この製品のマニュアルセットは、偏向のない言語を使用するように配慮されています。このマニュアルセットでの偏向のない言語とは、年齢、障害、性別、人種的アイデンティティ、民族的アイデンティティ、性的指向、社会経済的地位、およびインターセクショナリティに基づく差別を意味しない言語として定義されています。製品ソフトウェアのユーザーインターフェイスにハードコードされている言語、RFP のドキュメントに基づいて使用されている言語、または参照されているサードパーティ製品で使用されている言語によりドキュメントに例外が存在する場合があります。シスコのインクルーシブランゲージに対する取り組みの詳細は、こちらをご覧ください。
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この章では、Cisco NX-OS デバイスで Multicast Source Discovery Protocol(MSDP)を設定する手順について説明します。
Multicast Source Discovery Protocol(MSDP)を使用すると、複数のボーダ ゲートウェイ プロトコル(BGP)対応 Protocol Independent Multicast(PIM)スパース モード ドメイン間で、マルチキャスト送信元情報を交換できます。また、MSDP を使用して Anycast-RP 設定を作成し、RP 冗長性およびロード シェアリングを提供できます。BGP の詳細については、『Cisco Nexus 9000 Series NX-OS Unicast Routing Configuration Guide』を参照してください。
受信者が別のドメイン内の送信元から送信されたグループに加入する場合、ランデブー ポイント(RP)は送信元方向に PIM Join メッセージを送信して、最短パス ツリーを構築します。指定ルータ(DR)は、送信元ドメイン内の送信元ツリーにパケットを転送します。これらのパケットは、必要に応じて送信元ドメイン内の RP を経由し、送信元ツリーの各ブランチを通って他のドメインへと送信されます。受信者を含むドメインでは、対象のドメインの RP が送信元ツリー上に配置されている場合があります。ピアリング関係は転送制御プロトコル(TCP)接続を介して構築されます。
次の図に、4 つの PIM ドメインを示します。接続された RP(ルータ)は、アクティブな送信元情報を相互に交換するため、MSDP ピアと呼ばれます。各 MSDP ピアは他のピアにマルチキャスト送信元情報の独自のセットをアドバタイズします。送信元ホスト 2 はグループ 224.1.1.1 にマルチキャスト データを送信します。MSDP プロセスでは、RP 6 上で PIM Register メッセージを介して送信元に関する情報を学習すると、ドメイン内の送信元に関する情報が、Source-Active(SA)メッセージの一部として MSDP ピアに送信されます。SA メッセージを受信した RP 3 および RP 5 は、MSDP ピアに SA メッセージを転送します。RP 5 は、ホスト 1 から 224.1.1.1 のマルチキャスト データに対する要求を受信すると、192.1.1.1 のホスト 2 方向に PIM Join メッセージを送信して、送信元への最短パス ツリーを構築します。
各 RP 間で MSDP ピアリング設定を行うには、フル メッシュを作成します。一般的な MSDP フル メッシュは、RP 1、RP 2、RP 3 のように自律システム内に作成され、自律システム間には作成されません。ループ抑制および MSDP ピア RPF により、SA メッセージのループを防止するには、BGP を使用します。
(注) | PIM ドメイン内で Anycast RP(ロード バランシングおよびフェールオーバーを実行するための RP のセット)を使用する場合、BGP を設定する必要はありません。 |
(注) | PIM Anycast(RFC 4610)を使用して、MSDP の代わりに Anycast-RP 機能を提供できます。 |
MSDP の詳細については、RFC 3618 を参照してください。
MSDP ピアによる Source-Active(SA)メッセージの交換を通じて、アクティブな送信元に関する情報を伝播させます。SA メッセージには、次の情報が格納されています。
PIM Register メッセージによって新しい送信元がアドバタイズされると、MSDP プロセスはそのメッセージを再カプセル化して SA メッセージに格納し、即座にすべての MSDP ピアに転送します。
SA キャッシュには、SA メッセージを介して学習したすべての送信元情報が保持されます。キャッシングを使用すると、既知のグループの情報がすべてキャッシュに格納されるため、新たな受信者を迅速にグループに加入させることができます。キャッシュに格納する送信元エントリ数を制限するには、SA 制限ピア パラメータを設定します。特定のグループ プレフィックスに対してキャッシュに格納する送信元エントリ数を制限するには、グループ制限グローバル パラメータを設定します。SA キャッシュはデフォルトでイネーブルになっており、ディセーブルにできません。
MSDP ソフトウェアは 60 秒おきに、または SA インターバルのグローバル パラメータの設定にしたがって、SA キャッシュ内の各グループに SA メッセージを送信します。対象の送信元およびグループに関する SA メッセージが、SA インターバルから 3 秒以内に受信されなかった場合、SA キャッシュ内のエントリは削除されます。
