IP ユニキャストルーティングについて
このモジュールでは、デバイスで IPv4 ユニキャストルーティングを設定する方法について説明します。
(注) |
IPv4 トラフィックに加え、IPv6 ユニキャストルーティングをイネーブルにして IPv6 トラフィックを転送するようにインターフェイスを設定することもできます。 |
IP ルーティングの概要
一部のネットワーク環境で、VLAN(仮想 LAN)は各ネットワークまたはサブネットワークに関連付けられています。IP ネットワークで、各サブネットワークは 1 つの VLAN に対応しています。VLAN を設定すると、ブロードキャスト ドメインのサイズを制御し、ローカル トラフィックをローカル内にとどめることができます。ただし、異なる VLAN 内のネットワーク デバイスが相互に通信するには、VLAN 間でトラフィックをルーティング(VLAN 間ルーティング)するレイヤ 3 デバイス(ルータ)が必要です。VLAN 間ルーティングでは、適切な宛先 VLAN にトラフィックをルーティングするため、1 つまたは複数のルータを設定します。
VLAN 10 内のホスト A が VLAN 10 内のホスト B と通信する場合、ホスト A はホスト B 宛にアドレス指定されたパケットを送信します。スイッチ A はパケットをルータに送信せず、ホスト B に直接転送します。
ホスト A から VLAN 20 内のホスト C にパケットを送信する場合、スイッチ A はパケットをルータに転送し、ルータは VLAN 10 インターフェイスでトラフィックを受信します。ルータはルーティング テーブルを調べて正しい発信インターフェイスを判別し、VLAN 20 インターフェイスを経由してパケットをスイッチ B に送信します。スイッチ B はパケットを受信し、ホスト C に転送します。
ルーティング タイプ
ルータおよびレイヤ 3 スイッチは、次の方法でパケットをルーティングできます。
-
デフォルト ルーティング
-
事前にプログラミングされているトラフィックのスタティック ルートの使用
スイッチは、スタティック ルートとデフォルト ルートをサポートします。IPv4 と IPv6 の両方のバージョンの RIP をサポートします。
スタティック ユニキャスト ルート
スタティック ユニキャスト ルートは、特定のパスを通過して送信元と宛先間でパケットを送受信するユーザ定義のルートです。ルータが特定の宛先へのルートを構築できない場合、スタティック ルートは重要で、到達不能なすべてのパケットが送信される最終ゲートウェイを指定する場合に有効です。
ユーザによって削除されるまで、スタティック ルートはスイッチに保持されます。ただし、アドミニストレーティブ ディスタンスの値を割り当て、スタティック ルートをダイナミック ルーティング情報で上書きできます。各ダイナミック ルーティング プロトコルには、デフォルトのアドミニストレーティブ ディスタンスが設定されています(次の表を参照)。ダイナミック ルーティング プロトコルの情報でスタティック ルートを上書きする場合は、スタティック ルートのアドミニストレーティブ ディスタンスがダイナミック プロトコルのアドミニストレーティブ ディスタンスよりも大きな値になるように設定します。
ルートの送信元 |
デフォルト距離 |
---|---|
接続されているインターフェイス |
0 |
スタティック ルート |
1 |
EIGRP サマリー ルート |
5 |
内部 EIGRP |
90 |
IGRP |
100 |
OSPF |
110 |
RIP |
120 |
不明 |
225 |
インターフェイスを指し示すスタティックルートは、RIP、IGRP、およびその他のダイナミック ルーティング プロトコルを通してアドバタイズされます。redistribute スタティック ルータ コンフィギュレーション コマンドが、これらのルーティングプロトコルに対して指定されているかどうかは関係ありません。これらのスタティック ルートがアドバタイズされるのは、インターフェイスを指し示すスタティック ルートが接続された結果、静的な性質を失ったとルーティング テーブルで見なされるためです。ただし、network コマンドで定義されたネットワーク以外のインターフェイスに対してスタティックルートを定義する場合は、ダイナミック ルーティング プロトコルに redistribute スタティックコマンドを指定しない限り、ルートはアドバタイズされません。
インターフェイスがダウンすると、ダウンしたインターフェイスを経由するすべてのスタティック ルートが IP ルーティング テーブルから削除されます。転送ルータのアドレスとして指定されたアドレスへ向かう有効なネクスト ホップがスタティック ルート内に見つからない場合は、IP ルーティング テーブルからそのスタティック ルートも削除されます。
デフォルトのルートおよびネットワーク
ルータは、他のすべてのネットワークへのルートを学習できません。完全なルーティング機能を実現するには、一部のルータをスマート ルータとして使用し、それ以外のルータのデフォルト ルートをスマート ルータ宛てに指定します(スマート ルータにはインターネットワーク全体のルーティング テーブルに関する情報が格納されます)。これらのデフォルト ルートは動的に学習できますが、ルータごとに設定することもできます。ほとんどのダイナミックな内部ルーティング プロトコルには、スマート ルータを使用してデフォルト情報を動的に生成し、他のルータに転送するメカニズムがあります。
