実装された IP マルチキャストは、中央集中型シスコ エクスプレス フォワーディングの拡張機能です。シスコ エクスプレス フォワーディングは、ユニキャスト ルーティング テーブル(BGP、OSPF、EIGRP などのユニキャスト ルーティング プロトコルによって作成される)から情報を抽出し、この情報をハードウェアにロードします。
転送情報ベース(FIB)FIB のユニキャスト ルートを使用すると、上位層のルーティング テーブルでルートが変更された場合でも、ハードウェア ルーティング ステートの 1 つのルートを変更するだけです。ハードウェアでユニキャスト パケットを転送するために、Integrated Switching Engine は Ternary CAM(TCAM)から送信元および宛先ルートを検索し、ハードウェア FIB から隣接インデックスを取り出して、ハードウェア ネイバー テーブル関係からレイヤ 2 リライト情報およびネクストホップ アドレスを取得します。
マルチキャスト転送情報ベース(MFIB)サブシステムは、ユニキャストシスコ エクスプレス フォワーディングのマルチキャスト版です。この MFIB サブシステムは、PIM および IGMP によって作成されるマルチキャスト ルートを抽出し、ハードウェア転送のためのプロトコル独立フォーマットにします。MFIB サブシステムは、プロトコル固有の情報を削除し、必要なフォワーディング情報だけを残します。MFIB テーブルの各エントリは、(S,G)または(*,G)ルート、入力 RPF VLAN、およびレイヤ 3 出力インターフェイスのリストで構成されます。MFIB サブシステムは、プラットフォーム依存の管理ソフトウェアと連携して、このマルチキャスト ルーティング情報をハードウェア FIB およびハードウェア Replica Expansion Table(RET)にロードします。デバイスは、レイヤ 3 ルーティングとレイヤ 2 ブリッジングを同時に実行します。いずれの VLAN インターフェイスにも複数のレイヤ 2 スイッチ ポートを設定できます。
次の図に、シスコ デバイスがユニキャスト ルーティング、マルチキャスト ルーティング、およびレイヤ 2 ブリッジングの情報を組み合わせてハードウェアで転送を実行する機能の概要を示します。
図 5. ハードウェアでのシスコ エクスプレス フォワーディング、MFIB、およびレイヤ 2 転送情報の組み合わせ
MFIB ルートは、シスコ エクスプレス フォワーディング ユニキャスト ルートと同様にレイヤ 3 であるため、該当するレイヤ 2 情報と結合する必要があります。MFIB ルートの例を示します。
(*,203.0.113.1)
RPF interface is Vlan3
Output Interfaces are:
Vlan 1
Vlan 2
ルート(*,203.0.113.1)がハードウェア FIB テーブルにロードされ、出力インターフェイスのリストが MET にロードされます。出力インターフェイスのリストへのポインタ、MET インデックス、および RPF インターフェイスも、(*,203.0.113.1)ルートとともにハードウェア FIB にロードされます。ハードウェアにこの情報をロードすることで、レイヤ 2 情報との結合を開始できるようになります。VLAN 1 上の出力インターフェイスについて、Integrated Switching Engine は VLAN 1 上でスパニングツリー フォワーディング ステートにあるすべてのスイッチ ポートにパケットを送信する必要があります。同じプロセスが VLAN 2 に適用されます。VLAN 2 内のスイッチ ポートのセットを決定するために、レイヤ 2 転送テーブルが使用されます。
ハードウェアがパケットをルーティングする場合、すべての出力インターフェイスのすべてのスイッチ ポートにパケットを送信するだけでなく、ハードウェアは入力 VLAN の(パケットが到着したスイッチ ポートを除く)すべてのスイッチ ポートにも、パケットを送信します。たとえば、VLAN 3 に 2 つのスイッチ ポート、GigabitEthernet 3/1 および GigabitEthernet 3/2 があると仮定します。GigabitEthernet 3/1 上のホストがマルチキャスト パケットを送信すると、GigabitEthernet 3/2 上のホストもそのパケットを受信しなければならない場合があります。GigabitEthernet 3/2 上のホストにマルチキャスト パケットを送信するには、MET にロードされるポート セットに入力 VLAN のすべてのスイッチ ポートを追加する必要があります。
VLAN 1 に 1/1 および 1/2、VLAN 2 に 2/1 および 2/2、VLAN 3 に 3/1 および 3/2 が含まれていれば、このルート用の MET チェーンには、スイッチ ポート 1/1、1/2、2/1、2/2、3/1、および 3/2 が含まれることになります。
IGMP スヌーピングがオンの場合、パケットは VLAN 2 のすべての出力スイッチ ポートに転送されるとは限りません。IGMP スヌーピングによって、グループ メンバまたはルータが存在すると判断されたスイッチ ポートだけに、パケットが転送されます。たとえば、VLAN 1 で IGMP スヌーピングがイネーブルで、IGMP スヌーピングによってポート 1/2 だけにグループ メンバが存在すると判断された場合、MET チェーンにはスイッチポート 1/1、1/2、2/1、2/2、3/1、および 3/2 が含まれることになります。