MSDP ピアは、発信元 RP から離れた場所で SA メッセージを受信し、そのメッセージの転送を行います。このアクションは、ピア RPF フラッディングと呼ばれます。このルータは BGP または MBGP ルーティング テーブルを調べ、SA メッセージの発信元 RP 方向にあるネクスト ホップ ピアを特定します。このピアを Reverse Path Forwarding(RPF)ピアと呼びます。
MSDP ピアは、非 RPF ピアから送信元 RP へ向かう同じ SA メッセージを受信すると、そのメッセージをドロップします。それ以外の場合、すべての MSDP ピアにメッセージが転送されます。
MSDP メッシュ グループを使用すると、ピア RPF フラッディングで生成される SA メッセージ数を抑えることができます。メッシュ内のすべてのルータ間にピアリング関係を設定してから、これらのルータのメッシュ グループを作成すると、あるピアから発信される SA メッセージが他のすべてのピアに送信されます。メッシュ内のピアが受信した SA メッセージは転送されません。
MSDP には Enterprise Services ライセンスが必要です。Cisco NX-OS ライセンス方式の詳細と、ライセンスの取得および適用の方法については、『Cisco NX-OS Licensing Guide』を参照してください。 |
次の表に、MSDP パラメータのデフォルト設定を示します。
MSDP ピアリングを有効にするには、次のように、各 PIM ドメイン内で MSDP ピアを設定します。
MSDP ピアとして動作させるルータを選択します。
MSDP 機能をイネーブルにします。
ステップ 1 で選択した各ルータで、MSDP ピアを設定します。
各 MSDP ピアでオプションの MSDP ピア パラメータを設定します。
各 MSDP ピアでオプションのグローバル パラメータを設定します。
各 MSDP ピアでオプションのメッシュ グループを設定します。
(注) | MSDP をイネーブルにする前に入力された MSDP コマンドは、キャッシュに格納され、MSDP がイネーブルになると実行されます。ip msdp peer または ip msdp originator-id コマンドを使用して MSDP を有効にします。 |
(注) | Cisco IOS の CLI に慣れている場合、この機能の Cisco NX-OS コマンドは従来の Cisco IOS コマンドと異なる点があるため注意が必要です。 |
現在の PIM ドメインまたは別の PIM ドメイン内にある各 MSDP ピアとピアリング関係を構築するには、MSDP ピアを設定します。最初の MSDP ピアリング関係を設定すると、ルータ上で MSDP がイネーブルになります。
Enterprise Services ライセンスがインストールされていること、および PIM と MSDP がイネーブルになっていることを確認してください。
次の表に、設定可能なオプションの MSDP ピア パラメータを示します。これらのパラメータは、各ピアの IP アドレスを使用して、グローバル コンフィギュレーション モードで設定します。
MSDP ピアをシャットダウンするパラメータ。コンフィギュレーションの設定はこのコマンドの影響を受けません。このパラメータを使用すると、ピアがアクティブになる前に、複数のパラメータ設定を有効にできます。シャットダウンを実行すると、その他のピアとの TCP 接続は強制終了されます。デフォルトでは、各ピアは定義した時点でイネーブルになります。 |
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着信 SA メッセージのルートマップ ポリシー。デフォルトでは、すべての SA メッセージが受信されます。
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発信 SA メッセージのルートマップ ポリシー。デフォルトでは、発信される SA メッセージには登録済みの全送信元が含まれます。
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Enterprise Services ライセンスがインストールされていること、および PIM と MSDP がイネーブルになっていることを確認してください。
コマンドまたはアクション | 目的 | |||||||||||||||
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ステップ 1 | configure terminal 例: switch# configure terminal switch(config)# | |||||||||||||||
ステップ 2 |
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次のコマンドでは、MSDP ピア パラメータを設定します。 | ||||||||||||||
ステップ 3 | show ip msdp peer [peer-address] [vrf [vrf-name | all]]
例: switch(config)# show ip msdp peer 192.168.1.10 | (任意)
MSDP ピアの詳細情報を表示します。 | ||||||||||||||
ステップ 4 | copy running-config startup-config 例: switch(config)# copy running-config startup-config | (任意) |
