツーエンドのセキュリティ、Quality of Service(QoS)、およびグローバルに一意なアドレスのようなサービスを利用できます。IPv6 アドレス スペースによって、プライベート アドレスの必要性が低下し、ネットワーク エッジの境界ルータで Network Address Translation(NAT; ネットワーク アドレス変換)処理を行う必要性も低下します。
シスコの IPv6 の実装方法については、次の URL を参照してください。
http://www.cisco.com/en/US/products/ps6553/products_ios_technology_home.html
IPv6 およびこの章のその他の機能については、
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『Cisco IOS IPv6 Configuration Library』を参照してください。
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Cisco.com の [Search] フィールドを使用して、Cisco IOS ソフトウェア マニュアルを特定します。たとえば、スタティック ルートについての情報が必要な場合は、[Search] フィールドで Implementing Static Routes for IPv6 と入力すると、スタティック ルートについて調べられます。
IPv6 のスタティック ルート
スタティック ルートは手動で設定され、2 つのネットワーキング デバイス間のルートを明示的に定義します。スタティック ルートが有効なのは、外部ネットワークへのパスが 1 つしかない小規模ネットワークの場合、または大規模ネットワークで特定のトラフィック タイプにセキュリティを設定する場合です。
IPv6 のスタティック ルーティングの設定(CLI)
IPv6 用のスタティックルートの設定については、「IPv6 用のスタティックルーティングの設定」を参照してください。
スタティック ルートの詳細については、Cisco.com で『Cisco IOS IPv6 Configuration Library』の「Implementing Static Routes for IPv6」の章を参照してください。
IPv6 ユニキャストのパス MTU ディスカバリ
スイッチはシステム最大伝送単位(MTU)の IPv6 ノードへのアドバタイズおよびパス MTU ディスカバリをサポートします。パス MTU ディスカバリを使用すると、ホストは指定されたデータ パスを通るすべてのリンクの MTU サイズを動的に検出して、サイズに合せて調整できます。IPv6 では、パスを通るリンクの MTU サイズが小さくてパケット サイズに対応できない場合、パケットの送信元がフラグメンテーションを処理します。
ICMPv6
IPv6 のインターネット制御メッセージ プロトコル(ICMP)は、ICMP 宛先到達不能メッセージなどのエラー メッセージを生成して、処理中に発生したエラーや、その他の診断機能を報告します。IPv6 では、ネイバー探索プロトコルおよびパス MTU ディスカバリに ICMP パケットも使用されます。
ネイバー探索
スイッチは、IPv6 対応の NDP、ICMPv6 の最上部で稼働するプロトコル、および NDP をサポートしない IPv6 ステーション対応のスタティック ネイバー エントリをサポートします。IPv6 ネイバー探索プロセスは ICMP メッセージおよび送信請求ノード マルチキャスト アドレスを使用して、同じネットワーク(ローカル リンク)上のネイバーのリンク層アドレスを判別し、ネイバーに到達できるかどうかを確認し、近接ルータを追跡します。
スイッチは、マスク長が 64 未満のルートに対して ICMPv6 リダイレクトをサポートしています。マスク長が 64 ビットを超えるホスト ルートまたは集約ルートでは、ICMP リダイレクトがサポートされません。
ネイバー探索スロットリングにより、IPv6 パケットをルーティングするためにネクスト ホップ転送情報を取得するプロセス中に、スイッチ CPU に不必要な負荷がかかりません。IPv6 パケットのネクスト ホップがスイッチによってアクティブに解決しようとしている同じネイバーである場合は、そのようなパケットが追加されると、スイッチはそのパケットをドロップします。このドロップにより、CPU に余分な負荷がかからないようになります。
DNS 設定の IPv6 ルータ アドバタイズメント オプション
大部分のインターネット サービスは、ドメイン ネーム サーバー(DNS)名によって識別されます。IPv6 ルータアドバタイズメント(RA)には、IPv6 ホストでの自動 DNS 設定の実行を可能にする次の 2 つのオプションがあります。
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再帰 DNS サーバー(RDNSS)
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DNS 検索リスト(DNSSL)
RDNSS には、IPv6 ホストでの DNS 名前解決に役立つ再帰 DNS サーバーのアドレスが含まれています。DNS 検索リストは DNS サフィックス ドメイン名のリストであり、IPv6 ホストで DNS クエリ検索を実行する際に使用されます。
DNS 設定の RA オプションの詳細については、IETF RFC 6106 を参照してください。
