MVPN は、各マルチキャスト ドメインにスタティック デフォルト マルチキャスト配信ツリー(MDT)を確立します。デフォルト MDT は、PE ルータが使用するパスを定義し、マルチキャスト ドメインにある他のすべての PE ルータに、マルチキャスト データとコントロール メッセージを送信します。
Source Specific Multicast(SSM; 送信元特定マルチキャスト)がコア マルチキャスト ルーティング プロトコルとして使用される場合、デフォルト MDT およびデータ MDT に使用されるマルチキャスト IP アドレスは、すべての PE ルータの SSM 範囲内に設定する必要があります。
また、MVPN は、高帯域幅伝送用の MDT のダイナミックな作成もサポートします。データ MDT は、Cisco IOS ソフトウェアに一意な機能です。データ MDT は、VPN 内のフルモーション ビデオなどの高帯域幅の送信元向けであり、MPLS VPN コアの最適なトラフィック転送を確保することを目的としています。データ MDT が作成されるしきい値は、ルータ単位または VRF 単位で設定できます。マルチキャスト伝送が定義されたしきい値を超えると、送信側の PE ルータがデータ MDT を作成し、データ MDT に関する情報を含む UDP メッセージをデフォルト MDT のすべてのルータに送信します。マルチキャスト ストリームがデータ MDT のしきい値を超えたかどうかを判断する統計情報は、1 秒に 1 回確認されます。PE ルータは UDP メッセージを送信した後、切り替わるまでに 3 秒以上待機します。最も長くかかる場合は 13 秒、最良の場合は 3 秒です。
データ MDT は、VRF マルチキャスト ルーティング テーブル内で、(S,G)マルチキャスト ルート エントリ専用に作成されます。個々のソースデータ レートの値に関係なく、(*, G) エントリ用には作成されません。
次の例のサービス プロバイダーには、San Jose、New York、Dallas にオフィスがあるマルチキャスト カスタマーがいます。San Jose では、一方向のマルチキャスト プレゼンテーションが行われています。サービス プロバイダー ネットワークでは、このカスタマーと関連する 3 つすべてのサイト、および別のエンタープライズ カスタマーの Houston サイトがサポートされます。
エンタープライズ カスタマーのデフォルト MDT は、プロバイダーのルータ P1、P2、P3、およびその関連 PE ルータから構成されています。PE4 は別のカスタマーに関連付けられているため、デフォルト MDT の一部ではありません。次の図からは、San Jose 以外はマルチキャストに加入していないため、データがデフォルト MDT に沿って転送されていないことがわかります。
図 1. デフォルト マルチキャスト配信ツリーの概要
New York の従業員がマルチキャスト セッションに加入します。New York のサイトに関連付けられている PE ルータは、カスタマーのマルチキャスト ドメインのデフォルト MDT を介して転送される加入要求を送信します。PE1 は、マルチキャスト セッションの送信元に関連付けられている PE ルータであり、この要求を受信します。次の図は、PE ルータが、マルチキャスト送信元(CE1a)と関連する CE ルータに要求を転送する方法を示しています。
図 2. データ MDT の初期化
CE ルータ(CE1a)が関連する PE ルータ(PE1)へマルチキャスト データの送信を開始すると、PE ルータ(PE1)は、デフォルト MDT に沿ってマルチキャスト データを送信します。PE1 は、マルチキャスト データを送信すると、マルチキャスト データがデータ MDT を作成する対象の帯域幅のしきい値を超えていることを認識します。したがって、PE1 はデータ MDT を作成し、データ MDT に関する情報を含むデフォルト MDT を使用して、すべてのルータにメッセージを送信し、3 秒後、データ MDT を使用して、その特定のストリームのマルチキャスト データを送信し始めます。このソースに関係する受信先は PE2 だけにあるので、PE2 だけがデータ MDT に加入し、データ MDT でトラフィックを受信します。
PE ルータは、デフォルト MDT を介して他の PE ルータと PIM 関係を維持するとともに、直接接続された PE ルータとの PIM 関係をも維持します。