次の表に、設定可能なオプションの MSDP グローバル パラメータを示します。
SA メッセージ エントリの RP フィールドで使用される IP アドレス。Anycast RP を使用する場合は、すべての RP に対して同じ IP アドレスを使用します。このパラメータを使用すると、各 MSDP ピアの RP に一意の IP アドレスを定義できます。デフォルトでは、ローカル システムの RP アドレスが使用されます。
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指定したプレフィックスに対して作成される (S, G) エントリの最大数。グループの上限を超えた場合、そのグループは無視され、違反状態が記録されます。デフォルトでは、グループの上限は定義されていません。 |
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Source-Active(SA)メッセージを送信する間隔。有効値の範囲は 60 ~ 65,535 秒です。デフォルトは 60 秒です。 |
Enterprise Services ライセンスがインストールされていること、および PIM と MSDP がイネーブルになっていることを確認してください。
コマンドまたはアクション | 目的 | |||||||||||
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ステップ 1 | configure terminal 例: switch# configure terminal switch(config)# | |||||||||||
ステップ 2 |
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ステップ 3 | show ip msdp summary [vrf [ vrf-name | all]]
例: switch(config)# show ip msdp summary | (任意)
MDSP の設定のサマリーを表示します。 | ||||||||||
ステップ 4 | copy running-config startup-config 例: switch(config)# copy running-config startup-config | (任意)
実行コンフィギュレーションを、スタートアップ コンフィギュレーションにコピーします。 |
グローバル コンフィギュレーション モードでオプションの MSDP メッシュ グループを設定するには、メッシュ内の各ピアを指定します。同じルータに複数のメッシュ グループを設定したり、各メッシュ グループに複数のピアを設定したりできます。
Enterprise Services ライセンスがインストールされていること、および PIM と MSDP がイネーブルになっていることを確認してください。
コマンドまたはアクション | 目的 | |
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ステップ 1 | configure terminal 例: switch# configure terminal switch(config)# | |
ステップ 2 | ip msdp mesh-grouppeer-ip-addr mesh-name
例: switch(config)# ip msdp mesh-group 192.168.1.10 my_mesh_1 |
MSDP メッシュを設定してピア IP アドレスを指定します。同じルータに複数のメッシュを設定したり、各メッシュ グループに複数のピアを設定したりできます。デフォルトでは、メッシュ グループは設定されていません。 |
ステップ 3 | ピア IP アドレスを変更し、メッシュ内の各 MSDP ピアについてステップ 2 を繰り返します。 | |
ステップ 4 | show ip msdp mesh-group [mesh-group] [vrf [vrf-name | all]]
例: switch# show ip msdp mesh-group | (任意) |
ステップ 5 | copy running-config startup-config 例: switch(config)# copy running-config startup-config | (任意) |
コマンドまたはアクション | 目的 | |
---|---|---|
ステップ 1 | restart msdp
例: switch# restart msdp | |
ステップ 2 | configure terminal 例: switch# configure terminal switch(config)# | |
ステップ 3 | ip msdp flush-routes
例: switch(config)# ip msdp flush-routes | |
ステップ 4 | show running-configuration | include flush-routes
例: switch(config)# show running-configuration | include flush-routes | (任意) |
ステップ 5 | copy running-config startup-config 例: switch(config)# copy running-config startup-config | (任意) |
MSDP の設定情報を表示するには、次の作業のいずれかを行います。