DNSSL の設定については、『IP Addressing Services Configuration Guide』の「Configuring DNS Search List Using IPv6 Router Advertisement Options」を参照してください。
デフォルト ルータ プリファレンス
スイッチは、ルータのアドバタイズメント メッセージの拡張機能である、IPv6 Default Router Prefernce(DRP)をサポートします。DRP では、特にホストがマルチホーム構成されていて、ルータが異なるリンク上にある場合に、ホストが適切なルータを選択する機能が向上しました。スイッチは、Route Information Option(RFC 4191)をサポートしません。
IPv6 ホストは、オフリンク宛先へのトラフィック用にルータを選択する、デフォルト ルータ リストを維持します。次に、宛先用に選択されたルータは、宛先キャッシュに格納されます。IPv6 NDP では、到達可能であるルータまたは到達可能性の高いルータが、到達可能性が不明または低いルータよりも優先されます。NDP は、到達可能または到達できる可能性の高いルータとして、常に同じルータを選択するか、またはルータ リストを循環して選択できます。DRP を使用することにより、両方ともが到達可能または到達できる可能性の高い 2 台のルータの一方を他方に対して優先させるよう IPv6 ホストを設定することができます。
DRP for IPv6 の設定については、「DRP の設定」を参照してください。
DRP for IPv6 の詳細情報については、Cisco.com の『Cisco IOS IPv6 Configuration Library』を参照してください。
IPv6 のポリシーベース ルーティング
ポリシーベース ルーティング(PBR)は、トラフィック フローに定義ポリシーを設定し、ルートにおけるルーティング プロトコルへの依存度を軽くして、パケットのルーティングを柔軟に行えるようにします。したがって、PBR は、ルーティング プロトコルで提供される既存のメカニズムを拡張および補完することにより、ルーティングの制御を強化します。PBR を使用すると、IPv6 precedence を設定できます。単純なポリシーでは、これらのタスクのいずれかを使用し、複雑なポリシーでは、これらすべてのタスクを使用できます。高コスト リンク上のプライオリティ トラフィックなど、特定のトラフィックのパスを指定することもできます。
PBR for IPv6 は、転送される IPv6 パケットおよび送信される IPv6 パケットの両方に適用できます。転送されるパケットの場合、PBR for IPv6 は、次の転送パスでサポートされる IPv6 入力インターフェイス機能として実装されます。
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プロセス
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シスコ エクスプレス フォワーディング(旧称 CEF)
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分散型シスコ エクスプレス フォワーディング
ポリシーは、IPv6 アドレス、ポート番号、プロトコル、またはパケットのサイズに基づいて作成できます。
PBR を使用すると、次の処理を実行できます。
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拡張アクセス リスト基準に基づいてトラフィックを分類する。リストにアクセスし、次に一致基準を設定します。
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差別化されたサービス クラスを有効にする機能をネットワークに与える IPv6 precedence ビットを設定する。
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特定のトラフィック エンジニアリング パスにパケットをルーティングする。ネットワークを介して特定の Quality of Service(QoS)を得るためにパケットをルーティングする必要がある場合があります。
PBR を使用すると、ネットワークのエッジでパケットを分類およびマーキングできます。PBR では、precedence 値を設定することにより、パケットをマーキングします。precedence 値は、ネットワーク コアにあるデバイスが適切な QoS をパケットに適用するために直接使用でき、これにより、パケットの分類がネットワーク エッジで維持されます。
PBR for IPv6 の有効化については、「ローカル PBR for IPv6 の有効化」を参照してください。
インターフェイスの IPv6 PBR の有効化については、「インターフェイスでの IPv6 PBR の有効化」を参照してください。
サポートされていない IPv6 ユニキャスト ルーティング機能
スイッチは、次の IPv6 機能をサポートしません。
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サイトローカルアドレス宛ての IPv6 パケット
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IPv4/IPv6 や IPv6/IPv4 などのトンネリング プロトコル
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IPv4/IPv6 または IPv6/IPv4 トンネリング プロトコルをサポートするトンネル エンドポイントとしてのスイッチ