指定されたデフォルト ネットワークに直接接続されたインターフェイスがルータに存在する場合は、そのデバイス上で動作するダイナミック ルーティング プロトコルによってデフォルト ルートが生成されます。RIP の場合は、疑似ネットワーク 0.0.0.0 がアドバタイズされます。
ネットワークのデフォルトを生成しているルータには、そのルータ自身のデフォルト ルートも指定する必要があります。ルータが自身のデフォルト ルートを生成する方法の 1 つは、適切なデバイスを経由してネットワーク 0.0.0.0 に至るスタティック ルートを指定することです。
ダイナミック ルーティング プロトコルによってデフォルト情報を送信するときは、特に設定する必要はありません。ルーティング テーブルは定期的にスキャンされ、デフォルト ルートとして最適なデフォルト ネットワークが選択されます。In Interior Gateway Routing Protocol(IGRP)ネットワークでは、システムのデフォルトネットワークの候補が複数存在する場合もあります。Cisco ルータでは、デフォルト ルートまたは最終ゲートウェイを設定するため、アドミニストレーティブ ディスタンスおよびメトリック情報を使用します。
ダイナミックなデフォルト情報がシステムに送信されない場合は、ip default-network グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用し、デフォルトルートの候補を指定します。このネットワークが任意の送信元のルーティング テーブルに格納されている場合は、デフォルト ルートの候補としてフラグ付けされます。ルータにデフォルト ネットワークのインターフェイスが存在しなくても、そこへのパスが格納されている場合、そのネットワークは 1 つの候補と見なされ、最適なデフォルト パスへのゲートウェイが最終ゲートウェイになります。
ルーティング情報プロトコル
Routing Information Protocol(RIP)は、小規模な同種ネットワーク間で使用するために作成された内部ゲートウェイプロトコル(IGP)です。RIP は、ブロードキャスト UDP データパケットを使用してルーティング情報を交換するディスタンスベクトル ルーティング プロトコルです。このプロトコルは RFC 1058 に文書化されています。RIP の詳細については、『IP Routing Fundamentals』(Cisco Press 刊)を参照してください。
デバイスは RIP を使用し、30 秒ごとにルーティング情報アップデート(アドバタイズメント)を送信します。180 秒以上を経過しても別のルータからアップデートがルータに届かない場合、該当するルータから送られたルートは使用不能としてマークされます。240 秒後もまだ更新がない場合、ルータは更新のないルータのルーティング テーブル エントリをすべて削除します。
RIP では、各ルートの値を評価するためにホップ カウントが使用されます。ホップ カウントは、ルート内で経由されるルータ数です。直接接続されているネットワークのホップ カウントは 0 です。ホップ カウントが 16 のネットワークに到達できません。このように範囲(0 ~ 15)が狭いため、RIP は大規模ネットワークには適していません。
ルータにデフォルトのネットワーク パスが設定されている場合、RIP はルータを疑似ネットワーク 0.0.0.0 にリンクするルートをアドバタイズします。0.0.0.0 ネットワークは存在しません。RIP はデフォルトのルーティング機能を実行するためのネットワークとして、このネットワークを処理します。デフォルトネットワークが RIP によって学習された場合、またはルータにラストリゾートゲートウェイがあり、RIP がデフォルトのメトリックによって設定されている場合、デバイスはデフォルトネットワークをアドバタイズします。RIP は指定されたネットワーク内のインターフェイスにアップデートを送信します。インターフェイスのネットワークを指定しなければ、RIP のアップデート中にアドバタイズされません。
RIP のデフォルト設定
機能 |
デフォルト設定 |
---|---|
自動サマリー |
イネーブル |
デフォルト情報送信元 |
ディセーブル |
デフォルト メトリック |
自動メトリック変換(組み込み) |
IP RIP 認証キーチェーン |
認証なし 認証モード:クリア テキスト |
IP RIP の起動 |
ディセーブル |
IP スプリット ホライズン |
メディアにより異なる |
Neighbor |
未定義 |
ネットワーク |
指定なし |
オフセット リスト |
ディセーブル |
出力遅延 |
0 ミリ秒 |
タイマー基準 |
|
アップデート送信元の検証 |
イネーブル |
バージョン |
RIP バージョン 1 およびバージョン 2 パケットを受信し、バージョン 1 パケットを送信します。 |