コマンド |
説明 |
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次に、MSDP の統計情報を、表示およびクリアするための機能について説明します。
コマンド |
説明 |
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show ip msdp policy statistics sa-policypeer-address{in | out} [vrf [vrf-name | all]] |
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show ip msdp{sa-cache| route} [source-address] [group-address] [vrf [vrf-name | all]] [asn-number] [peerpeer-address] |
MSDP SA ルート キャッシュを表示します。送信元アドレスを指定した場合は、その送信元に対応するすべてのグループが表示されます。グループ アドレスを指定した場合は、そのグループに対応するすべての送信元が表示されます。 |
次のコマンドを使用して、MSDP 統計情報をクリアできます。
コマンド |
|
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clear ip msdp policy statistics sa-policypeer-address{in | out} [vrfvrf-name] |
|
clear ip msdp{sa-cache| route} [group-address] [vrf [vrf-name | all]] |
MSDP ピア、一部のオプション パラメータ、およびメッシュ グループを設定するには、各 MSDP ピアで次の手順を実行します。
他のルータとの MSDP ピアリング関係を設定します。
switch# configure terminal switch(config)# ip msdp peer 192.168.1.10 connect-source ethernet 1/0 remote-as 8
オプションのピア パラメータを設定します。
switch# configure terminal switch(config)# ip msdp password 192.168.1.10 my_peer_password_AB
オプションのグローバル パラメータを設定します。
switch# configure terminal switch(config)# ip msdp sa-interval 80
各メッシュ グループ内のピアを設定します。
switch# configure terminal switch(config)# ip msdp mesh-group 192.168.1.10 mesh_group_1
次に、下に示した MSDP ピアリングのサブセットの設定例を示します。
RP 3: 192.168.3.10(AS 7) configure terminal ip msdp peer 192.168.1.10 connect-source ethernet 1/1 ip msdp peer 192.168.2.10 connect-source ethernet 1/2 ip msdp peer 192.168.6.10 connect-source ethernet 1/3 remote-as 9 ip msdp password 192.168.6.10 my_peer_password_36 ip msdp sa-interval 80 ip msdp mesh-group 192.168.1.10 mesh_group_123 ip msdp mesh-group 192.168.2.10 mesh_group_123 ip msdp mesh-group 192.168.3.10 mesh_group_123 |
RP 5: 192.168.5.10(AS 8) configure terminal ip msdp peer 192.168.4.10 connect-source ethernet 1/1 ip msdp peer 192.168.6.10 connect-source ethernet 1/2 remote-as 9 ip msdp password 192.168.6.10 my_peer_password_56 ip msdp sa-interval 80 |
RP 6: 192.168.6.10(AS 9) configure terminal ip msdp peer 192.168.7.10 connect-source ethernet 1/1 ip msdp peer 192.168.3.10 connect-source ethernet 1/2 remote-as 7 ip msdp peer 192.168.5.10 connect-source ethernet 1/3 remote-as 8 ip msdp password 192.168.3.10 my_peer_password_36 ip msdp password 192.168.5.10 my_peer_password_56 ip msdp sa-interval 80 |
MBGP の設定 |
『Cisco Nexus 9000 Series NX-OS Unicast Routing Configuration Guide』 |