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IPv6 Web Cache Communication Protocol(WCCP)
IPv6 機能の制限
IPv6 はスイッチのハードウェアに実装されるため、ハードウェアメモリ内の IPv6 圧縮アドレスによる制限がいくつか発生します。ハードウェアの制限により、機能の一部が失われ、一部の機能が制限されます。たとえば、スイッチはハードウェアでソースルーテッド IPv6 パケットに QoS 分類を適用できません。
IPv6 とスイッチ スタック
スイッチにより、スタック全体で IPv6 転送がサポートされ、アクティブスイッチで IPv6 ホスト機能がサポートされます。アクティブスイッチは IPv6 ユニキャスト ルーティング プロトコルを実行してルーティングテーブルを計算します。スタック メンバー スイッチはテーブルを受信して、転送用にハードウェア IPv6 ルートを作成します。アクティブスイッチは、すべての IPv6 アプリケーションも実行します。
新しいスイッチがアクティブスイッチになる場合、新しいマスターは IPv6 ルーティングテーブルを再計算してこれをメンバースイッチに配布します。新しいアクティブスイッチが選択中およびリセット中の間には、スイッチスタックによる IPv6 パケットの転送は行われません。スタック MAC アドレスが変更され、これによって IPv6 アドレスが変更されます。ipv6 address ipv6-prefix/prefix length eui-64 インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用して、拡張固有識別子(EUI)でスタック IPv6 アドレスを指定する場合、アドレスは、インターフェイス MAC アドレスに基づきます。「IPv6 アドレッシングの設定と IPv6 ルーティングの有効化」を参照してください。
スタック上で永続的な MAC アドレスを設定し、アクティブスイッチが変更された場合、スタック MAC アドレスは、約 4 分間、変更されません。
IPv6 アクティブスイッチおよびメンバーの機能は次のとおりです。
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アクティブスイッチ:
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IPv6 ルーティングプロトコルの実行
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ルーティング テーブルの生成
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IPv6 用の分散型シスコ エクスプレス フォワーディングを使用するメンバースイッチにルーティングテーブルを配布します。
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IPv6 ホスト機能および IPv6 アプリケーションの実行
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メンバースイッチ:
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アクティブスイッチから IPv6 用のシスコ エクスプレス フォワーディングのルーティングテーブルを受信します。
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ハードウェアへのルートのプログラミング
(注)
IPv6 パケットに例外(IPv6 オプション)がなく、スタック内のスイッチでハードウェア リソースが不足していない場合、IPv6 パケットがスタック全体にわたってハードウェアでルーティングされます。
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アクティブスイッチの再選択で IPv6 用のシスコ エクスプレス フォワーディングのテーブルをフラッシュします。
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IPv6 のデフォルト設定
機能 |
デフォルト設定 |
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SDM テンプレート |
デフォルトは拡張テンプレート |
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IPv6 ルーティング |
すべてのインターフェイスでグローバルに無効 |
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IPv6 用 Cisco Express Forwarding または IPv6 用 distributed Cisco Express Forwarding(dCEF; 分散型シスコ エクスプレス フォワーディング) |
無効(IPv4 Cisco Express Forwarding および distributed Cisco Express Forwarding(dCEF; 分散型シスコ エクスプレス フォワーディング)はデフォルトでは有効)
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IPv6 アドレス |
未設定 |